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キャリアを切り拓く恥のかき方 ~梅田悟司×中川諒~(全5記事)

ビジネスでも政治でも、間違える可能性は常にある 「みんなが恥をかける環境」をつくるための前提条件

失敗したり、かっこ悪い姿を見られたりした時に感じる「恥」。恥をかきたくないと思うと消極的な選択ばかりをしてしまい、なかなか新しいことに挑戦することができません。「恥」とうまく付き合っていくためには、どのようにすればいいのか。そこで今回は、『いくつになっても恥をかける人になる』発売記念イベントとして行われた、著者の中川諒氏と『「言葉にできる」は武器になる。』著者・梅田悟司氏の対談の模様をお届けします。元同僚の両氏。本記事では、新しい1歩目を踏み出すにはどんなことからはじめるべきか、心理的安全性のある「みんなが恥をかける環境」をつくるためにはどうすればいいのかなど、視聴者からの質問に答えました。

恥を感じる「差」をどうすれば縮められるのか

中川諒(以下、中川):梅田さんも、「恥」と向き合う時に意識していることってありますか?

梅田悟司(以下、梅田):そうですね。僕はけっこうあって。努力しても、恥って「差」じゃないですか。例えば僕が新しい領域でなにかをやりますというと、その領域には必ずそれを専門としてる先達がいるわけですよね。そうすると、その先達は僕と同じぐらい努力をするわけですよ。そうするといくらたっても距離が縮まらないんですよ。

中川:埋まらないですね。

梅田:だからずっとこう平行移動していくので、ずっとは追っかけられないと。なので、努力に逃げずに工夫をして、ポンといけないかなということは常に考えている。

その工夫の中に、実際に今までやってきたことが活きる可能性があるんですよね。例えば、コピーライターが本を書くっていうことだとわかりやすいんですけど。でも本を書こうとすると、本を書くというプロがいるわけじゃないですか。だからそこでは、努力する天才と戦うことになるので敵わないんです。

だからこっちのフィールドでやってきたこと、もしくはこっちでやってきたこと、あっちでやってきたことを活かしながら、このレースの中でどう工夫ができるのか。どういうふうに相手を抜くか。違う方法、違うルールで戦うことができるんじゃないかと工夫する。

そこで、結果的に今までやってきた経験とか個性が活きてしまう。その辺の世界観はすごく大事にしてますね。

どんなことから1歩目を踏み出すべきか?

中川:確かに。ありがとうございます。最後に、事前にいくつかご質問をいただいてるので、ご紹介できればなと思うんですけれど。

梅田:ぜひ。

中川:「どんなことから1歩を踏み出すべきでしょうか」。

梅田:なるほど、僕からいいですか。

さっき言葉に出てたんですけど、「できるはずなのにまだできていないこと」を探すってけっこう大事だと思うんですね。できることをやっても努力じゃない、進歩もない。かといってまったく違うことをやっても、なかなか……。

中川:成就しにくいですよね。

梅田:それに新しいことすぎて、やる気がなくなっちゃう。特に大人になればなるほど、新しいことって、できなくてやる気がなくなっちゃうじゃないですか。

だからちょっとはみ出してみる。そのはみ出す勇気を持つことはけっこう大事で。はみ出すということは、自分がいる場所をわかってないといけないし、そのはみ出した先にどういうわくわくがあるのかも、考えないといけないわけです。

はみ出しながら勇気を振り絞ってみる。そういう考え方はけっこう大事だなぁと思いますね。

「頼まれてないこと」をちゃんとやってみる

中川:確かに。僕が思ってるのは、さっきの「頼まれてないこと」じゃないですけど、結局新しいことをやるのが恥ずかしいって思っちゃって、なかなかできなくなっちゃう。でも、誰にも頼まれてないけどついやっちゃうことって、きっと誰しもあると思っていて、それをちゃんとやってみることかなと僕は思ってますね。

