2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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梅澤高明氏(以下、梅澤):では、角井さんお願いします。たぶん角井さんはコロナで逆境どころか、コロナを順風にして突っ走ってきた方だと思うんですが、その前に逆境があったとうかがいました。そのあたりを含めてお願いします。
角井亮一氏(以下、角井):当社のイー・ロジットはネット通販の物流をする会社になります。ここにいらっしゃる方々、みなさんご承知のとおり、緊急事態宣言出た時にみんなネットで(物を)買ったわけですね。
しかも1回目の緊急事態宣言の前は、世帯でいうとだいたい4割ぐらいの方がネットで買っていたんですが、緊急事態宣言が明けてもずっと5割ということで、購入世帯が増えていると。それはなんでかというと、70歳以上の方々がけっこう買い始めたからです。
自分の周りでも「ネット通販って便利だよね」というような、けっこう上の(世代の)方が増えた肌感があります。結果、当社は昨年度で売上が1.3倍になりました。実はこの3月26日にジャスダック上場させていただいて、それから今年の1月に5,000坪、それから6月に7,000坪、合計1万3,000坪の物流センターを出しています。
これは社内でも言っているんですけど、たまたまラッキーな話で。「いつコロナ以外のところで、うちが売上0になるようなことがあるかわからない」という話をしていて。「本当、たまたまラッキーなんです」ということを常々言っています。
それで「危機はないのか?」という話になってしまうと、これで終わっちゃうんですけど。当社は2000年創業ですので、当然、21年間やっている中で逆境はけっこうあります。
角井:その中でも今回は、本邦初公開。言おうかどうかちょっと迷ったんですが、これ、上場前だったらたぶん言っていなかった。上場しましたし、それからここにいらっしゃるグロービスの方々にとっては、本当に学べるリアルなケーススタディになるんじゃないかなと思います。
ケーススタディという格好いい話じゃないですが、おそらく、経営がステージアップしていく中で起こった逆境ですよね。これは自分自身が想定した逆境ではないですが、自分自身が「戦略を変える」という中で起こった逆境になります。
みなさんの逆で、逆境があったから戦略を変えたんじゃなくて、戦略転換したことによって逆境になったという話です。ずばり言うと、当時勤めていたナンバー2の取締役が消えました。
彼が消えたのはどういうことかというと、会社に来ない、捕まらないという状況になったんですよね。これはなんで起こったかというと、当社は通販物流やっているんですが、創業当時の通販物流の市場があまりにも小さくて、物流を委託する規模じゃなかったんですね。勤めている経理の方が出荷作業を手伝う、みたいな。
(当時は)それで十分賄える状況だったんですね。いろんなコンサルティングをやったりとか、それで食いつないでいたんですけど、そういう中でカタログ通販さんの発送代行をするメール便事業が始まりました。
角井:そのメール便ビジネスは、個人情報保護法やPマーク(プライバシーマーク)ができたりとか、「これはちょっとリスクだな」と思って止めました。他にも止めた理由はいくつかあるんですが、ちょっと時間がないのでかいつまんで。
その時に自分の肌感で、ネット通販が伸びてくる基調があって。スクラップアンドビルドでメール便をやめて、ネット通販物流に集中することで、業態転換で一点突破することにした。そうしたら、ナンバー2が消えたんですよね。
その前に何点かすごく反対して、けっこう屁理屈っぽい言い訳をしていたのでいろいろ調べていたら、どうも彼がメール便事業でお金を抜いていたことがわかったんです。それを問い正し、「明日から気持ちを引き締めてがんばります」というので別れたら蒸発したということで、本当にびっくりしたんですが。
彼が連れてきたメンバーがけっこういて、それごといなくなったので、会社を運営できなくなるということがありました。
梅澤:それはどうやって乗り越えたんですか?
