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優秀なエンジニアを囲い込むのは難しい 企業側に必要な“適材適所”の考え方

優秀なエンジニアを囲い込むのは難しい 企業側に必要な“適材適所”の考え方

2016年4月19日、株式会社PE-BANK主催の未来会議『2020年“エンジニアショック”は起こるのか?』が開催されました。モデレーターを務めるジャーナリスト・佐々木俊尚氏は、登壇したMCEAホールディングス・齋藤光仁氏、エルテス・菅原貴弘氏、プロエンジニア代表・尾張孝吏氏の3名と、ITの進化やエンジニアの2極化が進むなかで、企業側に求められる採用体制について意見を交わしました。

(提供:株式会社PE-BANK)

シリーズ
未来会議『2020年“エンジニアショック”は起こるのか?』
2016年4月19日のログ
スピーカー
株式会社MCEAホールディングス 代表取締役社長 齋藤光仁 氏
株式会社エルテス 代表取締役社長 菅原貴弘 氏
プロエンジニア代表 尾張孝吏 氏

【モデレーター】
ジャーナリスト 佐々木俊尚 氏

2020年以降のITエンジニアのニーズ

佐々木俊尚氏(以下、佐々木) 次は、4番目のトピックです。2020年以降はどう変わるのか? これは、エンジニアショックが起きる。要するに、オリンピックも終わり、一気にバブルが崩壊して、マイナンバーの需要も一段落する。そうすると、IT業界全体が若干縮小というか踊り場局面に入ることによって、需給のひっ迫状態から解き放たれて、結果的に需要が減ってしまうんじゃないかという話があるんですね。 本当にそうなるのかというと、先ほどのプレスリリースの調査結果ですけど、「今後4年間のITエンジニアの採用予定と2020年以降のITエンジニアのニーズについて」。 要するに、今現在のニーズと、2020年以降のニーズを比較した円グラフがあるんですけれども、これを見るとあまり減る感じではない。 とくに、2020年以降のITエンジニアのニーズについてというと、「どちらとも言えない」、これが7割近くを占めます。一方で「ニーズが高まる」「やや高まる」と言ってる人が合わせて20パーセントぐらいいます。一方で「減少する」と答えている人はわずか10パーセントぐらい。倍ぐらいの人たちが「ニーズはまだ増えるだろう」と言ってるんですね。 これだけ見ると、ITエンジニアショックは起きないようにも見えるんですけれども。齋藤さん、どう見ていらっしゃいますか? 齋藤光仁氏(以下、齋藤) 私もアンケート結果とまったく同じ考えを持つ者の1人です。確かに心配するところは多々あると思いますが。 とくに企業の大きな人事システムとか、経理システムでとか、そういう基幹系と呼ばれているところはいったん収束する可能性はあると思います。 しかしながら、ITというものは本当に我々の生活になくてはならないインフラに、衣食住と同じように身近になくてはならないものになってきておりますので。これはIoTを含めてどんどん進んでいくと思っています。 ですから、これからもITの技術者はどんどん必要になってきますし、市場もどんどん活発になってくると思います。

IoTとビッグデータの可能性

佐々木 今、言葉に出てましたけれども、IoTの動向とか、AI、ビッグデータ分析、その辺を含めると、おそらく2020年でそこが停滞するというよりは今後もさらに領域が広がると。 とくにIoTがなにを目指しているかというと、結局今までインターネットやコンピューターが得意とした領域から外に出て、我々の生きてる生活空間・物理空間を全体としてインターネットに統合していくと。 だから、よく言われますけど、道路であったり建物であったり、あるいは住宅であったり、そういうものがすべてインターネットにぶら下がってくるというイメージで言えば、そこには相当巨大な市場が立ち上がってくるであろうと。 ただ、それがどのようなニーズで実際にビジネス化されていくのかは、現時点ではかなり不透明なんですよね。 例えばスマホが出てきたことで、モバイルの需要がものすごく高まって、数年前にIT業界が活況を呈しました。スティーブ・ジョブズがiPhoneを開発する以前の、フューチャーフォンしかなかった時代に、スマホのモバイル市場がどんなものかイメージした人はいないと思うんですね。 ソーシャルメディア・SNSでも同じです。90年代の終わり頃、まだSNSがほとんどなかった時代に、SNSでこれだけ情報が拡散して、巨大な市場が成立するなんてことは誰もイメージできなかった。 だから、現状ではIoTと言っても、漠然とした未来のイメージとしてはあるんだけど、それが実際のビジネスにどう落とし込まれて、なんの市場が立ち上がるのかということは現時点であまり明確に見えてない感じもするんですよね。 菅原さんはビッグデータ分析の仕事もされていて、かなり専門的見地をお持ちだと思うんですけど、どう見ていらっしゃいますか? 菅原 IoTとビッグデータはセットみたいなものなんですけれども。IoTの場合、マシンがログをどんどん吐き出していくので、そこの解析をしたり。そのログをもって、人工知能でその動き方を変えていくようなプログラムはどんどん必要になってくると思います。 現在でも、PCログなどの解析をNoSQLのSplunkとかElasticsearchというソフトを使ってやってるんですけれども、そういったニーズはすごく増えてきています。おそらく自動車メーカーなども、自動運転のためのログをすごく溜め込んでいるので、そういったニーズは今後も増え続けると思います。 当然車もそうですし、家電もすべてそういったかたちになるので、そっち方面のニーズがなくなることはたぶんないんじゃないかなと。 佐々木 膨大な量の非構造化データは世界中に存在していて、それをすべて解析するというところまではいってないわけですから。その分野はまだ相当可能性があるということですよね。 菅原 はい。

