2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
ultra pay&enigma pay対談(全1記事)
提供:株式会社ネオキャリア
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――HR Tech企業のネオキャリアが、グループ会社を立ち上げてFinTech事業に力を入れているとお聞きしました。提供されているultra payカードとenigma payについて、どんなサービスなのか教えていただけますか?
竹谷直彦氏(以下、竹谷):ultra payカードは、誰でも“秒で作れる”をコンセプトにしているVisaブランドのプリペイドカードです。コンビニエンスストアなどで、自分で入金した金額だけ使えるプリペイド(事前入金)式のサービスになっています。
主にご利用いただいているのは、与信が通らずクレジットカードが作れない社会人の方々や、高校生や大学生などの学生が中心です。キャッシュレス決済の中でも、QR決済サービスはリアルとネット両方で使える場所が限られてしまったりします。そこでultra payカードは一番汎用性の高いVisaのプリペイド式カードをご提供しています。
小口敦士氏(以下、小口):enigma payは企業様に導入していただくサービスで、従業員や業務委託の方が、いつでもどこでも給与が受け取れるようになるという福利厚生の一環としてご利用いただいています。
通常は月1回の給料日があると思うんですが、給与が振り込まれる前にどうしてもお金を使いたい時に、enigma pay導入企業で働いている方でしたら、専用アプリで申請いただければ、給料を前払いで受け取ることができるんです。このサービスはガラケーにも対応しており、最高齢では70歳ぐらいの方に使っていただいています。
例えば冠婚葬祭や、今ならGo Toキャンペーンで旅行に行く時に1万円くらいのお金が必要になったら、アプリで申請すると銀行にリアルタイムで振り込みができるほか、給与でない報酬であれば先ほどのultra payカードにチャージできるようになっています。
―—実際に、導入企業やユーザーの方々のどんな課題解決につながっているのでしょうか?
小口:長らく人手不足と言われていたので、もともとは採用で応募を増やすためにenigma payを導入してくださっている企業様が多かったですね。求人広告に「日払いができる」という内容を入れると、応募数が3倍ほど増えたというデータもあります。
今はマーケットの状況も変わり、コロナ禍で逆に離職が増えてしまった業界もあると思います。飲食店や小売りが、緊急事態宣言で休業や営業時間の短縮をせざるを得ない中で、給与の前払いができるということで、営業を再開した時に従業員の方が戻ってきてくれるなど、引き続き導入は加速しています。
また、このコロナ禍で問い合わせ数が例月の1.7倍に増えた月もあり、突発的なお金のニーズがある方や、業態として好調な物流関係など、せっかく働いたから早く給与、報酬が欲しいといったところもあるのかなと思っています。
竹谷:ultra payカードは2020年4月30日にローンチしました。まさにコロナ禍の真っただ中という状況だったので、コロナ前後での比較はできないんですけれども、アプリのインストールは当初の想定の数十倍になりました。想定が低かったというのもあるかもしれないんですけど(笑)。
ただ、世の中のニーズとして巣ごもり消費が増えて、ネットで物を買うことが増えている時に、クレジットカードが必要な場面は増えていくのかなと思っています。一方で、不正利用の問題などもありキャッシュレス決済の危険性が言われる中で、チャージした分しか使えない、誰でも作れるVisaブランドのプリペイドカードのニーズは高まっていると実感しますね。
――それぞれ事業の立ち上げまでにどのくらいの期間がかかったか、どんなところで苦労されたかを教えていただけますか?
