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キープレイヤー達が語る、VRエンタメビジネス成功の秘訣(全4記事)

VRビジネスは収益化できるのか? 先駆者たちが語る業界の舞台裏

2017年6月29日、Speee Loungeにて、株式会社WHITEが主催する「VRエンタメサミット2017」が開催されました。VR業界を牽引するゲームやアニメ等、コンテンツ制作に関わるキープレイヤーが一堂に会したイベントでは、最新のVR業界の動向から現在までのサービス展開のケーススタディまで、幅広いテーマで発表が行われました。本パートでは、VRビジネスに携わるキープレイヤー4名が登場。キープレイヤー達が語る、VRエンタメビジネス成功の秘訣」というテーマで、ビジネスやコンテンツとしての課題や工夫点について、事例を交えながら語りました。

VRコンテンツの価格はどう決まった?

廣田:それでは、2つ目の質問に移りたいと思います。2つ目の質問、こちらです。実際にコンテンツを作ったあとに、1つ考えるべきポイントになってくると思うんですが、「販売方式、または販売価格がどのようにして決まっていったのか」というところをおうかがいできればなと思います。

まず、プロダクションI.Gの郡司さんに関してなんですが、攻殻機動隊の場合は、アプリは無料でダウンロードできて、ティザームービーが見れます。そして本編は480円になっていますが、これはどういった経緯で決まっていったのかおうかがいできればと思います。

郡司:実は正直申し上げますと、作り始めたときはVRの市場がよくわかってなかったんです。今考えるともうちょっと高くすればよかったなと思っていますけど(笑)。正直な話をすると、そういうかたちです。

だいたいアプリとして、先ほど三上さんもおっしゃったように、1,000円ぐらいってけっこう高く感じるんですよね。そうすると「ユーザーにフレンドリーな価格というと、やはり1,000円以下だよね」というところからの逆算でした。

そのうちに「VRの市場がいけそうだ」という話になってきて、今はちょっと安すぎたかなと後悔しているというかたちですね(笑)。

1,000円以上で販売することも可能

廣田:なるほど、わかりました(笑)。ありがとうございます。三上さんどうですか?

三上:先ほどご紹介したアプリ以外に、『パンチライン』というフジテレビさんで放映されていた、パンツを見ると世界が滅亡するというアニメがありまして、そのVRを2016年に発売しました。

郡司さんと同じように、やはり勘で「600円ぐらいかな」みたいな感じで出したんですけど、それが思いのほか、2万ダウンロード以上されまして。

売上1,000万超で、けっこうレビューも高評価だったので、「もしかして960円でもいけるかな」と思って発売したのが『キンプリ』と『Re:ゼロ』です。

その金額でも「高い」というコメントとかもぜんぜんなくて。「もっとこうだったらな」というのはもちろんあるんですけれども、金額に対してはマイナスなことはありませんでした。

逆に言うと我々も、それぐらいの金額でいただかないとなかなか収支が合わなかったりもするので、VRコンテンツというのはある意味そういう、1,000円、2,000円で販売することも十分可能なのかなということを実感していますね。

廣田:グッズというお話もされていましたけれども、ゴーグルも入れると……。

三上:3,000円とかじゃないですかね。

廣田:ゴーグルに関しても価格設定で意識したことはあるんですか?

三上:私たちはゴーグルに関してはもうお任せみたいな感じですね。当社が作っているわけではないので、当社には1円も入らないという感じになっています。

そのゴーグルもけっこう売れているみたいなので、セットで売るというビジネスモデルもありかなとは思いますね。

女性はVRに対する心理的な障壁がある?

廣田:わかりました。ありがとうございます。スクエニさんはどういった経緯で価格が決まったんでしょうか?

