2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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梅田悟司(以下、梅田):先ほどの内的な恥、外的な恥という整理があったんですけど、経験を重ねていくことで、その性質が変わっていくんじゃないかなと思っていて。
中川諒(以下、中川):それはそのとおりだと思いますね。そもそもこの本を書くに至った、「恥」に興味を持ち始めたきっかけが、会社の打ち合わせの時に新入社員の子が案を出していて。先輩が横にいて、「若い時はいいんだよ、恥かいて」って言った瞬間に、その新入社員の子が、すごく恥ずかしそうになっちゃったんです。それを横で目にして。
梅田:根深い問題。
中川:先輩はもちろんその新入社員の子を勇気づけるつもりで言った言葉なんだけど、それが彼をもしかしたら傷つけたかもしれないし、恥をかかせてしまったんだなと、僕は横で見ていて。
彼は新しいことにチャレンジしてるんだからそんな恥ずかしいことなんかないし、「堂々と胸張っていいんだよ」って言えなかった自分もその後に恥ずかしくなりました。
「若い時に恥をかいたからいいんだよ」って言ってるけど、恥は若者だけのものなんじゃなくて、これから人生で長い間働き続けていく中で、これからどんどん違う性質の「恥」と出会っていくだろうと思っているのが前提としてあるんです。
中川:梅田さんと僕の関係性で言うと、僕が入社して梅田さんから認知されたタイミングで、もうすでに、梅田さんは活躍している先輩になっていたんですね。名もなき頃じゃないですけど、活躍している先輩になる前の梅田さんの話をお聞きしたいなと思っているんですけど。これは2000……。
梅田:2011年の東北六魂祭ですね。(※2017年より「東北絆まつり」)
中川:僕が梅田さんを最初に認知したのは、このタイミングで。この東北六魂祭のコンセプト。これは梅田さんから説明してもらったほうがいいかな。
梅田:みんなで作っている仕事だから、僕がなにかをやったということではないんですけど。東日本大震災の後に、東北が自ら進んでいくことをなにか体現できないかと。
やっぱり外からなにか持ってくるんじゃなくて、大事なものは内側にあるんですよね。「お祭り」がすごく大事な魂として存在するので、そこで1つになって前に進んでいく様子を、外に出していこうと。そうすることによって、外から借りてきたなにかで盛り上がってるんじゃなくて、内から力がみなぎっていってみんなが力を蓄えていく。
それが自然と、発信を会社全員でやろうとなって。いろんな会社さんもご一緒しながら、一緒にやろうと作った案件でしたね。
中川:この時僕は新入社員でこのイベントに参加していて。スタッフTシャツを着て、お客さんの誘導整備をやってたんですよ。
梅田:スタッフTシャツはみんな着てましたね。
中川:本当にイベントのスタッフとして働いてたんですけど。その時に、生のお客さんのリアクションとか、震災で傷ついた方々のリアクションを見ていて、あぁ本当にいい仕事だなって思ったんですね。
梅田:いやぁ、今でも忘れられない仕事ですね。
中川:それが、僕が梅田さんを最初に認知したタイミングなんですけど。その若かった時とか、今まで働いてきた中で苦しめられた恥とか。そういうものとどう向き合ってきたかについて聞きしたいなと思ったんですけど。
梅田:先ほど中川さんがおっしゃってたように、コピーを見せることってあるじゃないですか。僕らの職業にとってはコピーを見せるだし、あとはマーケティング職の方とか営業職の方が自分が考えてきた提案資料を見せるって同じ状況だと思うんですよね。
自分がいいと思っていることを見せるんだったらまだいいんだけど、自分がいいとも思っていないもの、つまり自分が考えきれてないことがわかっている。でもそれを見せて評価されないといけない。そのシチュエーションはけっこうつらかったですね。
そこで当然、茶化しに来る人たちもいるわけじゃないですか。それはしょうがないことで。茶化されるかどうかもあったんだけど、でも「考える」とか「表現する」というのはクリエイティブだけの仕事じゃなくて、みんなすることじゃないですか。考えてきたことをまとめて出さないといけない。
中川:会議で発言するとかも含めてね。
梅田:なにか発言はしてるんだけど、それが自分の本心とかけ離れてるという経験をものすごくして、それが一番恥ずかしかったです。言葉を換えるんだったら、自分は今なにを話してるんだろうって感覚にすごくなったかなぁ。
中川:わかんなくなっちゃう。
梅田:でもわりときつい質問とか鋭い質問とかも来るので。そうするとやっぱりなにかを埋めないといけないから、その間を埋めるためになにかを話してて。またそれに対して、それはどうだああだとかって評価されて。なんかつらい気持ちになってくるのはすごくあったなぁ。
