いま一番調子がいいベンチャーキャピタルとして予測する

小澤隆生氏:皆様どうもよろしくお願いいたします。改めましてヤフーの小澤でございます。

数あるセッションの中からこちらのセッションを選んでいただきまして誠にありがとうございます。このような立派な会場で、またSoftBank Worldという素晴らしい場で、先ほど紹介ありました「ECの10の未来予測」という表題と合わせまして、ヤフーはそれに対してどう対応していくのかという話を40分、お時間頂戴しましたので話をさせていただきたいと思っております。

私は今、ヤフーのショッピング、トラベルという大きく2つの事業を担当させていただいております。この事業の責任者が、そのまさに自分の担当している領域の未来を予測するというのは必要なんですけど、このような大勢の皆様方の前で話すのは大変リスキーでございます。2~3年後を見たときに「あいつ全然外れたじゃないか、だから上手くいかなかったんだ」となるようなリスクを抱えながら話をするつもりですから、皆さん優しく聞いていただきたいと思いますし、未来なんてものは言ったって将来わかりません。

5年前、スマートフォンがこんなになると思ったかと。私も思わなかったですね。じゃあ5年後。やっぱりなかなかわかりづらいところがある。今日、10の予測をするにあたってはなるべく堅い未来。これはまあ確かに間違いないだろうなというところを持って参っております。聞くほうからすると「それは知ってるよ」ということが多いかもしれませんけども、その中から「こういうビジネスチャンスあるんじゃないかな」「こう世の中が変わるんであれば我が社はこうやってやってくべきなのか」というようなところを持って帰っていただければと思います。

ヤフーの中で私は「YJキャピタル」というベンチャーキャピタルをやってるんですね。社長でやっております。去年くらいからECへの投資をしております。やはり5~10年後を見据えてこういう会社が伸びるんだという目線で投資をしていくわけですけど、YJキャピタルは日本でいま一番か二番に調子がいいベンチャーキャピタルでございます。去年くらいから投資を始めて、すでに3社上場しているんですよ。これはなかなかなことでございまして。そういう人間が予測をしているということですから多少確度があるかもしれませんね。自分にプレッシャーをかけたところで、そろそろ始めさせていただきます(笑)。

今回予測するに当たって、ふたつの方向性考えました。eコマースっていうものに関して、増えるものと減るものに別れて考えてみたんですね。

皆さん、増えるもの何ですか? もちろんeコマースの市場は増えますね。

2018年、日本のEC市場は2倍の20兆円規模に成長する

ここにお集まりの皆さんは何らかのかたちでECに興味がおありになられて来てる。ECの未来は明るい、将来どうなるかなと思っている。じゃあどのくらい明るいのか。現在、我が国のeコマースのマーケットは9.5~10兆円と言われています。2014年度、約10兆円超えてくるんじゃないかなと。2018年、約2倍の20兆円でございます。

翻って、どこまで伸びるか。小売とサービス業のマーケットサイズは現在日本において300兆円。今それがインターネットを経由してる率は、たった3%でございますね。2018年は20兆円てなってますから、これがおそらく6%くらいになるだろうと。経済産業省からこの3%と出てますから、なかなか正しい数字だと思ってるんですけども、たった6%で20兆円でございます。

欧米は今どうなっているか。この時点でイギリスは10%越えてると言われております。我が国においては20%。このあたりがターゲットライン、1つ目の未来予測でございます。小売業・サービス業におけるEC化率というのは約20%まで行くだろうとヤフーとしては考えております。つまり60兆円のマーケット。これから新たに50兆円のマーケットが創出されます。(現在の)10兆円を奪い合うんじゃないんです。新たな50兆円のマーケットに対して、新しいサービスや会社がどんどん活躍するチャンスがある。当然ヤフーもこの50兆円に対していかに頑張るか。こういうことを考えているところでございます。

eコマースのマーケットが増えるということをもう少しブレイクダウンして考え「売り手」に関してお話をしましょう。eコマースはもちろん売り手と買い手がいて初めて成立するものでございます。これから出てくる50兆円のマーケット、将来60兆円のマーケットに対して売り手っていうのはもちろんどんどん増えていくわけですね。15年ほど前からECというのは拡大してきました。皆様方、15年前にもう参入されてるかもしれません。

