育休中の夫婦は「完全シフト制」

今野:今「分担」っていうキーワードが出てきたので、(先ほど質問にもあった)分担の話をしちゃおうと思います。

私は1人でやってる身なのでこの話はできないんですけど。家の中でのルールを作ったり、ディスカッションされてたりしそうだなって思ったんだけれども。そのへん教えてほしいです。

前本:私は、育休中は「完全シフト制」でやってました。何時から何時はどっちが見てみたいな。

最初はそれにしてなかったので、2人一緒に同じタイミングに起きちゃって、2人一緒に対応して、2人で寝てみたいなのを繰り返していて、完璧に疲弊してしまった。完全シフト制に切り替えて、うまくいったなと思ってます。

家庭内ルールを決めるのは、わりと仕事っぽくアジェンダを切って、「いつ話そう? それまでに考えとくから」みたいな感じでバチッとやっていました。それぐらい意思決定しないと、私はちょっと話しづらかったですね。

家庭内ルールを決めるところの優先度って、そこまで上がりづらいなって思ってたりするので、「いつに決める」って決めとかないといけないなと。話したいことが出たら、そんな感じでやってますね。

今野:なるほどです。小倉さんはちゃんと運用してますね。

小倉:我々、出産直後はシフト制だったんですけど、最近は「子どもがかわいい」みたいな気持ちがすごく強くなってきて。もともとかわいいとは思ってたんですけど、しゃべったり、コミュニケーションが取れるようになってから、「子どもと一緒にいたい」みたいな時間が増えてきて。

なので「贅沢だね」って言いながらツーオペしてる感じです(笑)。できるだけ関わろうというかたちになってきてます。もともとは生きるために時間をずらしてやってたものが、最近はゆとりができてきたので。

今野:「シフト制」ってさらって出てくるのが、ちょっとおもしろいです(笑)。

小倉:シフト制、おもしろいですね、確かに(笑)。

今野:けっこう他のご家庭とか見てると、やっぱり起きた時に一緒に起きちゃって、一緒に疲弊しちゃう、っていう話を聞いたりするから。やっぱシフト制がいいですね(笑)。

前本:シフト制にしましょう(笑)。

今野:ちゃんと割り切ってやるのはすばらしいですね。

前本:もう寝る部屋もガッと離して、どっちかが子どもと寝るみたいにしてました。

育休を通してわかった、ポジティブな「想像と違ったこと」

今野:そうなんだ。あとよくあるのが、「夫婦のどちらかがモヤモヤしてて、話してもわかってもらえないんじゃないか」って想像で思い塞いでいる状態っていうのあると思うんですが、お二方とも議論してるよね。

小倉:そうですね、私も必ず合宿してました。前本さんと一緒で、アジェンダ決めて話し合って、どういう運用にするか、みたいな。子どもの成長とともに、フェーズによって運用方法も変わるわけじゃないですか(笑)。

今野:変わる!

小倉:その体制を調整してますね。

今野:なるほど。一方で、この次のスライドなんですけど、やってて想像と違ったことってありました?

小倉:私は「夫が子ども好きだった」ことが一番意外だったかも。男性ってそんなでもないイメージを思ってたんですけど、すごく子ども好きで、すごく参画してくれて、すごくフィードバックを言ってくるな、みたいな(笑)。助かるなと思ってます。

固定観念ベースでは、「私が女だからぜんぶやんなきゃいけないのかな? やだな」と思い込んでいたので、すごくポジティブに「想像と違ったこと」だったなと思います。

今野:やっぱり子どもが生まれてみなきゃわかんないもんなんですかね?

小倉:わかんなかったです。

字面で見るのと体験するのとでは、「大変さ」の理解が違う

今野:前本さんはどうだと思ってました? ご自身のこと。

前本:私も子どもは好きなほうかなと思っていたんです。メンバーの声とかも聞いてて、シンプルに子育てが大変なのはわかってたんですけど、想像してた以上に大変だなって、最初の1ヶ月思いました。育児の大変さを本当の意味で知るには、体験するしかないなってちょっと思いましたね。

「3時間ごとに起きちゃうよ」って、字面で見るのと体験するのとでは、「大変さ」の理解やっぱぜんぜん違うなと思ってて。

今野:わかる、わかる。3時間ごとだったら、「その隙間に仕事したらいいじゃん」って思ってた(笑)。

小倉:確かに思ってました(笑)。

今野:思うよね。ミルクあげて、ゲップさせて、寝させるってなったら、「もう1時間しかないぞ」みたいな。

前本:本当にそう(笑)。

小倉:1つのタスクにけっこう時間がかかるんだってことが、ようやくわかった。一気飲みしない時は。

今野:合理的に考えようとすればするほど、どつぼにはまるといいますか。

小倉:確かに。

プライベートと仕事の切り替えはどうしてる?