坂本:もともとは『キミキリ』というタイトルに関して、VR機能を入れる予定があったわけではなくて。

プロジェクトが立ち上がってから開発が進んでいくにあたって、「スクウェア・エニックスで『女性向け』という単語だけだと弱いよね」という話もあり、「AR・VRどっち入れようか?」みたいな感じで「VRのほうが良いんじゃないか」という流れで決まりました。

その時点でフリーミアムなモデルでのプロジェクトの立ち上がりだったので、基本的に体験自体は無料でやっていくかたちを取っているんですが、イベントやコラボカフェなど、そういったところでまた独自のVRのキャラクターとの体験ができるものという位置づけをしていこうと思っています。ですので、アプリとイベントやコラボとかというところは少し意味合いが違ってくるかなとは思っております。

今後の販売方式に関しては、やはり女性向けのVRという分野では、『キンプリ』さんなんかがやられていて、そういう感度の高い人は「VRはこういうものである」ということをご存じな人が多いんですけど。

女性はけっこう、まず物を買うというところだったりとか、これでどういう体験ができるのかわからない人が多いので、そこの裾を広げようというような考えで、基本的には無料で体験をしてもらおうと考えています。

廣田:もともとVRを活用しようと思っていたわけではなく、作っていく過程の中でVR機能を備えた、というお話だったんですけれども。今、VRに期待していることってどんなところでしょうか?

坂本:VRはやはり、1対1の体験だと、キャラクターが好きになったあとの「より深く好きになっていく」というところに対して、かなりインパクトが大きいかなと思います。

ただ、男性はちょっと違うかもしれないんですけれども、女性の場合だと、いきなり目の前に見知らぬ男性がいて壁ドンをするとか、心にちょっと壁があって、「気持ち悪いな」と思ったりするので。

そういうプレイヤーのみなさんのために、「まずは眺めてみましょうよ」というコンテンツを提供しようと思っているという感じですね。

スマホVRで許容できる価格設定に

廣田:ありがとうございます。メガハウスの滝野さん、いかがですか?

滝野:今回、アプリに関しては完全無料で、本体を1万2,000円で販売しています。そうなった経緯としましては、我々のVRゴーグルは、誰もが持っているスマホで遊べるんですが、手にコントローラをつけて実際にかめはめ波の動きをしたらかめはめ波が撃てる、みたいな、モーションコントロールを実現したんですね。

つまり、「コントローラーがなければぜんぜんおもしろくないアプリなんですよ」ということで、アプリの体験と本体の価格すべて込みで、「ゴーグルはこの値段ですよ」という価格です。

弊社の別ラインの商品と比べても、決してすごく高いとか、すごくお値打ちというわけではなく、まあ妥当な価格かなと思っております。

販売方式に関しましては、メガハウスブランドの商品ということで、実際に店舗に行けば買えますし、もしくはネットで買いに行けば買えるようにしました。

お店にVR売り場がなかった頃から弊社はVRゴーグルを展開させていただいておりますので、弊社としても自信のある売り方で、今回も同じように提案させていただいたというかたちですね。

廣田:価格設定を考えるときに、なにか参考にされたものってあったりするんですか?

滝野:やはりスマホのVRなので、例えばこの1万2,000円が3倍とかになって「3万円です」ってやったら、「他社様のハイエンドVRゴーグルでいいんじゃないか」とか、そういう話になってきます(笑)。

なので、「スマホVRで許せる範囲はどこまでかな」みたいなところで、他社様のゴーグルと比較させていただいて、「これだったらみんなが持っているスマホでできるし、なおかつ、ハイエンドVR、本当は10万20万かけなきゃできなかったようなモーションコントロールもできるので、むしろお値打ちなんじゃないですか」という価格です。

実際に「これ安いね」と言われてはおります。

廣田:なるほど。ありがとうございます。

収益化のポイントは価格設定と接点

廣田:それでは、3つ目の質問に移っていきたいと思います。これは一番聞きたいところですが、「VRビジネスを収益化する上で、重要だと思うことってなんですか?」です。では、郡司さんからお願いしてもよろしいですか?

