2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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司会者:お待たせいたしました。お時間になりましたので始めさせていただきます。本日は「パーセプション 市場をつくる新発想」というテーマで、コーディネートに本田さま、ゲストに吉野家の田中さま、ユーグレナの工藤さまにご登壇いただきます。それではみなさん、よろしくお願いします。
本田哲也氏(以下、本田):よろしくお願いします。
田中安人氏(以下、田中):お願いします。
工藤萌氏(以下、工藤):お願いいたします。
司会者:本日は本田さんの新しい著書『パーセプション 市場をつくる新発想』の出版に合わせたイベントとなっております。最初45分は本田さんのご講演、後半は田中さん、工藤さんとのディスカッションというかたちで進めさせていただきます。本田さん、田中さん、工藤さんから簡単な自己紹介をお願いいたします。
本田:はい、私から。みなさん今日はよろしくお願いします。この後お話しさせていただきますので、最後までお付き合いいただければと思います。
田中:田中です。吉野家のCMOをやっておりまして、個人でマーケティング会社のCEOもやっています。そこで組織コンサルをやったりするので、今日はそのへんの話もできたらなと思ってます。みなさまにわかりやすく説明ができるようにがんばります。以上です。
工藤:工藤と申します。よろしくお願いします。私は今ユーグレナで執行役員をやっております。3年ぐらい前に転職したんですが、それまでは資生堂でマーケティングを長らく担当していました。本田さんの本にもたくさん出てくる音部大輔さんが当時のCMOで、元上司にあたります。その刺激もあった話なども絡めながらお話ができればなと思っております。よろしくお願いします。
司会者:よろしくお願いいたします。それではさっそく、本田さんのご講演から始めさせていただきます。田中さん、工藤さん、のちほどよろしくお願いいたします。
本田:ではあらためて、本田です。よろしくお願いします。一応45分を予定しております。若干前後するかもしれませんがお付き合いください。パーセプションの話をします。
もしかしたら本をお読みになっている方や、お仕事をご一緒した方も今日いらっしゃると思うんですけども、私はPRストラテジストです。もう25年くらい、PRの仕事をしてきました。ふだんは戦略PRとか、昨年出しましたナラティブのお話もしますが、今日はパーセプションということでお話しできればと思っております。
ざっくりしたアジェンダです。パーセプションとは何か。それからパーセプションを形成する5つの要素。今日は事例もご紹介するんですけど、「つくる」「かえる」「まもる」という3つの切り口でお話できればと思います。最後に、なぜ今パーセプションが大事なのかということに触れられればと思ってます。
まず、パーセプションとは何か。今日ご参加いただいている方は、おそらく「認知」と「認識」の違いをおわかりになってると思いますが、「認知」とは、みんなが知っているかどうかです。「認識」というのは、どう見られているか、捉えられているかということです。認知が必要ないと言ってるわけではなくて、依然として重要です。
ただ、「認知」が高いのに売れなくなったり、低減したり、それから世代交代ですね。新しいお客さまが出てくることもあります。その中でどういう「認識」を作っていくかということが、前よりも大事になってるんじゃないかなと思います。
辞書を引けば、知覚、理解、認識。「パーセプション」は英語で「物事の見え方や捉え方」ということです。パーセプションは人によって異なりますし、また時代や社会の動きによっても異なってくる。これを客観的に把握することが大事です。
本田:もう少し解像度を上げていきましょう。パーセプションは結果論でもあるんですけど、そのメカニズムとして、どういった要因でできあがるのか。今までの仕事を通じたいろいろな経験から整理しています。これは私のオリジナルなので、確実にこうなのかというころはありますけども、簡単に触れたいと思います。
1つ目は事象、ファクトです。「パーセプション」って「イメージ」と近いものがあるんですが、イメージはどちらかというと「なんとなくかっこいい」とか、根拠なしに(語られることが多い)。一方の認識は、なんらかのファクトを伴います。ファクトに根ざしている(という特徴)があると思います。
それからよく「リテラシー」といいますよね。「読み書き能力」から語源が来ていますけども、受け手である生活者。例えば国とかカルチャーとか、どんな経験や価値観を持っているかによって(生活者のリテラシーは)変わってきますので、そこも着眼点の1つになります。
それから「グループ」。これは大事です。簡単に言うと「何の仲間ですか」ということですね。Aというグループに入ったらAの仲間とみられるし、Bというグループに入ったらBという仲間に見られる。
私は書籍の中で、「転校生」に例えた話をしています。転校生がどういうやつかと見られる時に、本人はどうであれ、なんとなく優等生の人たちとつるみはじめたら、「優等生なのかな」と見られたりする。不良っぽい連中とつるみ始めると、「あいつもそういうやつなのかな」と見られる。だから誰と一緒にいるのか、誰と同じ種類だと見られるかということが重要です。
