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0から始める“失敗しない”人的資本経営の実践とは (全2記事)

2023.08.21

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社員を“会社愛”で働かせると、組織と個は「相互依存」になっていく よりよい人材活用のために「人的資本経営」が重要な理由

提供:株式会社スタディスト

昨今、ビジネスシーンで耳にする機会が増えた「人的資本経営」というワード。経済産業省からも人的資本可視化指針が公表されていますが、何を情報開示していくべきか・どう実践すべきか、試行錯誤している企業も少なくありません。人的資本経営でよくある悩みや、失敗しないためのポイントについて、株式会社スタディスト コンサルティング部の渡部数満氏が紹介します。前編となる本記事では、人的資本経営が注目されるようになった背景や、人材のパフォーマンスを最大化するためのポイントを解説します。

人的資本経営を0から実践するためのヒント

渡部数満氏(以下、渡部):本日のセミナーは「0から始まる“失敗しない”人的資本経営の実践とは」ということで、お話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。

今日はウェビナー形式ですので、基本的には一方的に私からお話しすることになります。ただ、質問があったら、どんどんQ&Aでお寄せいただければ、できる限り回答していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

弊社は株式会社スタディストと申します。「伝えることを、もっと簡単に。」というミッションを掲げて、いろいろな活動をしている会社です。まだまだ若いといいますか、いわゆる「ベンチャー」や「スタートアップ」と言われるような会社です。

その中でも主力商品としては、BtoB向けの「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」というクラウドサービスが一番大きなサービスです。あとは「ハンクラ」

それに加えて、生産性向上のコンサルティングや研修サービスを提供することでお客さまの生産性向上を支援している会社です。

人的資本経営の要は「組織状態の可視化」

渡部:私の紹介もさせてください。渡部数満と申します。簡単にキャリアを書いておりますが、今までは人材開発や組織開発、あるいは無形財の商品に対する事業開発、商品開発、サービス開発を主にやってきた人間でございます。

スタディストでは、コンサルティング部事業推進グループというところで活動をしております。無形財の商品やサービス開発、事業開発を得意領域として、実際に事業開発をしたり、サービスメニューの企画・開発、あるいはコンサルタントとしても従事しています。よろしくお願いいたします。

「はじめに」ということで、伝えたいこと・得られることを1枚のスライドにまとめております。

まさにここがみなさんの一番のご関心事だと思いますが、「人的資本経営」ですね。このキーワードをもとに、まずお伝えしたいことが「実践するためには、組織状態の現状を可視化することが重要」ということです。

得られること・持ち帰っていただきたいこととしては、「人的資本経営とは何ぞや?」という概要をつかんでいただいて、失敗しないためにどういったことをやっていけばいいのか、どういうことを考えて取り組んでいけばいいのかといった、ファーストステップがわかる構成にしております。

人的資本の情報開示が義務化

渡部:というわけで、本日は3本立てですね。

まずは「人的資本経営とは?」という概要の話をさせていただいて、その上でどういったことが重要なのか。さらに、打ち手としての組織状態の可視化について紹介いたします。

徐々に中身に入っていきたいと思います。「Chapter01 人的資本経営とは?」という話をいたします。

まずは、マクロな話をしていきたいと思います。企業を取り巻く環境において、近年「人的資本経営」という言葉が非常にクローズアップされていて、みなさんも今日はそこにご関心を持っていらっしゃっているんじゃないかなと思います。

なぜクローズアップされてきたのかについて、私なりの解釈をこの後お話ししていきますが、まずは開示義務が出てきたことが一番大きいのかなと思っております。

今、「人的資本改革元年」みたいな言い方もされています。対象となる報告義務は有価証券報告書となるので、基本は上場会社に対してなんですけど、「人的資本に対するどんな取り組みをしているのか開示しましょうよ」「開示する義務がありますよ」ということになりました。

実際に企業の実務対応が必要になってきたということが、1つのクリティカルなポイントであるかなと思います。今日お集まりのみなさんの中でも、実務対応をする当事者の方もいらっしゃるのではないかなと思います。

大企業の7割以上が人的資本経営に着手

渡部:これもちょっとマクロの話、あるいは環境の話です。先行き不透明で、非常に変化が激しいVUCAの時代と言われておりますが、その中で企業のみなさんや管理職のみなさんには、大きな不安があると言われています。