梅田:大事ですね。

中川:すぐに誰かの役に立つとか、すぐに世の中のためになることを考えていると、いつまでたってもできないから、そういうことじゃなくて、自分が好きでついやっちゃうことをちゃんとやってみることが大事かなと僕は思っています。

梅田:確かに。キヤノンの昔の広告で、「趣味なら、本気で。」というコピーがあったんだけど、まさにそういうことかもしれない。

趣味だからこそ本気を出すという。仕事だから本気出すんじゃなくて、やっぱり自分がやりたいと思ったこととか、別に頼まれてないんだけど、やりたいからやるんだという、そこに本気出しにいくというのは大事だと思うな。

中川:なんかそっちのほうが、これからは大事な気がしますよね。

梅田:大事だと思う。

「みんなが恥をかける環境」をつくる、ジャッジメント・フリーの考え方

中川:続きまして、「チームに必要な心理的安全性。みんなが恥をかける環境作りに気をつけていることはありませんか」。

梅田:僕は「中川くんの言ってることは正しいと思うよ」と言うこと。

中川:ほんとまさに(笑)。それで僕の心理的安全性が保たれてますからね。

梅田:「ジャッジしない」ことはけっこう大事だと思うんですね。最近、ベンチャーの知り合いでこういうことを言っていて、すてきだなって思ったことがあって。ジャッジメント・フリー(無批判)ってけっこう大事っていう話なんですよね。僕はいいも悪いも、評価しないんですよ。「評価されない」というのはけっこう大事で、「あ、そうなんだ。じゃあがんばったらいいじゃん」。以上。いいも悪いも評価しない。

あとはやっぱり「ちゃんと見ている」ことが条件だと思いますよ。

中川:ちゃんと見た上でっていうことですよね。見ないで「そうなんだ」は、だめだと。

梅田:そう。子どもとか見てる時とかも、「いいね」「悪いね」「上手だね」とか言わないで、「おっ!」「ん?」、これだけです。

中川:なるほど(笑)。勉強になります。やってみよ。

梅田:「見てるよ」ってことを伝える。うまい、へたとかじゃないですよ。「ん!」「おぉ!」「はっ!」、それだけですね。もうむちゃくちゃだけど、僕がやっていることはそういうことです。

先輩として「尊敬されようとする」のをやめる

中川:僕は今入社10年目なので、後輩としての仕事もあるし、先輩としての仕事もあって、どっちにもなりうるんです。環境作りでいうと、どちらかというと先輩としての仕事をする時には、あまり尊敬されようとしないというか、「尊敬されようとする」のをやめるようにしていて。

先輩だとしてもわかんない時ってあるじゃないですか。どうしたらいいかわかんない時は、「もうどうしたらいいかわかんない」って言います。

特にクリエイティブディレクターみたいな肩書きで仕事をしちゃうと、ディレクションをして方向性を示さなきゃいけない。しかも後輩もいるし、一緒に協力していただいているスタッフのみなさんも周りにいて。そうすると全員が僕の方針を待っちゃってる時があるじゃないですか。

その時に無理に変なことを言うと、そこで信頼を失ったりするから。「うーん、わかんないですね」とか「ちょっと時間ください」って、クライアントの前でも言うようにしてます。

「間違う可能性は常にある」と共有している状態を作る

梅田:大事ですね。ビジネスの中でもすごく大事なのが、今ってすべての情報が揃った上で判断できることって、ほぼないんですよね。

基本的に条件は不十分である。情報は不十分である。だけど、この場でなにか判断しないといけないというのは絶対なんですよ。やっぱりそこに対して間違ってる・間違ってないもあるんだけど、そこですごく大事なのは、「僕は判断をします。でも情報は不十分なので、間違うかもしれないです」ってことを、ちゃんと伝えることだと思いますね。

やっぱり国のコミュニケーションでもそうだと思うんですけど、そこがないと「え、さっき言ったのにすぐ方向転換してんじゃん」ってなるわけですよね。でもすべての情報が手に揃う状態って基本的には来ないし。