中川:それはどうやって乗り越えたんですか。
梅田:さっきの中川くんの整理で言うところの、外的恥を乗り越えるために外にフィットさせる方法と、内的恥を乗り越えるために内側から自分が何を考えているのかを考え抜いて、自分の頭と書いてるものを一致させていくという、2つのアプローチがあるとしたら、僕はもう外はもうやめたんです。この場でどう受けるか。
あとは僕たちだとクライアントワークがあったり、クライアントワークの前には社内でのミーティングがあるわけですよね。その時に、「こういうことを求められてるだろうな」ということ、いわゆる「邪推」ですね。邪推を一切排除して、「僕だったらこういう状況において、こういうことを意見したい」とか、「こういうことを発信したい」と思うということ。
つまり頭と手で書いているものをいかに一致させるかだけにフォーカスできたのは、僕の中で恥を乗り越えるためには一番大事なところだったし、苦労したところだったと思いますね。
中川:確かに。コピーって、頭じゃなくて手で書けちゃうこともあるじゃないですか。
梅田:あるある。いっぱい書けちゃう。
中川:こういう要素を入れなきゃいけないというのはいっぱいあって、それをある程度の文章の長さにまとめなきゃいけないという作業としては、そういう作業なんだけど。それ自体は手でできちゃって。でも本当は、コピーにとって大事なところはそこにはないという。そこが一応難しいところでもありますよね。
梅田:そうですね。さっき中川くんが話してくれた中で言うと、やっぱり真実とか事実はすごく大事だと思っていて。嘘だったり、真実でも事実でもないことを書いてしまうんですよ。こういうのがあったらいいなという希望的観測をコピーって書きやすいんですけど。
そこを1回排除して、大きすぎて見えない真実。忘れ去られてしまっている真実。気づかれない真実を、いかに突き止めるのか。そこを見ようとすることだけに特化した。そこで僕のコピーはブレイクスルーしましたね。
あとは一番大きくて見えないもの、大きすぎて気づけないものは、結局自分の家庭とか生活の中にしかなくて。最後はもう自分の生活の切り売りしか、答えがないなっていうのを、わりと早いタイミングで気づけたというのはありますよね。
だから猫の話や里親の話を書いたり、家事の話を書いたりというのも、自分が体験したからこそ、あぁここって大事なんだけど、まだ言語化されていない領域があるよねっていう発見があって。
例えば「家事って大変だよね」って話とか、あとは「猫の里親制度って、もっと知られたほうがいいよね」というのも、やっぱり自分が体験しないとわからなくて。
中川:本当に思っていることだから書けるってことですね。
梅田:そうですね。生活の中で見えてくるなにかを、ちゃんと捕まえて言葉にする。結局それを書籍でやるのか、クライアントワークでやるのか、今のベンチャーのお仕事の中でやるのかというのは、そこはあまり変わらないんですよね。結局「生活への回顧」が大きいなと思いますね。
中川:それで言うと、まったく違うように見えるベンチャーキャピタルの仕事とかをやっているような中で、今恥ずかしいことってあるんですか?
梅田:そうですね。そういう点でいうと、コミュニケーション畑の話は、当然知れば知るほどわからなくなっていくというぐるぐるは、空回りも含めて当然あるんですけど。そうではなくて、ベンチャーキャピタルという仕事をしていると、キャピタリストとしての所作だったりとか、こういうことを考えないといけないとか、やっぱりまだまだ修行の身であると常に感じていることで。
それは「恥ずかしい」という言葉がフィットするかわからないんだけれども、やっぱりそこをちゃんと学びにいかないといけない。わからないものはわからないって、ちゃんと白旗をあげる。そこで白旗をあげるからこそ教えてもらえたり、その強みを持ってる人が一緒に仕事をしてフォローしてくれることもあるので。その白旗をあげることに関してはけっこう大事だなと思います。
中川:そうですね。できないことはできないって、さらけ出すということですよね。
梅田:「できないからやって」ということではなくて、「ごめん、今はできない」という状態の話なんですよ。やりたいんだけどできない。だから教えて。そういうところはやれるようにしてはいますね。
中川:状態であって能力ではないということですよね。
梅田:そうですね。スキルの問題も仕事ってあると思うんですよ。マインドとか価値観とかがいろいろある中で、結果的に圧倒的なスキル不足だけの問題もけっこうあるんですよね。スキルが不足してるだけなのに、なんかマインドが足りないとか、努力値が足りないことにしちゃうなら、すごくもったいないと思うので。
できないことはきちんと白旗をあげて、スキルを取りに行く。あとは教えてもらうだけじゃなくて、他の人がやってる様子を見て、学びに行くようなことはけっこうやるようにしてますね。
中川:いくつになっても恥をかける人になるということですよね?
