ピューロランドとのつながり
司会者:さっそくパネルディスカッションに入っていきます。あらためてご紹介いたします。パネラーの小巻さまです。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
司会者:そして21世紀学び研究所の熊平さま、よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
司会者:そして本日モデレーターを務めてくださる久保田さまです。よろしくお願いいたします。
(会場拍手)
久保田博氏(以下、久保田):では、小巻さん、熊平さんと対話についての対話を進めていきたいと思います。本日モデレーターを務めさせていただきます、TIS株式会社の久保田と申します。熊平さんと、4年掛けて、みなさんに「リフレクションと対話」をチームで実践いただく「Practice」という製品の開発を進めています。
製品開発を進める中で、私自身兼務で出向をして「21世紀学び研究所の所長」という肩書きをいただき、熊平さん、西谷さんと一緒に、いろいろな企業にリフレクションと対話のワークショップの提供をしております。
また、OKUTAMA+(オクタマプラス)という施設で、奥多摩町の廃校活用の支援などもライフワークとして副業でガンガンやらせていただいております。
小巻さんとは2年前にある方の紹介でつないでいただいて。実はそれ以前に、ピューロランドが大好きで家族で通っていまして、最初に行ったのは2015年7月。娘の2歳の誕生日に行って、当時は「OMOIYARI TO YOU」というパレードに感動しました。
小巻亜矢氏(以下、小巻):ありがとうございます。
久保田:その翌年から年間パスポート買わせていただいて、今年で8年目です。
(会場笑)
久保田:今日、「熊平さんと小巻さんの間に立てるのは私しかいない」なんて自負しながら、モデレーターをさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
15分間の1on1で意識すること
久保田:さっそく4つほど問いをご用意しています。まず1つ目が、日頃どんなふうに対話を実践されているのか。小巻さんから対話や朝礼といった事例がありましたが、もうちょっと具体的にお話しいただけますか?
小巻:日頃は、ありとあらゆる場で対話を実践しています。今日もここまで会社のスタッフと一緒に来まして、車の中でも対話をしてきました。一見普通の会話で、大切にしていることはさっきの「やさしく話す」「あたたかく聴く」という手法のところもあるんですけど、自分の気持ちの中で感情をちょっと意識するんですね。
ずっと話をしていてもバーッと流れるんじゃなくて、「あ、この話の時にすごく楽しそう」とか、「なんかちょっと困ったな。この間は何かがあるな」とか、そういうことを拾うようにしています。
答えになっていないかもしれませんが、自分の対話のスタイルとしては、感情を少し意識していることと、場としてはフェスとか毎日の朝礼は構造化して、ピューロランドの仕組みにしていることです。
個人的にはずっと1on1をやらせていただいていて、そこでは「今、雑談だよ」と、まったく仕事の面談ではなく「最近どう?」というすごくざっくりした質問から入っていきます。あまり話すのがスムーズじゃない人に対しては、ちょっとメタファーをつけて「今の気持ちって何色?」のように聞いてみたり、何でもいいんですよね。
何でもいいんですけど、その人の人となりとか、今その人の感情がどんなところにいるかとか、モチベーションとか、たった15分なんですけど、そういうものがキャッチできる時間になればいいなと。
1on1が始まる時に「15分後、〇〇さんとどういう関係性になっていたいか」を自分なりにイメージしてその15分をスタートして、対話をするようにしています。
1on1後にあらわれる変化
熊平美香氏(以下、熊平):その方が今どんなお気持ちなのか、どんな状況なのか、何を願っているのかとか、そこにはたぶんいろんなことがあると思うんですけど。感情に意識を向けてお話を聞くことによって、きっと相手の方もすごくいろんなものを得ているだろうなと思うんですが、どんな感じになるんですか? 何か変化が起きますよね。
小巻:関係性は間違いなくすごく親しくなります。自己紹介でお話ししたように、私は社長らしくしていないのでとてもフラットなんですけど、でも廊下ですれ違ったりエレベーターで一緒になった時は、けっこう「小巻さん、この間のあれ、私やってみましたよ」とか「見つけました。今度報告に行きます」と言ってくださるので。
言い換えれば、相手がちょっとその時よりも成長しているのを実感できる瞬間がたくさんあるんですよね。
こう言うとすべてがうまくいっているように聞こえるんですけど、なかなかそうじゃない場面ももちろんあります。うれしいこととか、相手の成長を見て取れるところもたくさんあるので。「相手の変化は成長」ということと、それによって「関係性は少なくとも前進している」というお答えです。
