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「なぜ、いま『内省』が必要なのか?」熊平美香×伊藤羊一『リフレクション』刊行記念対談(全5記事)

意見がぶつかり合うのは、意見で“価値観”を守っているから 内省のプロが語る、人の話を「聴く」時に気をつけたいこと

自分の内面を客観的、批判的に振り返る「リフレクション」(内省)。経済産業省が提唱する「人生100年時代の社会人基礎力」としても注目を集めています。本記事では本記事では『リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』の刊行記念イベントとして行われた、著者の熊平美香氏とZアカデミア学長・伊藤羊一氏の対談の模様をお届けします。自分に自信がない人がリフレクションをする場合の注意点や、日々のリフレクションでできる工夫について語られました。

自分に自信がない人の「自分との向き合い方」

伊藤羊一氏(以下、伊藤):Q&Aに出ている質問で、俺も聞きたいんですけど。「僕もそうなんです」という思いを持ってる方へのアドバイスみたいな感じで。

「自分に極端に自信がない人もリフレクション(内省)は可能なのでしょうか。認知の歪みにひっぱられ、自己批判、他者批判になってしまっている人がいます」。こういう方に、リフレクションをどう伝えていったらいいんだろうか。

熊平美香氏(以下、熊平):自己批判になっちゃうということですかね。

伊藤:そうそう。そもそも「私、ダメだ」みたいに、自分に自信がないから自分と向き合えなくて、「他者がダメだ」みたいになっちゃうことがあるから、逆にリフレクションできなくてますます悪化しちゃう。

だから、「自分は最高だ」と自分のことを好きになって、「ちゃんと自分に向き合おうよ」と言っているんだけど、熊平さんはどう考えられるのかなと。

熊平:そうですね。本の中ではグロースマインドセット(「人の基本的資質は努力しだいで伸ばすことができる」という考え方)の話も一応入れています。

4点セットが使えるようになると、簡単に価値観を変えられるようになるから、自分がフィックストマインド(「人の能力は固定的で努力しても変わらない」という考え方)でネガティブになっていたら、同じことをグロースマインドセットではどういう考えになるんだろうかと組み立てられるようになるんですね。

伊藤:なるほど! そこでも変革できたらすげぇんですけど、フィックストマインドセットの方って、生まれながらにして「絶対考え方を変えないぞ」オーラがある人がけっこういるように感じるんですよね。僕の偏見かもしれないですけど。

熊平:もっと言っちゃうと、もし安全にできるんだったら、その価値観はどこで形成されたのか、過去の経験を4点セットで見るべきですね。

伊藤:それもそうだよな。

熊平:そしたら、なにかちょっと残念な経験がありますよね。そこにある価値観を見てみて、さらに二度、三度繰り返すというやり方があって。価値観が出てくると、その価値観を意見に置いて、その価値観はどこから形成されたんだろうというふうに2~3回掘っていくと、今自分がどんなふうにできあがっているのかがわかってきて。

メタ認知できてくると、今までは「恐怖で感情が思考停止する」と決めているからできなかったものも、もし紙に書いてテーブルに並べて眺めることができたら、それだけでかなり楽になりますね。

伊藤:なるほどね。

リフレクションして損をする会社の特徴

熊平:あとは心理的安全。たぶん伊藤さんもそうだと思うし私もそうですけど、こういうタイプの人を見つけて、楽しいリフレクションを1回経験してほしいですね。

伊藤:そうですよね。

熊平:リフレクションして損する会社もありますからね。私もやりましたけど、失敗しましたね。責任追及が始まっちゃって。

私は「あの時こうなってこうしたからこうなったんだと思います」って、よろこんでリフレクションしていたんですけどね(笑)。そしたら、いきなり先方から責任追及が始まって、「あ、ここではリフレクションしてはいけなかった」と思いましたけどね。

伊藤:なるほどね。

熊平:そういう場にいらっしゃるとしたら、リフレクションすると確かに損をするからね。だから、間違ったこととかを正直に言えない組織の中で人は気を付けないといけないから、まず安全なタイプの相手を探してください。

