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安野たかひろ氏・AIプロジェクト「デジタル民主主義2030」立ち上げ会見(全3記事)

AIエンジニア安野たかひろ氏が掲げる、「デジタル民主主義2030」の全貌 「政治とカネ」問題、民意が反映されない日本の政治を変える【全文1/3】

昨年の都知事選で15万票を獲得したAIエンジニアの安野たかひろ氏が、日本の行政・政治をアップデートするプロジェクト「デジタル民主主義2023」についての発表記者会見を行いました。5年後の2030年までに日本が世界でもっとも「デジタル民主主義」が進んだ国になることを目指すために、実証実験を開始するとともに、自治体や政党への協働を呼びかける講演の内容を全文でお届けします。

AIを活用し、政治と行政をアップデートするプロジェクト

安野たかひろ氏(以下、安野):みなさま、本日は大変お忙しい中、急な呼びかけにもかかわらず、お集まりいただき誠にありがとうございます。

この度、私、安野貴博はデジタル民主主義の実現に向けた新たなプロジェクト、「デジタル民主主義2030」について発表いたします。今まで私は都知事選や衆院選、GovTech東京等のアドバイザーで、AIを活用しながら市民の声を可視化するという取り組みをしてまいりました。

今回は政治・行政をアップデートするために活用できるAIシステムとして、2025年の夏に控える参院選・都議選という時間軸を視野に入れつつ、新たに開発プロジェクトを立ち上げて、共同で実証実験を行う自治体、政党、政治家の方を募集させていただきます。

本日はこのプロジェクトがどのようなもので、国・地方自治体・政党でどのようにご活用いただけるものであるかをお話しさせていただきたく、5つ(の項目を挙げています)。

1つ目が2025年現在のデジタル民主主義とAIの可能性について、2つ目がブロードリスニングのさらなる進展について、3つ目が新プロジェクト「民意による政策反映」について、4つ目が新プロジェクト「政治資金の透明化」について、5つ目がみなさまにご協力いただきたいことについて、お話しさせていただきます。

2025年は「デジタル民主主義元年」になる

安野:まず、2025年現在のAIの可能性について、あらためてお話しさせてください。2024年は政治において、AIやその他のデジタル技術がどのように使われると良いか、議論や試行錯誤が大きく進んだ1年でした。私も2024年夏の都知事選で、AI技術を活用した選挙活動を行いました。



その後もさまざまな選挙において、SNSやデジタル技術がどのように活用されるべきか、良い点、悪い点の双方について議論が広がったと思います。技術的な側面を見れば、2024年は大規模言語モデルにおける推論スケーリング則が発見され、OpenAIのo1シリーズなどへ飛躍的に性能を伸ばし、自然言語を処理する能力が大幅に向上してきています。

また、これからは人とAI、あるいはAI同士が連携して自律的にタスクを遂行するAIエージェントという新しい潮流が始まろうとしています。AIが人間同士のコミュニケーションを効果的に仲介したり、あるいはコミュニケーションを促進したりする、そういう能力を獲得し始めており、行政や政治のあり方を変える可能性があると考えております。

そうした中で、2024年が民主主義におけるデジタル技術の可能性を示した1年だとすると、2025年はそこから一歩進んで、デジタル技術が民主主義のあり方を実際に変え始める、まさにデジタル民主主義元年に相当する1年になると考えております。

5年後の行政・政治の当たり前を作る「デジタル民主主義元年2030」開始

安野:そうした進歩の一端を担うような仕組みとして、今回、複数のオープンソースの開発プロジェクト、「デジタル民主主義2030」を開始いたします。この名称は5年後の行政・政治の当たり前を作ろうと、そういう意図が込められております。このプロジェクトは、主に3つのプロジェクトに分解されます。

1つ目が、ブロードリスニングのさらなる進展、「Talk to the City」の実用化というところです。たくさんの声を聞く、いわゆるブロードキャストの逆、ブロードリスニングについては、2024年の都知事選や衆院選を通じて訴えてきたことでもございます。

このブロードリスニングを可能にするオープンソースツールの1つである「Talk to the City」と呼ばれるツールの改善活動に関しては、都知事選の頃から継続的に行ってまいりました。2024年末には東京都でも新たな長期戦略の策定でご活用いただいたり、日本テレビの選挙特番『zero選挙』でも、衆議院選挙のX投稿の解析に活用されました。

今後さらに広く自治体、行政、国、政党などでご活用いただける取り組みになるように、継続的にアップデートを進めてまいります。本ツールは、従来のパブリックコメント等の試みをより一段高度化しうると考えておりまして、全国の自治体等にて潜在的な活用可能性があると認識しております。

具体的には、エンジニアがいなくとも、特別な知見がなくとも使えるようにする改善や、より政策立案者に対して有益な学びを抽出するような機能、あるいは解析アルゴリズムの改善等を予定しております。その下に書かれているのが、今の「Talk to the City」の活用イメージになっておりまして、こちらをより高度化させていきたいと、そういうプロジェクトでございます。

