案件作成のペースを安定的に保つことの重要性

高橋浩一氏(以下、高橋):でも、営業組織ってドラマチックなのが好きなので。月末最終営業日に足りない分をみんなで必死にかき集めて、達成するかしないかみたいな感じで「○○さんから申し込みしていただきましたー!」って、ギリギリにピタって到達して、「うわ~!」という感じが、一般的にはみんなけっこう好き。

坂東孝浩氏(以下、坂東):わかります。わかります。

高橋:だけど、それでやってると、感情の起伏というか、心安らかな状態にはなりづらいですよね。

坂東:確かに。次の日、どーんって落ちますもんね。

高橋:そうするとその反動で、次の期の最初が気の抜けたような感じになって。追い込まれて、また次がんばるという感じなので。案件作成のペースを安定的に保つことに集中すると、営業組織の場合はうまくいきやすいなと思います。

坂東:なるほどね。

いつも目標未達になるチームの共通点

武井浩三氏(以下、武井):それを、今は営業の研修というかたちでいろんな会社さんに提供しているじゃないですか。

高橋:はい。はい。

武井:それは、今おっしゃったような内容なんですか。

高橋:もう少しアレンジして、再現性を上げるにはどうしたらいいかという観点でやっていくんですけど。今は便利なツールがいっぱい出てきています。

坂東:うん。

高橋:営業の研修ではだいたいこういう(スライドのような)、「マネジメントを改革せよ」みたいなことが言われるんですよね。

「現状が見えていないから見える化をしよう」とか、「人が育っていないから人材育成をやろう」とか、「目標達成意識が薄いからコミュニケーションだ」という感じになるんですけど。

僕はいつも「言葉を揃えましょう」から、最初にやるんですね。

例えば「何をやったら成果が上がるんですか」と聞いた時に、みんなの答えがけっこう、てんでんばらばらだったんですよ。

こういうの(スライドにある例題)も、てんでんばらばらでした。

坂東:おー、おもしろいですね。

高橋:指示型・委任型みたいな感じでいくと、僕がちょうどいいレベル感だなと思うのは、言葉は揃っているけど、やり方は人それぞれ。この「いいバランス感を保つ」みたいな。

坂東:なるほど。なるほど。

高橋:実際に、数千人の営業の人たちに調査したんです。「あなたの会社でうまくいく勝ちパターンは何ですか」と聞いた時、(スライドの)ブルーが目標を当たり前に達成してる上位集団で、ピンクが目標をいつも達成していない下位集団みたいな感じだとすると。

ピンクの人たちが際立って多かったのが一番下の「勝ちパターンと言えるものは特にない」。

坂東:なるほど、まったく違いますね。

高橋:ここだけすごい差が開いているんですよね。ほとんどの営業組織は、勝ち目がわからない状態で、「なんとかがんばれ」と言われて思い思いに当たっている感じなので、けっこうどの角度からとっても似たような結果が出るんですよ。

坂東:なるほどねぇ。

自律分散的な営業マネジメントを実現するポイント

高橋:だから言葉をしっかりと揃えるところをやって、あとはさじ加減をどのへんに置くかですね。

坂東:さじ加減ですか。

高橋:具体的には、例えば商談とか営業活動の進捗を定めて、大事なところに関してはけっこう細かく定めるんだけど、例えばこのスライドだと、ここ(4項目めの『要件整理済』の欄)だけけっこう具体的に書いてあるけど、その下とかはそんなに細かく言っていないわけですよ。

坂東:なるほど。

高橋:さっき武井さんがおっしゃった、かつての僕のマイクロマネジメントの時は、ここもここも全部の項目を細かく定める感じでやっていたんですけど。

坂東:(笑)。

高橋:それだとやっぱりうまくいかないので。だいたいこのへん(全11項目中の7、8項目め)が、見積もりを出して決まるか決まらないかぐらいのタイミングですけど、それよりもなるべく上流でがんばったほうがいい。

ここ(4項目め)はお客さまと会った直後ですが、このへんをきっちりやることはけっこう揃えます。あとはある程度幅があるみたいな感じで調整をうまくやると、成果が上がりやすい。

坂東:なるほど。

高橋:完全に自律分散型と言うよりは、ここの部分をちゃんとやろう。あとはけっこう人それぞれだよねみたいなところを、ある程度のバランス感で作ると言うか。どういうやり方がいいかの引き出しはある程度持ちつつ、その会社さんと一緒に営業のやり方を作っていきましょう、ということです。

武井:自律分散的な営業マネジメントですね。

坂東:いや、本当にそう思いました。ポイントは抑えているじゃないですか。それから基準も、はっきりわかりやすくしていて。だけど、個別のやり方はそれぞれにある程度委ねる。