アンサーは、友達へのシェア禁止?

――アンサーが、Q&Aアプリなのに、ユーザー間の雑談などのコミュニケーションが多くなっているということでしたが、川崎さんはこれについてどう思われますか?

川崎:でもなんかやっぱ。速さなんですよね。

古川:速さはありますね。

川崎:けんすうに言われたときに、はっとしたんだけど。アンサーに答えるやつが山のようにいるっていうのはさ、なるほどなって思ったね。

古川:そうですね。どちらかというと質問するほうが難しいので。なので、質問の敷居を下げているっていうのがアンサーですね。最近はボットをいれていて、「ひまだよ」って入れると、「こんな動画どう?」ってbotが返したりとか。

――ゆいぼっと、ぽいですね。

古川:そうですね。初期のインターネットを再現している感じですね。botおもしろいっすよ。

――出会い系みたいにはならない?

古川:出会えないようにしていますね。出会いぽいやりとりが多いと怖いじゃないですか。あと、匿名が基本なので、極めて友達に紹介しづらいサービスになっています。なので、もういっそ友達にシェアしたりするのを禁止にしてもいいくらいだと思っていますね。

――自分のアカウントを?

古川:このアプリ自体。

――シェア機能を無くすと。

古川:禁止です。シェアしたら、Banみたいな(笑)。

毎日20時間アンサーをやり続ける中毒ユーザー

――(笑)。僕が最初にアンサーやったときに、やたら女子高生とかがレスしてくるんですよ。真夜中とか、明け方近い時間帯に。何なんだこの子たちと思って。プロフィールとか見ると、なんか回答ランキング1位、2位みたいな子たちばっかなんですよね。だから、なんかゲーミフィケーションじゃないけど、そういうランキングアップを目的にして回答してるのかな、て。それを運営側が仕掛けてんのかなっていうふうに思ったんですけど。

古川:あんま仕掛けてないけど、ランキング目当てとか多いですね。あとやっぱちょっと誤算だったのが、熱量が高すぎるということ。個人的には、熱量の消費をもうちょっと抑えたかったんですよ。20時間アンサーやって、4時間寝て、また20時間やってる人もいたり「自分ではやめられないので退会させてください」みたいな問い合わせが来たり。

――それは、母親が子供を退会させるよう通報してくるってこと? 20時間もやってるから。

古川:いや、自分で。

川崎:自分で!?

古川:自分が止められないから。mixiさんとかも、初期にすごい中毒があったじゃないですか。あれみたいな感じですね。

熱量が高すぎてアプリにハマり過ぎちゃうと、日常のバランスを崩しちゃうんですよね。そうすると、日常に入り込めなくなっちゃうので本当はもうちょっと抑えたいですね。やっぱりコミュニケーションって中毒なんですよね。

muukこれからどうしましょ?

川崎:みんなアンサーの存在をどうやって知ってるんですか?

古川:わかんないすね。ランキングとか、あとは友達から聞いてとか多いですけどね。何でしょうね。

川崎:muukをどうすればいいか、みたいな話をね。さりげなく(笑)。

――muukをどうすればいいか、けんすうさんに考えてもらいましょう(笑)。

川崎:ここ、こうしたらいいんじゃないかとか。このこだわり捨てたほうがいいみたいな、そういうのがあるといいんですけど。

古川:ビデオは絶対ありますよね。主戦場はビデオかなと思いました。

川崎:それはどういう?

古川:なんでしょう。写真って、LINEとかFacebookとかでも送れるんですよ。加工が簡単なので、気軽にクオリティ高いものを創ることができる。ただビデオってすごいスキルがいるので、送りづらいんですよね。加工も面倒だし。とすると、すぐに消えるmuukに動画を投稿するというのはイメージがつきやすいです。となると、TwitterやFacebookやインスタグラムに写真を投稿するというのと、本当にぜんぜん別の体系になるので、そこはいいかなと。

川崎:なるほど。

古川:動画で気軽なものを撮って送れたらおもしろいなと思いますね。どうすればいいんですかね? どうなるんですか? この先。

川崎:わかんないです。

古川:そうすよね。僕もわかんないです(笑)。

「インターネットおじさん」の意見はあまり聞かない

――ユーザーの声って、どんなのが来てます?

川崎:ユーザーの声ですか?

――muukってけっこう制限があるじゃないですか。送った写真が消えちゃって保存しておけないというのもそもそもそうだし。あとは、設定しておいた友達のグループが勝手に消えたりとか。むしろ不便と思われてしまいそうなところもいろいろあると思うので、ユーザーから改善要望とか来てるのかな、て。

川崎:なんでしょうね。なかなか難しいですよね、それって。ぶっちゃけ、これもさっきの話と同じで、インターネットおじさんの声はあんまり聞かないんですよ。だからTwitterでmuukへの不満がつぶやかれていても、たいして別に聞かないっていうか。

古川:けっこう、そのビックリしたのが、インターネットおじさんって言うのがいいのかわかんないんですけど、muukが出たばっかの頃、インターネットおじさんたちがみんなワーって使ったじゃないですか。あれはやっぱミクシィのサービスだからなんですかね? 試してやるか、みたいな。

川崎:どうなんすかね。もちろんミクシィだからというのは多いと思うし。あとは大なり小なり、けんすうさんに僕からお願いしてとか、いろいろあったので。インターネットおじさんが来やすいタイミングっていうのを、意図的に作ったというのはありますね。せっかくサービスリリースしてるので、ある程度知ってもらいたいっていうか。

