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キープレイヤー達が語る、VRエンタメビジネス成功の秘訣(全4記事)

VRではiPhoneの解像度ですら“足りない” コンテンツ普及に残された壁とは?

2017年6月29日、Speee Loungeにて、株式会社WHITEが主催する「VRエンタメサミット2017」が開催されました。VR業界を牽引するゲームやアニメ等、コンテンツ制作に関わるキープレイヤーが一堂に会したイベントでは、最新のVR業界の動向から現在までのサービス展開のケーススタディまで、幅広いテーマで発表が行われました。本パートでは、VRビジネスに携わるキープレイヤー4名が登場。キープレイヤー達が語る、VRエンタメビジネス成功の秘訣」というテーマで、ビジネスやコンテンツとしての課題や工夫点について、事例を交えながら語りました。

VRに取り組んで良かったこと

廣田憲幸氏(以下、廣田):では最後の質問になります。「VRに取り組んでよかったと思うことは?」という質問です。

会場には、これからVRビジネスに取り組む方々もいらっしゃると思うので、「VRに取り組んでこんなメリットがあったよ」など、そういったお話が聞けるといいかなと思います。ではメガハウスの滝野さんからお願いします。

滝野耕平氏(以下、滝野):弊社は2年前からVRゴーグルを販売させていただきまして、年々着実にマーケットが広がっていると感じています。そのなかで、実店舗販売においてはわりと先駆者として販売させていただいています。

そういったこともあって、だんだん、最初は「VR……? え、これなに? どういうものなの? スマホをセットするの? なにが見えるの?」という反応だったのが、「あ、VRでしょ。知ってる、知ってる」みたいになってきていて。

それがだんだん、「あ、BotsNewでしょ。やったことあるよ」とか、我々が過去やってきたことがだんだん代名詞になってきて。そういったことがあれば、今後、例えば「メガハウスって、スマホで本格的なモーションコントロールできる会社だよね」など、我々の技術や蓄積したノウハウがそのまま代名詞になって、最終的に「こういうコンテンツ作りたいからメガハウスに相談しよう」とか、名刺代わりになるのではないかと思っています。

そういった代名詞ができるということは、今後、VR業界がさらに爆発するときに、波に乗り遅れないで済むんじゃないのかなと。

廣田:ありがとうございます。スクエニの坂本さん、いかがですか?

坂本師哉氏(以下、坂本):非常にわかりやすい例でいくと、女性向けのコンテンツは今とても多いんですが、VRで出ているものがほぼほぼない状態です。

そういった意味では、VRは赤い海ではあるんですけど、「少し青いかな?」ぐらいのところで期待を込めてまだこれからだと思っているので、取り組んでいてよかったのかなと思っております。

廣田:制作ノウハウもさらに深まりつつあるんでしょうか?

坂本:ノウハウはだいぶたまってきています。「女性はこういうモーションで動かしたほうが」とか、「こういうシーンがよいのではないか?」とか、いろいろあるんですが。

モデルやシェーダなど、技術的なところについてはまだまだ検討の余地があるので、どんどん改善していく必要があると思っています。

VRを先にやっているメリットは大きい

廣田:ありがとうございます。三上さん、いかがですか?

三上昌史氏(以下、三上):やっててよかったのは、一応収益化もできているというところと、(gumiの)國光社長もおっしゃっていたみたいに、これから絶対来るのは間違いないですし、そこに対して、先にやっていることのメリットというのはすごく大きいと思います。

1つはプロモーション効果というところでいろんなところで取り上げていただいたりとか、こういう場で私なんかがしゃべらせていただいたりとか、本当にいろんなチャンスがやってくるので。

かつてスマートフォンが登場した時は、ベンチャーでいろいろなアプリが出てきたと思いますが、同じような感じでVR・ARの波が来ているなかで、今のところ本当にいいことしかなくて、やっててよかったなと思います。

そういったところも共有しながら、この業界自体を盛り上げていくこともすごく大事だと思っているので、もしそのなかでご興味を持って取り組まれる方がいらっしゃったら、そこはもう包み隠さずいろいろお話しながら、VR業界を盛り上げられればなと思っています。

廣田:ありがとうございます。最後、郡司さん、お願いいたします。

郡司幹雄氏(以下、郡司):私どもも知見のたまり具合というか、そういう部分は非常に大きいなと思っています。

技術的な部分も大きいですが、「人間がこういうふうに新しい技術に慣れていくんだな」みたいなこととか、「こういうときはお金を払うけど、こういうときは払わないんだ」みたいこととか、非常に実感をもってわかった気がしています。