熊平:ありがとうございます。小巻さんは東大まで行かれて勉強もされて、リフレクションも自己対話というところからいろいろ研究されて、それに基づいて経営もされたということになると思います。
やはり会社ですから、いろんな困難な状態から良い経営を目指して変革を推進するのが非常に重要なテーマだったと思いますが、その中で一人ひとりの声を拾っていくとか、あるいはお互いの声を聞き合っていくことが、どんどん広がっていったんだろうなと、先ほどの朝礼や対話フェスのお話から想像していました。
自社の組織変革に「対話」を活かすためのステップ
熊平:例えば、これから組織を変革をするのに対話を活かしていきたいと思う人がいたら、ステップとしてどんなふうにやったらいいよという話を聞いてみたいのですが。
小巻:一人ひとりが違うように、一つひとつの組織もカラーが違うので、一概には言えないんですけど、一番大切なのは自分自身の心が折れないようにというか。ピューロランドも最初から対話がとてもうまくできる組織だったわけではまったくありません。さっきも言いましたけど、一人ひとりが殻に閉じこもっていたり、座り方からして斜に構えていたり。
熊平:(笑)。
小巻:そういう方も多かったですね。でも「自分の心が何のためにこれをやるのか」という自己対話、リフレクションで、自分のコミットメントを、大げさじゃなく毎日確かめながら臨みました。
焚火の法則じゃないですけど、「対話、大事だよね」「やさしく話すってこういうことだよね」「あたたかく聴くってこうだよね」ということをお話ししました。人事系の方たちは最初から比較的スムーズに受け入れてくださったので、そういう仲間を少しずつ増やしながら、対話を増やしていく。
その先に何があるのか、自分がその旗をちゃんと持っていないと、面倒くさくなったり心が折れてしまうので、自分自身のコミットとビジョンを確かめながらやることが大前提です。
方法はいろいろあると思います。定期的に集まって対話をする場を持つこともいいと思いますし、何かグループごとにやりやすい方法でやってみるといいかなと思います。
もう1つ、「やさしく話す」「あたたかく聴く」的な、グランドルールを決めて臨むといいかなと思います。業務上の情報伝達で、「うちはすごくコミュニケーションが取れている」と思っている。それはもちろん大切ですが、熊平さんや私が思っている対話はそうではなく、業務上の情報伝達ではないところですよね。組織全体がより良く成長していくためのもの。
それを思った時に、やはりグランドルールはとても大切で、「否定しない」とか「イエス・アンド(Yes, and)」とか。みなさんも研修でお聞きになったかもしれませんが、「イエス・バット(Yes, but)」で否定するのはやめようとか。
何かをやめようというよりは、こうしよう、こういう聞き方をしようという意識は持っておいたほうがいいかなと思います。
1on1をやっている経営者の方もたくさんいらっしゃるんですけど、ぜひこのあいだ熊平さんがおっしゃったお話をどうぞ。
社員との対話を通して、相手、組織、何より自分が成長する
熊平:そうですね。1on1は形式的な場になりがちだよねという話をさせていただいたんですが、せっかくなので今の話をもう少し聞きたくて。
私は学習する組織を勉強していましたので、原理原則にすごく合っていると思いました。たぶんここにも専門家がかなりいらっしゃるので、そういうふうに聞こえているんじゃないかなと思うんです。まずコミットがあって、ビジョンがあって、自分がしっかりそこに立っている、ゆるぎないことがすごく大事。
こんな素敵でエレガントな感じでいらっしゃいますけど、そこのところは非常にビシッとしているなと思います。さらに、私は対話って人間を信じないと始まらないんじゃないかと思っていますが、どうでしょうか?
小巻:好きになる必要はないと言うと、身も蓋もないんですね。やはり違う人だし、その人と結婚する必要もないし、親友になる必要もないけど、対話をとおして、自分がどう成長できるかということでいいと思うんですね。
相手の成長のためにとか、組織の成長のためにというのももちろんありますが、結局自分が成長することが貢献することになるので、私はそこを見ていていいと思うんです。
「相手を信じる」と言ったってその人のことを何も知らない、と思う方もいるかもしれないんですけど。その人自身がこういう人だろうと信じることは、レッテルを貼っていることなので、そうではなく、この関係性が少なくとも成長していくんだと信じている、そういうところですね。
熊平:了解しました。関係性が成長していくんですね。とても良い言葉ですね。
小巻:そこは信じ切る。「絶対成長してやる」みたいに(笑)。
熊平:素敵です。それが結果、組織の成長につながっていくということですよね。
小巻:はい。そう思います。
熊平:ありがとうございます。