中川:確かに。

梅田:その場合は、その中で最善と思われる選択をしないといけないわけじゃないですか。だからやっぱり「間違う可能性は常にある」とみんなが共有している状態を作ることが、すごく大事なポイントだと思いますね。

中川:確かに。それは自分自身の心理的安全性を保つ上でも大切ですよね。

梅田:結果的にその人も考えないといけないわけですよね。だから僕も考えるし、君も考えないといけない。そういう前提がつくので、常にみんな間違える可能性がある。それは当然ですよね。もうすべての情報が集まっているということは絶対ありえないからね。その前提が大事だなと思います。

モチベーションに振り回されないための、ポジティブ・ネガティブの排除

中川:ありがとうございます。ちょっと時間がオーバーしているんですけれども、せっかく質問をいくつかいただいているのでご紹介できればと思います。

次は、「自分に自信がなくネガティブ思考になりがちなのですが、ポジティブ思考になるにはどうしたらいいですか?」。梅田さんってポジティブ思考ですか? 

梅田:僕はモチベーション0.0みたいな感じなので。

中川:どういう意味ですか? 

梅田:基本的にモチベーションというものが僕には基本存在していないんですよ。だからネガティブもポジティブもなくて。常に「目の前にあることをちゃんと終わらせる」ということが、僕の中でけっこう大事なことなんです。

自分で決めたから自分で終わらせるってことなんですけどね。そういう意味で言うと、ポジティブもネガティブも関係ないんですけど、逆に言うと、ポジティブとかネガティブという感情を排除することが大事だと僕は思っています。

なんでかと言うと、それが言い訳になっちゃうんですよね。やる気って、上がれば絶対落ちてしまうじゃないですか。上がることも当然だし、落ちることも当然なんだけど。それを「ポジティブ・ネガティブ」というかたちにして、自分自身にレッテルを貼ることによって、力が出せないということが僕の中でもあったんですね。

なので、自分で宣言する。さっきの話で言うと、「誰にも頼まれてないんだけど僕がやりたいこと」をちゃんと宣言する。宣言したからには、ちゃんと終わらせる。それだけです。

中川:なるほど。

梅田:ネガティブ・ポジティブという感情を1回なくしてみて、「本当にやりたいことってなんだろうか」と。それを宣言してやりきってみる。そこから何が見えてくるのかを見てみるのはおもしろいかなと思います。

「モチベーション0.0」という考え方が僕はけっこう好きで。僕もそういう意味では、心がすごく弱いんです。ネガティブにもポジティブにも振れてしまう自分を、1回排除するのが大事かなって、ポジティブに思っています。

「諦める」ことと「覚悟する」ことは、実は同じかもしれない

中川:そうですよね。僕は周りからすごくポジティブに見られてると思うんですよ。

でも僕自身はそんなつもりもあまりなくて。どちらかというとモードとしては、自分はどうがんばっても今の自分でしかないから、それをそのまんまのかたちで人にお届けするようにしていて。それはもう、別にプラスでもマイナスでもないんです。

梅田:おもしろいね。なるほど。

中川:それしかできないから、逆にそういう状態を作ることかなと僕は思ってはいるんですよね。

梅田:日本語で考えてみると、「諦め」に似た、「覚悟」みたいな話がやっぱりあるんですよね。「諦める」ことと「覚悟する」ことは、実は同じなんじゃないかという。

だから、できないと「諦める」ことによって、他のことをやらないといけないという「覚悟」が決まる。現実的にあるじゃないですか。ネガティブな側面から見るとそれは「諦め」なんだけど、ポジティブな側面からすると「覚悟」になるという。

その諦めと覚悟のような関係性は絶対にあるので、「これできない」って思ったら、じゃあそれを思い切ってやめてみるというのも大事だと思うな。

むしろ、過去にこういうのができなかった、やりきってもできなかったというものがあるんだったら、本当に心から捨ててみるのも、自分のポジティビティを作っていく上では大事なのかなって、今の話を聞いて思いましたね。

中川:確かに。ありがとうございます。

いくつになっても恥をかける人になる

「言葉にできる」は武器になる。

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