小口:そもそもHR Tech領域でのネオキャリアグループのプロダクトとしては、勤怠・人事管理システムの「jinjer」というサービスがあり、enigma payはその第2弾というかたちで始まりました。今回のenigma payもultra payカードもそうなんですけど、どうしてもカスタマーが関わってくるので、UIやシームレスな連携という部分では、正解がわからない中で、今よりいいものを作っていくというところで一番苦労しましたね。
僕らenigma payは立ち上げからもうすぐ4年になります。業態としては14年ぐらい前からあったんですけど、急成長している他のクラウドサービスに比べると、まだまだ伸びしろがあるマーケットだと思います。
でも、僕らがenigma payを立ち上げてから、いろいろなスタートアップや大手企業が30社ぐらい参入されてきて、やっとマーケットが盛り上がりつつあるので、他の企業様とも一緒によりよい世界観を実現していきたいと思っています。そういったところで、まずマーケットを大きくしていくところと、僕らのグループとしても初めての領域での試みという2点が苦労したことになりますね。
竹谷:ultra payカードは、構想から約1年ほどで発行に至りました。ただ、発行者として財務局による登録審査があるので、その点では時間がかかったと思います。開発自体はいろいろと難題にぶつかりましたが、グループ内の開発チームとコミュニケーションをとって1つずつ解決をして乗り越えました。あとは外部の決済システムとの連携や、グループとして初めてやることになった決済の仕組みを作る部分では、比較的苦労がありましたね。
小口:世の中にはまだ、僕らのように前払いサービスとバーチャルプリペイドカードがガチガチに組んでシナジーを起こす取り組みをしているところがないので、一番苦労しているのは前例がないところかもしれないですね。
自分たちの描いた世界観を実現していくに当たって、法的な部分を一緒にキャッチアップしていったりと常に連携していくのが、大変でもありやりがいでもある気がします。
――なるほど。この2つのサービスをつなげるアイデアが生まれたきっかけは何だったのでしょうか?
小口:誰もが働いた分の給料を使いたいときに使える世界観を一緒に作りましょう、ということで、竹谷さんにご入社いただいたことがまず最初のきっかけだと思いますね。
竹谷:一部の業種に限定すれば、業務委託費をプリペイドカードに入れるサービスをされているケースもありますが、労働基準法(24条)が定める賃金の支払いに関する原則で、給与についてはプリペイドにチャージして支払うことは日本では現法上できません。
一方で海外では「ペイロールカード」と呼ばれる、給与を直接プリペイドカードにチャージするサービスや公的給付金の支払いをプリペイドにチャージする仕組みが浸透していて、アメリカなどは連邦政府の各種給付金は、このプリペイドチャージの仕組みによって、ほぼ電子化されたと言われています。
日本でも、デジタル庁が創設されるなど、さまざまな変化の流れがある中、大切な働いたお金を誰もがもっと自由に選択して受け取れるようになることも1つの課題だと考えています。特に働き方という観点で社会課題の解決に取り組むネオキャリアでこそ、HR TechとFinTechという両軸から、給与を支払う企業視点でも、お金を受け取るユーザー視点でも優れたサービスが作れるのではと私は思っています。
今回enigma payとultra payカードでは、業務委託に限定して業種にかかわらず、現在の法律の枠組みの中でサービスをスタートさせました。これが別々の企業の連携となると、たぶん「法改正されてからやりましょうね」という話になってしまうと思うんですけれども、兄弟のような存在のグループ会社だからこそ先行してできたことだと思います。開発も1チームでお互いニーズを理解し合ってスムーズに進めることができたのではと感じています。
ultra payカードの機能面では開発面でもデザイン面でもUI/UXをとても重視しています。enigma payからチャージしたい時も、チャージの選択肢の中からenigma payを選択するだけで、1つのアプリ内でワンストップにチャージが完結できる設計にしています。enigma pay側で申請が承認されれば、すぐカードに働いたお金がチャージされるという世界が実現できています。
――承認されるまでには、どれぐらいかかるんでしょうか?
小口:銀行間ではリアルタイムで振り込まれますね。2018年10月から、モアタイムシステム(注:平日昼間以外の夜間や土日祝日でも、銀行間での即時入金が可能)という新しいシステムが導入されたんです。これを導入している銀行に限られますが、銀行の営業時間に関わらず24時間即時入金ができるようになったので、モアタイムシステム参加金融機関によりますが夜中でも振込が可能です。
竹谷:ultra payカード自体はアプリからリアルタイムに、すぐにチャージできて、すぐに使えるというところが特徴です。これからの世界は、働いたらその日の報酬はプリペイドにチャージされて、すぐにネットでもリアルのお店でも使えてしまう。わざわざATMでお金を下ろして現金で何かを買ったりするようなことは少なくなっていくのではないでしょうか。
――今は他にもいろいろな決済サービスが出てきていますが、ultra payカード、enigma payの強みはどんなところでしょうか?
