2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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中川諒氏(以下、中川):(「できるはずなのにまだできてないこと」に着目することと、)もう1つ(新しい自分の一歩を踏み出す時に)、梅田さんの思っている大事なこと。
梅田悟司氏(以下、梅田):「誰にも頼まれていないことを全力でやりぬく」ですね。これは本当に、めっちゃ大事だと思いますね。
中川:(スキルを)拡張していく上では特にそうですよね。
梅田:拡張していくでいうと、例えばコピーライターっていう自分の立場があって。言葉つながりで、やっぱり本が書きたいなって思うわけですよね。
でも本を書いたことがないコピーライターに、本を書かせようという人はいるのかというと、基本いないわけですよ。それこそ15文字ぐらいだったら上手に書けるかもしれないけど、10万字を書ける保証は誰もないわけですよね。
中川:もう完全に別世界ですよね。
梅田:そう、そう。そうすると、本を書く時もそうなんですけれども、もともと本を書く時には、別に頼まれてはないんですよ。誰かに欲されてるわけでもないし、「本を書いてください」って言われたから書くんじゃなくて。
「やっぱり書きたいな」とか、「こういうことを世の中にちゃんと伝えたいな」とか。コピーライティングで考えると、「自分が学んできたこと、コピーしか考えてなかった僕だからこそわかる言葉のことを、人のために還元したいな」とか思って、本を書くわけですよね。
誰にも望まれてないし、頼まれてないんだけど、やっぱり僕はやりたいんだということがけっこう大事です。頼まれていないから、人からの圧力がほぼゼロなわけですよ。
中川:特に本ってそうですよね。
梅田:普通仕事って、「絶対にいついつまでにやれ」とか「納期までに仕上げよう」とか、それこそコンペがあるから勝たないといけないとか。けっこう外圧で決まったりしますよね。かつ、外圧の特に一番わかりやすいのは「いついつまでに」というスケジュール。
中川:締め切りがあるから、終わるという。
梅田:そう。でもこれはけっこう大事で、誰にも頼まれていないと、スケジュールも基本ないんですよね。
中川:この本(『いくつになっても恥をかける人になる』)とかまさにそうでしたもんね。いつ終わるんだって(笑)。
梅田:だから3人で本の企画をするんだけど、世の中の人は誰も中川さんに本を書いてほしいとは思ってないわけですよね。だけどやりたいわけじゃないですか。だからそこはすごく大事です。
仕事しているとそうなってしまうんですけど、「これを欲されてるからやる」とか「やることが決まっているからやる」というスタートができちゃうわけじゃないですか。
中川:ゴールが決まっていないことの難しさってことですよね。
梅田:難しいですよね。だから僕はいつも、書籍は基本誰にも望まれてないところで新しく書くことをやるんですけど、仕事でも基本、仮に案件がある場合でも、自主プレゼンするかのようにやる。これがけっこう大事ですね。
当然オーダーはオーダーで受けるんだけど、やっぱり世の中を見ながら、自分が何を提案するべきなのか考えることのほうが大事なんじゃないかって。
中川:そこが梅田さんの中で共通している部分かもしれないですよね。
中川:僕は梅田さんに、それぞれの仕事の中でオーダーと自分のメッセージのバランスをどう取られているのかを聞きたかったんですけど。バランスを取ってるというより、「自分が世の中に対してこういうことを言うことのほうが大事なんじゃないか」ということが真ん中にあるのかもしれませんね。
梅田:そうですね。僕が一番大事にしていることは、まだ言葉になっていない大事な領域を見つけることなんですよ。「物は言いよう」とかいろいろ言うじゃないですか。でも、僕はそんなことないと思っていて。しかも言葉にできることだけじゃなくて、もっと言葉にならないような難しいことがあるってよく言うじゃないですか。
それを認めながらも、でも僕はそう思いたくなくて。むしろ、あらゆることを仮に言語化できるとしたら、僕はそこにどういう言葉を与えるのか? ということしか考えてないですね。だからその前提として、こういう「誰にも頼まれていないことを全力でやり抜く」という部分が大事なんです。
例えば一番最近の本でいうと、「名もなき家事に名前をつける」というテーマでやったんですけど、男性から「家事の大変さ」が発信されないよねという部分とか。女性だと家事の真ん中にいすぎて気づかないことってやっぱりあるじゃないですか。
僕が育休を取って、新鮮な気持ちだからこそ気づける「家事の機微」が見えるわけですよ。新しいことで慣れていないから。その機微を見つけて、「ここはまだ言葉になっていないな」と。言葉になっていないということは、つまり人があまり認識できてない領域だと思うんですね。だからそこを見つけて、ちゃんと言葉にしようというのをずっとやっているんです。
