2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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関口和一氏(以下、関口):人間の成長と企業の成長ってまた違う部分があると思うんですよね。会社でいう成長というのは、さっきの松本さんのお話にもありましたけど、1番わかりやすいのは売上高という誰が見てもわかる成長の尺度があると思います。
他にも、1人当たりの利益率なり、あるいは売上もそうですし、あるいは従業員数もそうでしょうし、顧客とか、口座の数ですとか、そういった部分もあると思うのですけれども。
そういった企業の成長という形で見たときに、皆さんの会社では、現時点でどういう目標を掲げていらっしゃるのか。それは、どのくらいの角度というのか、ベクトルというのか、発射角度なのか、達成度なのか。この辺をちょっとお聞きしたいと思うのですけれども……。じゃあ、また熊谷さんからいきます?
熊谷正寿氏(以下、熊谷):僕らは、99年の8月27日に上場させていただきました。その前の年98年の夏に、55年計画というのを立てまして、98年の夏から、55年先までの売上高とか、経常利益とかグループの会社の数とか、関わる仲間の数とか、そういうのをすべて決めて、それを経営目標として、社内ポータルに掲示して毎年それを追っていっているんですね。
ちょっと遅れています。4、5年。先ほど申し上げた2007年度の失敗があって、4、5年遅れているんですけれども。それを実は共有してやっているので、それがすべての定量的な社内の夢、目標になっていて、それが成長をけん引するエンジンのひとつになっています。
関口:その中で1番注目というか、1番重要度の高いのはどの尺度なんですかね?
熊谷:経営数値だけですと、売上高は将来10兆円というのは決まっていまして、経常利益は1兆円というのが決まっていまして、関わる仲間も20万人と決まっていまして。そういうのがもう、全部決まっているのです。
関口:すごいですね。
熊谷:どれが大事かというと、1番大事なのは売上でも利益でもなくて、関わる人たちの幸せであったり、お客さんがハッピーなことが1番大事なので。数字は結果としてくるものだから、われわれが大事にしているのは、もっと違うとこにあるのですけれども、一応定量的な数字はそういうのを掲げています。
関口:森川さんのところは、今、イケイケどんどんなんで、あまり先々のことまでお考えになっていないと思うんですけれども、そういう一応何かメルクマールみたいなものはあるのですか?
森川亮氏(以下、森川):そうですねえ……。
関口:まあ、普通ありますもんね、そういう意味でいうと。
森川:強いて言えば世界でナンバーワンのインターネットサービスになりたいというところがあると思うのですけど、どちらかというと数字よりは、やっぱり環境がすごく重要かなと思っていまして。最近イノベーションに関しても思うのですけれども、どういう環境にすると、どういうものが産まれるのか。
動物に例えると、動物園とサバンナだと、仮に動物園にいて野生を求めても、環境が野生じゃないから難しいと思うんですよね。例えば、何か獲物を獲りに行くという気持ちは動物園にいたら生まれないと思うんですよ。
そういう意味だと、サファリパークぐらいが1番ちょうどいいのかもしれないのですけれども。もっともっと、何か掲げるよりは、そういうふうに頑張って、そのことによって成長できる環境をどれだけ用意できるのかによって、人は自然と育っていくんじゃないのかなと思うんですね。
以前僕たちの会社で、最初の事業が成功したときに、いい環境をつくろうと思ってつくったのですけれども、そこで、何だろうな……。結婚したり、子どもができたりすると幸せになり過ぎちゃって、そのことによって家庭のほうが大事になっちゃう人がいたんですよね。
もちろんそれは、幸せだと思うんですけれども、ただその幸せと会社の成長というのはなかなか結びつかない場合もあるのかなと思っています。先ほど松本さんがおっしゃったんですけど、どうその仕組み、そのエコシステムをつくるのかがすごく重要かなあと最近思っていますね。
関口:松本さんのところはどうですか? 目標めいたものはちゃんとあるんですかね?