基本的には大きな会社様が「リアルだけじゃなくインターネットも使おう」。こういう流れがひとつ。「リアルではやってないけどもインターネットだったら勝てる」といって入ってきたAmazonさんみたいのがもうひとつ。現状どうなってるか。リアルの会社様というのはどんどん増えております。そしてリアルでないインターネットだけの会社もどんどん増えております。当たり前のようにこの流れは加速しているわけですね。私が言うまでもありません。

これがどのような増え方をしているか。例えば農家は全国に140万戸あります。漁業は17万人います。卸業・小売は93万社。製造業は43万社。簡単にすべて20%がインターネットに参入してきます。28万戸・3万人・18万社・8万社。この方々がインターネットで物を売るようになる。我々の数字の予測はこういったものを立てております。現状、小売業で参加されている方はおそらく積極的にやられてる方で5~10万社だと思うんです。これが18万社だとちょっと少ないかなと思います。統廃合が起きるでしょうね。

インターネットでは全国に物が売れる。統廃合が起きないと、ひょっとしたらこの数字は20~30万社に増えないかもしれませんね。この小売業に対して今後どうなっていくのかは、のちほどの予測で申し上げます。ただ、数字としては合わせた数がインターネット上の売り手として存在していると思ってます。

1億2000万人のうち、3000万人がネットで物を売るようになる

また、とても重要な売り手がいるんです。会社でECをやるだけじゃなく、個人として売り手になるんですね。当然ヤフオクというオークションサービスだけじゃなく、日常的にもっと簡単に、オークション形式ではなく物を売り買いするようになる。我々は売り手と買い手の垣根、個人がなくなってくるという予測を立てております。

全国で1億2000万人いる国民のうち、約2000~3000万人がインターネットで物を売るようになる。こういう予測を立てております。不用品・手芸や趣味で作られてるもの・釣りで釣りすぎてしまったお魚・箪笥で眠ってるもの。こういったものはもちろんインターネットで販売されるようになる。じゃあ今まで何で販売されなかったのか。面倒くさいから、そしてシステム利用料が高いから。15年前から始まったECは、ものすごい勢いで簡単に売れ、そしてシステム利用料が安くなっているわけです。昔大企業だけが参入できたものはどんどん手軽になっています。まだまだ広がって参ります。その結果何が起きるか。もちろん商品が爆発的に増えます。

ヤフーショッピングにおけるいちストアにおける平均の出品数は4000品です。もちろん誰も彼もが個人まで含めて4000品売れるものではありませんけども、売り手が増えれば当然商品数が増える。しかも今まで手に入らなかったようなものが手に入る。先ほど申し上げました、漁業・農業の方が入ってきます。既存の流通で、どこで売られているかわからなかったおいしいお魚やお米が直接売買できるようになる世界が来る。

Taobao。昨日ジャック・マーさんが来ておっしゃっていました。「10年後を見据えて僕らはビジネスやってるんだ」と。現時点でTaobaoは5~10億品、こういうレベルで商品が出てます。10億品がある社会。何でも買える・何でも売れる。こういう社会が来るわけですね。もちろん買い手も増えます。現状eコマースでお買い物されたことある方、この会場のどれくらいいらっしゃいますか? (挙手は)思ったより多くないですね。

でも今手が挙がってなくても、だいたい東京で皆様方の客層ですと、7割~8割、ヘタすると9割くらいが何らかのものをお買い物されてます。ただこれはかなり特殊です。東京のITリテラシーの高い地域に限定されてるものです。

例えば皆様方のお父様・お母様。もう高齢かもしれません。こういう方々が今のヤフーショッピング・楽天・Amazon・カカクコム。ものすごく使いこなして注文してるイメージありますか? そんなことないですね。難しいですよ、自分で言うのも難しい。アプリをダウンロードして、IDとパスワード入れてくださいと。ショッピングモールっていうのは同じ商品をたくさん売ってるお店がありますからね、その中からどれ買ったらいいかわからない。クレジットカードの登録? 危なすぎてしょうがない。こうなるわけでございます。こういう方々に対して、今ECというのはべストなソリューションを提供できておりません。もちろんこれからすべて伸びしろがございます。

そして東京・大阪が中心なんですね。大都市圏でヤフーショッピングも楽天もAmazonも伸びています。少なくともヤフーショッピングの数字を見てる限り地方での購買率というのはまだまだ低いです。そして商材も偏ってます。ヤフーショッピングで売れてるもの、自分でわかるからお話しますと、食品・家電・雑貨・ファッション。これくらいでございます。食品の中でもお水とかお米みたいに、わかりやすいものが売れてます。でも世の中には多分ネットスーパーも流行りますよね。もっとおいしいお米買いたい、そういう方が増えます。