角井:乗り越えたのは、基本的には一生懸命「中を解体する」みたいな感じ。引き継ぎもないし、お客さんのやり取りが全部わからなくなるので。その当時、当社の売上が5~6億円だったと思うんですが、業務もすぐにパッと替えられるようなものじゃなかったので、もう人海戦術で乗り越えました。
梅澤:ありがとうございます。加藤さん、お願いします。加藤さんもまたダイナミックなお話が聞けるのではないかと。
加藤史子氏(以下、加藤):弊社はWAmazingといって、コロナ前まで訪日外国人向けのスマホの旅行会社の事業をしていました。外国人旅行者が我々のプラットフォームを経由して、購入した宿泊や交通切符とか、それの総流通額の10パーセントや15パーセントを手数料収入としていただくという、いわゆるオンライントラベルエージェント業なんですね。
マーケティングとして無料のSIMカードを配っているので、MVNO事業、通信業の側面もあるんですが、メインの事業は旅行業です。なので、逆境はやはりインバウンド市場の蒸発。市場がなくなってしまったことですね。
2020年4月の訪日外国人旅行者数は、前年同月比の比較でマイナス99.9パーセント。日本国が外国人の数を数え始めたのが、前回の東京オリンピックの1964年だったんですが、1964年を下回る最低値ということで、市場が0になりました。
ベンチャーは人的な、あるいは資金的なリソースが限定される中で、短期に成長を目指さなくてはいけないので、基本的には「選択と集中」が求められます。リソースが分散するといけないので、インバウンド1本足打法だったんですね。なので2020年1月の売上と比べて、2020年4月の売上が98パーセントダウン。それがなんと今、1年4ヶ月間その状態が続いているという(笑)。
2パーセントが何かというと、在留外国人向けに一部売れる商品があります。。日本には一応、300万人の外国人の方が今も住んでいらっしゃいますので、そこが2パーセントぐらいなんですけれど。98パーセントダウンを1年半ほど続けさせていただいています。それが当社が直面している逆境です。
例えて言うならば高速道路。日本の高速じゃなくて、ドイツのアウトバーンみたいな高速道路を、月々まあまあのバーンレートという赤字額で、時速200キロくらいでぶっ放していたら、100メートル先に道路がなくなった、みたいな感じです。だから一気にポンピングブレーキ、みたいな感じですね(笑)。むち打ちにならないように気を付けながらも、やらなきゃいけない。
加藤:乗り越えるためにやったことは、超シンプルに3つ。1つは、こういう時ってキャッシュ・イズ・キング。とにかく現金が大事なので、徹底的なコストダウンをすること。新規のエクイティ含めた資金調達に走ること。確実に短期の売上が上がりそうな新規事業を立てるという、この3つでした。
2020年の2月からは数千円単位の徹底したコスト削減を開始しまして、契約を止められるものはすべて止めました。資金調達の本格開始も2月に始め、2020年の3月には、半年間の役員報酬の全額返上を決めました。
その間も資金調達をやっていましたが、学校が一斉休校になったり、ロックダウンがささやかれるような時ですから、当然難航しました。オフィスに100名近くのメンバーでいたんですが、オフィスの契約終了についても決断をしました。
