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【手放すTALK LIVE#37】「無敗の営業チームづくりと自律分散型経営は共存 できるのか?」 ゲスト: TORiX株式会社 代表取締役 高橋浩一さん(全6記事)

営業会議で聞くべきはビハインドの挽回策ではない 目標達成に間に合わせるための「達成率」以外の焦点

管理しない組織や上司がいない会社、給料を自分たちで決める会社など、ユニークな進化型組織を調査する「手放す経営ラボラトリー」。同ラボが主催するイベント「手放すTALK LIVE」に、『無敗営業』『無敗営業 チーム戦略』の著者で、TORiX株式会社代表の高橋浩一氏がゲスト出演。社会活動家の武井浩三氏を相手に、高橋氏が20代でマイクロマネジメントを手放したきっかけや、心安らかに期末に目標達成を迎えるためのポイントなどを語りました。

やれることを全部やっても結果が出ず

高橋浩一氏(以下、高橋):ある年に営業6人を1年で4倍の24人に増やしたんですけど、ほとんどが営業の素人だったんですよ。その人たちに自分の真似をしてもらったら売れるだろうと思ったんですけど、やっぱりぜんぜん売れなかった。やれることを全部やったつもりだったんですけど、結果が出なくて大惨敗をしました。

自分でやったことが全部だめだったから、逆にもう手放すというか。そこで初めて人に頼るというか。

中途で入ってくるマネージャーの人は、みんな自分より年上の人たちばっかりだったので、なめられてはいけないみたいな気持ちがあった。

坂東孝浩氏(以下、坂東):いや、そうですよね〜。

高橋:職位としては自分のほうが上で役員なんだけど、自分よりも経験あるマネージャーの人たちがどんどん入ってきたので、ものすごい背伸びをしながら、毎日やっているような感じでした。

坂東:そういうところからやりつつの、型を作ったりいろいろな理論を作ったりしながら、無敗営業のチーム作りができる感じですね。

高橋:いや、でもね。あんまりスムーズに行かなかったんです。

坂東:(笑)。あ、そうなのですね。

高橋:本当にやり方がわからなかったんですよ。最初の会社では、いわゆる昇格もしていなかったし、マネジメントもやったことがないですから。やり方がわからなかったから、今このご時世で言うとちょっと危険ですけど、毎日前日の売上を印刷して、みんなの机の上に置いておくとか。

坂東:おー……。

高橋:目標を逆算して、今日何件活動しなくてはいけないかを毎日面談に持ってきてもらったりとか、いろいろやったんです。けど結局、全部うまくいかなかったんですよね。

ですけど、最後の最後に、自分が同行すれば決められるんじゃないかと思って。みんなの予定をかなり調整してもらって、自分の同行商談が一番増えるようにしてもらったんですけど、それもやっぱりうまくいきませんでした。

坂東:あ! うまくいかなかった!? 

高橋:それが28~29歳ぐらいの時でしたかね。それで、翌日から朝起きられなくなってしまって。

坂東:あら。

高橋:毎日微妙に5分遅刻するっていう(笑)。

坂東:微妙に。でも、営業パーソンの5分はだめですよね。

高橋:だから、まともな精神状態ではないのが外からはなんとなく見えているんだけど、誰も突っ込めない感じで。会社に行きたくないけど、なんとか行くみたいな感じでした。

メンバーから寄せられた意見

高橋:その時、あるメンバーに「高橋さん、みんなにどう思われているか、自分でわかりますか」みたいなことを言われたんです。

「いや、まぁ……そうね」みたいな感じで言ったら、「じゃあ、私がメーリングリストでみんなの意見を聞いてあげますよ」と言われました。

坂東:ドキドキしますね。

高橋:いきなりそこで、「KYマネジメントに意見求む」というメールがメーリングリストに流れたんです。

坂東:はい。「KYマネジメント」って何ですか? 

