どんな仕事も「没頭する力」が一番大事
司会者:ありがとうございます。今、学生さん(の質問で)、新卒就職活動という軸だったんですけれども、これが社会人になって、転職やキャリアなどが軸になります。芦名さん、いかが思いますか?
たぶん新卒でこれからまた違う環境に行くとか、「どうしようかな?」と悩んでらっしゃると思うんですけれど、たぶん同じように社会人の方も悩まれると思うんですよね。「あー、このまんまでいいのかな?」「この会社でいいのかな?」。そういう過渡期の方って多くいらっしゃる予感があるんですけど、その点についてはいかが思いますか?
芦名勇舗氏(以下、芦名):要は学生が社会人になるのではなくて、社会人の方が転職をする、独立をするということですね。どの仕事をするにしても、自分が成功したいとか、達成したいって思うんだったら、何が一番大事かは、もう「没頭する力」でしかないんですよ。
よく多くの人が聞いてる話だと、「今やってる仕事のスキルが活かせるか?」と考える人が多いんですね。例えば、銀行に勤めていて「今の会計の知識が次の会社で役立てることができるかな?」と思う考え方が、僕からしたらめちゃくちゃ傲慢です。
なんでかというと、仕事が違ったらまったく違う仕事なんですよ。まったく役に立たないです。役に立つものは1個しかなくて、前の時も仕事を全力でやっていたという。それがただ次の仕事でも全力でできるという、これしか持ち越せるものはないです。
例えば、僕はずっとアメリカンフットボールをやっていたんですけど、(タックルの動きをして)アメリカンフットボールやってた時のタックルの膝の踏み込みなんて電通でまったく役に立たないんで。
(会場笑)
ですよね? このことなんですよ。でも、みんなは、アメリカンフットボールだったら、「この踏み込み、膝のこの屈伸の角度が、活かせる仕事ないですか?」と、みんな探してるんですよ。
(会場笑)
あるわけないじゃないですか。それは銀行とかでも一緒で、銀行の会計の知識というのは、知識としては役に立ってるかもしんないけど、じゃあ、次、福山の会社に入って、そこで会計をやります。それはまったく別の学問です。まったく別の仕事なので。
もう一度言うように、自分が転職するのも起業するのも活かせるのは、自分が今やってることにのめり込む力でしかない、という。だから、今まで、もしなにものめり込めることができない人がいるとしたら、次ものめり込むことは残念ながら、できることはすごく少ないです。
なので、仕事を探すのであれば、「どの仕事が自分に合ってるかな?」ということよりも、「どの仕事が、自分が一番没頭してのめり込めるかな?」ということを、探したらいいんじゃないかな、と思います。
自分の身体一つでできたことが残る
司会者:ありがとうございます。福山さん、いかがですか?
福山敦士氏(以下、福山):はい。あえて違う切り口で話をすると、学生時代の経験は社会人で十分活きると思っています。今書いてる3冊目の本が、そういう「社会人1年目は人生23年目だ」というテーマで学生時代の経験を社会でも生かすためのあれこれを書いています。
今話していたとおり、アメフトの踏み込みとか、僕で言うと野球のピッチャーだったんですけど、140キロ投げる力って、別に会社で一切必要ない。草野球でチヤホヤされるぐらいなんですけども、それはまったく意味なくて。
どっちかというと、自分の体単体でできる力が残ると思ってます。今で言うと、没頭する力。別の話をすると、わからないことは「わからない」と言って聞く力とか、目標を立てる力とか、目標立てたら絶対やるんだという気合いとか。残るんですよね、自分の身体に。
残らないものって何かというと、野球という競技の表面的な部分だったりとか、インターネット業界で言うと、「こんな大きいメディアをやってました」と言っても、そのメディアがないと(意味がない)。サイバーエージェントとか、「アメブロやってました」と言っても、「アメブロというサービスがなければ、自分の身一つで何ができるの?」という話なんですね。それしか残らない。
だから、すごくプリミティブな部分で、目標を設定して達成するとか、がんばるとか、気合いとか、けっこうそれも1つの能力なんですね。ホリエモンさんがよく言いますけど、「気合いとか根性も1つの能力だ」という話があって。やっぱりそれしか残らないからなんですよね。なので、どんな環境でも目の前の壁を本気で乗り越えようとするプロセスが残るし、その姿勢が大事かな、という気がします。
「こんなメディアやってました」「何万人を扱ってました」と言っても、それは会社から切り離された瞬間に意味なくなっちゃうんで。「ちゃんと数字を分析してました」とか、「毎日、自分が仕事をやったことに対して振り返りをしました」とかという、自分の身体1つでできたことをどれだけ積み重ねられたかというのが、なくならないキャリアかなという気がしています。それは学生も社会人も変わらないんじゃないかな、という気がしています。
自分の成長欲求だけで突き進んでいいのか?