梅田:本当にそうだと思う。
中川:(笑)。
梅田:「いくつになっても」という言葉があるのかないのかは、この書籍(『いくつになっても恥をかける人になる』)に関してはすごく大事なポイントで。そこを千葉さんも含めて、3人でゴニョゴニョやってる日がすげー懐かしい。
中川:ありがとうございます。書籍の中でも紹介してるんですけど、恥をかくために、じゃあ具体的にどうしたらいいのというのを、いくつかご紹介できたらと思っていて。
僕が意識していることで、例えばこういうセミナーも、ちょっと今なかなか生でというわけにはいかないかもしれないですけど。僕は必ずセミナーでは、なにがあっても一番前に座るようにしていて。これは自分のためでもあるというか。1番前に座ることで、周りの人がいい意味で見えなくなるじゃないですか。
他のお客さんが見えなくなるから、自分の質問する時とかのハードルが圧倒的に下がるんですよ。こうやって、ほぼこういう状態でしゃべってるのと同じようになるから。
梅田:確かに。ほぼ1対1ですよね。おもしろい。
中川:前に座らない理由もないし、「目立とうとしてると思われるんじゃないか」っていう恥の気持ちがけっこうあるんじゃないかなと思っていて。
梅田:こういうセミナーだと、どちらかと言うと僕は登壇する側にいますけど、やっぱり一番前の人はけっこう覚えてますよ。そこで出会った人と謎に一緒に仕事をすることってあるんですよね。
当然一番前に座ってる人たちからすると、なにかお願いをするというか、お時間もお忙しい中で「こういうことを考えてて……」ということだと思うんだけど、そういうやる気を態度で示してくれる人に対しては普通にうれしいし。それだけなんか自分が役に立てないかなっていう(気持ちになりますよね)。
中川:向こうも時間を使っていただいて来てくれているわけですからね。
梅田:そこはやはり同じ熱量で臨みたいって思うから、すごく大事なことだと思います。人と人とをつなぐような出会いになる可能性は、本当にあると思いますよ。
中川:確かに。今日見ていただいてる方々もそうですけど、発信してる側と発信されてる側じゃなくて、もはや一緒の方向に進んでいく「仲間」という気持ちで僕もいるんですよね。そういう感じを、みんなが持てるといいかなって思います。
中川:あとは僕くらい若かったり、僕よりもさらに若かったりすると、人がいっぱいいる打ち合わせでは、なかなか発言権がない。その場合、僕は書記を自分で買って出ることをやっていて。
梅田:おもしろいですね。
中川:ホワイトボードがあるならホワイトボードを使って、そこに書いていくんです。そうすると、みんな結果的にそのホワイトボードを見て仕事をしていくことになるんで。そこで自分の意見を入れてみたり、まとめ方を工夫してみたり。
自分の役割は誰かに与えられるものじゃないから、自分で作っていくというのは、やり方としてあるかなと思ってますね。
梅田:若いと、そもそも役割がないじゃないですか。偉い人が何人かいて、中堅の人たちがいて、自分は末席みたいになると、基本的に外で聞いてる人になっちゃうから。書記かどうかは別としても、自分で役割を規定してロール(役割)をちゃんと果たすというのは、大事な取り組みかもしれないですね。いや、これはすごくおもしろい。
中川:あとは「話を聞かせてください」って言うんだけど、実際は話を聞きに行くフリをして自分を売り込む(笑)。
梅田:まぁここはセッションですからね。わかるなぁ。
中川:あとけっこうびっくりされることで、今握手はちょっとあれですけど、例えばCM撮影の時は、現場の長というか、映像監督と仕事をすることになるわけですけど。自分よりも経験値があるその道のプロの人に対して、現場で交渉したりセッションしなきゃいけないことっていっぱいあるじゃないですか。
自分より向こうのほうが圧倒的にものを知ってるという自分の恥ずかしさはあって。それをなくすために、朝行った時にまず監督と握手をして「今日、よろしくお願いします」ってすると、けっこう“バディ感”が出るんです。
「一緒の同じ船に乗ってますよ」という気持ちに、自分がなれる。向こうももしかしたら、ちょっとはそう思ってくれるかもしれない。
そうすることで、恥をかきやすくなるんじゃないかなと思っていますね。
梅田:おもしろい。こういう点で言うと、僕は「こんにちは」って言いますね。
中川:最初に?(笑)。
梅田:「おはようございます」だと、仕事モードじゃないですか。当然「よろしくお願いします」もそうなんですけど。「こんにちは」って、わりとみんな仕事中に言わないし、言われ慣れてない。「こんにちは」って対等な挨拶じゃないですか。
中川:わかります。
梅田:だから「こんにちは」ってすごく言うようにしてるなぁ。挨拶と握手はけっこう近しいところかなと思いました。
中川:そうですね。総じて、迷ったら恥ずかしいほうを選んでみるという話になるんですけど。誰しも避けたいと思ってる「恥ずかしい」っていう感情を、ポジティブに捉えられないかと思って、この本を書いたんです。
それからもうちょっと見方を変えると、今「恥ずかしい」と思っているとしたら、それは新しいことにチャレンジできている証拠かもしれない。つまり「恥」っていうのは、チャンスの目印になるんじゃないかと思っていて。
だから2択で迷った時に、どっちか決められないんだったら、恥ずかしいって思う方法を選んでみると決めちゃうと、けっこう気持ちが楽になるというか。
梅田:なるほど。ハードモードなほうね。
中川:ハードモードを選ぶって僕はしてたりしますね。
梅田:おもしろい。いいと思います。すばらしいね。
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