5月から社員に、出向、休業を開始してもらいました。ただ、オフィスの全退去や役員報酬の全カットを決めるのと同時に、従業員に対して「直接雇用は一切リストラしない」ということを宣言しています。従業員はやはり不安になるので、オフィス全面退去などドラスティックなコスト削減をする時には、「雇用には手を付けない」と宣言するのが大事かと思います。
加藤:そして新規事業ですが、現金が大事な非常時に、新しく投資を必要とするプラットフォーム型の事業を始めてしまうと、そっちでもお金が必要になり、本末転倒です。非常時には、短期で確実に売上げが立つものが良い。
そのため「ここはシンプルに受託だな」ということで、ひたすら私は自治体や行政向けのコンサルティングの企画書を、土日返上で2月からずっと最初は1人で書いていました。
企画書を提出した公募(コンペ)の結果が4月に決まり始めて、「(長い期間打合せを重ねてこなくても)突然の公募応募にて仕事が取れるんだ」ということを会社全体で認識できました。そこで4月中旬には、行政・自治体から事業を受託する専門のチームを組織変更して作って、一気にやっていきましたね。おかげさまで、この新規事業は今も順調に成長しています。
一番プライベートでつらかったのが、3月2日から一斉休校になってしまいまして。24時間子どもと一緒に、3食ご飯を作りながら、コストダウンと資金調達と新規事業の立ち上げを全部やるのが、たぶん人生で一番忙しかった2020年かなと思います。
なかなかヘビーではありましたが、「スタートアップって行政が打ち出すコロナ救済策から漏れがちなんじゃないか?」という課題感もありまして。そこらへんを山野さんと、自民党さんや経産省さんとかにもアプローチして、国会議員さんや経産省さんにもアプローチしたりとか。
山野智久氏(以下、山野):「俺たちにも金をくれ!」とやりましたね。
加藤:そうそう。「スタートアップという変な企業体がいます」みたいな(笑)。
山野:「こっちを忘れるなー!」というね。
加藤:「スタートアップは中小企業であるものの、ちょっと変わったカタチの企業なので、基準が当てはまらない!」とか言いながらやっていました。変なコロナハイに突入して、妙なアドレナリンが出ていて元気でしたね。そんな感じです。
梅澤:壮絶な話を明るく語っていただいて、ありがとうございます(笑)。
梅澤:最初に加藤さんにちょっと聞きたいんですが、24時間おうちにいて、育児とハウスキーピングと事業の存続とリポジショニングを一気にやっていた時って、どうやって気分転換していました? 気分転換する暇もなかったですか?
加藤:そうですね。気分転換する暇もなくて、デロイト トーマツの斎藤(祐馬)社長が「加藤さん。この本読みなよ」とメッセージをくれたのが、この『不況に克つ12の知恵』という。すごく薄い本なんですが、松下幸之助の本なんですね。
出版されたのはけっこう古くて、2008年なのでリーマンショックの直後なのかな。これを枕元に置いて、寝る前に声に出して読むというアホみたいなことをやっていました(笑)。
梅澤:声に出して読む。なるほど。
加藤:「12の知恵」自体は、声に出して読んでも1分かからないんです。「1、腹をくくる。2、志を変えない。3、策は無限にある。4、今は大躍進の絶好のチャンス……」とか。あとでお気に入りの章をちょっと読む、みたいな。そうするとすごくよく眠れまして、精神的にも聖書みたいな感じですね。よく外国に置いてある(笑)。
梅澤:まさにホテルに置いてあるバイブル。
加藤:はい。これが1つ心の支えでした。
梅澤:なるほど。
梅澤:楠本さんと山野さんもそれぞれ、この1年逆境だったわけですが、どうでしょう?
