企業の成長の尺度をどこで計るか

関口和一氏(以下、関口):人間の成長と企業の成長ってまた違う部分があると思うんですよね。会社でいう成長というのは、さっきの松本さんのお話にもありましたけど、1番わかりやすいのは売上高という誰が見てもわかる成長の尺度があると思います。

他にも、1人当たりの利益率なり、あるいは売上もそうですし、あるいは従業員数もそうでしょうし、顧客とか、口座の数ですとか、そういった部分もあると思うのですけれども。

そういった企業の成長という形で見たときに、皆さんの会社では、現時点でどういう目標を掲げていらっしゃるのか。それは、どのくらいの角度というのか、ベクトルというのか、発射角度なのか、達成度なのか。この辺をちょっとお聞きしたいと思うのですけれども……。じゃあ、また熊谷さんからいきます?

熊谷正寿氏(以下、熊谷):僕らは、99年の8月27日に上場させていただきました。その前の年98年の夏に、55年計画というのを立てまして、98年の夏から、55年先までの売上高とか、経常利益とかグループの会社の数とか、関わる仲間の数とか、そういうのをすべて決めて、それを経営目標として、社内ポータルに掲示して毎年それを追っていっているんですね。

ちょっと遅れています。4、5年。先ほど申し上げた2007年度の失敗があって、4、5年遅れているんですけれども。それを実は共有してやっているので、それがすべての定量的な社内の夢、目標になっていて、それが成長をけん引するエンジンのひとつになっています。

数字よりも環境が重要

関口:その中で1番注目というか、1番重要度の高いのはどの尺度なんですかね?

熊谷:経営数値だけですと、売上高は将来10兆円というのは決まっていまして、経常利益は1兆円というのが決まっていまして、関わる仲間も20万人と決まっていまして。そういうのがもう、全部決まっているのです。

関口:すごいですね。

熊谷:どれが大事かというと、1番大事なのは売上でも利益でもなくて、関わる人たちの幸せであったり、お客さんがハッピーなことが1番大事なので。数字は結果としてくるものだから、われわれが大事にしているのは、もっと違うとこにあるのですけれども、一応定量的な数字はそういうのを掲げています。

関口:森川さんのところは、今、イケイケどんどんなんで、あまり先々のことまでお考えになっていないと思うんですけれども、そういう一応何かメルクマールみたいなものはあるのですか?

森川亮氏(以下、森川):そうですねえ……。

関口:まあ、普通ありますもんね、そういう意味でいうと。

森川:強いて言えば世界でナンバーワンのインターネットサービスになりたいというところがあると思うのですけど、どちらかというと数字よりは、やっぱり環境がすごく重要かなと思っていまして。最近イノベーションに関しても思うのですけれども、どういう環境にすると、どういうものが産まれるのか。

動物に例えると、動物園とサバンナだと、仮に動物園にいて野生を求めても、環境が野生じゃないから難しいと思うんですよね。例えば、何か獲物を獲りに行くという気持ちは動物園にいたら生まれないと思うんですよ。

そういう意味だと、サファリパークぐらいが1番ちょうどいいのかもしれないのですけれども。もっともっと、何か掲げるよりは、そういうふうに頑張って、そのことによって成長できる環境をどれだけ用意できるのかによって、人は自然と育っていくんじゃないのかなと思うんですね。

以前僕たちの会社で、最初の事業が成功したときに、いい環境をつくろうと思ってつくったのですけれども、そこで、何だろうな……。結婚したり、子どもができたりすると幸せになり過ぎちゃって、そのことによって家庭のほうが大事になっちゃう人がいたんですよね。

もちろんそれは、幸せだと思うんですけれども、ただその幸せと会社の成長というのはなかなか結びつかない場合もあるのかなと思っています。先ほど松本さんがおっしゃったんですけど、どうその仕組み、そのエコシステムをつくるのかがすごく重要かなあと最近思っていますね。

エンジニアを増やして、日本のシステムを内製する

関口:松本さんのところはどうですか? 目標めいたものはちゃんとあるんですかね?