伊藤:そうですね。本当にそうだよな。

熊平:でもね、ちゃんと話したらけっこうスッキリするもんだと思いますけどね。

伊藤:そうですよね。まずそういう習慣自体がないケースが多いですもんね。

熊平:リフレクションのポジティブな経験が1つもないかもね。

伊藤:そうそう。

熊平:でも絶対自己批判になる心の習慣は取り除けますよ。自己批判の習慣を手放せないという考え自体が思い込みだから。

伊藤:そうですね。大丈夫、大丈夫、OK、OKと決めちゃえばいいですよね。僕も口癖が「大丈夫、大丈夫」なんですよね(笑)。

熊平:(笑)。本当、そうですよね。

人の話は、まず評価せずに聴く

司会者:ありがとうございます。このままの流れで質疑応答に入ろうと思います。チャット欄のほうに質問をたくさんお寄せいただいているので、見ていただいてもよろしいですか。けっこうあるので、あと2つくらいしかお答えできないかもしれないんですけども。

伊藤:なるほどね。そうですよね。僕が「いや、そうなんですよね」と思うのが、「軸とこだわりと、聴く耳のバランスと申しますか、棲み分け、力の入れ具合はどう考えて実行されていらっしゃるのか」という質問で、多くの方がめちゃめちゃ悩んでいると思うんですよね。

自分のこだわりの部分と人の話を聴くことを、どう両立させるかに悩まれている方が多くて。この質問に関していうと、僕はまず聴く耳をめちゃめちゃ大事にしている。他の人の意見を聴くところがスタートとしてあって、全部聴く。

聴いた時に感じるところなどは、自分の軸で判断していく。こっち(の意見)を採るかこっち(の意見)を採るかの話じゃなくて、人の意見をグワーッと聞きながら、「それどう感じる?」とこっちの軸で判断するような、ちょっとズレている感じがするんですよね。

バランス、力の入れ具合の話ではなくて、まずは聴く。その上で自分の軸で判断する。そういう意味では「対話」だと思うんですけど、この人の意見も聞き入れながら、その上で自分の軸からしてどうだろう? と判断をしている感じかな。

熊平:そうですね。まさに対話ですよね。一応、本の中では「評価、判断を保留にして聴いてください」と書いています。

伊藤:そうですよね。まずは評価とかせずに聴く。その上で自分の軸の観点でどうだろうと考えてみるんですかね。

熊平:そう。(ふだん話を)聞いている時も、評価や判断はしないですよね。

伊藤:なるほど。そうですよね。そういう網にかけて聞いちゃったら、違う結論が出てくる。

熊平:そう、そう、そう。

経験が変われば、考え方も変わる

熊平:ずっと自分のことについての4点セットについて言っていましたけれども、同じように、他の人にも4点セットがあって。意見が違ったり反対意見だったりしても、実は自分の意見に相手が反対しているんじゃなくて、その人はその人の価値観を守るためにその意見になっている。

そういうところまでわかってくると、その人はどんな経験して、どんな価値観でその意見を組み立てているのかなと聞いているだけなので、こっちの評価をしている場合じゃない(笑)。そこまで聞いて、じゃあ自分の価値観に戻った時にどうなんだろうって。あるいは、その人の経験と私の経験を比較した時に、なにかそこから学ぶことがあるのかなと考えればいいから。

伊藤:そうですよね。

熊平:一旦感情をコントロールして、評価・判断を保留にするのが大事だと思うんです。だって、自分だって経験が変われば考え方が変わるんですもん。

伊藤:そうですね。本当、経験で自分ができていく感じですよね。

熊平:そう。

リフレクションはどんなタイミングでやるべきか?

司会者:ありがとうございます。最後の質問とさせていただければと思いますが、なにか気になる質問などございますか?