誰でも簡単にプログラミングができる時代

佐々木 ただ、一方でデータ分析に関していうと、AI、とくにディープラーニングがものすごく進化して、結果的にAI自体が仮説まで設定してしまって、ほとんどデータサイエンスの入る余地がないところまですべて自動化されるんじゃないかという話もありますよね。 もしくはプログラミング自体が自動プログラム化していくという流れのなかで、エンジニアではなくても容易に触れるツールに変わっていくような傾向があると、エンジニアの市場動向にも影響があるんじゃないかと思うんですけど、そこはどうですかね? IoTとかAIとかビッグデータが社会に進出していく度合いはものすごく大きいんだけども、その中におけるエンジニアのニーズはどう変わるんだろうか、というところはどう見ていらっしゃいますか? 菅原 おっしゃるとおりで、例えばSalesforceなどもGUIでいろんな機能を自分で作れるようになっているので、プログラミングは必要ないというソフトウェアがどんどん増えてきています。 そういった中のニーズとしては、新しい課題に対してソリューション、ビジネスマンのようなセンスを持ったエンジニアは常に必要です。それ以外の単純なコードを書くような人はもう取って代わられてしまうかなという感じがします。 佐々木 なるほど。尾張さんもそうなっていくと思われますか? 尾張 自動プログラミングなどのツールを使うと、よくあるプログラム、データベースを引っ張ってきて照会するとか、単純なプログラムはもう誰でも作れてしまう時代が来ています。 過去のホームページに例えるとわかりやすいと思うんですけれども。ホームページが出てきた頃というのは、ホームページ制作だけでビジネスとして成立していたんですけれども。 今は本当に無料のツールで、カッコよくデザインされて、あとは文字を入れて写真を貼り付けたらできちゃったという、もう誰でも作れるような時代が来てますからね。そういった単純な仕事はだんだんなくなってくるかなと。 佐々木 そうすると、その時代におけるエンジニアの仕事とはいったい何なんですかね? 尾張 高い技術力と、書くだけじゃなくて幅広い知識を持っていて、「この課題にはこの技術を使えばクリアできるよ」という提案ができるエンジニアが今後活躍できると思います。 佐々木 何かの課題があったときに、それに対するソリューションとしては、もはや単なるWebページでもなければ、単なるプログラムでもなく、そこにAIとかいろんなものが入ってくる、データ分析とかですね。そういうものを組み合わせていかに包括的なソリューションを提示できるかというイメージでしょうかね。 尾張 そうですね。