郡司:価格設定と、あとは数を増やすことですね。私も先ほどのセミナーで申し上げましたように、タッチポイントが少ないと。タッチポイントが増えてくると、当然、母数が増えますので、まずは母数を増やすというところがけっこう重要かなと思っています。

ですので、我々もイベントがあると、けっこう手弁当で積極的に出張って、いろんな人に体験いただいています。まずはヘッドマウントをかぶらないとVRのおもしろさは体験できないので、まず体験人数を増やすという試みは積極的に行っています。

廣田:ありがとうございます。価格設定とおっしゃってましたが、それって価格設定を上げる工夫をするというようなお話になりますか?

郡司:そうですね。やはり体験の質は高くて。実は観た人から、たいへんありがたい言葉なんですけど、「もうちょっと高くてもよかったんじゃないの?」って言われることがけっこうあるので、そのへんは体験の質に応じて価格設定をしていくべきかなという感じは今、痛感しています。

まずは開発コストの低減を

廣田:ありがとうございます。三上さんいかがでしょうか?

三上:やはり販売チャネルを増やすというところと。もう1個、なるべく工数をかけずに短期間で開発できるというところが大事かなと思っていますね。やはりコストをかけて、それで売れなかったらマイナスになっちゃうわけなので。

そのなかでぜひご参考になればなというところなんですけど、スマートフォンVRだとどうしても360度見渡すだけで、インタラクションがなかったり、見渡す以外のことってできなかったと思うんですね。

当社のなかでもBluetoothのコントローラを使うとか、スマートフォンのVRでもいろいろ選択肢があったんですけど、「たぶん買わないよね」と思ってまして、もうシンプルにスマートフォンの画面をタップしてもうことにしました。

「さむコン」って名前にしたんですけど。親指のthumb(サム)というところで。両手の親指をスマートフォンの画面にタッチしていただいて、VIVEでいうところのテレポートだったりとか、視点の高さを変えたりとか、そういったアクションをつけています。

これはなんのために使うかというと、VRの中で、VRフィギュアをみる。フィギュアなのでキャラクターは本当に1ミリも動かないんですね。もうずっと動かないんですけど、スマートフォンのVRの中で自由な角度から見れると。

フィギュアとかって8,000円とか、高いものだと2万円とかで売っていると思うんですけど、等身大でアニメの世界に自分が入れて、いろんな角度から見れるというところだけでも、けっこうユーザーさんにすごく喜んでいただけて。

ボイスもないしアニメーションもないんだけど、好きな角度から見れるというVR上のフィギュアというところで、1つ価値が出せたのかなと思っています。

これももしかしたら単体でも「1シーン当たりいくら」みたいな売り方も本当はできたのかなと思うんですけれども、今は3つおまけ的に入れているような感じですね。

VRに向いている作品の特徴

廣田:三上さんの先ほどの登壇のお話を聞いていて、けっこうコンテンツ選定が重要になってくるのかなと思いました。そこで、どういった戦略というか、どうやってコンテンツを選定されるのかなっていうというところが気になりまして。

三上:キャラクター数が少ないとか、同時に出てこないとか、そういうところですね。なので、アイドルものだと、6人とか十何人とか出てきちゃうので、スマートフォンのVRではスペック的に厳しい。まともに動かそうとすると、1人か2人ぐらいが限界かもしれません。。

そういう意味では、ヒロインの数が少なかったりとか、「それぞれが一緒に出てこないと不自然だよね」みたいなものがなくて、個別に登場しても大丈夫という作品を選んでいますね。

廣田:そのコンテンツに対してのファンの数とか、そういったものって調査したりするんでしょうか?

三上:そうですね。当社の宣伝というところでいうと、ほぼ広告費ってかけてなくて。

公式Twitterでのリツイートだったりとか、公式イベントでの告知というところしかやっていないので、やはり、おっしゃられるみたいに、どれだけすでにファンがいるのかなというところを目安にやっていますね。

廣田:ファンがどれだけいるかというときは、Twitterの公式のアカウントのフォロワー数とか、そういったところから考えているのでしょうか?

三上:そうですね。

廣田:わかりました。ありがとうございます。

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