梅田:その成果物として本というわかりやすいものもあれば、例えば「世界は誰かの仕事でできている」というジョージアで書かせてもらったコピーとか。これも「世界は誰かの仕事でできている」ということはやっぱり忘れがちだし、大きすぎて見えない話なので。
中川:本当にそうですよね。僕が「ジョージアのコピーを書いてください」と言われたら「うーん、『おいしい』『おつかれさま』」みたいなことに(笑)。
梅田:いや、そうなりますよね。
中川:「ほっと一息」みたいなことから書き始めると思うんですよね。だから、ある種言葉を選ばずに言うと、「当たり前すぎて気づけない真理」ですよね。
梅田:そうですね。本当、そこはめちゃくちゃ大事だと思うなぁ。
中川:僕がこの本を書いてみて思ったのは、それって本を書く作業に近いなと思ったんです。
梅田:ああ、そこを気づけたのはすばらしい。
中川:ずーっと永遠にテーマを掘って。書いている時間よりも考えている時間のほうが大事だったりしますよね。「これが人のなんの役に立つんだろう」とか、「その人をどう変えるんだろう」というところまで入ってく。迷宮に入っていく感じが、ふだん広告の仕事をする上でも必要なんだろうって思いましたね。
梅田:そうですね。広告の中でも、対生活者になにか言うだけじゃなくて、やっぱりn=1で考える。よくn=1は生活者の数だけあるって言うじゃないですか。でもそれを実現するってけっこう難しくて。
書籍を書くことは、買ってくれた人の役に立つということなので。n=1を生活者分だけ広げていくという意味ではすごく大事な体験だし、中川さんはそれをやりきったのが本当に偉いなって思いますよね。
中川:ありがとうございます。その流れで本の中身の話をしていければなと思います。
梅田:そうですね。今日のテーマは「恥」ですからね。
中川:そもそも「恥」とは? ということで。僕の整理で言うと、恥は大きく2つあるんじゃないかと思っていて、外的恥と内的恥に分けています。
外的恥は、周りからこう見られたいという「理想の自分」から離れた時に感じる恥。内的恥は、自分はこうあるべきだって自分が自分に対して思ってる「美学」から外れた時に感じる恥って分けていて。これって似てるようで違うんですけど。
梅田さんはちなみにこういう分け方をした時に、外的恥タイプ、内的恥タイプでいうとどっちですか?
梅田:なるほどね。中川くんはどっちなんですか?
中川:僕は外的恥タイプです。恥に対してすごく敏感だったからこそ、恥というテーマに対して本を書けたんだと思うんですよね。人一倍恥に対して臆病なんです。
梅田:おもしろいですね。
中川:「こう言っちゃったけど、向こうは嫌に思ってないかなぁ」とか、「仕事でこういう案を出したけど、みんなはどう見てるかなぁ」とか。それを自分の中でずっと感じてたから、その恥が自分の行動を制限するんですよね。「自分の一番の敵は恥だ」と思っていたから、こういう本が書けたんだと思うんです。
梅田:なるほどね。僕はどっちかと言われれば、やっぱり外なんでしょうね。外的な部分のほうが強いと思います。
中川:でも梅田さんって、僕から見ると外的恥を感じているように見えないんですよね。
梅田:確かに、基本的にあまりそう見られないかもしれないですね。でも、例えば今日の最初に僕のキャリアのことの話がありましたけど、レコード会社やって、電通に入ってマーケティングをやって、コピーライティングをやって、本書いたりとかしながらベンチャーキャピタルをやってくっていうと、やってることは同じだとしても、けっこう領域が違うんですよね。
だから、その領域が違う人たちに対して自分がどう見られているのかとか、どう貢献できるのか。「恥」というよりかは、外の人たちから自分がどう見られるのか、どう価値を提供できるのかは、常に考えた気がしますね。
中川:なるほど。
梅田:だから逆に内的恥はあまりないですね。ここだけを切り取るとすごく傲慢なやつに聞こえるかもしれないですけど。これは僕だけじゃなくて他の人全員にも言えることで、この世界よりも一人ひとりの中にある世界のほうが広いと僕は思ってるんですよ。
小宇宙(コスモ)みたいな話ですよ。「小宇宙を燃やせ」みたいな世界ですね。
中川:今、僕だけじゃなくてみんなも「???」ってなってると思う(笑)。
梅田:自分の中の世界って、やっぱりすごく大事だし、それが結果的に自分を救ってくれてきたという経験もあるんです。むしろ自分の外の世界と、自分の中の世界の折り合いをつけることにけっこう苦労はしたかもしれない。
その一方で、自分の中にある世界とか世界観は、誰かになにか言われても、あまり気にならなかったかな。僕は僕だし、君は君だし。君には君の小宇宙があるから、僕のところには介入してこないでくれという立場は、けっこうあったかなと思いますね。