2020年以降活躍するITエンジニア

佐々木 そうなると、それに対応できるエンジニアが現状いるのかどうかという問題があるんですけど、いかがですかね? 齋藤 非常に難しいところだとは思いますけれども。一方では、エンジニアさんたちの得意分野というのはやっぱり残ってると思うんですね。 例えば、ちょっと変な言い方になるかもしれませんけれども、経理が得意なエンジニアさんとかは、経理システムをやっていくような専門職になる。お医者さんが内科・小児科・歯科・耳鼻科などがあるように。 今のITの技術者というのは、仕様書どおり書いていけばいい、コーティングしていけばいいというイメージですけど、(これからは)そうじゃなくて、専門のエンジニアが出てくるのかなと。そういう領域によって生きていくのかなという気がしています。 佐々木 なるほど。要するに、経理のことはなんでも知っていて、よい経理のシステムを構築するために必要なツールやパーツがなにかということをきちんと判断して、それを組み合わせる能力を持ってる人ということですか? 齋藤 そうです。はい。 佐々木 そうすると、「単に仕様書を書いてるだけではもはやダメだよね」と。どうしたらそういうふうになれるんですかね? けっこう難しいかなと思うんですけれども。 齋藤 今のITエンジニアが経理を学ぶよりも、今の経理をやっている人たちがプログラミングというかシステムを学んだほうが早いのかなという気がします。 佐々木 それは身も蓋もないですね(笑)。そうすると、今の仕様書からコーディングしてるだけのエンジニアはどこにいっちゃうのか、という感じがしなくもないんですが(笑)。 齋藤 今そういうコーディングをしてる人たちは、やっぱり専門の知識を身に付ける必要があると思います。厳しい時代が間違いなくやってくると。 佐々木 今話してるのは、「2020年以降活躍するITエンジニアとは!?」という5番目のトピックなるんですけど。 昔、日経BPさんという出版社の人と話してて「なるほどな」と思ったのは、日経BPさんはバイオや農業、ITなどものすごくいろんな分野があって、たくさんの通信や雑誌を出していらっしゃる。 「よくあんな専門性の高い記者がたくさんいますよね?」と聞いたら、「優秀な編集者やライターの専門性を急に高めるのはだいたい無理だから、専門性の高い人、その業界で働いてきた人に入社してもらって、その人に記者や編集の仕事をさせるんですよ。そっちのほうが容易だから」と。 これはたぶん、今おっしゃったように、自動プログラムがどんどん増えていって、ITがツール化していけばいくほど、重要なのはおそらくコーディングの技術ではなくて専門性であると。 その専門性に合わせていろんなツールをうまく組み合わせていくスキルのほうが重要になっていくということはおそらく起きていくのかなと。 尾張さん、こういう状況に対応するためには、技術者はいったいなにをすればいいんですか?

専門スキルの身につけ方

尾張 専門スキルを現場で覚えるのもあるんですけれども、今後エンジニアがどんどん不足していって、あるところで天井がくると思うんですね。 ある天井がきたときに、どうするかというと、今オフショアされてる方とか、外国人エンジニアを雇うとか、そういうのが出てくるかなと思っています。 佐々木 最近インド人の人ものすごく多いですもんね。 尾張 英語のスキルはけっこう以前から求められていたんですけれども。今後、プロジェクトに外国人エンジニアが入ってくると、実際に英語でコミュニケーションできるスキルも必要になってくるのかなと。 佐々木 なるほど。最近知り合いに聞いたんだけど、やっぱり新しい技術はアメリカのほうが圧倒的に早いんですね。Web周りなんかはとくに。 そうすると、日本語の文献やWebページ探して技術を勉強するよりも、英語のソースを探してそれを読んだほうが圧倒的に早いという話を聞いたんですけど、そういう傾向はあるんですね? 尾張 そうですね。プログラム言語の技術書も英語で書かれてるものが圧倒的に早く出ますので。 佐々木 とにかく英語圏で仕事ができるぐらいの英語力を身につけて、技術も早く覚えて、外国人と一緒にプロジェクトに携われるレベルというのはやっぱり求められてくるのかなと。 尾張 そうですね。 佐々木 新しい技術を学ぶというのも、今みたいな相当動きの早い状況で、なにを学べばいいのかということがあると思うんですけど、そういう情報はどうされてるんですか? 尾張 僕自身、新しいクラウドが出だしたときに、週末触るんですね。時間のあるときに触って、「こういう技術があって、こういうことができるんだ」勉強がてら自分でサービス立ち上げたという、一石二鳥でやってみたんですけども。 そういう興味があることはどんどん掘り下げて調べるというのは、エンジニアはけっこう好きなんじゃないかなと。 佐々木 さっきおっしゃった自由な働き方にもつながってくるんですけれど。お金のため、生活のための仕事はもちろんしながら、空いてる時間を独自のサービスの開発だったり勉強だったりに使っていくという、そういうバランスが大事ですよね。 尾張 そうですよね。あとは新しい技術だと、現場で募集をかけてもエンジニアが集まらないということもあるので。ある程度知識があったら現場に入れて、学びながら実際に開発するというところもありますね。Androidの案件でも、出だした頃は誰も経験者がいないものでして。 佐々木 なるほど。もう作りながら勉強すると。 尾張 JAVAの経験があるとか、そういう延長線の経験があれば、入りながら覚えるみたいな。 佐々木 やっぱりそのぐらい前のめりに走っていくのが大事だということなんですね。 尾張 そうですね。そこはちょっと勇気もいるかもしれないんですけど。いろいろチャレンジされてる方はどんどん吸収して、いろんなスキルを身につけられてますね。 佐々木 なかなか大変な時代だけど、やりようによってはいくらでもやれるという、ある意味いい時代でありますと。