そして「タイミング」。大きな社会の潮流や時流ですね。例えば20年前の2000年と2022年では、(例えばジェンダーなど)ある事象に対する社会的なパーセプションは大きく違います。これはリスクでもあり、オポチュニティ(機会)でもあるわけですよね。
そして最後の「コントラスト」。これは比較的わかりやすい話で、比較対象が出てくると違って見えてくる。例えば東京タワーは高いと思ってるんだけど、スカイツリーができた時、比較すると東京タワーのほうが低く認識する。何と比較するかが重要ですね。比較する対象によっては、四角いものが丸っぽく見えてきたり、丸っぽいものが四角く見えてくる。比較対象によってパーセプションが決定されていくこともあります。
これらの5つのどれかが作用するというよりかは、融合して効いてくるものだと思っていただいたほうがいいかもしれません。
本田:まずは、この5つを頭に入れていただければと思います。今回の書籍では、事例の整理としてもわかりやすくするために、「つくる」「かえる」「まもる」「はかる」「いかす」という5段活用で説明しています。
パーセプションを「つくる」というのは、全く新しい認識を作っていく話。それからパーセプションを「かえる」というのは、いわゆるパーセプションチェンジといわれる、ある認識をAからBに変えること。
それから「まもる」というのは、読んで字のごとく、好ましい認識を維持していく。何から維持するかというのは、また後でお話しします。
あと「はかる」は計測です。「いかす」は、今日はパネルディスカッションで話したいんですけども、パーセプションという発想を持つことで、マーケティング以外にも応用範囲があると思ってます。広げて活かすというところです。
今日は時間の関係もあるので、全部をじっくり話せませんので、わかりやすい「つくる」「かえる」「まもる」の3つのポイントで、2つずつの事例でお話してまいりたいと思います。
本田:まず、パーセプションを「つくる」です。市場創造と関係が深いですよね。大げさにいうと、これまでなかった認識を世の中に作っていくこと。それが「市場を作る」という話です。
1つ目、工藤さんもご出身の資生堂に、「UNO」というブランドがございます。今は別の会社になってますけれども、当時は資生堂の1つのブランドです。「UNO」についてはあまり説明する必要がないくらい、まさに認知度がすごく高いブランドです。
これは「UNO」のBBクリームです。もしかしたら使っていらっしゃる方もいるかも知れません。肌の色を補正するというものということで、女性にはもうおなじみ。ただこれは、男性向けなんですよね。このBBクリームは、結果として大成功し続けているわけです。
いろんな要因ありますけども、パーセプション発想は非常に強かったと思います。当時のシチュエーションとしては、やっぱり男性は(BBクリームを)使わないですよね。男性美容も今はだいぶ進んできましたけれども、スキンケアはともあれ、メイクは女性がすることで、男性は恥ずかしくてできない。これ自体がある種の既存の「認識」なわけです。
新しいプロダクトの機能性がどうだとか、「UNO」というブランドに知名度があるとか、そういうこととは違う話です。バリアになっている認識がある。
解決の切り口、インサイトをどう持っていったかというと、「第一印象」というキーワードが出てきます。第一印象を良くしたい、自信を持ちたい。特に若い男性はピンと来ると思います。メーキャップがどうのこうのというよりも、この気持ちは強いですよね。
本田:したがって、どんなパーセプションを作り上げたのかを一言でいうと、「第一印象はつくれる」。これは男性が相手ですから、あるようでなかったパーセプションだと思います。
仕事以外の恋愛の分野でもそうですけど、第一印象は(勝手に)持たれて、それによって仕事がうまくいったり嫌われたり(していました)。それが「第一印象はつくれる」っていうのは、明らかにそれまでの日本男子の間には存在しないパーセプションでした。
詳しくは書籍にありますが、さっき申し上げたこの事象と、「リテラシー」が鍵になっています。資生堂さんが調査されてますけども、海外に目を向けると、この「第一印象はつくれる」というパーセプション、つまり肌の色とかを補正することで大事な会議とかプレゼンに臨むような認識はあったそうなんですよね。
日本に比べて、そこにリテラシーギャップがあるわけです。かつ、海外でそうであることは「ファクト」なわけですよね。そこに着目して、ターゲットにキャリアアップしたい人とか、就活生のインサイトと結びつけていったんですね。
すごく大きく展開されて、起業家向けセミナーをやられたり、就活セミナーをやられたり。今は当たり前になってきた風景ですけども、仕事やプライベートを充実させる手段として、つまり「第一印象はつくれる」というパーセプションを作り上げるためにやっていった。
本田:今日はPRだけの話をするつもりはありません。パーセプションを作る、変容させる手段としてPRは得意な部分でありますけれども、優れた広告であったり、他のアクティベーション、例えばお客さまに何かを体験していただくことなんかも入ってきます。これはマルチです。
「UNO」の事例の場合、テレビCMは今でも放映されてます。プレゼン前にパッと起きて「うわ、ヤバイ」という、非常にわかりやすいクリエイティブがあったと思います。そのテレビCMで流れたものも、結局「第一印象はつくれる」という認識を残すために機能しました。
