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どうして今アバターが再流行しているのか? 進化した制作技術と、これからのアバターとしての存在価値(全2記事)

HIKKY代表・舟越氏が目指す「諦めなくてもいい」世界 “バーチャル世界なら叶う”が実世界に与える影響と未来

ゲームやネットのなかで、自分自身の「分身」をあらわすキャラクターを指す、アバター。最近ではYouTubeなどでLive2Dや3Dアバターを使う人も増えたことやメタバースの普及もあり、目にする機会がより一層増えてきました。 そこで今回は、アバターの制作技術の変化を知り、これからの未来を理解するため、株式会社HIKKY CEOの舟越靖氏にお話をうかがいました。ここからは、バーチャル世界のアバターが実世界に与える影響と、今後について。前回の記事はこちらから。

バーチャル世界のアバターが実世界に与える影響

ーーバーチャルの世界が社会にとって当たり前になった時に、実世界にどんな影響を及ぼすことが考えられるでしょうか。

舟越靖氏(以下、舟越):例えば、体が不自由な方、立ち仕事がちょっと難しい人もいますよね。容姿に自信がない人にとって、ある程度の容姿を必要とされる仕事は難しいです。しかし、バーチャルの世界であれば、そのような仕事もできるようになる。そう言ってしまえばシンプルですが、それ以上のすごい変革が起こるんですよ。

仮にアパレルの店員さんになりたい憧れがあったものの実際には諦めていた人が、アバターでは店員になれた。店員になって、物が実際に売れた。こうなると、絶対無理だと思っていたものが叶うので、メチャクチャ人材としてのポテンシャルが高くなるんですよね。やる気もあるし。しかも遠隔で、かつ、いつでも働けるので、時短にもなるなど、いろいろな利点があります。

最近では、SDGsに関しても注目されていますよね。持続可能な開発目標という意味ですが、ああいうのは基本的に実現できなくて困っているから、立ち上げているんですね。「これからがんばっていこう」ということだと思うんです。

そんな中で、1つのスタートアップがやったバーチャル空間上にお店を作り、そこで接客をしてもらって、物がたくさん買われていく現象が起こっている。これはディーセント・ワークなど、ものすごく難しい問題の解決にも繋がるんです。

「障害を持っている方を何とかしてあげよう」とか「雇ってあげよう」みたいな流れは、雇っているところが面倒を見る、という感じじゃないですか。だけど、その人たちがバーチャルで成果を上げるのであれば、むしろその人たちにぜひ働いてほしい、となる。逆転ですよね。当然、継続的にもなるし、問題も解決します。

これは体が不自由じゃなくても、すごいキャリアを持っている人なのに、妊娠などの影響で働くことが難しくなってしまったり、戻る場所がなくなってしまったりとか、そう言った問題も、組み合わせとして解決する可能性すらもあるのです。

僕らはテストケースとしていくつかやっていますが、本当にそうなっています。まさに楽しく働け、それが誰にでも提供できるような環境です。僕たちの実世界では姿形が影響する範囲が広いので、そこが解決できるソリューションを提供できれば、バーチャルのメリットがありますね。

ーーなるほど。そういった多様性という意味では、本当の自分のジェンダーとは別に自由に設定できるのもアバターやバーチャル世界の特徴だと思いますが、このような環境が、実世界にポジティブな影響を及ぼすこともあるのでしょうか。

舟越:世の中的にどうなるかは正直わかりません。ただ、バーチャルの世界において、少なくとも僕らの仲間の中では、そこにいるそのままの姿というか設定というか、すべてを受け入れるところから始まっています。

例えば「私は18歳の女の子なんです」と言ったら、例えばその声がおじさんだとしても、僕らはそれとして受け止めています。なぜそれでいいかというと、その人がその存在でやりたいのであれば、それでいいと思っているからです。逆に言うと、その人たちもそういうものだと振舞っています。だからそこが成立するというか、あまり変な感じがしないんですよね。

バーチャル世界の法整備について

ーーところでメタバースに関していえば、2021年12月6日に「仮想空間内での商取引などを巡る法律やルールの整備が課題になっている」との報道がありましたが、どのように感じていますか?

