2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
メイキップ、AI技術を用いたささげサービス「SASAGE.AI」ローンチ(全1記事)
提供:株式会社メイキップ
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――「SASAGE.AI」のリリース、おめでとうございます。まずは「SASAGE.AI」を立ち上げたきっかけをおうかがいできればと思います。
柄本真吾氏(以下、柄本):もともとは、僕たちが運営している「unisize(ユニサイズ)」(注:ユーザーの体型にフィットするサイズをレコメンドするサービス)を伸ばしていきたいという思いが背景にあったんですよね。
unisizeをご利用いただくには、肩幅・身幅・袖丈が何センチというデータが絶対に必要なんですが、そのデータを持っていない、または持ってはいるがデータ管理されていないクライアントが結構いました。「なんで服を作っているのに持っていないんだろう?」と思うかもしれないですが、さまざまな理由でサイズデータを持っていないことがあります。
サイズデータがないと、unisizeを提供できない。アパレル業界でサイズをどう計測しているかを調べてみると、「ささげ」をやってデータを作っていると。
ーー「ささげ」というのは、どういったものですか?
柄本:モデルさん、カメラマンを呼ぶ、スタジオを押さえるなどして洋服の写真を撮る「撮影」、できあがった洋服のサイズを測る「採寸」、ノースリーブなどの洋服の特徴を踏まえ説明文を作る「原稿」。3つの作業の頭文字をとって「ささげ」です。この作業を経た上で、ECサイトに公開するという。
最初はサイズがわかる「採寸」にアイデアを絞っていました。僕らが簡単にサイズのデータが取れるようなサービスを作ることができれば、unisizeに転用できるんじゃないかという思いが背景にあった。これがSASAGE.AIのきっかけです。だいたい1年くらい前に構想が始まりました。
ーー開発期間としてはすごく短いですよね。この1年のスケジュールはどんな感じだったんですか?
柄本:本当はもっと早く出そうと思っていたんですけど(笑)。自分たちが思い描いているようなサービスがあるのか、リサーチから入って、アプローチ方法についていろんな専門家やAIのプロと話をしたりして、話を詰めていったんですね。
当初は採寸だけだったんですけど、リサーチを進めて行く中で一番コストがかかるのは撮影だとわかったんですよね。採寸だけでは効率化できるところが限られるので、ささげに携わる方の悩みを全て解決することができないことがわかって方向転換しました。
実際にささげ業務をやっている倉庫などの現場を見に行ったり、金額感を聞いたりしていたんですけど、現場はかなり大変だなと感じました。ものすごく労働集約的な環境になってしまっている。
延々と洋服のサイズを測って登録をしてというのを繰り返さなきゃいけない。それはすごく大変で、人もなかなか集まりづらいと現場の方も嘆いていました。
ただ、ECをやっているクライアントからすると、いち早く売りたいので、より短納期でささげをやってくれという依頼になるわけですね。その情報がないとECで売れない。結局、負荷が現場に集まってきてしまう。
「安く早くやってくれ」という要望がすごく多くなってくるので、そうすると現場はどんどん状況が悪化しかねない。全ての業務ではないにせよ、少しでも人が行なっていることをAIが代替することで、なんとか改善できないか、ささげ全部をAIで網羅できないのか、ずっと考えていたんです。
ーーどの段階が一番苦労されましたか?
柄本:AIがどこまでどう学ぶのか、予期しない問題が出てきたりするんですよ。ロジック上はうまくいくはずなんですけど、僕たちが知らないだけだったり。
例えば、パーカーを計測できないことがありました。フードが原因だったんですが、フードの長さを知りたい人はそんなに多くないので、折りたたんで測ればいいやということになりました。通常のささげ業務の時にどうしているのかを聞きに行って、それを改善したり、壁に一個一個ぶち当たるわけですよ。
あとは、アシンメトリー(左右非対称)のものというのは、なかなか難しかったりしますね。全てをSASAGE.AIで処理しようとすると無理があるので、マジョリティーを占めるカテゴリーから対応して行くことにしました。
ーー計画が頓挫しかけたこともあった?
柄本:ポシャりかけたときもありました(笑)。それこそ採寸は絶対にやらなきゃいけないって思っていたので、諦めるつもりは全然なかったんですが、撮影と原稿に関しては、僕らのビジネスから言うとマストではなかったので、僕らが求めているレベルにまでいっていない時は、「本当にこれをやった方がいいのか」という議論を結構しました。
ーー実際にSASAGE.AIを導入することで、どういうメリットが現れてくるんでしょうか?