今野:ちょっと時間が押してきたので、質問を読み上げてしまいますね、「プライベートと仕事の切り替えはどんなふうにしていますか?」。

9歳と5歳の娘さんがいらっしゃるそうなんですが、「この切り替えがいまだに難しいです。やりたいタスクがある時でも、子どもの世話のためにどうしても手を止めないといけなかったり、早く寝ないとか焦ったり、イライラしてしまったりとかってしないですか? 優先順位が自分に偏ってしてしまっていないかとかの葛藤とか、心の持っていき方について、なんか気をつけてることとかがあれば教えてください」。

どう? このバランス。

前本:私はまだ娘がちっちゃいので、たぶんお二人のほうが。

小倉:珠優さんはどうしてるんですか? 聞きたい。

今野:珠優さんはね、これ本当に未だに課題です。今質問くださったの、9歳と5歳の方じゃないですか。子育て歴9年でもこう思うんだっていうのが、けっこう学びなんですよ。

めちゃくちゃこれ共感しかなくて。もう自分の場合は「スマホを隠す」ですね(笑)。もう物理で遮断しないと。でも、物理で遮断しても考えちゃう。もうこれは課題ですね。何かありますか? こうしたらよかったよとか。

小倉:みなさんからもぜひ聞きたいですね。優先順位が自分に偏ってしまっていないか。

今野:でも、自分の「チートタイム」というか、甘やかす時間は作るようにしています。私は親1子1なので、自分が体調を崩したらしわ寄せもダイレクトにいくんです。だから、7時間、8時間寝る。友達を誘って1日外に出る。

食べたいものが思い浮かばないとか、やりたいことが思い浮かばないって、たぶん危険信号なので。そういうちっちゃいちっちゃいサインに気づいて、自分を甘やかすのは、かなり気をつけてるかな。すごく運良く、まだ子どもが生まれてから体調崩してないんですよ。

小倉:すごい。

今野:でも、今度は子どもと遊んでる時、仕事のことがちらついちゃうんですよね。

「自分のご機嫌を保つための時間」の取り方

今野:今コメントでも来ましたね、「仕事好きなので、先に強制的にホットヨガの予約を入れてます」。

小倉:時間を確保しにいく。

今野:そうそう。

なんかこう物理でそれがあると、余計守らざるを得ないといいますか。今の話、次の質問にちょっとつながりそうかなと思ったんですけど。「自分のご機嫌を保つための時間ってどのように取ってますか?」っていうところで。どういう確保の仕方をされてたんですか? 前本さんはどうしてます?

前本:ここもシフト制っぽい考え方になってますね。ここの4時間まるっと空けてもらう代わりに、どっか4時間まるっと見るみたいな。わりとそこはお互い同じぐらいの時間を確保できるように、なんとなく意識しながらやっています。「サウナ行きたいな」みたいな時に時間をもらうとか、そんな感じになってますね。

小倉:あと、ご夫婦の時間ってどうされてるんですか? パートナーとの時間。

前本:そうですよね。いや、ここもシフト制の話になりますけど(笑)。やっぱり子どもが寝てからしか2人きりの時間がないなと思っているので、夜ご飯を食べる時間が、わりと2人で話す時間になってたりしますよね。

今野:出かけたりとかは?

前本:2人で出かけたりとか、まだそんなにやってないんですけど。妻のご両親が近いのでお願いしてみようとか、そのトライが始まったぐらいで、これからだなって感じですね。

今野:最初のほうで休日の過ごし方のことをお話ししたんですけど、私は日曜日に、4時間だけシッターさんを呼んでるんですよ。これは8時間でも2時間でもなく、4時間がちょうど良い。ワンチャン映画にも行けるし、これを自分のための時間にしてます。

ただ、仕事で葛藤があって、仕事の葛藤をクリアにしにいく4時間になってることが、今はすごく多いですね。そこはもうちょっとメンテが必要なんですけど、日曜の4時間は好きなことをしていい時間にしてます。マイルールです。

出産と仕事が、むしろ「トレードオン」だったこと

今野:小倉さんどう? 自分の時間はいつ?

小倉:自分の時間。

今野:夜ですか? お酒ですか?

小倉:お酒ですね。でも、晩酌は確かに自分の時間かもしれない。あと、本読んだりも寝る前にしてるんですけど。寝かしつけして、仕事の確認して、本読んで......が一番自分の時間かなって感じですね。

今野:私の場合、月に1回、地元の秋田県に帰ってます。やっぱり物理で移動する旅行が、私にとってリフレッシュになってたのもあると思います。

今でも月に1回、ぜったい飛行機に乗ってますね。メンテナンスの1つの秘訣にはなってそうだなと、ちょっと思い出しました。

次のスライドにいっちゃっていいですか。たぶん最後の質問な気がする。「(出産と仕事が)むしろトレードオンだったこと」。

小倉:私、話していいですか?