間違いなく、まだまだ皆様のような方でも、平均すると3~5%程度のインターネットを経由した購入しかしてない。20%くらいはそりゃ上がりますよね。欲しい物も値段が安い物もインターネットだと手に入るわけですから。

そして全国民の、まだまだ使ってない方を増やしていかなきゃいけない。ちなみにヤフーショッピングにおける買い手の数っていうのは公表しておりませんけども、もう数千万人はおります。こういう方々がいても、まだまだ1億2000万人いる中の伸びしろは相当あるんですね。皆様、手が挙がらない方いらっしゃいました。まだ増えます。

それから個人の方が売り手に立ちますと申し上げました。環境の問題がこれからさらに大きく取り上げられるようになったときに、リユース。皆様方も物を捨てるというところに罪悪感を感じてくるでしょう。また中古品への高いニーズもございます。リユースのマーケットは現在、もうすでに1兆円あるんですね。2018~2019年までで我々はプラス1兆円あり、2兆円にマーケットが大きくなると予測してます。リユースのマーケットはまだまだ大きくなりますから、様々な形での参入余地があると考えてるわけでございます。

当然、ヤフーというのはヤフオクを持っておりまして、ヤフオクで1兆円のうちのかなりの率を市場開拓して参りました。ただヤフオクは、皆さんお使いになられてる方どれくらいいらっしゃるかわからないですが、現状では使う方と使わない方が明確に別れております。それはオークションという、競り形式の買い方の面倒くさいというイメージ。実はヤフオクというのは競り形式だけじゃなく、購入を即時できるような素晴らしい機能がついてるんですけども、なんとなく面倒くさいなあと、そういう意識があられる中で、多少、今はここ数年伸びが止まってきたところでございます。

飲食店はネットで予約できるべき、当たり前ができていない

まだまだ伸びる余地があると我々は考えているんですね。新しいマーケットで「サービスEC」というのがございます。皆さんイメージつきますでしょうかね?

旅行・飲食店の予約。ここで写真出ているようなマッサージ、はたまた車検、ゴルフ場の予約・内装の工事。何を申し上げたいかというと、あらゆるものがインターネット経由で予約・購入されるようになる。それは物だけじゃない、サービスもです。なので我々は母数を小売プラスサービス業の300兆円においてるんですね。

サービス業のEC化率というのは、実はすでに物よりも高くなっているカテゴリーがあります。例えば旅行の業界。私たちの推測では約29%がインターネット経由で予約がされている。特に宿泊予約でございます。皆様方、出張行く際の楽天トラベル・じゃらん・たまにヤフートラベル(笑)。ポイントが5%貯まるらしいですからね。もうちょっとでいいサービスになりますから、たまにヤフートラベル使ってください。

29%がおそらく、3~4年後には約40~50%、これぐらいになる予定です。今もっとも熱いサービスECの領域は飲食店の予約です。皆さん、飲食店の予約取られるとき、電話して断られますでしょ? 「空いてないんです」と。せっかくぐるなび・食べログ見ていいお店だなと思ってお電話しましたのに「いやその日はあいにく」。(お店が)忙しいと電話出てもらえないですね。インターネットで予約するべきですよ。当たり前なんです。

ホテルだったら一番最初の検索は「泊まる日・行きたい場所を指定してください」。空いているところだけが出てくる。飲食店はそうなってないですね。この当たり前のことができていない。当たり前のことは必ず当たり前になるんです。数年来に、飲食店予約の20~30%はインターネット予約になります。これに気付いてるから、リクルートさんも、カカクコムさんも、食べログさんも、ぐるなびさんも、そして私たちヤフーも、特に飲食店の領域のサービスECというのは頑張っていこうとなるわけです。同じことが車検・ゴルフ場予約ではすでに起きてます。内装の工事でも、電話をかけてるあらゆるものがインターネット経由になります。

少し脱線します。私はYJキャピタルというベンチャーキャピタルをやってて、個人でも投資をしてます。その中でお弁当・印刷というところに強く注目して投資をしています。ものすごく伸びてるんです。でもお弁当も印刷の領域もマーケット全体が伸びてないんです。何が伸びてるかというと、インターネット経由の受注が伸びてるんです。

ネットだけが伸びている弁当、印刷業界

お弁当のマーケット自体は平行、もしくは多少下がっている。ただ、そのお弁当をインターネット経由で注文する人がどんどん増えているからこそ、インターネットで注文を取ることに特化したお弁当屋さんが伸びている。