人的資本経営の関心度は非常に高くなってきて、取り組みを進めている企業さまが多いかなと思います。こちらはパーソルさんの調査なんですが、(人的資本経営に対する)関心度合いです。

基本は大企業向けの調査なのですが、81.5パーセントの企業が「関心が高い」。加えて、「取り組んでいる」という企業も76.6パーセントとかなり多いです。

一方で中小企業のみなさんの関心、あるいは取り組んでいる状況も、実はけっこう高いです。例えば、関心度で言うと(「関心が高い」という回答が)75.7パーセント。「取り組んでいる」というパーセンテージは67.1パーセントという数字になっています。

冒頭で「(人的資本経営が注目されているのは)有価証券報告書の中での開示義務が出てきたから」とお伝えしたんですが、それだけではなくて、そもそも自分たちの当事者意識が高まってきたことも大きな背景としてはあるのかなと思っております。

そもそも「人的資本経営」の定義とは

渡部:「じゃあ、そもそも人的資本経営って何なのか?」といった、定義的なところをお話ししていきたいと思います。「新しい経営スタイルなんですよ」と、見出しに書いてあるんですけど、何が新しいのかを順々にお話ししていきます。

定義を読み上げていきます。「人的資本経営とは、従業員が持つ知識や能力を『資本』とみなして投資の対象とする」。

ここは非常に重要なキーワードになってくるんですが、「持続的な企業価値の向上につながる新しい経営の在り方」です。

先ほどVUCAの話もありましたが、激しい外部環境の変化に対応して企業価値を高め続けるためには、人材を「コスト」や「資源」ではなくて、「投資対象の資本」と捉えることによって、企業価値向上が常に図られるのではないか。そんな考えに基づいた経営スタイルになっています。

ですのでポイントとしては、人的資本に関する取り組みや情報は、企業の将来性を判断する指標になってきていることです。ステークホルダー、特に投資家から強い関心を得られるようになってきました。

今まで人的資本経営は、「確かに大切だけど」というところではあったんですけど、明確に企業の将来性や企業価値を測るための活動として捉えられるようになった。これが非常に重要なので、持ち帰っていただきたいポイントの1つです。

人材は「コスト」ではなく「投資対象」

渡部:いったん簡単にまとめます。「人的資本経営とは」というところで、近年は無形資産(人的資本)を評価する傾向が非常に高まっております。

今まではどちらかと言うと、「有形資産(財務的な資本)イコール企業価値」という捉え方だったんですけど、今後は有形資産に加えて無形資産(人的資本)も、企業価値を測るためには非常に重要です。

「人材のパフォーマンス(≒生産性)」と書いてありますが、パフォーマンス・生産性の最大化が企業価値向上の鍵になるとみなされていることが、大きなポイントになります。

先ほど「新しい経営スタイル」と申し上げました。まだ概念的な話になるんですが、もう少し中身をひもといていった時に、従来の経営とどのあたりが違うのかを5つの観点で示しております。

引用元としては、経産省の「人材版伊藤レポート(以下、伊藤レポート)」。後ほど、これがどんなものなのかをご説明しますが、そちらからの抜粋になります。

いくつか取り上げていきますと、まず「人材マネジメントの目的」ですね。左側がこれからの新しい人的資本経営、右側が従来になります。

人材マネジメントの目的として、資源は目減りしていくものですが、今まではそれをコストとして消費し、管理していく側面が非常に強かったんです。

ですが、これからは(人的資本は)投資対象だと。つまり、価値を生み出す土台として捉える。土台なので目減りするものじゃなく、しっかりと投資をしていきましょうという考え方になります。なので、価値創造の礎となります。

従来は、個と組織が「相互依存」の関係性にあった

渡部:戦略人事みたいな話もありましたが、アクションとしては、今までは人事制度の運用や改善が大きな目的だったがゆえに、経営戦略とはけっこう切り離されがちでした。

一方で今後の人的資本経営においては、経営戦略から人材戦略をしっかりと落とし込んで、今後の経営はこうありたいから、人材としてはどういう人材を育てる、あるいは活用・採用すると決めていく。それによって企業価値を持続的に向上していきましょう、というアクションになる考え方です。

