2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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城倉和孝氏(以下、城倉):たぶん長いこといろいろ一緒にやっている方もいれば、今日初めましての方もいると思うので、あらためて自己紹介します。
城倉と申します。株式会社N2iさんでもお手伝いしましたが、現在は株式会社AGESTのCTOと、それから親会社の株式会社デジタルハーツホールディングスのCTOをやっています。
経歴は、ソフトクリエイトという渋谷のSIerで受託開発を10年くらいやりました。その後、そこでプロダクト開発をして、住商情報システム株式会社(現SCSK株式会社)さんに出資してもらって、株式会社エイトレッドという会社を作ってCTOになりました。X-pointというワークフローのパッケージのプロダクトメーカーですね。
受託開発をやってからプロダクトメーカーをやって、その後はDMM.comのにジョインして、CTOとして8年近くいろいろな事業の拡大に伴って、「エンジニアが足りない」というフェーズを支えてきました。今でもやっていますが、その後はバイナリー合同会社という会社で、技術顧問などをやりながら、軸足はどちらかと言うとAGEST、デジタルハーツに置いているというのが今になります。
プロフィールですね。特に言うとしたら、スティーブ・ジョブズがものすごく大好きです。あと他にこんなものが好きです。いろいろ並べたので、これだけあればたぶんみなさん「あ、これ知ってる」「これが楽しそう」などあると思います。機会があれば、掘り下げてぜひ話したいと思います。
みなさんはLTとかをやる時に、自分の好きなものなど、自己開示するのがいいですね。そうすると共通の趣味とかが見つかるので、そこから会話が弾む感じですかね。以上になります。
篭橋裕紀氏(以下、篭橋):ありがとうございます。今回のこの会に関しては「エンジニアのキャリアパスについて考えてみる」というところと、「イケてるエンジニアになるには」という、この2つのアジェンダで話をしていけたらなと思っています。
これ、N2iがどうのこうのということではなくて、やはり各人がどうやって自分自身の価値を上げるのかというところで、「どうやって仕事を考えていったほうがいいのか」「どういうキャリアの道を目指すほうがいいのか」を考える会にできたらなと思っています。
城倉:では、まずテーマの1つ目ですね。「エンジニアのキャリアパス」というところで話をします。いきなりですが、まずみなさんに質問です。「10年後に何をしていたいですか?」という話ですね。
(スライドを示して)1番は「プロダクトや事業などを創出するビジネスパーソンになっていたいんだ」という人。それから2番はビジネスを牽引するエンジニア。今の延長ですよね。あるいは「データサイエンティストのようなデータを活用する人になりたいんだ」という人。
3番目は、逆に「エンジニアリングチームを牽引するマネージャーをやりたいんだ」という人。マネジメントですね。4番目は研究職。研究開発のエンジニア。「どれにも当てはまらないな」と思ったら5番というかたちになります。
では、聞いてみたいと思います。挙手をお願いします。1番、ビジネスパーソンになってみたい人はいますか?
篭橋:4人。
城倉:お、けっこういますね。じゃあ次にいきます。2番ですね。「僕はやはりエンジニアだ」と。「ずーっとエンジニアでいたいんだ」という方、挙手をお願いします。
篭橋:4人。
城倉:4人。おおー。わかりました。では、3番ですね。「マネージャーをやってみたい」と。エンジニアチームをリードしてみたい方がいたら、挙手をお願いします。
篭橋:4人。
城倉:おおー。きれいに分かれていますね。
篭橋:確かに。
城倉:では、いるかわかりませんが、4番の「どちらかと言うと、ビジネスよりは技術を仕事にしたいから研究職がいいんだ」と。研究開発のエンジニアをやってみたい方はいますか?
篭橋:1名。
城倉:1名いるんですね。すごーい。すばらしいです。では、「ちょっとどれにも当てはまらないな」という方、いたら挙手をお願いしまーす。
篭橋:岡部さん(株式会社N2iエンジニアの岡部勇哉氏)かな。あぁ、岡部さんって言っちゃった(笑)。
城倉:では、それは後で岡部さんに聞きましょう(笑)。
篭橋:岡部さん、今話しても大丈夫ですよ。
岡部勇哉氏(以下、岡部):お疲れさまです。マネージャーかで少し迷ったのですが、後任の育成とかをやりたいなと考えています。
城倉:なるほど。そうするとエンジニアのテックリードのような感じですかね?