伊藤:答えておいたほうがいいのは、「どんなタイミングでどんな工夫をしていますか?」みたいな質問。僕も超具体的に聞きたいです。

僕自身がどんなふうにリフレクションしているかをちょっとご紹介しておくと、寝る前は必ず内省の時間にしています。まず日記を書いて、言語として何があったかを記録して、そこからのリフレクションは特にしないで散歩に出るんですよね。

散歩に出て、「俺、なんであれを記録しておいたんだろう?」と考えながら、「ああ、そういうことか」みたいに気付きを得て、「明日どうしよう」とか「俺の人生こうしよう」って、毎日散歩しながら決めていますね。

散歩したら、だいたい頭の中が全部クリアになっているので、風呂に入って物理的な疲れを落として、最後に瞑想して、頭とか心からノイズを全部なくして寝る。それを毎日繰り返しやりながら、1ヶ月に1回とか1週間に1回と決めて、上書きするような、ちょっと期間を延ばしたリフレクションをやる。

それを何回も何回もやる。だから四六時中(リフレクションを)やっているんですけど、結果、1年に1回くらいの振り返りにつなげていくようなイメージをしながらやっていますね。

熊平:教科書どおりですね。お書きになった本にも書いてありました。

伊藤:そうですね(笑)。まさにこれをやっているんですよね。

感情が動く時は「リアルタイムリフレクション」

熊平:私はそんな感じではないんですけども(笑)、リアルタイムリフレクションはけっこうやっているんですよ。感情が動く時は、これはリフレクションタイムだなと思うので。いろんな人と話していて自分の感情がムッとしたりするのも、「あ、今、なんでこうなっているのかな」という。

その時々に感じるので、リアルタイムリフレクションと呼んでいるんですけど(笑)。なるたけマインドフルネスに自分を戻していくのにリフレクションを使っています。

あとは、いろいろ実現したいことや在りたい姿を設定しているから、それに対して「今の自分はどうなんだろう」とか、「今の自分はどこにいるんだろう」とか、あるいは「もしかして在りたい姿はこの経験を通して変わったかな」とか、「再定義が必要かな」というふうに、在りたい姿と現状を行ったり来たりするリフレクションをよくやります。

伊藤:なるほどね。僕が言ったみたいに習慣としてやるのもあるし、4点セットがあればリアルタイムに「ん?」と(振り返りが)できる。両方やるとすごくいい感じになりますよね。

熊平:いいですね。

伊藤:内省がないと同じ間違いを繰り返すこともあるし、同じ間違いを繰り返す以前に、自分の軸が固まらない感じがありますよね。

熊平:そうですね。

リフレクションをチームで共有すると本質が見えてくる

伊藤:これ、4点セットはちゃんと本を読んでもらうのが一番だ。本を読んで勉強会をやったらいいと思いますね、「どういうふうに考えたらいいと思う?」とチームでやってみるとめちゃめちゃいいと思いますよね。

リフレクション(REFLECTION) 自分とチームの成長を加速させる内省の技術

熊平:かえって共有するのがいいと思う。特に価値観のところにどんな言葉が出てくるのかを度々やっていくと、「いろんな言葉が出てきていたけど、結局本質はここなんだな」みたいに、最終的に1つに統合されていく感じが自分でもあって。

伊藤:そうですよね。

熊平:やはり自分が大事にしている価値観は、たくさん出して記録にしていったらいいなと思います。

伊藤:そうですよね。まさにコーチングもやっているのはそういうことですもんね。

熊平:そうですね。リフレクションが上手になってからコーチングを受けると、コーチングの効果も100倍上がると思う。

伊藤:そうですね。

司会者:それではお時間になりました。まだまだお答えいただきたい質問がたくさんあったんですが、残念ながら終了とさせていただきます。新年度のスタートにすごくふさわしいお話を、本当にありがとうございました。

本日はご視聴いただきましてありがとうございました。伊藤羊一さん、熊平美香さん、改めまして本当にありがとうございました。

伊藤:どうもありがとうございました。

熊平:ありがとうございました。楽しかったです。

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