2024.12.24
ビジネスが急速に変化する現代は「OODAサイクル」と親和性が高い 流通卸売業界を取り巻く5つの課題と打開策
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久保彩氏(以下、久保):今日は自分の新書を出版してみたいとか、「自分を表現する」という言葉に惹かれて、何かをしたいと考える方々が来てくださっているようなんですね。
編集の世界でいろんな著者の発掘をされてきた柳瀬さんから見て、自分の本を作るとはどういうことなのか、自分を表現するとはどういうことなのか。この辺についてお聞きしてもいいでしょうか?
柳瀬博一氏(以下、柳瀬):わかりました。「だれでもマスメディア時代」になったので、誰もが作品を発表できるようになりましたよね。例えばnoteなどを使えば、テキストも映像も写真も音楽も絵も発信できます。TikTokなどで自分のダンスを発表することも簡単にできます。
ただ、コンテンツ発信をする時に、誰もが一番ハードル低く使える道具は何かと言うと、僕はテキストだと思うんです。音楽は楽曲ができないと無理ですし、映像も写真も絵もそれなりの努力と才能が必要になります。その意味で言うと、テキスト・言葉は一番民主的なツールなんですよね。
また、だれでもマスメディア時代になればなるほど、言葉の力がすごく重要になるんです。例えばTikTokにしろインスタにしろ、みなさん映像や画像を見て「いいねボタン」を押していないんですよ。あれはコピーライティング、見出しに押しているんですね。
久保:確かに。
柳瀬:僕たちはゼロから、映像や画像から情報を自分なりに解釈することがそんなに得意じゃないんです。それには訓練が必要です。最初にテキストという補助線があって「あっ、こうやって読めばいいのね」「見ればいいのね」とわかる。
映像や写真がいっぱい出てきて「映像や写真の時代だ」と言われているけど、僕は半分間違っていると思います。あるいは映像や写真が出るほどコピーライティング、短いテキストの時代になっている。
柳瀬:意外なことに、書籍は一番短いコピーライティングが必要なんですよ。
久保:短い?
柳瀬:はい。一番長くて20字ぐらいですね。タイトルです。本はタイトルというコピーライティングですべてを表さないと買ってもらえません。
久保:確かに、Webになってからは特に、書影しか出ませんからね。
柳瀬:そうなんです。例えば養老孟司さんの『バカの壁』だったり、赤瀬川原平さんの『老人力』だったり、売れに売れた本のタイトルは、タイトル1つで「おっ」と思うわけですよ。それがダブルミリオンとか、トリプルミリオンになるわけです。
テキストというのは、絵を描いたり、写真を撮ったり、映像を作ったり、ダンスをしたりとは違って、誰しもが表現できる最も民主的なツールなんですよね。「本を書く」と思うとすごくハードルが高くなりますけど。
久保:そうですね。文章を書くってけっこうハードルが高いですね。5,000字とか6,000字になると。
柳瀬:それは、本を書くことを目的にしちゃうからなんですよ。そうすると重荷になって、絶対に書けない。
久保:今日はけっこう「本を作りたい」みたいな人も来ていますけど、それを目的にしないと?
柳瀬:本を書くことを目的にしないほうが僕はいいと思います。本を書くことをプロフェッショナルにしようと思っている人は別ですけど、そうでなければ、どちらかというと結果でいいと思っているんです。それより大切なのは自分が今一番みんなに伝えたいこと。
例えば昨日の帰り道にちょっと思いついたことでもいいし、自分が仕事で発見したことでもいいし、何でもいいんです。自分が伝えたいことが1行あったとしたら、それがタイトルであり、それをどうやったらおもしろく、具体的にわかりやすく人に伝えることができるのかというのを積み重ねていった結果が本なんですよね。
柳瀬:僕が以前作った本の事例を紹介します。
久保:『親父の納棺』ですか?
柳瀬:もっと昔の本です。僕が編集者をやった本です。クロネコヤマトの宅急便を発明されたヤマト運輸の中興の祖、小倉昌男さんの『小倉昌男 経営学』という本を1999年に日経BP社から出版しました。お陰さまで、超のつくロングセラーになって、今40刷ぐらいいっていると思います。今でも単行本で売れ続けています。
『小倉昌男 経営学』はぜひ読んでいただきたいところがありまして、あれは小倉さんが全部ご自身で書かれているんです。日本の経営者の本の99パーセントは誰かに聞き書きで書いてもらっています。しかし、小倉さんは違った。あの本も、それから日経新聞の『私の履歴書』もご自身で全部書かれています。私が担当編集者なので一次情報でございます。
久保:さすが(笑)。
柳瀬:その小倉さんが「本を書いたことがないけどどうしようか」となった時、僕は「まず半年かけて目次を作りましょうよ」と言ったんですね。先に目次を作ったんです。すなわち自分が言いたいことのロジック、骨格を先に作るところからスタートしたんですね。
例えば小説やエッセイは、書いているうちに物語が流れていくケースがあります。でも大半のコンテンツはノンフィクションですから、書いた結果どこに行くかわからないではなく、「自分はこれが言いたい」という仮説としての結論があって、その仮説をケーススタディとロジックで証明し、「はい、やっぱりこうですよね」と作る。基本的にビジネス書や大半の人が書こうとしているものはそういうものなんですよ。
久保:なるほど、確かにそうなっていますね。
柳瀬:そうしたら、どんなロジックで構築するかというロジックと、ストーリー全体の流れをきっちり把握する必要がある。だから、まず目次から作ればいいんですよ。
久保:なるほど。
柳瀬:この目次をどうやって作るかといった時、できれば相方を用意するのが一番です。なぜ書籍に編集者がいるのかというと、編集者がその相方なんです。聞き役です。例えば長い文章を書こうとする時にずっとパソコンの前に座って書こうと思って、一切筆が進まないことはプロでもあるんですよ。
こういう時に何をすればいいか。歩くと脳みそが活性化するのでお散歩がいいんですけど、お散歩のあとに、わりと気の置けないこの手の話ができる人に今自分が考えていることをどんどんしゃべるんですね。
そうすると相手が忌憚のない人であれば、「それ、よくわかんない」「それ何?」と、「なぜ、なぜ、なぜ」をぶつけてくれるはずなんです。そういうかたちでやっていくとロジックが構築できます。
久保:他者とのやり取りの中でなぜそれを言いたいのかや、それはどういう経験から生まれたのかという根拠が出てくるんですかね。
柳瀬:それが1人でできるようになると自問自答ができる。読みやすいビジネス書やノンフィクションは、「なぜ、なぜ、なぜ」「なぜこうだ、なぜこうだ、なぜこうだ」という自問自答の繰り返しなんですよ。
例えば、池上彰さん。僕が担当編集者をやって、今は東工大で同じ教員でいらっしゃいますが、池上さんの本を見てください。なぜと答えの繰り返しなんですよ。池上彰さんはテレビ番組でも「いい質問ですね」と言いますね。あれは、まず質問を立てているんです。
なぜから入ってどう答えるか。これを繰り返して、全体の構成をすれば、だいたいのノンフィクション系の型ができるわけですよ。
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