高橋:僕ともう1人の役員の頭文字がKとYだったから。

坂東:なるほど(笑)。

高橋:でもたぶん、裏でそう言われているんだろうな、と思ったんですけど。そしたら、1時間で返信がぶわーってきたんですよ。メールをもらう前に、各部署の責任者が最後にスピーチみたいなのをする締め会があって、今でも覚えている風景ですけど、僕がしゃべった時、営業の人が全員下を向いていたんですね。すごい未達率だったから。

坂東:顔、上げられないですもんね。

高橋:そういうことがあったから、めちゃくちゃ文句言われるんだろうなと思っていたら、返信メールがものすごくいい内容ばっかりだったんですね。

坂東:へ~。

高橋:「マネジメントがだめだ!」みたいな感じのことがばーって来るのかなと思ったら、むしろ「自分のがんばりが足りなくてすみません」みたいなこととか、他責・自責で言うと、自責寄りのコメントがいっぱい来たんです。

坂東:へー。

高橋:みんな組織をこうしたいという思いがあるんだなぁと思ったんです。もしかすると、同行商談はすごく真逆のことをしたのではないかと思って。

マイクロマネジメントを手放したきっかけ

高橋:それで、営業マネージャーの人に「今度の営業全体会議で、いつもけっこう自分がしゃべるので、みんなの話を聞いてみようと思うんだけど」と言ったら、マネージャーの人とかに「高橋さん、本当ですか」と言われて。「本当です」と言ったら、「会議の最初に、ちゃんとみんなの前で宣言してください」と言われたんです。

「今日は何を言われても、ちゃんと話を聞きます」と宣言をしたんですね。またすごい集中砲火をあびるのかと思ったら、その営業全体会議が、めちゃくちゃいい会議だったんですよ。

坂東:おー。

高橋:それで、自分がしょうもなかったんじゃないかとすごく思って、全部今までと逆にしてみたんですね。

(今までは)大事な商談の提案者だったら、「ちょっと待って。それ、そのまま出すのではなくて、チェックさせてくれ」みたいに僕が書き直したり、あわよくば同行してプレゼンに行くとかだったのが、「うん、そのまま行って」にした。

同行に行きたいけど我慢して、全部逆にしたら、翌年めちゃくちゃ業績が上がったんですよ。

坂東:全部逆ってすごいですね。「これは残そう」とかなかったんですね。

高橋:中途半端にマネジメントできていたら、そこまで思わなかったと思うんですけど、我ながらだいぶひどかったので(笑)。

坂東:もうやり尽くしたんですね。

武井浩三氏(以下、武井):なるほど。いわゆるマイクロマネジメントみたいな。

高橋:もうマイクロマネジメントの極致でしたね。

坂東、武井:極致!(笑)。

メンバーの食事のスピードも人生で実現したいことも管理

坂東:それ、聞きたい。どれぐらい……。

武井:もしかして、あれですか。お客さんに送るメールを、事前チェックとか。

高橋:いや、そのレベルはまだまだ甘いです。

武井:えぇ~!? 

坂東:甘い!? 

武井:マジですか(笑)。

坂東:その先があるんですか? 

高橋:研修のビジネスって、研修の合間のお昼休みにお客さんが発注されたお弁当を食べたりするんですけど、僕は「お客さまとまったく同じペースで食べなさい」と言っていました。研修のお弁当って、お客さんはふだん食べているお弁当よりもいい弁当を頼むんですね。

中には、「今日ちょっといい弁当頼みましたよ」と言うお客さんもいるから、せっかくそういういいお弁当を頼んでくれたんだから、さっさとこっちだけ食べてしまうのも失礼だし、進まないのも失礼。「だからまったく同じペースで食べなさい」「食べるスピードまで同じにしなさい」と言っていました。

坂東:すげえなぁ。

武井:考えたことないわー。

高橋:あと、営業って逆算で考えるじゃないですか。目標があって、現状があって、ギャップがある。受注率が何パーセントで単価がいくらで何件の案件が必要でと逆算していくと、だいたいみんな目標にすごく足りないから、1日に電話をしないといけない件数が5,000件とかになるんですよ。

坂東:(笑)。ありえない。

高橋:当時の僕は28歳とか29歳ですから、コミットが足りないんじゃないかと思って、人生で何を実現したいか書いて僕のところに持ってきてもらって毎日面談で確認して、そのための仕事だみたいなことをやっていたんだけど、ぜんぜん数字が伸びない。

「パソコンで打っているのが悪いんじゃないか」「そこは手書きで持ってきてくれ」みたいな。

(一同笑)

