
2025.02.18
「売上をスケールする」AIの使い道とは アルペンが挑む、kintone×生成AIの接客データ活用法
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ーーVket事業を中心にさまざまなバーチャル事業に取り組まれているHIKKYですが、そもそもどうしてこの事業に取り組もうと考えたのでしょうか。
舟越靖氏(以下、舟越):僕はもともと通信会社にいました。その後、インフラなどを扱う会社を立ち上げましたが、自分は本当はクリエイターになりたかったんですよね。でもなれなかった(笑)。なので、どうしてもクリエイティブ分野に行きたくて、インフラの収益を基軸に、とりあえず手探りで(今の事業を)始めました。
まずはクリエイターさんに触れなければどうしようもないということで、僕はビジネス側ではなく、作り手側のほうから関わっていきました。そこでたくさんのクリエイターさんが、人が人を呼ぶようなかたちで紹介してくれました。
今も昔もそうですが、アートとかクリエイティブをやっている人って、バイトしながら取り組んでいる人が多いです。相談されるたびに「なんとか彼らを食わせていかなきゃ」と考えていました。
いろいろプロモーションなどの制作が必要なので、キャラクターIPや、秋葉原でPCや家電を取り扱うメーカーさんなどを相手に、仕事をしていました。クリエイターさんが食べていくのに十分なお金をうまく回して、たくさんの組織をネットワーク化していったんです。
そうこうしているうちに会社化の話になっていきますが、その時は、十数社に出資して会社を作ったり、組織化したり、経営したりしていて。その中の1つがHIKKYでした。
クリエイティブを触っていくと、3D-CGを触ることにもなります。僕の会社は、当時映画とかゲームを作っていて、その流れでいろいろなCGに関わる人たちにも会いました。
GUNCY'Sという会社の立ち上げを手伝った時に、海外に行く機会があり、開発中のOculusやVIVEのヘッドセットを被らせてもらいました。7、8年前のことです。それらは開発中で、まだ市場には出回っていませんでしたが、その進化たるや圧倒的で「これは来るな」と考えていました。
「これはすばらしいな」と思い、その頃からVRは好きで。業務になったのは、HIKKY設立の少し前ぐらいからですね。
ーーなるほど。5月に創業、8月にバーチャルマーケット開催と、かなりスピードが速いなと感じていましたが、そのような流れがあったのですね。
舟越:前段としては、VTuberとの関わりがあります。当時は自分たちのことをVTuberと名乗る人も名乗らない人もいましたが、そういった人たちを応援するようなプロジェクトから始めたんです。
バーチャル空間の使い方は多様性・汎用性があったので、バーチャル空間上だけでCM撮影をすべてやってしまったりとか、そういう取り組みをしていました。そこからいろいろとアイデアが出てきて、ある日、1人が「バーチャルマーケットをやりたい」「VR空間上に市場を作りたい」と言い出して。それがバーチャルマーケットのきっかけになったんです。
当時はまだ規模も小さかったし、クリエイターの個人的なバックアップぐらいしかしていなかったんですけど、たった数人のクリエイターがそれをかたちにしたんです。「動く城のフィオ」という者が弊社の役員にいますが、彼がバーチャルマーケットの立ち上げの人ですね。
ーーありがとうございます。HIKKYの社員は、バーチャル上で好きなアバターを使い、かつハンドルネームで働いているとのことですが、どのようにしてこの環境を作り上げることができたのでしょうか。
舟越:これは僕のもともとのマインドなのかもしれませんが、働いているのにおもしろくないのってけっこう地獄だなと思って。「そこは別に業務とあまり関係なくない?」というところは、メチャクチャに遊びきってもいいかなと思っています。それによって楽しかったり、ふざけるきっかけになったとしたらいいじゃないですか(笑)。
バーチャルの人たちはクリエイターが多いので、昔からペンネームみたいなもの、俗に言うハンドルネームみたいなものを持っています。さらに、ネット文化にはそれをそのままの人格として捉えて、「すごいな」「楽しい」と思う環境があるじゃないですか。だから、その人をわざわざ本名で採用するのは意味がないんですよね。
もう1回その本名で馴染まないといけないし、その人の本名が例えば田中さんであれば、ハンドルネームがすごくかわいい名前でも、田中さんになっちゃう。そういうのはおもしろくないです。実際に弊社では本名を知らない人同士がけっこう多くて。これを素でやっているというか、意識的にやっているところではないんです。