台湾の事例に学ぶ、新たな「民意による政策反映」の仕組み

安野:2つ目、こちらは既存のプロジェクトの改善ではなく、新規プロジェクトになります。「民意による政策反映」と書いていますが、これはデジタル上で大規模な熟議が可能になるプラットフォームの構築でございます。

ブロードリスニングが意見の可視化や、全体像のマッピングを主にしたものとしてあるのに対して、この新しいプロジェクトで提案したいのは政策の反映、つまり意見が集まってきて具体的な政策案になり、それが実現していくまでの合意形成、それに必要な大規模なオンライン上での熟議を実現するようなシステムを作ろうと、そういうプロジェクトでございます。

本プロジェクトでは先行する台湾の事例を参考にしております。台湾では「Join」と呼ばれる仕組みや、「vTaiwan」と呼ばれる仕組みがございます。

元デジタル発展省大臣オードリー・タンさんが当時現役の時に携わっておられたのですが、これはどういうものかというと、要は人々の声を集めて可視化をした上で、政策案に対してどれだけ賛成や反対や意見が集まったのかを整理しながら、立法のプロセスに載せていくと。それによって政策実現までを支えるようなシステムになっております。

例えば、「Join」と呼ばれるシステムでは、5,000人の賛同が集まった案について、政府が検討することを約束しておりまして、すでにこの10年で250件以上の政策が検討プロセスに載せられ、そして実際に法案として通されたものも数多く存在いたします。

永田町だけ、あるいは地方議会だけで議論が進んでいて、一般の有権者の声は届かないのかといった問題意識に対して、興味関心がある方であれば誰でも政策について議論ができて、それが実際に立法あるいは条例の制定に結びつく。

AIとWebの技術を組み合わせることによって、そういう場を実現していきたいと考えております。こちらのイメージが、その2つ目のプロジェクトの活用イメージになっております。

「政治とカネ」問題の解決のため、閣僚が使った公金をカード明細で公開

安野:次に3つ目の新プロジェクトでございます。こちらも新しいプロジェクトでございまして、「政治資金の透明化」、政治資金の透明化のダッシュボードを開発するといったものになっております。こちらは2024年の衆院選でも、政治とカネにまつわる問題が非常に大きく報道されました。

私はこの問題を根本的に解決する鍵は、透明化を進めていくことにあるのではないかと考えています。キャッシュレス化が非常に進んでいるスウェーデンの事例が参考になると私は考えております。スウェーデンでは、閣僚に対してクレジットカードが政府から貸与されます。

そのクレジットカードを通じて公金の支払いをしておりまして、「どの閣僚が何にどれだけ使ったのか」という情報が、クレジットカード明細としてどんどん開示されていく仕組みが整っております。同様の試みは、別に日本でも草の根で始めることができると考えております。

個人や企業がクラウドサービスの会計アプリを使って、きちんとお金の流れを見える化している。これは今当たり前に行われていることだと思いますが、同様に政治家も現代的なシステムを使って、ダッシュボード上でお金の流れの可視化を行い、市民にも公開することができるのではないか、というふうに思っております。

このような仕組みは、見方を変えると市民のためだけではなくて、それを執り行う政治家のためにもなると思っております。政治活動、政策実現に注力できるように、なるべく限定的な事務コストで資金管理をすることは、事務コストの削減につながりますし、さらに自分たちのお金の流れを透明化しようという強いコミットメントを示すことにもつながる。

そしてそれは、市民の方の活動に対する理解を深めるものになるとも考えられます。本プロダクトを利用しようと思う議員が徐々に増えていくことによって、ボトムアップで政治とカネの問題を解決する道を探りたいと考えております。

「社会のかたち」をも変える、技術の使い道を考える

安野:最後に、みなさまにご協力いただきたいことを述べさせていただきます。今回ご紹介したプロジェクト、「デジタル民主主義2030」では、政治的な立場や国・地方・政党・自治体などの枠を超えて、誰でも無料で、オープンソースのシステムを活用して実証実験を開始できる取り組みです。

私としましては、すべての自治体、政治家、首長、政党の方々に積極的にご利用いただきたいと思っておりまして、もしご興味をお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひご一報いただければと思います。

ただし、私たちのプロジェクトは特定の政治家や特定の政党のみを支援することはせず、あくまで中立的な立場から技術的な基盤や知見を提供する活動になっております。開発については、すでに10名ほどのチームメンバーでプロジェクトを開始しております。

例えば、東京大学の特任研究員で、『なめらかな社会とその敵』の著者である鈴木健さんにもボードメンバーとして参画いただいております。開発や活用をサポートいただく方は引き続き募集しておりまして、こちらもご関心がおありの方がいれば、ぜひご連絡いただければと思います。

技術は良い方向にも悪い方向にも使えます。どの方向に技術を使うかによって大きく社会のかたちが変わる、これが我々の生きている時代だと思っております。その中でぜひ一丸となって、どのような社会をつくるために、どのような技術をどう使うべきか、これを一緒に模索できればと思っております。私からの話は以上です。それでは質疑応答に移れればと思います。

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