松本大氏(以下、松本):目標めいたものというか、目標があるんですけれども(笑)。細かくは社内ではロードマップというものがあって。というのはアメリカで買収した証券会社が、システムを内製している会社なので、そこでエンジニアをさらに増やして、そのエンジニアを使って日本のシステムを全部つくって内製してしまおうと。

Intellectual Propertyは全部自分たちが持っちゃう。そういうことをやっているので、大変なんですね。クロスボーダーの開発なんで。なので、いつまでに何を開発して云々という、細かいことを全部書いた、ロードマップという5年間ぐらいのものがあります。

それとは別にざっくりとしていうと、うちの今の会社は連結で、世界でトップライン、収入が500億円。税前利益が150億とか、そんなもんなんですけれども。トップラインを1000億にはできると思っていて。500億の150億というと、税前のOPマージンが30パーセントということですけれども、これはオンライン金融ビジネスだと、ちょっと低い。

これは、いろんなことをやろうとしているから、低くなっちゃうのですが、規模を取ってくればまた元のように高くしていけると思うので、50パーセントぐらいの税前のOPマージンまで戻せるとは思っていて。そうするとトップラインが1000億で税前の利益が500億。税後だと300億とかそのくらい。

そのくらいの会社までは、私がやっている中でイメージができる。今のこういうことをやって、こういう手を打ってうんぬんかんぬんで、いつごろまでにそういうことをできるだろうかというのは、イメージもできるし社員に説明することも可能だと思うんですよね。

そこから先はちょっとわからないですね。そこから先は次の人に頑張ってもらおうと。ロケットを飛ばすにも何段ロケットとあるように、次の発射機というか、噴射を作らなくてはいけないので、とりあえずそこまでというイメージを自分は持っているし、社員にもそれは説明するようにはしています。

ビジネスを始めた当初の予想と現在のズレは?

関口:私もこういうインターネット分野を取材して、もう20年以上経つのですけれども、皆さんここにいらっしゃる方は……森川さんは途中から入ってこられたけれども、その前にいろいろ社会経験を積まれているので、いわばインターネットでいうと第1世代、パソコンの時代も含めると第2世代ぐらいだと思うのですね。今は第3世代か第4世代ぐらいになってきていると思うのですけれども。

そういった意味でいくと、この20年間、特に90年代後半からの急激なインターネットの成長というのは、当時、皆さんは何となくは気づいていたとは思うのですが、本当にそうなるかどうかというのは、なってみてわかった部分も相当あると思うんですよね。

こんなに本当に変わるとは思ってなかった人も、他の会社でたぶんいらっしゃると思いますし、逆に皆さんはそのインターネットの流れにちゃんと乗って、それをビジネスとして実現して、今日の成功をちゃんとつかんでいると思うのですが、前に進むために、あえて後ろを振り返ったときに、自分たちのこれまでの成長というのは、当初ビジネスを始めたときに予想をしていた成長の軌道線と比べて、どうだったのでしょうか? 

自分が考えたことより大きなことができたのか? あるいはもっと大きなことを考えていたけれども、まだそこまでいけていないのか? そういう観点で今の立ち位置を見ると、熊谷さん、どうでしょう。

犬や猫にもネットがつながる

熊谷:先ほど申し上げたとおり、結論、5年くらい自分の思っていたよりビハインドしています。ただ、インターネット産業自体は、想像通りあるいは想像以上に拡大をしていると感じます。今どのくらいかなと思うと、最近ちょっと自分なりに思っていることがあって、周りの方にお話するんですけれども、今、地球の人口は70億ぐらいですよね。

インターネットにつながっている人20億ちょっとなんですけど、ではこれがどれくらいインターネットにつながる人、あるいは、つながるということが増えてくるのかというと、人口に留まらないだろうなと。

その辺のワンちゃんとか猫ちゃんも全部つながっていって、あと電気が通じているもの全部にネットがつながるだろうから、結論70億じゃなくて、数100億のものがインターネットに近い将来つながると。

そうすると今、たぶん10分の1とかそれぐらいなので、短期間に10倍ぐらいになる。このネット産業というのは、チャンスに満ち溢れてるなというふうに、今になっても感じています。もう僕、それこそ事業を20年以上やっていますけど、今になっても、この事業を開始したときのワクワク感は変わらない。という感じでしょうかね。