もちろんプロダクトも売れたわけですけども、非常に大きな成果として、約9割の男性が「やってみたい」と認識が変わっています。パーセプションの創出が、ビヘイビア(行動)までつながっている事例だと思ってます。
まずはわかりやすいところから始めました。資生堂さんがBtoCの市場創造にどんなパーセプションを作ったかという話ですが、なにもパーセプションはBtoCだけの話ではないということで、スタートアップの事業そのものだったり、サービスかつBtoBという観点で、Sansanのお話もしようと思います。
本田:Sansanも、もう説明の必要はないと思います。現時点でのSansanさんの認知度どのぐらいかわかりませんが、ビジネスパーソンの間では相当知られているんじゃないですか? それには創業期から今に至るまでのSansanの動きが軸になってるわけです。名刺管理から始まって、その後「Eight」というサービスも出てきますけれども。
やはり名刺管理に対する必要性が伝わってないことが大きなハードルでした。さっきの男性美容の話とも一緒なんですけど、何がバリアになっているのかというと、「大きな社会認識」です。
「名刺は個人で管理するものであり、管理に手間をかけたくない」というビジネス界の認識。ここでいう認識に近いところは「名刺は個人で管理するもの」。ここまでが既存の社会認識のような気がします。
どういうふうに解決していくかというと、紙の名刺の管理だと既存の認識の延長になっちゃうので、「営業情報の顧客管理をするためのサービス」なんだという、ある種それまでなかったパーセプションを作り上げていくんです。
本田:より解像度高く言いますと、「名刺は会社の資産であり、人脈は共有できる」ということだと思います。ここには2つ重要なポイントがありますよね。「名刺は会社の資産である」ということ、もう1つが「人脈は共有できる」ということ。実はこの2つの認識はそれまであまりなかったわけです。
この場合、ポイントとしては「コントラスト」だと思っています。名刺を知らない人はいないわけです。それこそ、名刺の認知度は100パーセントですよね。ただ、ハンコとかと一緒で「古いビジネスツール」という認識がある。
そこに「企業の資産に生まれ変わる」というメッセージが放たれる。どちらかというと古いと認識されているものが、そのギャップをもってして生まれ変わる。このコントラストのテコがうまく効いている事例じゃないかと思っています。
本田:実際にやったこと。Sansanは長年にわたって「それ、早く言ってよ~」というCMを出しています。今もやっていますよね。個人的にも、これは本当にインサイトを突き、かつパーセプションをユーモラスにビジネスパーソンに植えつけた、非常にいいクリエイティブだと思っています。
このテレビCMは、実はSansanの社長の実話だとう裏話もあったりします。非常に印象的ですよね。ただ、CM1つで新しいパーセプションを作れることはないので、他にもいろいろコンセプト動画を作ったりしています。
タイミングと意味では、働き方改革という波があったり、昨今はDXの潮流というものがあったり、これらにブリッジしての広報活動(が行われています)。前から私はSansanの広報活動は本当すごいなあと思っていて、地に足がついた地道な活動が、パーセプションを作るために毎年毎年なされています。
それからこれは「ファクト」につながってきますけれども、よくBtoBの企業はマーケットシェアとか導入実績を発表されるわけですけども、Sansanはその先駆けだと思います。「これだけの企業で導入されている」、ないし導入実績だけではなくて「こういう成果を出している」ということを、積極的に広報で開示をしていったということです。
実にビジネスパーソンの半分以上の52.9パーセントが(名刺データの共有ができるという認識を持つようになった)。これは私も使っている「Eight」の貢献も非常に大きいと思います。
ツールとしては「名刺をスキャンしてデータ化する」ものなんですが、ここにも大きなパーセプションのクリエーションがあって、名刺は会社の資産だ、そして人脈は属人的なものかもしれないけども、実は共有できるんだという認識を確立させたと思っています。
本田:ここで「つくる」に関してミニまとめをします。アプローチはいろいろありますけれども、さっき申し上げたように「イメージ」ではないので、最初はファクトを小さくても積み上げていく。
資生堂でいえば海外がそうだというファクトであったり、Sansanさんは導入実績ということで、ステップ・バイ・ステップやっていってますね。そうすると、事象とのスパイラルが大きくなっていくわけです。
「リテラシー」は資生堂のところで触れました。その国やエリア、あるいは業界との、違うリテラシーを持ってるところの「ギャップ」が意外とヒントになることがある。
それから「コントラスト」ですね。こう思われていたものが、実は違うんじゃないかという、丸いものが四角く見えたり、四角いものが丸く見えたりというコントラストがニュースバリューにもなったりします。コントラストを活用するのが1つの考え方です。
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