竹谷:ultra payカード側では、やはりenigma payとつながっているところが一番の強みです。事業の裏側の話になりますが、我々のような繰り返しチャージができるプリペイドカードの事業モデルの課題として、コンビニや銀行でチャージをする度、事業者側に手数料が発生するので収益構造が非常に厳しいことが挙げられます。
そういう仕組みなので、基本的にプリペイドカードは儲からない。そうなるとカードユーザーを他のサービスに誘導してマネタイズしたり、回収リスクはあってもユーザーに後払いのようなサービスを提供して手数料を取るモデルが必要になってきます。ultra payカードはenigma payと連携して、グループ内でチャージの際に事業者間の手数料を少なくすることができるので、そこがultra payカードの強みだと思っています。
今はenigma payと1日単位のすきま時間で働ける単発アルバイトマッチングアプリ「wakumo」もつながっているので、今後、法律や規制が変わることで、例えばwakumoでアルバイトして働いたお金が、その日のうちにenigma payを介してultra payカードのプリペイドカードに入ってくる。ちょっとお金が足りないときでも、すきま時間に働いて、その日の働いた分のお金がenigma payを経由して、ultra payカードにチャージされ、欲しいものがすぐに買える。そういう世界観が実現できるようになると思います。
小口:enigma payの強みは大きく3つあります。1つ目が体制の部分。給料前払いはまだなじみのないサービスなので、営業から受注後の導入、運用サポートまで、人員と工数はかけ過ぎるぐらい徹底して、快適にサービスを使っていただけるように取り組んでいます。
全国に店舗を展開している導入企業もありますので、北海道から沖縄まで説明会行脚をしたこともあります。これまで業界があまり大きくならなかったのは、こうしたサポート不足も一因だろうと感じていたので、後発だからこそ細かく体制を作りました。ガラケー対応やマニュアルのカスタマイズまで行っています。今はオンラインで説明会を実施できるようになったので、サポートもしやすくなりましたね。
2つ目は、さまざまなシステムとシームレスに連携できているところです。ultra payカードとの連携はもちろん、連携する銀行も引き続き増やそうと取り組んでいます。他にも自社グループのサービスであるjinjer、さらにSmartHRさんとのHR Techサービスとの連携を進めています。勤怠管理では自社サービスのjinjerや他社さんの勤怠管理システムとも連携させていただいています。
もちろん、まだAPI連携していないところでもCSV連携が使いやすいシステムにするため、担当者の方にヒアリングしたり、先に時間をかけた分だけ、お客様から「今も工数がかからずに運用できているよ」というお声をいただけています。
最後の3つ目は、業界内でもかなり保守的にやらせていただいているところです。法律にも関わる領域なので、各省庁、弁護士事務所や所属しているFinTech協会などから、常にリアルタイムで情報をキャッチアップしています。大手企業にもご導入いただいているので、既存の企業様にご迷惑をかけてしまうことのないように細心の注意を払っています。
――どちらも便利なサービスだと思うのですが、やはり報酬をチャージする際の手数料が気になります。導入企業かユーザーのどちらかが負担するしかないとは思うのですが……。
竹谷:enigma payから、ultra payカードにチャージすると、銀行の振込手数料分はかからないんです。
小口:そうですね、0円になるところは今一番売りではありますね。
竹谷:ユーザーさんからすると、前払い手数料を払って銀行口座に入金して、さらにATM手数料を払って現金を引き出して利用するよりも、ultra payカードを入れてすぐ使う方が手数料も時間もかからないというメリットがあります。手数料が2つなくなり、手間も時間も短縮されるという、まさにキャッシュレスの恩恵だと思っています。
小口:銀行振込みだと手数料が発生してしまうのは、サービスとして仕方のない部分なんですが、プリペイドカードにチャージすることで、手数料が0円になります。こうした使い方をされている方は少ないんですけれども、浸透したらすごくいいんじゃないかなと思っています。多いと月2回~3回くらい使われる方もいるので、振込手数料が0円になることで利便性は上がるかなと思います。
――なるほど、その辺りも同じグループだからこそのメリットですね。
――今年立ち上げたultra payカードは、今後どんなビジョンを描いていらっしゃるんでしょうか?