柄本:3つのメリットがあって、まずはコストです。通常のささげ業務だと、スタジオを借りてカメラマンさんを呼んで、モデルさんを呼んで洋服を着てもらって写真を撮る。そのあとサイズを測って、原稿を書くので、だいたい1アイテムで3,000~5,000円くらいかかるんですよ。
それがSASAGE.AIだと1,000円でできます。3分の1から5分の1でできるのが1つ目のコストメリットですね。
次に時間。通常はだいたいアイテムを1〜2週間くらいで納品するんですよ。それがSASAGE.AIであれば3日でできます。洋服を撮影してもらい、弊社のサーバにあげてもらうと、瞬時に成果物を返すサービスになります。
3つ目はクオリティですね。洋服だけがECサイトにあがっているよりは、モデルさんが着ている画像を掲載しているほうが、ユーザーさんは着用感をイメージしやすい。ECサイト自体のクオリティもアップすると思います。
洋服も身幅・肩幅など、測る箇所が増えれば増えるほど、人的な工数が上がるので、そこにかかるお金がどんどん上がって行く。
ただ、SASAGE.AIに関しては、解析ができた部位分を全部データとして戻すので、最大16部位まで一気にデータとして蓄積できるようになるんです。でも、金額は変わらない。ユーザーへ提供できるサイズデータは多ければ多い程良いという可能性もあります。ここはunisizeとの連携が力を発揮する部分ですね。こういった意味でクオリティの向上が狙えます。
ーーこれから、SASAGE.AIをどう展開していくんでしょうか?
柄本:ECサイトは、パリコレモデルみたいな、すらっとした背の高い女性がモデルになっていたりするんですよ。それをブランドのターゲットに合わせて身長・体重・体型もコントロールできるように変えていきたいなというのはありますね。
自分が着たときにどう映るかが一番知りたいわけじゃないですか。ぽっちゃり系のブランドなどもけっこう増えてきているので、そういう少し大きめの方向けのモデルさんを作ってもいいし、自分の体型に近いモデルさんを作ってあげてもいいわけですし。
今後は、洋服のデータだけでもなくて、人体のデータも含めて、いろんなサイズに関するデータの集積地になっていければと思っています。
unisizeに関しては、どちらかと言うとユーザー寄りに、体のデータと洋服のデータをマッチングして、何のサイズが最適なのかを解析してきたデータビジネスではあります。SASAGE.AIではさらに洋服に付帯する情報、洋服はどんな特徴を持っているのかのデータが蓄積されていきます。
ここに例えば、購買データや返品のデータが組み合わさっていくと、企業様側にとってもユーザーさんにとっても、よりよいデータの提供が可能になってくる。例えば、趣向性(タイトに着たい、ルーズに着たい等)のような情報です。そういったデータを軸にして、ほかのビジネスにつなげていければと思っています。
ーーしかし、AIでささげ業務の問題を解決しようとするアイデアがすごいと思いました。
柄本:ありがとうございます! AIを使うのが少しハードルが高い感じで、なかなかできないと思われがちですけど、全然そんなことはない。できるんですよ。
メイキップのメンバーにはアパレル出身の方が1人もいないんですよ。ネット系の出身もいれば、人材系、金融系、コンサル系とかもいて、本当にバラバラなんです。狙って採用していないという訳ではないんですけどね(笑)。
固定概念で「これはこうするべきでしょ」「普通こうやってやるから」みたいな考えになってしまうと、そこで思考が止まっちゃうんですよね。業界の外から来ると、「普通こうやってやるから」という固定概念がない。素直な気持ちで、課題に対してどう解決するか、シンプルに向き合うことができる。
フォードが馬車隆盛の時代に車を発明したのと同じように、なかなか発想の転換ができない話と一緒で、僕らもどう固定概念に捉われず問題解決できるかを考えた。ささげの現場ばかり見ていたりすると、それをどう早くするかに重きを置いてしまう。僕も実際その罠にかかりかけました(笑)。
そうではなくて、手法をまったく変えると考えたときに、僕らで何をどうできるかを考えて動くことが、起業した時からけっこう意識しているところですね。
ーーメイキップ起業はいつごろ思いつかれたんですか?
柄本:起業の4年前くらいかな? 当時、アドネットワーク系の会社がバイアウトしているのが話題になっていて。山崎(慎一)を含む、創業メンバーで飲んでいて、それを話のネタにしていましたね。「自分たちでやれるんじゃん?」という話から「起業しよう」という話になったんですよね。
当初は今のunisizeの形ではなかったんですけど、サイズのレコメンドエンジンをやろうという話は出ていて。だけど最初のアプローチ方法はぜんぜん違った。写真を撮って、そこからサイズを測るアイデアだったんですよ。
ただ、精度がなかなか追いつかないので、アプローチ方法を変えて、アンケート型に思い切って変えた経緯があります。
ーー初めから2人で起業するイメージでお話しされていたんですか?