ちょっと頭が悪すぎるんですけど。

坂東:いや、でも理屈は合っていますよね。

メンバーにマネジメントの自信のなさを告白

高橋:なんでそうしていたかと言うと、自分がそうやっていたからです。起業する時って、自分の人生の実現したいことがあって、そこから逆算方式で仕事を考えるから、「当然逆算でしょ」みたいに考えていたんです。

でも自分でやっていて、そのマネジメントでいいのか、はっきり言って自信がないんですよ。だけど、それは「言ったら終わりだ」みたいな感じで。

実は、さっきの「メーリングリストで聞いてみましょうか」と言われる数日前に、みんなを集めて、「今まで言わなかったんだけど、ちょっと僕は自信がないんです」とみんなの前で言ったんですね。

それで「正直、朝起きるのが怖い」と話したら、1年近くやって売上がほぼ0に近かった若手のメンバーが、「高橋さんのために、私たちは何ができるんですか」ということを言ったんです。

そこで気の利いたかっこいいことを言えればよかったんだけど、「明日起きられるかわからないから、電話してほしい」と言ったら、次の日の朝7時に、みんなからぶわーって電話がかかってきて。今までずーっと起きられなくって、家中に目覚まし時計を置いてもぜんぜん起きられなかったのが、電話が来たら起きられるようになったんです。

それで、「あぁ、できないって言っていいんだ」みたいに思って、それでいろんなことをひっくり返してみようと思ったんです。

武井:めちゃくちゃいい話ですね。すごい。

教科書的なフィードバックを始めて現れた変化

高橋:お弁当とか、こっちの若手の子が小食で、食べるペースが遅いと、お客さんが早く食べる時とかはすごく大変です。僕が机の下で速く食べるようコンコンってやって。はっきり言ってそんなの押しつけても意味ないじゃないですか。まったくもって、そういうツボがわからなかったんですよね。

坂東:そこまでやっても、みなさん意見を自責でくれたり、電話してくれたりしたしたから、関係性はできていたんですかね。

高橋:たぶん、みんなの人柄に救われていたところがあると思うんですけど。実は、その後の話もあって、それからマネジメントをちょっと勉強し始めたんです。

坂東:あー、なるほど。

高橋:よく「叱ると怒るは違う」と言うじゃないですか。あれを読んで、「そうか、怒るってだめなんだ」と思って。「人を否定してはいけない。コトを注意せよ」と書いてあるから、「今朝君が遅れたことに対して、僕はちょっとショックだった」みたいな、教科書的なフィードバックとかを覚え始めて。

そういうのを言うようになったら、逆に雰囲気がおかしくなってしまったんですね。

坂東:あら。そうなんですね。

高橋:でも、それまでは、何の教科書も見ていなかったから、本能的にやっていたんです。僕は本来すごい穏やかな人間なので、こんな感じでしゃべるんですけど、当時は営業の全体責任者で、しょっちゅう気が立って、机をけっこう叩いたりもしていました。

坂東:(笑)。

武井:マジで!? 

高橋:机を叩いたりとか叫んだりしていたんですけど。

坂東:(笑)。

高橋:その時のほうが、なんだか不思議と……。

坂東:一体感ではないけど。

高橋:ちょっとベンチャー特有のものがあるかもしれないですけど。

坂東:そうかもしれないですね。

高橋:あー、こういうのはいけない。それっぽいマネジメントは一番危険なんだなと思った時はありました。

坂東:へー。学び始めたら逆に人が離れていったのはおもしろいです。

高橋:手放す概念は、それからまたしばらく経って、天外塾で学んだんですけど、やっぱりコントロール欲求みたいなやつが強くなるとだめなんでしょうね。

坂東:そっか。学ぶこともコントロールの仕方をもっとうまくしようということですもんね。

高橋:たぶんその前の、動物的にやっていた時はコントロールうんぬんとかではなくて、本当に本能的にやっていたんだと思います。

坂東氏の「手放す経営」のきっかけ

坂東:私自身もゴリゴリの営業会社にいたので、自分で独立してからも「売上伸ばすぞー!」と思って、高橋さんと同じようなマネジメントをやっていました。日報に「今日何のために生きるのか」と書かせていました。