竹谷:ultra payカードを含め、ネオキャリアのFinTech事業全体で「『働く』を、もっと『おかね』につなげる」というメッセージを出しています。今までのお話もすべて「働く」を、どうやってもっとシンプルに便利に「おかね」につなげるかという世界にフォーカスされていると思います。
やっぱり、僕は働いて得たお金ってすごく大事なものだと思っているんです。ネオキャリアはこれまでHR Techで「働く」の部分をサポートしてきましたが、それをFinTechとつなぐことで、無駄な手数料や時間を減らして、働いて得た大切なお金の多様な受け取り方を提供したい。それが働く方々に新しい「楽しさ」や「前向き」な世界を提供できる1つの手段になると考えています。
それが僕らのビジョンにもなっていくんですけれども、ネオキャリアグループでは、HR TechとFinTechを組み合わせて、新たなセーフティネットとなるようなFinTech事業を作ろうとしています。そこにつながっていくといいなと思っていますね。
他の人材会社でも、決済事業までやりますというふうに振り切っているところは正直まだないと思っています。それを実現するためにenigma payが先行してくれていたところもあるので、どんどん進めていきたいですね。
――なるほど。サービスとしてさらに拡充していきたい部分はありますか?
竹谷:使い勝手はVisaブランドのプリペイドカードという部分で充分担保されていると思いますので、お金が入るタイミングを変えていきたいですね。給与の前払いもそうですし、例えばjinjer経由で経費を受け取る際も、まとめて月末にではなく都度ultra payカードにチャージをしてしまうとか。
あとは、きちんと働いている方々にもっと信用という価値を提供したいですね。例えば wakumoでアルバイトをきちんと続けている人や、外国から日本に来て地道に働いている人に、どうしても必要な時に少額でも資金を適切に提供してセーフティネットのような役割を提供する。
やっぱり「働く」を、もっと「おかね」につなげるサービスをテクノロジーの力でたくさん提供していきたいですね。そうすればおのずと、ネオキャリアのミッションでもある「人とテクノロジーで一人ひとりの価値ある未来を実現する」という世界とつながっていくと思います。
働いた分のお金がすぐに使えるようになって、だんだんチャージ金額も大きくなっていくと思うので、最終的にはこのプリペイドカードは使われなくなると思うんです。
僕らはちゃんと働くという入り口から入って、得られたお金が便利に使える世界を作ったうえで、銀行口座などと連携していくことで、必要な時にはちゃんと銀行などでもっとたくさんのお金が借りられたり、住宅ローンが借りられるようなセーフティネットを作りたいと考えています。今後の開発のアイデアとしてはそういった部分がありますね。
竹谷:enigma payの良さは、自分で働いた分を前払いで受け取れるところで、お金を借りるわけではないところなんです。返せるあてや気持ちがあるかわからない人にお金を貸してあげることよりも、「働く」ことをきちんと「おかね」につなげるenigma payのようなサービスのほうが社会的な意義もあると考えています。
小口:そうですね。enigma payとしては、とにかく「ハブになる」ということをずっとテーマとして持っています。報酬前払いとultra payカードをつなぐこともそうですし、jinjerともつながったり、HR TechとFinTechのちょうど間にあるようなサービスを展開していくことで、世の中のお金の使われ方や入り口をどんどん増やしていきたいと思っています。
結局、世の中で使われているお金のほとんどは給与から来ていると思いますし、それがどう使われるかという部分は、今とても多様化していると思っています。enigma payがハブになることによって、チャージポイントを増やせる部分もあると思っています。
間にenigma payがあることで、他のサービスとも連携がしやすくなったり、お互いにWin-Winな関係が作れてユーザーにとって使いやすいサービスにしていけたらと思います。お金の動きが今よりもスムーズになることで、社会を良くしていくことを目指していますね。
――お金に関する考え方や自由度を変えていくことが、世の中を変えていくということなんですね。セーフティネットという考え方はとてもいいなと思いました。お話ありがとうございます。
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