松本大氏(以下、松本):目標めいたものというか、目標があるんですけれども(笑)。細かくは社内ではロードマップというものがあって。というのはアメリカで買収した証券会社が、システムを内製している会社なので、そこでエンジニアをさらに増やして、そのエンジニアを使って日本のシステムを全部つくって内製してしまおうと。
Intellectual Propertyは全部自分たちが持っちゃう。そういうことをやっているので、大変なんですね。クロスボーダーの開発なんで。なので、いつまでに何を開発して云々という、細かいことを全部書いた、ロードマップという5年間ぐらいのものがあります。
それとは別にざっくりとしていうと、うちの今の会社は連結で、世界でトップライン、収入が500億円。税前利益が150億とか、そんなもんなんですけれども。トップラインを1000億にはできると思っていて。500億の150億というと、税前のOPマージンが30パーセントということですけれども、これはオンライン金融ビジネスだと、ちょっと低い。
これは、いろんなことをやろうとしているから、低くなっちゃうのですが、規模を取ってくればまた元のように高くしていけると思うので、50パーセントぐらいの税前のOPマージンまで戻せるとは思っていて。そうするとトップラインが1000億で税前の利益が500億。税後だと300億とかそのくらい。
そのくらいの会社までは、私がやっている中でイメージができる。今のこういうことをやって、こういう手を打ってうんぬんかんぬんで、いつごろまでにそういうことをできるだろうかというのは、イメージもできるし社員に説明することも可能だと思うんですよね。
そこから先はちょっとわからないですね。そこから先は次の人に頑張ってもらおうと。ロケットを飛ばすにも何段ロケットとあるように、次の発射機というか、噴射を作らなくてはいけないので、とりあえずそこまでというイメージを自分は持っているし、社員にもそれは説明するようにはしています。
関口:私もこういうインターネット分野を取材して、もう20年以上経つのですけれども、皆さんここにいらっしゃる方は……森川さんは途中から入ってこられたけれども、その前にいろいろ社会経験を積まれているので、いわばインターネットでいうと第1世代、パソコンの時代も含めると第2世代ぐらいだと思うのですね。今は第3世代か第4世代ぐらいになってきていると思うのですけれども。
そういった意味でいくと、この20年間、特に90年代後半からの急激なインターネットの成長というのは、当時、皆さんは何となくは気づいていたとは思うのですが、本当にそうなるかどうかというのは、なってみてわかった部分も相当あると思うんですよね。
こんなに本当に変わるとは思ってなかった人も、他の会社でたぶんいらっしゃると思いますし、逆に皆さんはそのインターネットの流れにちゃんと乗って、それをビジネスとして実現して、今日の成功をちゃんとつかんでいると思うのですが、前に進むために、あえて後ろを振り返ったときに、自分たちのこれまでの成長というのは、当初ビジネスを始めたときに予想をしていた成長の軌道線と比べて、どうだったのでしょうか?
自分が考えたことより大きなことができたのか? あるいはもっと大きなことを考えていたけれども、まだそこまでいけていないのか? そういう観点で今の立ち位置を見ると、熊谷さん、どうでしょう。
熊谷:先ほど申し上げたとおり、結論、5年くらい自分の思っていたよりビハインドしています。ただ、インターネット産業自体は、想像通りあるいは想像以上に拡大をしていると感じます。今どのくらいかなと思うと、最近ちょっと自分なりに思っていることがあって、周りの方にお話するんですけれども、今、地球の人口は70億ぐらいですよね。
インターネットにつながっている人20億ちょっとなんですけど、ではこれがどれくらいインターネットにつながる人、あるいは、つながるということが増えてくるのかというと、人口に留まらないだろうなと。
その辺のワンちゃんとか猫ちゃんも全部つながっていって、あと電気が通じているもの全部にネットがつながるだろうから、結論70億じゃなくて、数100億のものがインターネットに近い将来つながると。
そうすると今、たぶん10分の1とかそれぐらいなので、短期間に10倍ぐらいになる。このネット産業というのは、チャンスに満ち溢れてるなというふうに、今になっても感じています。もう僕、それこそ事業を20年以上やっていますけど、今になっても、この事業を開始したときのワクワク感は変わらない。という感じでしょうかね。
関口:では、松本さんどうでしょうか?