「ベクトル・方向性」、あるいは「個と組織の関係性」「雇用コミュニティ」は、かなり密接に連動してくる話だと思います。

例えば、ベクトルについては「内向き」と書いています。(従来の経営は)囲い込み型でしたよね。それゆえに、一括新卒採用が根源にあると思うんですが、同質性が高いです。一方で(人的資本経営は)「積極的対話」ということで、投資家や従業員に対して、経営からもしっかりと発信して対話していく。そんなベクトル・方向性になります。

個と組織の関係性について、エンゲージメントの話になりますが、今までは相互依存で囲い込んで終身雇用。そうすると同質・硬直的になるんですが、その中で“会社愛”みたいなものを醸成させて、みんなにがんばってもらう関係性だったんです。

今後は個に自律・活性化していただいて、「別に今はここで働いているけど、成果を出して価値を発揮していただければ、然るべきタイミングで卒業いただくのもぜんぜんいいよね」「流動性があってもいいよね」というのが、個と組織の関係性の新しさです。

ESG投資の影響から注目が集まるように

渡部:雇用としては、今まで囲い込み型で終身雇用・年功序列・一括採用でやっていたんですが、今後は「選び・選ばれる関係」としてエンゲージメントを図っていって、個と組織の生産性・パフォーマンスを最大化して企業価値を高めていく。そんな方向性になるという考え方です。

これ自体は「そうだよね」という感じだと思います。今はいろんな大企業もどんどん左側にシフトしてきていると思いますし、中小企業も徐々に左側へのシフトが始まっていると思います。ただ、観点としてこの5つはけっこう重要かなと思いますので、持ち帰っていただければと思っております。

マクロな話になってしまいますが、「なんでこんなに注目されていったのか?」というところは、2つの背景があると思っております。まずは、アメリカからの視点で浸透し始めたと言われているんですが、ESG投資ですね。

今後、企業価値を測っていく時に、サステナビリティ、いわゆる持続可能性は絶対に切っても切り離せません。

「持続可能性がないかたちで企業活動をしていったら、その企業は絶対に立ち行かなくなるよね」という話もありますので、「環境、社会、ガバナンスをしっかり大切にしている企業に対して投資していこう」という考え方が普及しております。なので、「人的資本はすごく重要だよね」というのは、その中の文脈の1つです。

硬直的な働き方を強いると、人材活用はより困難に

渡部:もう1つは「働き方の多様化」と書いてありますけど、みなさんご承知おきの通り、少子高齢化がめちゃくちゃ進んでいますし、今後もさらに加速していきます。そうすると、働く人がどんどん減っていきますので、人材の採用確保はこれまで以上に難しくなっていきます。

そんな中で硬直的な働き方を強制していくと、「この会社で働きたくない」と、より一層人材の獲得や活用・確保が難しくなります。

働き方の多様化は、働き方改革という文脈だけではなくて、企業価値を測る、あるいは企業のパフォーマンスを最大化するという文脈でも非常に重要です。なので、こういった考え方が(人的資本経営が浸透した)背景にあるとご理解ください。

今度は「伊藤レポート」の話になります。「日本国内で、人的資本経営にしっかり取り組んでいかなきゃいけないよね」と明確化されたきっかけが伊藤レポートです。

当時、一橋大学の教授だった伊藤邦雄教授が座長となって、プロジェクトとしてまとめられたレポートです。後でもう少し詳しくお話ししますので、ここでは「3つの視点」と「5つの共通要素」があることだけご理解いただければいいかなと思います。

(1つ目の視点が)「経営戦略と人事戦略の連動」。それと、先ほどもちらっと触れましたが「現状とありたい姿のギャップの把握」。あとは「それをしっかりと文化として定着させていこうよ」というのが3つの視点です。

あとは、このレポートの中では「5つの要素」が書かれています。これが礎となって、取り組んでいかなければいけないことが明確化されたという背景です。

7カテゴリの情報開示が義務化

渡部:こちらはみなさんの関心が非常に強い部分かと思います。人的資本の情報開示が、有価証券報告書の中でしっかりと開示することが義務付けられたのが、一番クリティカルなところかと思います。