今野:どうぞ。

小倉:先ほどもお話しいただいたどおり、出産とスタートアップになるところが一緒だったんです。子どもの成長と一緒に、会社も成長させなきゃいけない。

当然なんですけど、子どもの成長率がすごすぎるんです。なので「やばい。事業も伸ばさなきゃ」と、自分も成長しなきゃみたいな気分になったのは、めちゃくちゃ良かったこととでした。

あと起業したからこそ、珠優さんはじめ周りの起業家の先輩方だったり、ママ・パパ経営者の方々からもお話を聞きながら育児できたのがすごくよかった。仕事と絡めちゃう、あえてミックスさせちゃうような、めちゃくちゃいい時間を使えてるなと思っております。

(育児と仕事を)切り離そうとしても、1日24時間しかないからどうにもできないよねって諦めてます。

育休で自分がいなくなることで、逆にチームが強くなった

今野:いや、間違いないですね。私も子どもがいなかった時は、本当に4時まで仕事してたんですよ。ダラダラするわけでもなく、六本木のTSUTAYAに4時までいたんです。

朝4時になって、家が恵比寿にあって歩いて帰ってきて。本当に仕事ばっかりだったから、月並みな言葉ですけども「メリハリができた」んです。健康になった(笑)。

小倉:確かに、健康になりますよね。

今野:健康になった。ご飯も3食食べて、本当にありがたいことかな。ちょっと課題もまだまだあるんだけど。前本さんどうです?

前本:トレードオンですね。お二人がおっしゃってるところは完全に同意だなっていうところと。先ほど話した、チームが強くなったところが良かったことかなと思っていますね。

私がいなくなることによって、メンバーが意思決定をしなきゃいけない環境を強制的に作れた。これはいなくならないとできなかったことだと思ったのでよかったです。2ヶ月という、期間的な良さもあったと思っています。そこでチームの強さを作れました。

個人としても、戻ってきたタイミングで仕事がリセットされているので、本当にやるべきことができる環境が作ることができた。仕事上も良い意味があったって振り返ってますね。

今野:とはいえ、本当に2ヶ月休むってすごいですね、なかなかの覚悟が必要ですね。たぶんふつうはできないと思います。「休む」って公言しつつも、ミーティング出ちゃったりするじゃないですか。それをやりきっているのは本当にすごいなって、今日話聞いて思いましたね。

前本:私もそう思ってました。できないかと思っていたんですけれど、意外となんとかなる、というのが結論です。みんな優秀ですし、信じて背中を任せられました。

今野:それがリーダーとしてかっこいいなって思った。

前本:ここは一定の踏ん切りが必要ですが、振り返ってみると、大丈夫でした。

今野:そっか。またそういうことあったら、前本さんに話聞きにいこう(笑)。

経営者だからこそ「家庭と仕事が両立できる環境」を全力で作る

今野:時間がそろそろですので、最後に参加者の方へ一言ずつもらってもいいですか? 

前本:男性もいらっしゃると思うので、男性向けにフォーカスで話します。参加者の方の中には、育休を取るか悩んでいる方もいるかもしれません。個人的には、そういう方は、ぜひ取っていただくのもいいと思います。実体験で本当にそう思いました。

キャリア的などうこうも、おそらくもう今の世の中、そんなにない会社のほうが多いかと思います。直近のスタートアップは、育休をちゃんと取りながらキャリアも伸ばしていく方向に向かわせてくれる会社さんもたくさんできてきていると思っているので。

経営者の立場としては、そういう環境をしっかりと作りにいくことを全力でやっていくべきだなと、あらためて思っています。みなさまのご家庭と仕事が両立できる環境を作っていきたいなと思っています。そういう飛び込み方もあるんじゃないかなというところでした。

今野:ありがとうございます。小倉さんどうぞ。

小倉:あらためて今日のご参加者の方々でも、パパママさんいらっしゃると思うんですけど。本当に「子どもを持つ」と選択すること自体、人によって(かなり覚悟を持って)意思決定するところだと思います。

子どもを持つって覚悟を決めること自体、すごく尊いことです。実際お子さんを育てられることもすごい尊いことだと、私自身が不妊治療をしたこともあって、思うので。

そういったところをキャリアと共存していけるような社会にしていきたいと思っています。うちの初期からいるチームメンバーもみんなお子さんがいて、子育ての情報交換もしつつやっております。

本当に尊いことをトレードオンでやっていこうって、あらためて今日の時間で自分も整理できました。ありがとうございます。みなさんもやっていきましょう、健康第一ですね。

今野:まじそれですね。

小倉:ありがとうございます。

スタートアップは「人生に仕事を捧げなきゃいけない」ではない

今野:私も、スタートアップっていうと「人生に仕事を捧げなきゃいけない人たちの集まり」みたいに思われてたり、スタートアップに入社するとご家庭の方から不安に思われたりとか。そういうイメージを払拭したい、むしろトレードオンで両立できるよねっていう部分をみんなと議論したくて、今回の機会を作らせていただきました。

私も子育て自体2年目だし、参加者の方から質問をいただいてすごく考えさせられた部分もあって、未熟だなって思った部分もたくさんあります。

ここにいるメンバーは、子育て兼スタートアップということでTwitterやFacebookを開放してるので、延長的にディスカッションがみなさんとできればいいなと思ってます。なので気軽にコメントとか、メッセとかください。

(コメント欄を見て)「『トレードオン』という言葉にパワーもらいました」、うれしい、よかったです。ということで、みなさんの貴重なお昼時間をいただき、ありがとうございました。また継続的にディスカッションしていきましょう。

一同:ありがとうございました。