中川:梅田さんに言われてすごく救われたというか、よく「なるほど」って思うことで、梅田さんは「中川くんの言ってることが正解だと思うよ」ってよく言うんですよね。
梅田:あぁ、言う言う(笑)。
中川:「どう思います?」っていう時に、「うーん、中川くんの思ってることが正解だと思うよ」って言われて。それってもしかしたら、この中でも書いている心理的安全性の話に関わるかもしれないんです。
僕は結局、相談することで自分で判断することを放棄してる瞬間があるんですよ。
梅田:あー、なるほど。背中を押してほしいっていうね。
中川:自分よりも解像度が高く見えている先輩に、「どう思います?」って聞いてるんだけど、それは自分で考えなきゃいけないことだし、結果ケツを持つのは自分だから。まぁそれ(自分が正解だと思ったこと)が正解なんだと思うんですよね。
特にこの広告という仕事とか、ものを書くことって、正解がないじゃないですか。だからジョージアの仕事を梅田さんがやったらああいう仕事になるし、僕がやったらまた違う仕事になるし。
梅田:それぞれ出す答えが違うってことですよね。
中川:そこがおもしろいところだけど、難しいところでもあるというか。
梅田:そうですね。今の中川くんの話は、本当にそのとおりだと思うんですよ。でも1点あえて反論するとすると、「結論がない答え」みたいなことをよく言うじゃないですか。でも僕はそんなことないと思っていて、「答え」というものがないんじゃないかと思っているんですね。すべてのものに結論がある、でもその結論が違うだけだと思うんです。
僕と中川くんが、1つの課題とかなにかに対して意見を言ったり、僕はこう思う、あなたはこう思うとか言っているんだけど、その状況を「答えがないから、最後ここはお互いの納得感で決めますよね」ということじゃなくって。
僕には僕の答えがあるし、中川くんには中川くんの答えがあるから、別にそれでいいんじゃないかなということなんですよね。
大企業病なのかもしれないんですけど、答えがないから結論を先延ばしにしようとかって、ついなるじゃないですか。そこはけっこう逃げだなと思ったんですよね。むしろ客観的にはもちろんなにか他の答えがあるかもしれないですけど、客観に逃げずにちゃんと主観で決めるとか、主観的な答え合わせってあるので。
その自分の答えを信じている強さの問題、熱の違いぐらいでしかないんじゃないかなとは、ふだんから思ってますね。
中川:なるほど。おもしろい。
梅田:それだからこそ、「中川くんが考えていることが正解なんじゃない」って、僕は本当に思ってるんですね。「めんどくせえから、こう言えば僕も自分の仕事を片付けられるようになる」って思っているわけじゃなくて。
中川:(笑)。
梅田:本当にそう思ってるんですよ。中川くんが思ってることが正解だと思う。基本的に僕はみんなに対してそう言いますよね。責任を持たないといけないんだったら、「僕はそれが正解だと思うよって言いました」ということなわけであって。だってその人が一生懸命考えて到達したところなんだから。
「違うんじゃない」って、違う可能性があるというか他の道もあるんじゃないかと言う時もあるけれど、そこを含めて排除して、自分がこれなんじゃないかと思ったら、じゃあそのまま行けばいいんじゃないっていうことに同意なんです。「中川くんが考えていることが正解だと思うよ」というのは、すごく言っていた気がするなぁ。
中川:でも後輩としてはピリッとします。やっぱり本当にちゃんと考えなきゃって気持ちにもなるし(笑)。
梅田:それはあるかもしれないね。
中川:けっこういい返しだなと思って、僕もこれから使おうと思っています(笑)。
梅田:これはテクニカルな問題ではまったくないですよ。本当にそう思っているし。
中川:さっきの世界観の話にも通じますよね。
梅田:そう。僕にも尊敬する上司の人がいて、僕がすごく心に残っているのは、彼は「若者の邪魔をしない」とすごく言ってた人なんですね。僕は正直言ってなにを言っているのかよくわかんなかったんですよ。「普通邪魔しないでしょ」って思ったし。
でも、意外と自分が善意で言ってしまうってことが、結果的に邪魔をしていることにつながるということが、あとになってわかるんですよね。ちょっと年を取ってみて。
例えば、若い人から「こうだと思うんですけど」って言われたことに対して、「そうなんじゃない」って軽く言ったら、それがもう「そう指示されました」とか、「なんか納得しちゃいました」みたいなことはけっこう起きて、それが結果的に邪魔してることにつながるんです。
中川:なるほど。きっといいと思ってアドバイスしたら、それが結果的に相手の思考を止めちゃうことになるってことですよね。
梅田:そう。結果的に、図らずしも否定につながってることってけっこうあるんでね。そこはもったいないし、そうしたくないなというのはありましたね。
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