岡部:そうですね。イメージ的にはそんな感じです。
城倉:わかりました。ありがとうございます。けっこうバラけていて、おもしろい結果になったなと思います。実は別の会社さんで、マネージャーさんから依頼されて、これをやったことがあったんですよね。みんなは何に興味があるのかなと。そしたら、やはり1番と3番がすごく多くて、逆に2番がいなくて、マネージャーの方ががっかりするということがありました。でも、今回はすごくバラけていますね。
城倉:「課題解決に取り組む体制」ということで、実は軸が3つあります。「ビジネスの軸」「テクノロジーの軸」「エンジニアリングの軸」ですね。それぞれあります。
今みなさんはエンジニアです。そこがスタートで、「将来はこのままコードを書いていきたい」というのも、とてもかっこいい姿だと思います。ただ、だいたいはテックリードといって、自分でコードを書くところから、人をまとめるような、要は技術をリードする立場になっていきます。その究極がCTOですね。これは最適な技術を選定したり、技術をリードしたりしていく役割です。
もう1つのエンジニアリングのコースは、VPoEを目指すかたちになります。これは簡単なところでいくとスクラムマスターをまずやって、そのあとに開発部長的なポジションとしてエンジニアリングマネージャーですね。そして、そこからVPoEと。これはどちらかというとチームビルディングや育成、人を増やさなければいけないので、採用もやらなければいけないですね。
最後がビジネスパーソンですね。開発をやる中でそのプロダクトに少し興味が出てきて、「プロダクトをどう作るのか」ということに興味を持ったら、まずプロダクトオーナーをやってVPoP。CPOという言い方をする時もあります。これはプロダクトをリードしていく人たちです。
そういう意味で、実は行き先は1つではないんですね。いろいろな自分の指向で、やりたいことや得意なことを伸ばしていくと、これらのキャリアパスがあるという話になります。
では、「どんなスキルが必要なんだ?」という話で、まずはVPoEからですね。これはチームをリードする能力が必要です。まずはプロジェクトマネジメントですね。タスクやスケジュール、進捗を管理するプロジェクトマネジメントのスキル。あとは、人をリードしていかなきゃいけないので、メンタリングなどもしなければいけません。コーチングやティーチングなど、聞いたことがあると思いますが、こういうスキルセットが必要になります。あとはフィードバックかな。
それからチームをまとめなきゃいけないので、ファシリテーション技術ですよね。適切にいろいろな人に(話を)振って、きちんと会議を進行する感じですね。あとは、採用したり、当然人の面倒も見たりするので人事や労務の知識も必要になると思います。
次にVPoPです。これはプロダクトをリードします。そういう意味で、業務知識や対象業務、それから市場の流れをしっかりとつかまなきゃいけないので、市場の状況をきちっと把握していく。あとは、プロダクトの知識は当然ですよね。それから、「そのプロダクトをどう成長させるのか」という意味でグロースハックをどうしていくのかという知識や、マーケティングですね。こういうものが必要になると思います。
最後に、CTOは技術をリードする知識と能力が必要になります。なるべくフルスタックがいいです。やはりフロントもバックもインフラもわかった上で、いろいろなことをアドバイスしてリードしなきゃいけないので、フルスタックな技術と知識があったほうがよいというのと、アーキテクチャやシステムの設計、セキュリティ、そんなことを追求していくかたちになります。
実は日本の企業って、これ全部をCTO1人でやってきたんですね。それである時から、特に米国ですが、Amazonなどは、CTOの負担が大きすぎてボトルネックになるので「こういった三権分立をして、それぞれで責任を持ちましょう」という体制になっています。日本もそれに倣って、最近はこういう体制でやっている会社さんがけっこう増えています。
ただ、「じゃあこれを目指すんだ!」というのが正解かというと、そんなことはなくて、やはり会社のフェーズや、人数規模など、そういうものに合わせていく。例えば、「5人しかいないのにCTOとVPoEとVPoPがいます」なんていうのも変な話なので、無理に作るのではなくて、ただ「こういう役割が3つあるよ」というのを意識しながら、組織を作っていくのがいいと思います。
そして共通スキルがあります。まず1つは、当然リードする立場なので、リーダーシップですね。これは当たり前です。リーダーシップがないと、こういうリードするポジションはできません。
それから、やはりビジネス思考が大切です。プロダクトを作る目的は何かを考えなきゃいけない。そういう意味で、これはCTOであってもVPoEであってもビジネス思考をきちんと持って仕事をするのが大事になります。
あとは、経営知識ですね。CxOと呼ばれる人たちは、実は経営者なのですね。技術が経営に対してどういうインパクトがあるのかをきちっとエンジニアに伝えていかなきゃいけないので、経営知識が必要です。
あと意外かもしれませんが、持っていたほうがいいのが会計の知識です。特にPLという損益計算書が読める・読めないでビジネスの進め方が大きく変わってきます。ちなみに、篭橋さんも社長ですし、いろいろな社長がいますが、だいたいの代表の方は会計知識があります。
篭橋さんはしっかりされていますが、夜飲んでばっかりで「ウェーイ!」みたいな社長でもきちんと数字が読めます。なぜなら、数字が読めないと会社が潰れちゃうからですね。なので、みなさんも会計や簿記など、こういうものに興味があったら勉強するのもいいのかなと思います。
だいたいテーマ1は以上になります。1回篭橋さんにお返しします。
篭橋:ありがとうございます。みなさんに質問をしてもらいたいなと思うのですが、それで言うと僕から1個あって。
我々N2iは今、吉野さん(吉野宏樹氏)が開発チームの長というかたちになってるのですが、社内にいるエンジニアがCTOやVPoEになるために取るべき動きというか、「どうしたらそこのポジションが作れるのか」みたいな。我々には(CTOという役職が)もともとないのに作るのか、さらに誰がやるのかというところがあると思っています。そのへんはどうですかね?