何を義務化するかについては、この後お話ししていくんですけど、カテゴリとしては「人材育成」「多様性」「健康・安全」「労働慣行」「エンゲージメント」「流動性」「コンプライアンス」の7つと示されています。

大企業だったら当たり前のようにやっていることでもありますし、やるべきことかなと思いますけど、あらためて明文化・言語化されたことが大きいかなと思っています。

今までは「やったほうがいい」という努力義務みたいな感じでやっていたと思います。ですが、上場している企業にはあらためて、「これは義務ですよ。みなさん、上場企業として責任を果たして、他の企業の見本としてしっかり取り組んで、日本の社会全体に流通・浸透させていきましょう」と、高らかに宣言されたということです。

投資家たちが着目するポイント

渡部:なので、有価証券報告書にきちんとこちら(7つのカテゴリ)を開示して、それを投資家・ステークホルダーがしっかりと見て、本当にちゃんとやっていることなのか、あるいはただ書かされているのかもちゃんと見ますよ、ということです。

義務化されたから書くのではなく、実は企業価値向上のために非常に重要なことだと捉えていただくといいかなと思います。

私も最初は、「義務づけられて有価証券報告書に書かなきゃいけなくなったから、非常に重要度が増したのかな?」と、ちらっと思ったりしていたんです。だけど、ぜんぜんそんなことはなくて、非常に本質的な話なんだと理解していただけるといいかなと思います。

ここまでのざっくりまとめになりますが、今までは「有形の財務的資本=企業価値」というふうに測られていた。あるいはステークホルダーからそう見られていましたが、それだけでは企業の価値は測れない。

無形資産、特に人的資本はとても重要になるので、今後は企業の中でもESG経営というかたちで、そこも見られていきますよと。なので、人材のパフォーマンス・生産性の最大化が企業価値向上の鍵となってきますというのが、ざっくりとした背景で、人的資本経営の核になる考え方だと思います。

人事設計を時代に合わせてアップデート

渡部:ここまでかなり概要めいた話をしてまいりました。「じゃあ、いったいどんなことが重要なのか?」「実際の施策、あるいは企業活動をする中でどんなことが重要なのか?」という話をしてまいります。

こちらは伊藤レポートから読み解いたんですが、伊藤レポートでは、人的資本経営においてどんなことが重要だと書かれているのか。先ほどから何度も申し上げているんですけど、開示義務がゴールではないと思ってください。それはあくまでプロセスです。

「開示義務があるから開示して以上」ではなくて、そこが企業価値を最大化する非常に重要なポイントになります。そのためには、仕組みづくりと組織環境づくりの両方に着手する。あるいはすでにやっていただいていると思うんですけど、そこを改善していくことが非常に重要です。

仕組みづくりとしては、まずは人事設計ですね。人材配置を柔軟にしていくとか、柔軟な働き方、人事設計の整備を今の時代にアップデートしていく。従業員に選ばれる組織・会社になっていくことが重要です。

加えて、エンゲージメントの把握。やられている会社は多いと思うんですけど、多様性を受け入れた組織にしていくという組織開発のところですね。あるいは人材開発のリスキリングも非常に重要になってきます。釈迦に説法かもしれませんが、あらためて仕組みづくりと組織環境づくりはとても重要です。

今までは切り離されがちだった「人事」と「経営」

渡部:それに加えて、先ほど「3つの視点」がありますよとお伝えしましたが、もう少し中身をひもといていきたいと思います。

まず1つ目の「経営戦略と人材戦略の連動」が、一番大きな視点になります。先ほどちらっと「人事と経営って切り離されがちだったよね」という話をしました。そうじゃない会社もいっぱいあると思うんですけど、相応にそうなりがちだと見られていました。

今はそうではなくて、「自社の経営課題は何で、市場から何を求められていて、それゆえにこういった人事戦略をとらなきゃいけない。だから組織開発・人材開発の施策を展開していく」という考え方をする必要がある。これは当たり前といえば当たり前なんですけど、一番重要だと言われています。

VUCAの中で経営環境がどんどん変化している中で、持続的に企業価値を向上させるためには、こういった経営戦略を常に行ったり来たりしながら、表裏一体で経営戦略を実現するための人事戦略を策定・実行することが重要と言われています。