楠本修二郎氏(以下、楠本):加藤さんがおっしゃるとおり、本当にアドレナリン出まくりの1年だから、そんなにストレスがあったのかっていうと、そうでもないような。だけど思い返してみると、相当なところまで追い詰められてたんですよね。もうお金がどんどんなくなるし。
さっきのインバウンドの話で言うと、うちはホテルを運営していたのですが、ホテル事業ってやっぱり長期回収なんですよね、95パーセントぐらい稼動してたから絶好調だったけど。85パーセントが海外からの方だったので、それもやめざるを得なくなって。そうすると、撤退費用も掛かってくるから、もうどんどんお金が減っていくと。
「いかに撤退費用を出さないか」というところを、役員をはじめ社員もがんばってくれました。だから僕は「未来をどう作るか」で動くしかねえぞ、と思いました。
逆に、コロナ禍前で事業の調子が良かった時にはできなかったこと、例えば『FACTFULNESS』という本もありますが、50年後ぐらいのビジョンを作って……ビジョンだけじゃなくて、やっぱり数字がすごく大事ですよね。
「未来予測ってどうするんだっけ?」と思って。「そうかそうか、人口ってこれだけ減るのね」「世界人口はこれだけ増えるのね」と。GDP・GNP予測とか、それから労働生産者の変異がこうなるんやったら……って、逆算からずっとその数字を考えていくと、わりと冷静に長期ビジョンも描けるようになって。
楠本:本当に情けないことに、(今までは)役員に任せて、僕はほとんど数字も見たことなかったのですが、この時はめっちゃ数字を見ました(笑)。
足元の数字もそうなんだけど、「うわ、やべぇ。こんなに減ってく」ということはなるべく見ないで、「生き残るためには、今、これやんなきゃいけないよね」みたいな逆算で、長期的な数字も同時に見ていました。
それで、「ここには人員をかけようね」というような、未来の答えと近々の答えを合わせていくと、悲観ばかりじゃなく、楽しい未来も見据えながらやれていたかなという感じはします。
梅澤:なるほど。でも、なかなか逆説的ですよね。普通の経営者だと、もう足元の数字しか見られなくなるんだけど。
楠本:他の人と同じことをやったってしょうがないから。もう逆のことをやろうと思って、必死こいてやっていただけです(笑)。でもそれによって、ぶれないビジョンと「絶対にこれをやり通そう」と強く思えたんだと感じています。
僕ががんばれるのはあと10年、長くても20年ぐらいかもしれないけれど(笑)。「少なくとも、俺は、これをぶらさずにやろう」ということが明確になったので、まだまだ大変ですが(笑)、さらに良いチームワークもできてきました。逆境は克服しきれていませんてません、まだ途中です。
梅澤:山野さん、どうですか。
山野:僕はお2人のようにそんなにメンタルが強くないので、明確にストレスを感じていました。その中でどういうふうに自分のメンタリティを保ったかってことなんですが、まず1つだけ絶対にやらなきゃいけないのが、有事の際ってリーダーは絶対に折れちゃいけないと思うんですよね。
リーダーのメンタルがポキッて折れた瞬間、会社がどうにもならなくなるので、ここだけ自分でけっこう意識をして。かつ、自分自身はそんなにメンタリティを過信しないタイプなので。僕も別に普通の人間だから、折れる時は折れるって思ってたんですよ。
なので僕がやったことは、有事なのでずっと考えちゃいますから、「考えない時間を強制的に作る」ということをやりました。具体的に言うとランニングですね。
早朝か深夜、誰にも会わないところで、代々木公園の周りを毎日10キロ走るのを日課にして。けっこうスピードも速く走るので、だんだん走れるようになるんですが、きついから仕事のことを考えないので、(考えない時間を)強制的に時間を作りました。
楠本:山野くん、代々木公園で会わなかったね。
山野:会わなかったですね(笑)。あと、ものすごく家で筋トレするっていうのもやって。それで体脂肪率が5パーセントぐらい下がりましたね(笑)。あとは料理。特にスパイス系の料理なんですが、スパイスを考えながらカレーと麻婆豆腐を黙々と作るっていう。その時間ってけっこう仕事のこと考えないので、そんなことやってました。
梅澤:なるほど。ちなみに僕自身の話をすると、大昔からずっと瞑想を1日2回やっているのと、週に2回ぐらいウォーキングしてるので、わりと山野さんに近い感じでストレス解消はしてるかなと思います。
山野:そうですね。僕も瞑想したかったんですが、修業が足りなさすぎて。僕みたいな煩悩の人間には、ちょっとまだなかなかうまくできなくてですね(笑)。走るのに集中しました。
梅澤:いやいや、修業の問題じゃないので(笑)。ここ行くといいよ、っていうのをあとでお教えします。
山野:お願いします(笑)。
梅澤:大丈夫です。僕も山野さんに負けずと煩悩の人間なので(笑)。
山野:そうですか、良かった(笑)。ここにいる人はみんなそうだと思いますけど(笑)。
加藤:私も知りたいです。
梅澤:わかりました、送りますね。
加藤:ありがとうございます(笑)。
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