城倉:会社の視点でいくと、やはり適性を見て人選して経験させていくことくらいしかないと思うんですよね。個人の視点で「私は何がやりたい」というのは、まず志向で考えればよくて。
例えば、VPoPというかプロダクトオーナーはエンジニアだけじゃなくて、ディレクター、デザイナー、マーケッターの人たちがなることも多いと思うんですよ。ただ、CTOとなるともう完全にエンジニアでしょうし、VPoEもエンジニア出身の人が多いと思います。なので、自分の適性がまず1つ。何がやりたいか、何が伸ばせるかを突き詰めるのが一番いいと思います。
エンジニアって、やはり「コードをずっと書いていたい」という人がすごく多くて。そういう子に限って優秀なので、テックリードと言いながらマネジメントもやらせてしまうようなシーンがけっこうあるんですよ。
そうすると2通り(反応が)あって、嫌だから辞めるという子が一定数います。「僕はコードを書いていたいんだ」と。マネジメントになった途端に「もうやりたくない」という人もいれば、「僕がやるしかないから僕がやる」という人も多いです。
VPoEやCTOを今やっている人はたぶんそういう方が多くて。コードを書いて背中を見せるCTOもいますが、基本的にはマネジメントを誰もやれないから僕がやって、「やらないとエンジニアが幸せになれないんで」という理由でやる人が多くて。
まぁ何が言いたいのかというと、「まずはやりたいことをやってください」。ただ、その時に「適性がある自分にしかできない」という判断をしてがんばってやってみると、それはそれでいい経験になるんじゃないかなと思っています。
篭橋:なるほど。ありがとうございます。
篭橋:他に質問してみたい人はいますか?
岡部:いいですか?
篭橋:どうぞ、岡部さん。
岡部:こういうのって、どれぐらいの年齢の時から意識されてたんですか。
城倉:その質問はよく言われるのですが、CTOやVPoEになる人で意識してる人は意外と少ないです。逆に、「CTOになるにはどうすればいいですか?」という質問をよくされますが、要はなろうと思ってなるものでもないので。チームの中の役割を、自分が得意な分野でしっかりやっていれば、自ずとその責任と権限が大きくなっていって、「気がついたらやっている」という時が多いんですよね。
なので、例えば岡部さんが育成したいということだったら、テックリードとして自分の技術を磨いて、後輩を育てる。そうすると、自ずとみんな岡部さんを慕うようになって、篭橋さんからも信用されて「お前、CTOやってみるか?」という話になるのが、まぁ一般的によくある流れですよね。
岡部:(CTOは)目指すべくして目指すものでもない?
城倉:目指すのはいいのですが、目指すために勉強するのではなくて、やはり「業務をやるために勉強する」というマインドのほうが、まぁ近道かもしれないですね。
岡部:ありがとうございます。
篭橋:なるほど。じゃあ例えばCTOを目指すというところで、最短でそのキャリアを進む方法はあるんですかね?
城倉:そうですね。CTOを目指すんだったら、VPoPは少し置いておいて、まずは技術かチームをまとめる活動や行動をしっかりとできるようにならなきゃいけません。
これって人によると思うんですよ。2、3年でできるようになっちゃう人もいますし、今の学生さんでずーっとコードを書いている子は社会人2、3年目になると、もうかなりのレベルになる子も中にはいますし、あまり「何年」というのはないと思うんですよね。なので、しっかりと目の前の仕事がこなせるようになることが一番近道な気がしますね。
(次回へつづく)
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