優秀なエンジニアを採用するための体制

ここで最後のトピックになってくるんですけれども、「優秀なエンジニアを採用するための企業の採用体制」。 お話をずっと聞いてると、すごい勢いで2極化が進んでいくだろうなと。その2極化が進んでいったときに、新しい技術に即応して、いろんな提案もできて、コミュニケーション能力がある技術者を企業が雇うことができるどうかが重要になってくると思います。 菅原さん、これはどうすればいいかという戦略はありますか、今後の人材採用について。 菅原 まず、先ほど我々が申し上げたような、「ビジネスセンスがあって、専門性があって、率先していろんなことを吸収するエンジニアを、我々の会社が採用できるとは思わない」というのが大前提で。 そこでどのような仕組みが必要かというと、専門性の高い1つの分野、例えばGoogleやAppleなどのメガプラットフォーマーの技術に詳しい人といったところに特化して採用して、それを組み合わせて全体をコーディネートすると、いい組織体制になると。かつ、それほど一人ひとりの給料もそんなに高くないと。 佐々木 1人で全部できる人じゃなくて、パーツパーツに詳しい人が集まって、全員で包括的なものが作られていくというイメージですか? 菅原 そうですね。 佐々木 一人ひとりはスーパーマンではないので、そんなに大変な採用でもないという。 菅原 大変な採用でもないし。そもそもプログラマーでなくても、AWSだけとか、限定して覚えればできるようになると思うんですね。 佐々木 なるほど。先ほどの齋藤さんの「専門性を高めること」という話にも通じますよね。 今後2極化が進むなかで、企業側も採用するのがますます難しくなって、そもそも囲い込むのが可能なのかどうかという話もある。 やっぱりフリーランスの人をうまく使うしかないかなという話になってくると思うんですけれども、企業側はどのように考えればいいんでしょうか? 齋藤 企業が優秀なエンジニアを抱えるのはもう無理な時代が来ると思います。やっぱりフリーの方々をいかに使っていくか。 例えば、SAPでもそうですけれども、SAPの技術者が今どうしても欲しいと。欲しいといっても、たぶん3年か5年ぐらいでもういらなくなるんじゃないかなと思うんですね。 正社員ということではなくて、必要なときに必要なものを必要な量だけというのが、人材の確保の仕方にも影響が出てくるのかなという気がします。 佐々木 1つの技術がいつまでも使われるわけではない。短いと本当に数年で消えていくものもけっこうあるわけですからね。企業側もそれに柔軟に合わせて、人材をその都度使わせていただくと。 技術者もそういうものに自分を即応させていくことによって、どんどん新しいものを身に付けていくという、車の両輪のような柔軟な絡み合いというか、連携の仕方はけっこう大事ですよね。 齋藤 私もそのようになっていればと思います。 佐々木 日本もなりますかね? 齋藤 なります。 佐々木 わかりました。そろそろ時間になりましたので、これぐらいで締めたいと思います。

企業側・技術者側に必要な発想の転換

今ずっとお話ありましたように、技術がどんどん進化していくと。IoTもAIもさらに進化します。我々の生活空間をコンピューティングが覆うことがどんどん求められていくなかで、テクノロジーの役割はさらに高まってくるだろうなと。 そこに技術をどう扱うかという大きなテーマが当然やってきます。その際に、1つの方向性としては、最先端の技術をいかに追いかけていくかという技術者の必要性。 もう1つは、先ほど話に出た経理であったり、1つのIT分野のなかでも、AWSだったりAndroidだったり。そういうものに特化して詳しくなる人が全体としてITを担っていくという、有機的な歯車のような方向性もありなんじゃないかと。 そうなれば、技術者側は1つの分野にいかに特化できるか、あるいは最先端の技術をいかに転がしていけるか、さらにいろんな企業側のニーズや課題に対して、どれだけ的確なツールやプログラムを組み合わせてソリューションとして提供できるかということを考えなければいけませんと。 一方で企業の側も、かつてのように1人の技術者を正社員として抱え込んでひたすら働かせるという方向性ではなくて、どんどん変化する技術、大きくなっていくITの方向性に合わせて、いろんな技術者とうまく付き合いながら、組み合わせるように技術を使っていくと。そういう発想の転換が必要になってくるんじゃないかと思います。 そういう意味では、今後もフリー化への流れや、個々の技術者がどう仕事をしていくかという流れ自体は大きく変わらないんじゃないかと思います。 そういう方向性であれば、おそらくオフショアへどんどん流れていくということも、技術者としてはきちんと対抗できて、新しい技術者像というのを作っていけるんではないかと思います。どうもみなさんありがとうございました。 (会場拍手)

  

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