印刷の業界はむしろ下がってます。そんな中でインターネット通販を利用した印刷会社というのがどんどん伸ばしている。あらゆる業種・業態において、インターネット経由での受注が増える。これは私が言うまでもなく、間違いのない事象です。しかし、既存の業種・業態の方が伸ばすのではなく、なぜか新興企業が伸ばしている。

おそらく自分たちの視点・お店、リアルのビジネスとの共食いがあるから、インターネットに純粋に突っ込めないのかもしれない。そういう間を突いて、インターネット専業のサービスECの会社がどんどん伸ばしている。アウトドア・レジャーの会社。こういうところにも投資をしています。アウトドア・レジャーの予約に電話をかけますと、「いまラフティング中だから」「バンジージャンプの相手をしてるから出れません」となる。インターネットで枠だけ登録しておけば予約ができるわけです。

サービスECは非常に重要な領域です。マーケットサイズもとても大きい。ここ数年で間違いなく盛り上がってくるでしょう。アメリカはどうなっているか。さらにここに個人売買が加わるわけですね。皆さんご存知のAirbnb。ただの宿泊予約ではない。自分の部屋・家を貸せる。TaskRabbitってご存知でしょうか? 個人が「犬の散歩が得意です」「お洗濯が得意です」と何でも屋さんみたいな形で、何かを5~10ドルでやりますよとタスクを登録するんですね。それを近所の人が買う。サービスECに個人の要素が加わってきている。アメリカではめちゃくちゃ伸びています。

こういう世界はおそらく日本でも間違いなく伸びてくるでしょう。個人の資産・能力をインターネット経由でビジネスに変える。これはUberもそうです。ものすごく大きな流れになっています。忘れないでください。3~5年後、日本でも当然法律の問題があるのでこれをクリアしながらになりますが、大きな流れになるでしょう。

商品を注文する必要すらなくなる、自動化の流れが加速

発注方法。増えて行くんですね。インターネットで注文する際パソコンを開いて注文するのが15年前。今はスマートフォン・スマートタブレットの経由が4~5割になってきました。

発注方法がデバイス・機器によって多様化してきます。この先何が起きるか。Amazon Dashというデバイスご存知でしょうか。これ何ができますかというと、上にある丸い部分でバーコードを読むんですね。たとえば家でケロッグのコーンフレークを食べていてそろそろ無いなと思ったら、箱についているバーコードをピッと読むと、Amazonで自動発注されるんです。わざわざスマートフォンでアプリを立ち上げる必要すらない。こういう機械をAmazonさんは作ってます。

ウォーターサーバーありますね。大変流行ですが、水がなくなるとどうなりますか? ウォーターサーバーの水の頼み方っていうのは2種類ありまして、2週間に1回運びますというのと、水がなくなったら電話くださいというパターンなんです。もしウォーターサーバーに水位を検知する機械がついていて、3分の1を切ったら自動的に発注するような仕組み。誰が考えてもこっちのほうが便利でございます。いちいちウォーターサーバーをどこから頼むかなんてことは考えませんよね。注文は同じところからしかしないんですから。

これは誰が考えても便利で、実際、自動販売機で実装されているのは皆さんご存知の通りです。多くの自動販売機に今PHSがくっついていて、コーラやコーヒーがもうないよ、という状況で自動的に通信がされ、補充をする車が届くわけです。全然売れてない自動販売機はもちろん補充に行く必要ありません。インターネットが物につながる、物がインターネットにつながる。Internet of Things。こういったかたちで発注方法が自動発注を含めて多様化していきます。

皆様方がより便利に発注する。ECサイトにアクセスしているんだというつもりもなく、物が届く。そういう時代がすでに来ている。そしてIoT(Internet of Things)、Internet of the Useがこれからどんどん爆発的に広がる中で発注方法の多様化というのは、正直今は我々が想像もつかないような発展をするに違いないと考えております。

建機のコマツさん。ショベルカーなどの様々な部品が摩耗してないか、油が切れてないかセンサーをつけてインターネットで通信し、そのメンテナンスで非常に大きな収益を上げられてます。もちろん個人の車にも入ってくると思うんです。マンション・電球。あらゆるところにセンサーが入って自動発注をする。連絡を自動的に行う。こういう世界が間違いなく来ます。

※続きはこちら! 3Dプリンターで物流がなくなる!? ヤフー小澤隆生氏が予測する「未来のECから消えていくものリスト」