多くの企業がどうしてペンネームで仕事させるのを嫌がるのかというと、二重のコストがかかってしまうので、管理部門的にそれは困るということだと思います。でもそこで諦めたら、おもしろいことはできないので。「こっちのほうがおもしろいからやろうよ」と、おもしろいことを叶えるために、どうすればいいかを考える。それがあったからこそ、今がある感じです。
ーー大切な考え方だと思いました。いわゆる匿名性のある働き方をすることで、ポジティブな影響をもたらすこともあるのでしょうか。
舟越:メリットはたくさんあります。ただ名前の匿名性だけではダメで、バーチャルというか、アバターという、立体の空間で存在する自分の体があることも大切です。
これはもしかしたら当たり前かもと思いつつも、すごく不思議な現象で、例えば先ほどの動く城のフィオ、僕は「フィオちゃん」と呼んでいますが、彼は小さい女の子の設定で、いろいろ好き勝手にやるわけです。
その中で、普通のビジネスシーンだったらしないような、おどけた行動をとったりすることがあります。でもその見た目をしているだけで、違和感なく馴染んでしまう。
これって、実はものすごいメリットで。仕事ですから当然トラブルはたくさんあるわけですが、そんな中でこの関係を保てているのは、やはり姿かたちとか、話し方とか、そこに付いているキャラのおかげなんですよね。
僕らは、それぞれが実際に会ったことがない人もいます。また、会ったことがあったとしても、その設定されたキャラのイメージが被るくらいの効果があるんです。要するに、コミュニケーションが円滑にいきやすくなるとか、そのアバターを使っているから勇気が湧くとか、そういうものに紐づきます。なので、コミュニケーションツールとしては、かなりよいものなのではないかなと思います。
ーーところで最近は、平面のアバターではなく、3Dのアバターが多くなってきていますが、どのような進化があったのでしょうか。
舟越:根本的な部分で、複数の要素があります。1つ目として、僕らはSNSを当たり前に使っていますよね。しかもそのSNSごとにイロが違っていて、InstagramとTwitterでは上げるものが違うじゃないですか。SNSによって人格も変わると考えています。こういった状況を前提とした上で、これと同じ状況を立体化したものが、それぞれのアバターであり、人格だということです。
今まではアバターや人格を持ったとしても、それを表現する場所がありませんでした。あったとしても例えばYouTubeなどで、あまり双方向のコミュニケーションにはなっていません。
立体である意味は、VR空間上でコミュニケーションをとれるから。立体にすることで、3次元のように相手との距離を持てるし、音も360度から聞こえます。よりリアルに近いコミュニケーションがとれる場ができました。ここがまず1つです。これが要するにバーチャルSNSと呼ばれている文化というか、サービスの始まりです。
ゲームなどの文脈にもアバターはありましたが、バーチャルSNSがゲームと大きく違うのは、そこに目的がないことです。ゲームは基本的に目的があって、それをベースに集まって話をしますよね。でもバーチャルSNSは、ほかのSNSと同じで、情報を共有するだけなので、それ以外の目的はないんです。じゃあそこで何を表現するか。
ここで、2つ目の進化として、BlenderやUnityなどの開発ツールの話があります。まずこの2つは、基本無料なのにプロでも使えるようなツールであるということ。簡単なものではないですが、ツールが非常に優秀で、一般人でも何ヶ月かがんばれば、そこそこのゲームが作れてしまいます。
しかも、素人がそのツールを扱えるようになるためには、本来だったら本を読んだり、学校などに行かないといけなかったのに、VTuberなどの人たちが、自分のノウハウを惜しげもなくnoteなどに書いて公開していったんです。
これがさらに進化を生んでいます。そのツールを使って、それらの知識を寄せ集めて自分でがんばって作ってしまえば、何もない空間から自己表現ができちゃうんです。例えば今まで帽子すら存在しなかった世界に、自らの手で帽子を生み出すことすらできます。さらにそれをアピールできる場にもなっています。そしてそれをTwitterなどのSNSで発信する、というサイクルも生まれています。
加えて通信機器などのデバイスが安くなって一般化されるなど、複数の要素があって、それらがすべてが揃ったから、バーチャルマーケットをやれるぐらいの環境が整ったんです。
ーーなるほど。技術の進歩もあり、またSNSなどの発展で共有することが当たり前になった環境だからこそ、グッと進んだところもあるのですね。