松本:当初は、ずいぶんいい感じで成長しましたよね。そのあとは日本ではデフレという(笑)。基本が証券業なので、ネットとはいっても、全くその……何て言うんですかね、逆の仕事なので、デフレの中で証券業をやっても成長するはずがないという、そういう向かい風のなかでずっとやってきたので。
そこで成長が止まり、今もう1回、最近グローバルにいったりとか、幸い日本でもアベノミクスでデフレから脱却してきていると。
先ほど言ったように自己努力として、今もう1回新しい技術を取り込もうかと思っているんです。最初は良かったのだけれども、そのあと足をひっぱられて今はチャラというような感じなので、ここからもう1回グローバルと技術と新しいことでエンジンをかけて、もう1回成長させなければいけないというふうに、今思っています。
関口:そうすると今の立ち位置は、当初創業されたときから今を思い起こして、今を想像するに、その規模なり、ご自身の事業の規模観と、今やっている規模観ってどのぐらい乖離しているのか、同じなのか。
松本:いやー、15年経っているわけですよね。創業してから。15年先のことなんて想像なんかしてないし、できないですよ(笑)。している人がいたら、それはすごいと思うのですけれども。日々とか毎年ヒーヒー言ってやってきて、ここまで来た結果であって。15年前に今のことなんか比較できる指標なんて持っていないですよね。
ただ結果論でいうと、4人で始めた会社が今1,000人の会社で、世界に12拠点あり、ちゃんとシニアのマネジメント層もいて、150カ国にお客様がいて、エンジニアがいて……。先ほどのような数字の利益が出ているとか、税金も納めていると考えると、一応やることやって来たんじゃないの? とは思いますけれども。でも、比較対照するものはないですね。
関口:では、そういう意味でいきますと、やって損はなかったというか、やって良かったということですよね。
松本:やって良かったっていうのがよくわからないですけれども、やった満足……満足感はないですけれども、やりましたというふうには……。怠けていたわけではありませんというふうには言い切れる。どれだけうまくいったかどうかというのは……。
それはもっとうまくやっている会社も人もいますし、そうじゃないところもあるし。それはいろんな評価があると思うんですよ。ただ自分、もしくは自分たちとして、しっかりと努力をして走って来たかと言ったらそれは、ちゃんとやって来たと思います。
関口:森川さんのところは成長まっただ中なんですけれども、どうでしょうか?
森川:そうですね、まずは全く想像していなかったということがひとつあります。振り返ると僕たちは、まず最初にゲームの事業があって、その次に検索とポータルの事業をやって、LINEが3個目なんですけれども。
前の検索ポータルとゲームというのはPCの時代で、当時PCのインターネットのビジネスというのは、3年とか5年頑張れば、そこから成長する可能性があった時代で、例えるとマラソンみたいな時代だったのかなと思うんですけれども、モバイル、特にスマートフォンになってから日本から世界へも出て行きますし、世界から日本にも来るし。
100メートル競争みたいな状況で、3年育てましょうみたいなことよりは、今年どうするみたいなところがあるのかなと考えると、すごくスピードが速くなったのかなと思いますね。なので、すごく大変ですね。
関口:最後、森川さんが言われたことが本当に大事だと思うんですけれども。パソコンの最初のころというのは、日本でいえばいわゆるPC-98というNECさんが作った規格があって、完璧に国内に市場が閉じていた。
Windows95が出てきて、初めて海外のソフトが翻訳さえすれば、お互いに使えるようになってきて、その次にインターネットが出てきてもっと共通化された。さらに、今度はスマホが出てきたことによって、世界中に同じものがリアルタイムで、まさにlaunchできる。そういうフェーズに入ってきたという意味では、ビジネス関係が劇的に変わったと思うわけです。
それで先の話なんですけれども、成長を仮に売上の規模だったり、利益だったり、そういったことで見たときに、規模を大きくするということではたぶん皆さんの目標は一致していると思いますので、それを今度は実現するための術、手段、方法。これをちょっとお聞きしたいなと思うのですが。
通常の製造業とか他の業種でもそうですが、一般的にいえば、売上を増やすというのは、お客を増やすということですから、そのお客をどこから持ってくるか。ひとつは海外展開というのが伝統的な手法としてあると思うんですね。
つまり、売上を海外に求めていく。特に日本は2年ぐらい前から人口が減少期に入っておりますから、日本の中で顧客を増やすというのはなかなか難しいという意味では海外に増やしていくのはわかりやすい方法です。
それから事業の新しい柱ですね、新事業を起こしていくというのも、売上を増やしていく方法だと思います。いろんな方法や形があると思うのですけれども、皆さんのところでは、これからまた成長するためには、どういうような形で売上を、あるいは会社を大きくしていこうと考えてらっしゃるのか。ということで、じゃあ、森川さんから今度は行きますか?