これはすこし愚痴になってしまうんですが、弊社も上場しているのでステークホルダーからの圧力がたいへん厳しくて。やはり市場が立ち上がったときというのは、いろんな試行錯誤がありつつ市場が大きくなっていくものなので、そこを目指してがんばっていければなと思いますが、ステークホルダーは非常に短期的に収益化を望みますのでジレンマがありますね。

実写コンテンツでは解像度が大切

廣田:ありがとうございました。私からの質問は以上で終了なんですが、せっかくの機会ですので、会場のみなさんからの質問を受け付けたいと思います。質問ある方、ぜひせっかくの機会ですので手を挙げていただけると幸いです。

質問者1:すごくおもしろい話ありがとうございます。これまでの話を聞いて、実はすごくライセンスビジネスというか。

弊社はテレビの会社なので、実写をベースにVRをはじめていまして。自社の配信プラットフォームをもとにして、VRのプラットフォームを運営していて、まさに三上さんにすごくお世話になっている部分だったりもするんですけれども(笑)。

というなかで、独自の事業部を立ち上げてやっているのですが、ここで聞いた未来を考えると、どちらかというと、ライツ事業に近いような気がしています。

例えば制作・著作で言えば、うちが持っているものに関しては、いわゆる本当にライツ事業として展開するような方向の未来のお話なのかな、ということで印象深くお話をうかがっていたんですけれども。

そのなかで、これは完全にアドバイスとしていただきたいんですが、実写系のものに対して寄せられているような期待みたいなのがもしもあればというところ。

あとは、いわゆるライセンス事業ではなくて、オリジナルとしてVRをこれから盛り上げていくとしたら、どういうものや技術が出てきたときに、そういうことに取り組んでみたいと思われるか、みたいなところでちょっとお話うかがえればと思います。

廣田:みなさんにおうかがいするようなかたちでいいですか?

質問者1:お時間が許すのであれば(笑)。

廣田:では、三上さんのお話が出ていたので、三上さんから。

三上:当社は実写系もやらせていただいているので、実写系に関しては、やはりCGではできるけど実写ではできない部分も多々あるんですけど。ソニーさんから4Kスマホが出てると思いますが、画質がいい端末で実写のVR見ると、めっちゃくちゃいいんですよね。

やはりテレビとかもそうだと思うんですけど、画質がいいだけで体感高まったりしますよね。実写系では画質の影響が大きいんだなって改めて感じました。

これまで僕もiPhoneを使っていて「解像度足りないな」なんて思ったことはなかったんですけど、VRをやるようになってからすごく感じるようになりました。やっぱりレンズで拡大しちゃうので。

ただ、そこはハードメーカーさんも気づいていらっしゃっていて、どんどん高画質になってきています。実写系のVRも、画質がよくなることによって今までの感じ方とは絶対に変わると思います。

あとは、容量の問題もあるとは思うんですけど、これも通信回線がよくなったり、H.265で配信できるようになるとか。

そういった要素もあるので、実写系も来年ぐらいにはかなり状況が変わってくるのではないかと思っていますね。

タレントがアバターを動かしても価値がある

質問者1:では開発会社さんの目線で、どういう技術でオリジナルなコンテンツに挑戦していきたいか、みたいなことがもしあれば聞かせていただけないでしょうか?

三上:先ほどの話でもすこし出ていましたが、2年後3年後にはバーチャルのショー空間とリアルなショー空間が一緒になる、MRに期待しています。どこまでが現実でどこまでリアルか、みたいなことになったとき、実写を簡単に3DCG化できる技術もたぶん出てくると思うんですが、しばらくは不気味の谷はなかなか超えられれないと思っています。

実写をそのままCGにしてしまったときってどうしても気持ち悪くなってしまうことがあると思うんですが、そういったときに「アバター」を使うのはすごくありかなと思っていま。。

FacebookさんのソーシャルVRをやったときに、女の子にそのVRをやってもらったんですが、僕もそのアバターに会ったときに、アバターとはいえ、当然ながら胸とかには触れないんですよね。緊張しちゃうというか。やはりバーチャルのアバターなんですが、向こう側で動かしてるのはあの子だってわかってるので。

「このアバターはタレントの〇〇さんが動かしてるんだ」というだけで、そのあたりの価値は少し変わってくるのかなと思います。

フォトリアルじゃなくてデフォルメされたキャラクターでもいいので、タレントさんがアバターを動かすというは今後ありかな、と思います。十分それでも楽しめると思いますね。本人の声だったり、本人が動かしてるってわかっていただければ。