舟越:昔はネットで生配信をするにしても特殊な機械などが必要で、プロじゃないとできない時代もありました。それがどんどん一般化していって、今ではスマホ1つでできるようになった。このような技術の進化と近い流れが、アバターやバーチャルにも起こり始めている感じです。
ーーなるほど。そのような進化がより一層起きたときに、どこまでのことがアバターでできるようになるのか気になります。
舟越:着せ替えのできるゲームなどで、かわいらしいアバターに、かわいらしい服を着せるようなことは、誰でも普通にやると思います。その文化はもう確立されている。では、今僕たちがやっているようなアバター文化みたいなものが、それ以上の存在になるかというと、「なります」。
なぜかと言うと、先ほど言っていたように、ベースとしてコミュニケーションがあるからです。僕らはなぜ服を買うかと言うと、人とコミュニケーションをとるために買っているんですよね。そうでなければ、別に寝巻でいいじゃないですか。
それと同じです。これをバーチャルのコミュニケーションに置き替えると、自分のアバターないし分身をよくするか、バリエーションをつけるかの思考に、当然なっていきます。過去に多くのアバターを生み出した『アメーバピグ』などでも、そういうところはあるじゃないですか。
仮に自分の存在を隠してInstagramを始めて、なぜか知らないけどメチャクチャ人気が出て、100万フォロワーになっちゃったとします。そうなると、そのInstagramのアカウントは、実世界の自分以上に大事な存在になってしまうこともありますよね?こうやって考えていくと、アバター文化はもう今以上になるしかないんですよ。
ーーなるほど。場合によっては、自分がリアルに関わる人数よりも、SNSでつながる人数の方が多くなりますものね……。それによってコミュニケーションの主体というか、重きが変わることもあるのでしょうか。
舟越:僕らはコミュニケーションは(リアルとバーチャルで)並行するものだと考えています。2年ほど前に我々は“パラリアル”という言葉を提唱して記者発表もしましたが、そもそもなぜこの言葉を使ったかというと、バーチャル空間だけで完結させると、そこが閉じた空間になってしまうと考えたからです。
例えば、僕らは渋谷や秋葉原をバーチャル上に作っていますが、バーチャル空間の中でいろいろとやっていたことが、自分が実際に渋谷とか秋葉原に行ったときに、そこに反映されているとする。このように、外部のサービスと連携したり、僕らのふだんの暮らしにも反映されたりしたら、バーチャル側で行動する意味も出てきて、より楽しめるんじゃないかと思うんです。
また、僕らは2年以上前から、バーチャル空間の人たちにその中で働いてもらって、実世界でお給料を発生させています。こういったことがあると、バーチャル世界での活動は価値にもなりますよね。
ーー現在ではまだメタバースの世界を知っていたり、訪れたことがある人は一部のイメージがありますが、今後バーチャルの世界は当たり前になっていくんでしょうか。
舟越:そうですね。まもなくというか、僕らは当然そうなっていると思っていて。最近の取材でふざけて答えているんですが、やっと世界が追いついてきたなと(笑)。
日本人はやはりすごい発想を持っていて、漫画文化とかアニメとか、そういうものに支えられてきているじゃないですか。だからベースの英才教育がされているので、妄想力がすごいんです。技術はいつも海外からですが、その技術を応用して文化を生み出すことは、日本ではけっこう多いことだと思います。
今回もまさにそうかなと思っていて。会社の最初の目的は、バーチャル世界の中でしか生きられない人たちがいて、その人たちの生活圏や文化圏を作ろうということでした。村みたいに人が集まって、そこで取引ができる場所を作り、そのうちに経済圏になればいいねと言っていた。
そんな中で、僕らは国外でもあまり例のないような資金調達をしました。これがたぶん答えだと思っていて。市民権とか、そういったものでないとしたら何なのかと。
弊社の動く城のフィオという役員は、ものすごく重症のうつ病で、実際の世界で働くのは難しい。僕と会ったこともほんの数回しかないし、弊社の社員はほぼ全員会っていません。バーチャル世界のみ。そんな状態で、彼はとんでもない、ユニコーンに近い企業を生み出してしまったわけです。
彼は特別な天才ではありません。ただがんばっている人、楽しい人。そういう意味では、誰しもこういったチャンスがあると思っています。今の世界の状況からしても、確実にバーチャルの世界は、当たり前になっていくんじゃないかと思っています。
(次回につづく)
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