質問者3:おはようございます。お2人に質問なんですけれども。自分はこの春4月から就職が決まっていて、「営業職でトップを取り続けていきたいな」というのが直近の目標なんですけれども。
その先に見ている自分の理想像が、例えば、自分の成長欲求を満たして、快楽ではなく幸福に終えたいです。もちろんモテたいというのもあるし、身近な家族とか彼女とか友人とか守りたいし、楽しく過ごしたいのがすごく強いんですけど。
自己分析をけっこうがんばってして、そのなかで、過去にできないことができるようになるのがすごく楽しいタイプで成長欲求が強いというか、昨日の自分よりかっこよくいたいみたいなタイプだったんですね。
例えば今は、家族とか友人とか、正直本音で言うとそれ以上の人のことはあまり深く考えられなくて。よくベンチャー企業とかどこの企業でもある「世の中の社会的なフローを解消したい」という理念もちろんわかるんですけれども、「本当?」みたいになっちゃうんですよ。
僕は自分の身の回りのことで精一杯だったので。お2人の背景というか、電通から転職されて今はご自分でやられてるみたいなそういうフェーズのなかで、どのような自分の哲学、人間観みたいなもの(を持っているのか)。例えば、「世の中のインフラをこういうふうに整えていきたい」とか、今やってらっしゃる会社のゴールとか、目指しているところを教えていただければなと思うんですけれども。
芦名:ありがとうございます。僕はプルデンシャルで途中くらいまではずっと、まさに今彼が言ったように人と競争して自分がどれだけ成長するか。どれだけ自分を優れている人間にするかということをめちゃくちゃ必死で考えていました。
それは受験勉強を始めて、どうやって周りよりもよい偏差値を取るかもそうだし、アメフトやってるときもどうやって隣のやつより強くなるかもそうだし、ライバル校より強くなるかもそうだし。電通とか博報堂、いろいろあるけどいかにいい会社に行くかということをすごく目指していたし。プルデンシャルに行ってからも誰よりも営業成績を上げることを必死に目指していました。
つまり僕が目指していたのは、周りから見てどう優れているかを目指していたし、自分をどれだけ成長させるかをすごく考えていました。
「いかに人を喜ばせるか」を考えるほうがおもしろい
芦名:ただ、途中から変わったのが、いかに周りを楽しませ、喜ばせるかというふうに徐々に変わってきました。今は完全にそういうふうに変わっています。
例えば、僕が話をしたら「そんな話を聞けてよかったです」という人がいれば普通に嬉しいし。僕が会社を立ち上げてその会社で働く人たちが「めっちゃお金もらえます。めっちゃいいですね」となったら、それはそれで嬉しいし。僕の出したサービスを使う人が「これめっちゃいいですね」と喜んでくれるとそれはそれで嬉しいし。なので、生きてるだけで人を喜ばせることができて。
僕の頭のなかも常にどうやって人を楽しませようか、喜ばせようかということを考えています。それが結局ビジネスをやっていればお金になって返ってくるので。それは普通におもしろいなと思って今はそこを目指しています。
これから営業をやっていかれるということですけど、営業はまさにそう考えてやるとすぐ成功すると思います。どうやって自分の契約を取ってやろうかということではなくて、どうやってこのお客さんにおもろい体験をさせてやろうかと考えてやれば、めっちゃ紹介が出るし、めっちゃ売れると思います。
質問者3:ありがとうございます。
ナンバーワンになると見える世界が変わる
福山:シンプルにナンバーワンを目指すことでいいと思います。領域はなんでもいいので、まずナンバーワンにになっちゃうことが手っ取り早いと思います。先のことはその後で考えれば良いかと。
司会者:簡単に(笑)。
福山:いや、本当そうだと思います。要は野球部で言うと、ベンチにいるときに見える景色とマウンドのときの景色ってやっぱ違うし。課題感も違いますよね。試合に出たいと思って練習するのと、このチームに勝ちたいって思って練習するのと。
甲子園に出たときは、(自分は)正直甲子園に出たいって思ったんですよ。でも出ると「優勝しなきゃ」と思うし。負けると悔しくて「日本一になるために、何が足りなかったか」を考えるようになって。
自分のステージが上がっていくと見える景色が勝手に上がっていくので、領域関係なく、まずはナンバーワンになるのが手っ取り早いとは思いますし、現実的だと思います。同期の中でトップなどでも大丈夫です。ナンバーワンを取り続け、その都度目標を設定し直すと、最終的にはロマンとか哲学しか残らないと思います。
最適化するとか、そういうビジネス書も腐るほどあるじゃないですか。そういうメソッドをちゃんとそのときにやったら本当に結果が出るんですよね。成果の出し方は科学されているので、ちゃんとやり切ったらタスクの効率化なんかもできるし。営業って科学なので、数やってちゃんとやり切れば成果は出ます。
でもそれをずっとやってるとたぶん飽きるんですね。すると見える世界が変わってくる。具体的には出会う人が変わって、自分のビジョンを言おうと思ったときに相手のビジョンのほうがでかいと、ハッてなって「見てる世界が狭かった」みたいな。
「自分、会社のナンバーワンになりたいんすよ」みたいなことを言っても、「僕、世界変えたいんですけど」と言われたときに、ある種マウントですけども、「なにくそ!」と僕は思うタイプなので。僕の場合は、そうやって少しずつ階段を上がっています。
質問者3:ありがとうございます。