武井:(笑)。

坂東:みんなどんどん書かなくなってくるんですよ。同じことを書いたりとか。「いや、ちょっと書いてよ」みたいな。「いやぁ……」みたいに言われて、相手が書かないことにすごくイライラするしね。

私も、散々やって、うまくいかなくて、行き詰まってきて。社員もやる気がないし。私も会社に行くのが嫌になってしまって。それで、武井さんとの出会いもあったんですけど。

社員研修や教育の仕組み作りなどをやっていたので、自分の会社の社員がうまく育たないのが恥ずかしいし、誰にも言えないから、行き詰まっていたんですね。

それで、何が正しいか、何が間違っているかもわからないからいったんリセットしようということを、私は2017年にやったんですよね。それが手放す経営のきっかけになったんです。

「管理も、権限も全部手放すし、何でも自分の好きな仕事を選べるようにしていいよ。みんなで話し合って決めていこう」みたいな。どうだ、これでみんなやる気が出るんじゃないかと思ったら、半分ぐらい社員が辞めてしまった。

「手放す」とか言いながら、手放す型のマネジメントのやり方にこだわっていたと思いますね。結局、私の場合は、私の人間性に問題があったと思うんですけど。

あり方は変わらずに、やり方だけいい感じでやろうとしていたのがバレていたなぁと、今、振り返ると思いますね。でも、自分のあり方ってなかなかわからないんでね。苦労しました。

ビハインドの挽回策ではなく、営業会議で聞くべきこと

武井:ここからどんなチーム作りとか、数字の管理とか扱い方とか、コミュニケーションとかを構築していったんですか。ある種高橋さんは、それをフレームワーク化できたわけですよね。

高橋:若干営業の中身に入ってしまうと、目標達成率ってあるじゃないですか。当時のだめだった時の自分もそうですけど、世の中のほとんどの営業組織って、目標があって、目標の達成率が今何パーセントかを報告するのがよくあるタイプですよね。

そうすると、だいたい数字が足りない。「営業第一課、目標いくらに対して今何パーセントです。このぐらいビハインドしてます。これを挽回するために○○をやります」。「営業二課、目標いくらに対して現状いくらです。達成率何パーセントです。ちょっと足りてないので、これをやります」という感じの営業会議になる。

「ちょっと足りていないので、これをやります」が甘いと、ツッコミが入って「本当にそれでできるのか」みたいな感じで言われる。だから、一生懸命言い訳を考えて臨む会議には、すごくなりやすいわけですね。

坂東:なるほど。確かに。

高橋:だけど、達成率の指標で見ると、ぶっちゃけそこらをがんばっても、もう手遅れなことが多い。

坂東:うーん。よくありますね。

高橋:前の会社にいた当時、僕が「あ、こうやったらいいんだ」と感触をつかんだきっかけは、達成率って上流下流で言うと下流寄りのこと。要は、お客さまから発注書をもらうとか、ある程度活動が終盤に差しかかった時の話です。

この話を今からするのは遅いから、もっともっと上流に移して、いわゆる案件を作るというか、その案件を作るペースに焦点を当てるようにしたんですよね。

そうすると目標達成率からすると、だいぶ手前のことを話しているんですよ。今までは、「今、目標受注額いくらに対して○○パーセントです」という会話をしていたのが、「今週はこのぐらい案件が作れました」という会話をするようになったんですね。

そうすると、ちょっとビハインドしている中でもできることが多いから、いろんな助けとかヘルプの選択肢が多くなって、自然と建設的な話になるというか。「だったら、この人を同行したら」とか「こういうのがあったよね」という話をして、まだ間に合うんですよ。

その段階でちゃんと手を打てていれば、数字も自然と良くなる。達成率とは、あくまでも活動の結果であって、上流段階の案件作成ペースをどうするかに気を配るようにすると、会話が健康的になったんですよね。

坂東:ほうほう。

高橋:あとは、そのペースをがんばっていいペースに保つところさえできていれば、期末がわりと心安らかに達成できている状態に近づく。

坂東:なるほど。

高橋:そうしたことで、ちょっと潮目が変わったというのが、まず1つありましたね。

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