2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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伊藤羊一氏(以下、伊藤):この「意見・経験・感情・価値観」という4点セットと(推論の)はしごは、どういうつながりが?
熊平美香氏(以下、熊平):なにかの出来事や経験がはしごの一番下にあって、人間はその経験を階段を登るように意味付けをしていくんですね。
伊藤:なるほど!
熊平:意味づけた結果、判断の尺度が形成されて……というふうにして、価値観の形成されるステップを描いているんです。
伊藤:なるほど。事実と経験があって、そこから何を自分が選んでいて、どう思っているのかががつながって、価値観が生まれていると。
熊平:そうなんです。それを元に、人間は次の物事を自分の見たいレンズで見るわけですよね。
伊藤:なるほどね。
熊平:それこそ、ダイバーシティの推進の中で、「無意識の偏見」という言葉があるんです。私たちは今この瞬間も、1,100万ビットの情報に触れているのに、たった40ビットしか拾えないんですね。そもそも、自分が意識が向いているものしか拾えないじゃないですか。
伊藤:そうですね。
熊平:推論のはしごも、そのことを説明していると言えば説明しているんですけど。じゃあ、その40ビットの情報は何を選んでいるんですか? というところに私はすごく問題意識があって。
つまり振り返りとか経験の意味付けって、自分が選択したものしか意味付けられない認知の構造になっているから、残念な意味付けで終わっちゃう人もいて(笑)。それじゃダメだよね、はしごじゃその問題は解決できないと思って。
伊藤:要するに、そうやってガイドして、フレームワーク化して、自分でまず考えてみる。その結果、「この自分の考え方ダサすぎるな」とか「浅すぎるな」とか、「そうか、だからこう考えるのね」みたいなところを、ちゃんと自分なりに見つめてみる。これがプロセスとしてすごく大事だということですよね。
熊平:はい、そうです。ただ、そんなに残念でもなくて。40ビットの話の結論は、「人間は偏見の塊である」ということだと思ったんです。
伊藤:そうですよね。
熊平:だから、嘆く理由はないけど、40ビット以外のところに何があるのかを探す気持ちは持とうよと。それが対話になります。
伊藤:そうですね。そうすると、対話している中でいろいろ「自分はこっちだったけど、こっちもあるね。こういうことか」みたいな新しい気づきがある。
熊平:「なんでそこにそんなにこだわっているの?」と質問されて、「ええ!?」みたいな。「それがすべてでしょう」とこっちは思っているのに(笑)、相手はぜんぜんそのレンズで見ているわけじゃなかったりする。
伊藤:そうですよね。そこを理解するということだな。
熊平:4点セットがメタ認知のツールだとして、それを使いながら、リフレクションしながら、対話もするという3つが全部学びには必要ということです。
伊藤:なるほど。リフレクションと対話と?
熊平:メタ認知。4点セットは、一応メタ認知のツールという位置付けになっていて、そうしないと、自分の考えが変えられないし捨てられない。
伊藤:そうですよね。結局、考えが固まっていっちゃうと成長がなくなっていっちゃう感じがありますよね。
熊平:自分の意見を吟味できないじゃないですか。
伊藤:なるほどねぇ。今、自分がここ10年くらいでやってきたことを答え合わせさせていただいているようです。「こうだったのか」と思って。
熊平:今でもやってらっしゃるから(笑)。
伊藤:本能的だったのが、この4点セットを意識しながらやっていくだけで、随分違う。よりメタ認知も進むし、対話もしやすくなりましたね。
熊平:うれしいです。対話はぜひぜひ。
伊藤:こういうイベントのなにがうれしいかというと、学びたい一番近いところで質問できること。「これ役得だぞ」みたいなね。
熊平:(笑)。ありがとうございます。
司会者:横から失礼します。ちょうど「意見、経験、感情はどのようにして導き出されてきたのでしょうか」という質問をいただいてまして、もう少し詳しく説明いただいたほうが、理解が深まるかなと思います。
熊平:じゃあ、4点セットの説明と言うことで、私の意見の事例を語ってみたいと思います。
リフレクションがすごく大事だと私は思っています。これが「意見」ですね。「経験」はいっぱいあるんですけど。ちょっと昔の話になりますが、日本が素晴らしいと言われていたところから、ちょっと残念な流れに変わっていく過程で、「何を手放しているのか」ということの認識があまりにもないと思ったんですね。
その時に、すごく「なんでリフレクションしないんだろう?」と思って。リフレクションをすると、何がよかったかとか何がよくないかとか、それこそ不易と流行を切り分けたりできるじゃないですか。
なんでやらないんだろうなというのをずっと見ていた経験があって、そこが「経験」として「リフレクションが大事」と思っているところだったんですけど。
海外だと、みんなけっこうリフレクションしながら世の中を変えていっていて。日本でも第4次産業革命という言葉が一応ありましたけど。ドイツに行くと、リーダーが13年ぐらい「アメリカに負けた」と徹底的にリフレクションして、インダストリー4.0の国家戦略を作り出したりする。
それを見ると、やはり大きな変化って、みんなが対話しながらリフレクションすることで生まれるんだよなというのがあって。
そんな経験をあれこれ積んで、リフレクションが好きだから、私のセンサーは常にリフレクションしている人を探しちゃうんですよね(笑)。どんどん「リフレクションは大事だな」と思うようになって。リフレクションしている人を見るとエキサイティングして、していない人たちを見ると「ああ残念」と、気持ちが上がったり下がったりすると。
私の中ではリフレクションは「よい未来を作るもの」と置いているから、価値観として「よい未来を作るためにリフレクションは大事」となっていると思うんです。なので、私の意見の背景には、経験と感情と価値観があって、これを一体にして伝えています。
ごめんなさいね。ご質問に答えたつもりなんですけど、これで伝わっていますかね。
司会者:ありがとうございます。
熊平:でも、認知の4点セットは、本当にみんなやっていることなんです。そういう意味では、自分でも実験していただいて、実感してもらいたいです。もしこの4点セットってなんだろうと思っている人は、感情から始めるのが早いかなと思います。
伊藤:なるほど、なるほど。
熊平:気持ちがいいとか悪いとか。特に悪いほうがはっきりしていいと思うんですけど、価値観が満たされていない時に不愉快になるので、「なんで私は今、不愉快になっているのか」と問いかけてみるとよいと思います。
伊藤:感情からの意見。
熊平:そう。感情からの意見だし、価値観がそこに間違いなくあるので。
伊藤:なるほどね。確かに、心地いいとかザワザワするとかって、瞬間的にわかりますもんね。そこをちゃんと認識するところから始まるから、逆に冷静にもなりうるし。
熊平:そうです。おまけが付いてきます。
伊藤:わーお。そうか、そういうことか。
熊平:人間的にも成熟する(笑)。
伊藤:僕もひたすら内省姿勢で、巷では「内省おじさん」とか言われている。
熊平:(笑)。私は「内省おばさん」だな(笑)。
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