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Leaders Talk Vo.1(全1記事)

2019.09.05

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余計なコスト増やガバナンスの問題に関わる“間接費” 企業の効率化を妨げる落とし穴

提供:株式会社Leaner Technologies

2019年8月9日、日本を代表する経営者とマーケットの未来を語るLeaders Talk 第1弾が開催されました。今回は、ERP(Enterprise Resources Planning:基幹系情報システム)分野において世界一のシェアを誇る大手ソフトウェア企業、SAPジャパン株式会社の佐藤恭平氏との対談をお届けします。製造業が長く経済をけん引してきた日本企業ゆえの盲点や、世界での間接費管理に関する考え方について意見を交わしました。(この記事はLeaner Magazineから転載しています)。

ヨーロッパ最大級のソフトウェア企業SAPの現状

田中英地氏 (以下、田中) :まずは、SAP全体の現状を教えていただけますでしょうか。

佐藤恭平氏(以下、佐藤) :現在SAPは、グローバル売上約250億ユーロ(約3兆円)を超え(2018年末時点)、ドイツでもっとも時価総額の大きな会社となり、多くの企業様に幅広いシステムの導入をいただいております。それに伴って、特に支出管理システムである SAP Aribaでは多くのサプライヤー様との連携も進み、世界約300万社、日本市場で見ても約4.5万社と繋がっている、マーケットプレイス化した状況にあることが強みです。

しかし、Aribaシステム上、グローバル全体で300兆円もの取引がなされているものの、日本での流通量は、まだまだ成長余地があります。アメリカ・ヨーロッパなどはもちろん、アジアパシフィックで見てもオーストラリアなどは導入が進み、トランザクションも十分に起きています。世界3位のGDP総額から見ても相対的に、日本市場はまだまだ白地はあると捉えています。

大平裕介氏(以下、大平):その際にSAPさんが対象としているのは、ビッグエンタープライズと言われる大手企業が中心になりますか。

佐藤:そうですね。 間接費総額が大きく、拠点も世界に広がる大手企業様の方が相対的に大きなペインを抱えている場合があるため、メインとなっている事実はあります。

大平:確かにペインの大きさは大手企業様の方が大きいというのはわかります。Leanerでは、より中堅中小の企業様が中心になりますが、 自社の間接費に関して全体を把握したくてもできていない経営者の方々と多く出会います。そのような状態は、企業規模に関わらず日本全体で起きている状態なのでしょうか。

日本では間接材のコスト管理が見落とされがちな理由

佐藤:我々が接している企業様でも、期が締まってみないと何にどれくらい使っているのかわからないという状態はあるという声はうかがいます。先日も、自社の製造原価など直接材に関しての管理や見直しはとても高い水準で行われている一方、「間接費に関しては二の次三の次となっている」とおっしゃっているお客様もいました。

田中:そのような状況はなぜ起きてしまっていると思われますか?

佐藤:産業構造的に、もともと日本は製造業が強く、経済を牽引してきたと思います。より価値の高い製品を効率的に生産する力が高い日本の製造業がお手本となった結果、製造原価の高い精度での管理やサプライチェーンの見直しはできている。一方で、間接材については相対的に劣後されているというのが、現状なのではないでしょうか。

大平:我々がお手伝いしている層のお客様ではさらに、直接の担当がいないという場合もあります。総務担当はいても、間接材を含めた購買管理を徹底し、さらには量・質的に適切な状態を保つことをミッションとするポジションがないため、当然着手はされていないという状況にも、よく直面します。

佐藤:また一方で、CPO(Chirf Procurement Officer)やCIO(Chief Information Officer)などの明確な役員や担当部署がある場合でも、間接費に積極的に切り込むとはいかない場合もあると思っています。海外では他の部門同様、自らのキャリアを考える際にフラグシップとなりえるプロジェクトをリードすることが通常です。

間接費領域でいえば、取り組めていない領域があればまさにその領域に踏み込み体制を整備し、抜本的に契約を見直すなど、自らがリードする変革を通じて利益貢献を果たそうとする。変革をリードするというリスクを取ることが、結果的にキャリア上でのリスクヘッジになっている。そういった感覚・考え方が、日本ではまた浸透していないというのはあるかもしれません。

トップのコスト意識に左右される、間接費の管理体制

田中:一方で、間接材管理についても感度高く取り組めている企業様は、規模に関わらずいらっしゃると思います。その違いはどこから生まれているとお考えですか?

佐藤:CEO、CFOなど会社のトップのコスト感度が高いかどうかは、まず大きく影響する点だと思います。それはこれまでの業務経験的なものもありますし、実際に痛い目を見ているかどうかで変わっている印象です。

これまでちゃんと管理していなかったばかりに、余計なコストを垂れ流していたということや、ガバナンス的に問題が生じたなど理由はさまざまかと思いますが。

大平:わかります。ですが、それだと、間接費への感度が高まるには一度経営層に強い原体験が必要ということになってしまいます。それではなかなか構造は変わらないと思っているため、Leanerでは担当者と間接費管理や削減のアクションを行った後、マネジメント層への報告サポートも行おうとしています。

佐藤:それはとても大事なことだと思います。もしその取り組みが進めば、経営層だけでなく現場の社員の意識が変わっていきますね。

企業のグローバル化と自動化・効率化がもたらしている変化

佐藤:それでも最近では、日本でも現場の意識は変わり始めているように思います。理由の1つめは、企業のグローバル化。

企業のグローバル展開が進むにつれて、社内でのコンプライアンス・ガバナンスに関する話をよく聞くようになりました。国内だけのビジネスと異なり、各国で調達・出荷を行うとなると、管理体制が整っていないと、見えにくい部分で日本では考えられないようなトラブルが起きてしまうということもあります。

国によっては、商慣習的にそれが当たり前という場合もあり、手なりで正すことだけでは難しい。そのような状況の中で、しっかりと管理し、引き締めていく流れが、間接費の領域でも起きていると思っています。

2つめは、AIやRPAなどを用いた自動化・効率化の流れです。これまでは、調達や経費処理は紙でなければいけないという状態で、郵便やFAXを使っていました。ですが書類はどんどん電子化され、デジタル・クラウド上でやりとりが済んでしまうことが当たり前になってきます。

そのため、単純な作業はすべてシステムに任せてしまい、できる限り作業の自動化・効率化を進める。その結果、浮いた時間を、本来行うべき分析業務や、ネゴシエーションのためのツール整備などに充当し、適正な価格・品質の資材を調達することに注力するというトレンドが当たり前になるでしょう。

ムダを省き、現場社員のモチベーションの向上に寄与する取り組み

田中:2つめの点は、Leanerでも意識しているポイントになります。初めは自社の費用の見える化や具体的な契約の見直しなどから価値を提供していきますが、継続的に価値貢献できるよう、より個社に合った形で、支出の管理・分析といった領域でも価値を発揮いただけるよう、サービス・プロダクトの改善をしていきたいと思っています。

大平:それが積み重なることで、現場社員のモチベーションが上がることは大事なことだと考えています。

佐藤:仲良くしていただいている上場企業の代表の方も同じことをおっしゃっていました。まずは総務・購買担当が付加価値の高い仕事に注力すること、そして、経営がその業務に光を当てて、きちんと評価すること。そのために我々も全力でサポートをして、世の中を良い方へ変えていきたいですね。

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