柄本:もう1人いて、3人ですね。彼もメイキップにいます。最初はそれぞれ宿題を決めていつまでにやってきてという感じでスタートしました。最初にやろうとしていたのは、非エンジニアでもロジックさえ設計できれば誰でもボードゲームを作れるようなプラットフォームみたいなものでした。
そこでゲームを作って売ったり、買ったりしていろんな人に使ってもらって収益を得られるようなモデルを考えて、宿題を3人で割り振って「じゃあ1ヶ月後までにこれをやってきてね」って言うんですけど、誰も何もやってこなかったんですよ。みんな忙しくて(笑)。
それが2ヶ月続いて、「これはダメだ(笑)」「誰かが辞めてフルコミットしないと、たぶん俺ら無理だね」という話になったんですよ。「じゃあ誰が辞めるんだ?」って話になって、「じゃあ俺、最初に辞めるわ」って言って、僕が最初に辞めたんですよ。みんなタイミングがあるので、なかなか一緒にはできないので。
僕が辞めたというのがきちんと決まったタイミングで、次は(山崎氏が)辞めるという予定になって。1人でやっていた半年間はめちゃくちゃ苦しかったです。「本当に(山崎氏が)入って来てくれるのかな」という不安もあるし。いい役職まで昇進していて、引き留めにもあっている。もう1人も部長レベルだったので、(退職を)止められるじゃないですか。「本当に辞めて一緒にやってくれるのかな?」というのがやっぱり不安ですし。収入もないから。
ーーつらいですよね。どうやって耐えたんですか?
柄本:前職の会社が潰れそうなときに入っていて、ストックオプションがあったので、それを起業の資金にしていました。ただ、資金が減っていくだけって精神上よくないですよね。
そこから3ヶ月くらいグダグダしたんですよ。十何年勤めていたので、ちょっとゆっくりしたい思いもあって。
でもグダグダしていると、どんどん悪くなっていくわけですよ。このままではよくないなと思って。僕の姉貴がニューヨークに住んでいて、姉貴のところに1ヶ月間転がり込んだんですよ。
ニューヨークでいろいろ刺激を受けながら、「これはよくない、ちゃんとやろう!」って決めました。2015年1月に帰ってきてからはバリバリ動いていろんなことをやりました。業務委託でお金稼ぎに行ったりしましたね。
その後に山崎が無事に(笑)、入って。もう1人は、その1年半後くらいと、結構後になっちゃったんですけど。その間に人は何人も入って、エンジニアに入ってもらって、徐々に今の規模になってきました。
ーー会社のマネジメントで気をつけていることは何でしょう?
柄本:起業当初は、ブラジルの起業家のリカルド・セムラーに影響を受けて、まったくマネジメントをしない手法ができるんだろうかと思いました。セムラーはその手法で会社を大きくしている人なんですよね。
unisizeはけっこうチャレンジングなビジネスですが、メイキップ自体もチャレンジングに経営できたらいいなという想いがあって。そういうアプローチ方法で会社を経営したかった。
そもそも、僕らは最初、業務委託で出稼ぎをしていたので、オフィスにいないことが多かったんですよ。エンジニアは1人でずっとゴリゴリ開発していて、という感じなので。「これで成り立つんだったら別にいいよね」という話になって。
基本的には僕らは会社の情報とかを全部オープンにしていて、すべての情報をみんなが見られる。給与もみんなオープン。誰がいくらもらっているかも全部オープンですし、会社の月のPL(損益計算書)、BS(貸借対照表)や残高も全部みんな知っているんですよ。
メンバーがすごくいい会社だと思ってくれると「こんないい会社で、こんなに自由に働けている会社をなくしたくない!」って思うじゃないですか。そうすると、別に管理しなくても勝手にみんなやりますよね。そういう考え方です。
うちの会社では「大人の組織を目指そう」と言っていて。「子どもじゃないから自分で判断して自分で動く」としていますね。
基本的に日本の会社の組織像って、社長、本部長、部長、課長がいて、現場じゃないですか。ミドルマネジメントが結局みんな同じことを考えているんですよね。これを全部ガサっと抜いたんですね。その分、自分で自分をマネジメントするから、ここにかけていたコストを還元する考え方なんですよ。
ーーすごくかっこいいですね。
柄本:ありがとうございます(笑)。とは言え、ベンチャーでスタートアップなので厳しいですよ。「自由にやっていいよ」「週3出社で週2は自由だよ」と言うと、「すごくゆるいのかな」と思われるんですよね。でも、ミッションはものすごいものを振られるので、ぜんぜん楽じゃないんですよ。こういうことを採用面接の時に散々説明するんですけど、だいたい伝わらないですね(笑)。
「自分で自分をマネージしてくれ」と。別に昼寝したっていいし、昼間から遊んだって飲んだっていいんですけど、やると決めたことはやる。こんな考え方に基づいて経営をしていますね。
会社の名前が「Make it possible」の略なんですが、ITの力で不可能なことも可能にしていくことを目指しています。
誰もやっていない領域ですし、ワールドワイドで見ても何社か同じようなことを立ち上げた会社はあるんですが、みんなうまくいってないんですよ。なので、「Make it possible」からメイキップと名付けました。日本で僕らがやって、成功したい思いですね。
株式会社メイキップ
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