ムダな打ち手は悪影響を引き起こす可能性も

渡部:そのための必要な事項がこちらに並べられておりまして、全部を読み上げはしないですが、太字になっている部分に注目いただきたいです。

これは何かと言いますと、Chapter03でご紹介するんですが、弊社の組織生産性サーベイといった組織調査、組織診断を入れていただくと明らかになる項目です。「全社的な経営課題の抽出」「KPIの設定、背景・理由の説明」は、このサーベイをやっていただくと明らかになります。

次に視点2が「As is-To beギャップの定量把握」。要は、現状とありたい姿の差分をしっかりと定量的に把握する必要があります。

定量的じゃないと何が起きるかと言いますと、本当に起きている現象や真実ではないことに対して打ち手を打ってしまうと、ぜんぜん打ち手がはまらない。場合によっては悪影響が及ぼされたり、非常に大きな手戻りが起きかねないです。

いろんな手段があると思うんですけど、しっかりと企業調査をしたり、従業員にアンケートを取る。定量的に把握した上で、先ほどの経営戦略と人事戦略をひも付けていただく必要があることが、「伊藤レポート」で報告されてわかっています。

実はここ(必要な事項)は3つとも、弊社側のサービスで実現することが可能になっています。

粘り強く、中長期で人事戦略を打ち出していく

渡部:経営戦略と人事戦略をしっかりと連動させて、現状はどうなっているのかを可視化するところまではいきました。その結果、「こういった施策を打っていけばいい」「こういった人事戦略・組織戦略を打っていこう」と決めたとします。これを決めたから、次の日から狙っていることが起きるかと言うと、そんなことはぜんぜんないと思います。

人事戦略はけっこう奥深いものだと思いますので、いかにしっかりと定着させて文化に変えて、文化として中長期でしっかりと定着させていくかがとても重要です。

なので、四半期や週次・月次で何かすごいことが起きるとか、あまり性急に思っていただかないほうがよくて、中長期で腰を据えてやることだと思っていただくといいと思います。

「文化へ定着させていく」という覚悟を持って、経営の方、経営企画、あるいはミッション・プロジェクトを抱える方々が取り組んでいただく必要があるのかなと思います。

けっこう粘り強い活動が必要になるので、CEOやCHROのみなさんとの「対話の場」を設定いただくことも、実はすごく効果的だったりします。ですので、ミッション・ビジョンや経営理念をあらためて定義づけたり、それを発信することも重要です。

中小企業における、経営と人事戦略連携の注意点

渡部:ちょっとチャットを見ていなかったんですけど、質問が来ていますね。「中小企業ですと、明確な経営戦略は描かない・描けないことがありそうです。その場合、経営戦略と人事戦略との連携はどのように考えていくとよいか?」。ありがとうございます。

非常におもしろい観点だと思います。おっしゃる通り中小企業で、かつ老舗の企業になると、あまり経営戦略が描かれてないですとか、なんとなくお題目として社是、社訓、経営理念を置いてあるけど、ぜんぜん実効性がないことは往々にしてあるかと思います。

その場合に重要なのは、CEO、社長、経営層が人的資本をしっかりと活用すること。特に中小企業の場合は、大企業以上に人材の採用が困難なケースが多いと思います。なぜならば、組織環境、労働環境、労働条件がどうしても劣後する部分がありがちだからです。

そうした時に、経営層がしっかりと経営戦略、ミッション、ビジョン、バリューを改めて定めて、みんなで落とし込んで、「魅力的な会社になっていこう。そうじゃないと労働市場からも経営市場からも見放されてしまうよ」と、強くコミットいただく必要があるのかなと思います。

うまい回答になっているかわからないですけど、やっぱり中小企業は社長とトップダウンのパワーがすごく強いと思いますので、それをしっかりと自覚いただく。

現状をちゃんと測った上で経営戦略を落とし込んでいかないといけないし、それを人事戦略と結びつけていかなきゃいけないんだなと強く自覚いただくことが出発点になります。その中で、実は弊社のサーベイがけっこう有効だったりするので、後ほどお伝えできればなと思います。

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