廣田:ありがとうございます。

既存の演出手法が使えないなか、どう戦うか

質問者1:お時間もあるので、郡司さんにもお聞きしたいです。先ほどモンタージュ理論の話が出てきて、実は学生時代にロシア映画の研究をしてたので、こういう場でそういう話が出てくるとは(笑)。

そのなかで、そういう演出側の目線で、なにか開発できるようになったら、制作できるようになったら嬉しいということがあれば、最後に聞ければと思いまして。

郡司:先ほど申し上げたように、演出家は別にいらっしゃって。東(弘明)さんという監督がいらっしゃるんですけど、おそらく非常に苦労されたと思うんですね。絵コンテを読んだときに……。

いわゆるカットを切り取っていくモンタージュという手法は映画の基本手法で、ドラマもそう作られていると思うんですけど。VR360度になった瞬間に一切使えないわけですよ。なので、そこの部分をどう感情移入させていくか、という技術があれば、映像系でもいけるんじゃないかと思っています。

攻殻のVRを見て、先ほど値段の話で「もっと高くても体験やりましたよ」と言っていただけたのは……けっこう感動的な話ではあるんですね。音楽も良くて、映像体験としても360度、今まで2次元の画面に慣れていましたが、演出とお話がよければ、意外といけるんじゃないかなという感じはしています。

ただ、実写の話をされていましたが、一番の問題は権利処理な気がしています。とくに実写の方の場合、権利の問題は存在していると思うので、そこをどうクリアしていくか、ということが非常に重要な課題だと思います。

廣田:大丈夫でしょうか。

質問者1:ありがとうございます。

VRがハードを買い換える動機になりうる

廣田:時間の都合で最後1人だけ、質問をお願いできればと思います。

質問者2:貴重なお話ありがとうございました。先ほど三上さんがおっしゃった、Xperia XZ Premiumのまさに4Kパネルを設計した者です(笑)。

三上:あ、ありがとうございます。

質問者2:なので、コンテンツ目線からはちょっと違うんですけれども。すこし気になっているのが、我々は、まだあまりVRを大々的にうたった商品はあんまりなくて、この分野ではサムソンなどがかなり先行して力を入れているところです。

そこで、先ほどちょっと解像度という話がありましたが、コンテンツメーカーさんから日本のスマホメーカーに求める勝ち筋的な、「こういうことをスマホのメーカーさんがやってくれたらもっと売れるよ」とか、そういうアイデアみたいなものをいただければお話をいただきたいなと思います。

三上:いいですか?(笑)。

廣田:どうぞ。

三上:ユーザーの中にはスマホVRのために機種変しようという人がいっぱいいるんですよ。

「私のスマホは対応してないから、もうiPhone買うしかない!」とか、そんなふうに言ってくださるので。たぶんそのサイトのなかに「おすすめスマホ」と載せただけで売れるんじゃないかなとか、もう本当にそんな感じです。

強い動機づけがあれば、ハードは紐付いて売れると思います。

無理に規格を合わせる必要はない?

質問者2:まだiPhoneは液晶パネルですが、とく解像度とか残像とか、お客さん気にしてない感じなんでしょうか?

三上:単純にAndroidのちょっと古い機種を使っていらっしゃる方だと、「LINEができればいいや」みたいな感じの女性がやはり相当多くて。

普段ゲームをしない人たちが初めてスペックを気にするというか。「これ見るためにはなにがいるの?」という状況なので、「これです」と教えてあげれば「じゃあ、それ買います」という感じなのかなと思いますね。

やはりアニメファンの方とかだと、自転車アニメにハマってロードバイクを買ったりとか、けっこう深くやりこんでしまいます。

質問者2:技術者的な視点でいうと、やはりDaydreamの規格に沿っていないとか、そういったことで「推奨機種です、とはちょっとうたえないね」という議論になっちゃうんですけど。

そういうことはとくに考えなくても、「もう言っちゃえばいいじゃん」みたいな、そういう感じでもあるんでしょうか? 例えば「4Kスマホですごい細かく見れますよ」って言っちゃえば、もうそれでお客さんとしては問題ないというか。

三上:映像だといまのところ、Daydreamのコントローラがあっても再生と早送りぐらいしかできないので、「それなら視点注視でいいじゃん」という気もします。必ずしもDaydreamの規格にあわせなくても、満足度を下げないコンテンツはつくっていきたいなと。

質問者2:ありがとうございます。

廣田:それでは時間になりましたので、トークセッションをこれで終了にしたいと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)

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