海外では"匿名"がキテる

川崎:こういうのやってて思うのは、アンサーとかの場合って、友達とつながる必要ってないじゃないですか。

古川:はい。

川崎:muukって友達とつながる必要があるんですよ。相手がいないとそもそも写真を送れないので。そこは正直課題だと思っています。一方で、アドレス帳連携っていうはワークしていない、みんな使ってないっていう話もあるし。ここんところをどう超えていくかは、すごい問題意識持ってる。

古川:友達と使いたいかどうかというのは、最近の大きなテーマですよね。匿名が海外ではキテるみたいな。僕はiPTTっていうアプリを社内で教えてもらって。なんかラジオみたいなのが、世界中でつながるんですよ。お互いにトランシーバーみたいにできるんですけど。アラブ人とつながって、なんか知らないんですけど、歌ってたりするんですね。これが非常におもしろいなって思っていて。なんか5人に送って、そのうち1人ぜんぜん知らない人に送られるたりすると、一気に緊張感出て、意味わからないおもしろさが出るかなって。急に黒人から送られてきたらすげえ気になるけど、5秒で消えるので何が起きたのかはわかんないっていう。これとかどうですか?

川崎:おもしろいですね、そういう緊張感。

古川:それが日本じゃなくて、海外の誰かに送られるとなるとロマンないですかね?

川崎:あるね。それなんかちょっと、パーティーグッズみたいなノリでいいね。

古川:そうですね。なんか昔、ガラケー時代にそういう一枚写真を送ると、一枚写真が返ってくるっていうサービスをやって、個人的におもしろかったんですよ。なんかみんな写真が欲しいだけなので、送る写真って手を抜くんですよね。なので、クソみたいな写真ばっか来るんですよ。それが逆に新鮮で、田舎の写真だったらその人にとってはどうでもいいけど、僕らにとってはちょっと新鮮みたいな、違いがあるので。

muukのオモシロ活用法

川崎:なるほど。なんか、nanapiのみなさんにいまmuuk使っていただいてるんですけど、送られてきた写真に対する返信って、やっぱ今はなかなかしづらいかなっていう印象あるんですけど。それってどうなんですか?

古川:すげえ返信してますね。みんな。

川崎:それは、どういう返信? 例えばけんすうさんがなんか送ったら、何を返してくるんですか?

古川:その文脈に沿ったものがけっこう最近多くて。似顔絵が送られてきたら、僕も違う人の似顔絵描いて送り返したり。何人かでみんなの似顔絵描いて遊ぶとか。あとなんでしょう。あきらかに重要な、うちのサービスの次のバージョンのラフ案とか撮って送ってきて、でもmuukだから3秒しか見られなくて消えちゃうとか。

川崎:(笑)。

古川:そういう高度なやり取りはあります。経営者(僕)に、「ちゃんと送って見せたじゃないですか!」って言える上に、僕はそのラフを見直すことができないので、あれこれ言われないっていう。高度な社内政治に使われてますね。

川崎:そういう使い方っておもしろいっすね。自分も知り合いに、「引っ越したんですよ、最近。住所、これ」ていうのをmuukで送って、「見れねえよ」みたいな(笑)。

古川:それいいっすね。そういうふうに、クリエイティブになっていきますよね。制限があると。

目指すは究極の内輪ウケ

川崎:その、なかなか難しいのが、クリエイティブになりすぎると駄目じゃないですか。

古川:ほかのユーザーからしてみれば、敷居があがるっていうね。

川崎: muukって、メディアになるってあんま考えていないんですよ。インスタグラムみたいな、「作りこんだるで」「ええ写真撮ったるで」みたいな感じになりたくないんですよね。要は僕ら、よくわかんない無意味な写真を集めたいってけっこう思ってて。それはなんか人から見たら無意味で無価値なんだけど、その当事者の間だとおもしろいみたいな。別に、nanapiの書類が俺に送られてきても、なんじゃそらって感じなんだけど。でもさ、nanapiの中だとおもしろいみたいなのってあるじゃないですか。

古川:あります。

川崎:だから、写真による究極の内輪受けみたいなのって、けっこう意識はしてるんですけど。

渋谷を歩くのが怖い若者

古川:最近ちょっとテーマとしてあるのが。今日cakesっていうメディアで出ていた『ヤンキー経済』の人と『嫌われる勇気』って本を書いている人の会談で。本両方ともおもしろかったんですけど、やっぱネットによってすごい新裏社会ができているっていう話があって。昔の裏社会って、近いからこそすごい相互監視が息苦しいみたいなのがあったのが、ネットでも同じことが起きていて。友達とつながりすぎちゃってるから、今「渋谷を歩くのが怖い」っていう若者が多いという……。

川崎:まじで?

古川:例えばなんかおしゃれな店行ってたら、「あいつあんな店行ってたぜ」ってTwitterで書かれたりすると。そういうのがちょっと怖いみたいな話があって。これもちょっとおもしろくてですね。muukみたいに写真が消えるっていうのに近いんですけど、そういう相互監視の目から離れられる場所っていうのは、これからすごい求められるんじゃないかなと。

アンサーみたいに、完全に匿名ですっていうのもあるし、もう写真とか動画が残らないと。5人ぐらいだけでシェアして終わるとかもそうだなと思っていて。なんか密になってしまったコミュニケーションを、ちょっと剥がす作業っていうのは必要じゃないかなと、思っていますね。

川崎:いいまとめなんじゃないですか。

――ですね。なんか、難しい話でしたけど。

古川:(笑)。