舟越:あの報道の一番よくないことは“メタバース”という言葉がメチャクチャに使われていることです。僕らの考えるメタバースの定義は、僕らの住んでいる現実も含めた、無限にあるバーチャル空間の一つひとつがユニバースとしてあって、それを神視点で見たまとめのことなんですよ。ユニバースは今までゲームの中にしかありませんでしたが、今はもう他にもあって、それぞれに文化圏・経済圏ができています。

僕らが事業を始めた時は、バーチャル空間がなかったから、その1つを作るところから始まりました。僕らは3年前ぐらいに「ネオ渋谷」というものを作り、さらに2021年に「パラリアル渋谷」というものを作りました。つまり、複数の世界があるわけで、こういうものがユニバースなんです。

報道にあった今回の発表は、医者じゃない人間が医療についての団体を掲げたぐらいのインパクトが、僕らの中にはあったんですね。

僕から結論は言えませんが、NFTやブロックチェーン関連は相性はいいと言われています。そこからの派生で、NFTを使ったVRのサービスもあるとして、それをメタバースと呼ぶなら別にいいと思います。

広い意味ではDiscordやゲームの空間も1個のメタバースですが、VRの空間や3Dの立体空間を除いたメタバースとなってくると、僕らの望んでいるメタバースではありません。分別・区別をするつもりはありませんが、正直「総じて語るのであれば、少なくとも経験とか実践を積んでから来い」となります。

法律は、そもそも具体性がないと行動を縛るものになりがちです。「こうなってはいけない、こういうことがあってはならないから、何かを予防する法律を作ろう」となるんですよ。

そうすると、新しくやろうとするあらゆることが、その時点で制限されてしまいます。そんなことになるんだったら、やらないほうがマシで。やりながら問題になったこと、もしくは今なりそうなことを法整備していくなら意義もあるでしょうが、そういった課題をまったく知る由もない人たちが立ち上げたというのが、今回の問題点だと感じます。

作りたいのは諦めをしなくていい世界

ーーありがとうございます。最後にHIKKYがこれからVR、メタバース、アバターをどんどん普及させて、どのような世界を目指しているのか教えてください。

舟越:今はAIなどがどんどん出てきていて、ツールの進化などもそういったもので支えられています。それはイコール自動化であり便利な世界で、逆に言うと、単純な作業などはどんどん僕らの手から離れて、解放されていくことになります。その時に、どういうものが人間にとって一番価値のあるものになっていくかと考えると、僕は創造性だと思っています。

子どもの時にプロのイラストレーターになるかなれないかで悩んで、諦めてしまったようなことがあると思います。そういう諦めをしなくていい世界を僕らは作っていきたいんです。

バーチャルマーケットには人がすごく来て、楽しいんです。来る人たちはたくさんのクリエイターさんの作品を見にきます。別に買い物するだけじゃなく、まずは純粋に作品に触れて楽しんでいるんですよ。

遊園地やテーマパークが楽しいように、僕らも負けじと楽しい世界を作るんです。なるべく来た人に楽しんでもらえるように、ガイドラインとか、いろいろなものを考えて作ります。そういう、いろいろな人たちのクリエイティブの塊って、来た人たちを刺激するんです。

そうすると、ただ楽しいだけじゃなくて、「作りたい」に変わる。最初は先輩クリエイターが作ったものに触れて楽しい。そのうち、自分もアバターがほしくなる。そして「自分では作れないから作ってもらおう」とか「なんとしてでも自分で作りたい」となる人がすごく多いんです。それはアバターだけではなく、バーチャルな世界、建物、アトラクションなども一緒です。

その「作りたい」という気持ちを、見えるレベルでかたちにできる。ちょっとがんばるとそこにたどり着けるのが、今僕らが提供しているサービスの目指している姿で、しかもある程度実現しています。それをもっと広げる、作ったものがさらにたくさんの人に見てもらえる環境を作るのが、今の僕らの夢です。

要するに、アクセスとクリエイティブ。ちょっと欲張りなんですが、この2点を目指していこうかなと。

もし今から絵を描いたり、音楽の仕事を目指していいとなったら、人生を考え直す人もいると思います。そういう瞬間は、他の人からすると「え!?」ってなるじゃないですか。「あ、いいじゃん」となれる環境が今はありません。だから僕らは、無責任じゃなくて、本当に「いいじゃん!」となれる環境を作りたい。それが会社の方針なんです。

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