森川:僕たちの会社を振り返りますと、ずっとコミュニケーションを軸にプラットフォームを作ってきた歴史でして、最初のゲームの事業というものが、ハンゲームというソーシャルゲームの走りで、それも単純にゲームでお客さんを集めるのではなくて「コミュニケーションのきっかけとしてゲームがあったらいいよね」というところから入っていて。
ルールの説明とかお金を使わなくても楽しめるゲームが増えて、それでポータル化してプラットフォームになったんですね。
その次に、検索に関しても、ネット上の情報をロボットが持ってくるのではなくて、人が欲しい情報というのは、人とのコミュニケーションの中にあるので、それをデータベース化して、そして知識を高めて検索につなげていこうということで、「Q&A」とか「まとめ」とかそういうものをやってきたんですね。
今回LINEに関しても、基本はコミュニケーション。スマートフォン時代のコミュニケーションってなんなんだという問いかけに対する答えがLINEで、またひとつの箱ができたと。
箱にスタンプとかゲームとかいろんなものがのっていますけど、まだまだこの箱というのは大きくて、スマートフォンという新しいデバイスの新しさもあるし、また地域も日本以外の世界中に広がっていて、日本から出て行くのもあるし、逆にたぶんこれからは、海外で当たったものが日本に入ってくるというのもあると思うんですよね。
そういう意味だと、できた箱にどんなものをのせていくのかというところが、今後僕たちにとって非常に重要な成長の要素かなと思っております。
関口:松本さんはどうでしょうか?
松本:単純ですけれども、本業においては、サービスも性能を良くして、他社からお客さまを盗むこと、奪うこと。それが1番実は確度が高いと思われて。
ふたつ目が新しい技術、アプリケーション等で、あるいは新しいチャネルをつくり、今までわれわれがリーチできていないお客様に、ポテンシャルなお客様にマーケティングしていくこと。
3つ目はグローバルに出ていくこと。やはり日本は余りにも小さい。これからも小さくなっていくので、そう考えるとグローバル展開できるプラットフォームというものを作らないと。
グローバルに出て行くときはBtoCだと限らないと思うんです。グローバルは、アメリカと中国ではBtoCでやるべきだと思うのですけれども、それ以外はちょっと手が回らないので、BtoBtoCでいくと、いき始めているのですけれども、そういう3つをやっている。それを合わせて成長するということだと思います。
関口:熊谷さん。
熊谷:関口さんのご質問からちょっと外れちゃうかもしれないのですけれども、僕は具体的にプロダクトとか、マーケットとかいうことではなくて、1番成長に関して自分が意識を日々していることは、成長を自走式でしていけるような仕組みをつくることなんですよ。その僕の命は限られてるわけですよね。でも、会社内の命は無限じゃないですか。だから、私がいなくても、会社が自走式、自らが走る自走式で成長し続ける仕組みをいろんなところにプログラムをすること。
変な話、じゃあどんなことをやっているのですか? っていうご質問だと思うのですけれども、それこそ定款の作り方から(笑)、ベンチャーの不動産賃貸借のノウハウから、人事評価から、高速PDCAへの話から、会社を小分けにする話から、子会社上場を……批判もありますけど子会社上場の話から、ありとあらゆることが成功のノウハウではないですか。そういうものをたくさんつくることに、今1番力を注いでいます。
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