2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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佐々木俊尚氏(以下、佐々木):地域の共同体とか古い自治体と、どうやってうまく折り合っているかというのは、けっこう重要な課題なんです。そこで、竹内さんにぜひ聞いてみたいのが、一番上の質問。
「途上国で新しいブロックチェーンを始めると、とくにお金が絡むので、現地政府に怒られないですか? 例に挙げられたアメリカのベンチャーや世銀はどうしているのでしょうか?」
このへん、どうなんですか? 旧来の経済圏や旧来の制度との衝突みたいなものって、アメリカではどうなんでしょうか?
竹内知成氏(以下、竹内):国と事業によりけりだと思います。世銀などはもちろん政府と取り調べをやっているので、とくに何も問題はないです。民間企業とやるときはどうなのかと言うと、それはもうそれぞれの国で、外国企業の誘致を積極的にやっている国もあれば、そうでない国もあります。とくに金融分野だと、国によってそれぞれ政策が違うので、その国の法律に則ってやっています、というのが実態だとは思います。
佐々木:さっきの(アフリカの)写真の中で、チーフみたいな人がいたじゃないですか? ああいう伝統共同体みたいなものと、ブロックチェーンのような新しい技術との親和性はどうなんですか?
竹内:なかなか難しい質問ですね(笑)。どうだろう。今のところは、それですごく大きな問題が起きているというのは、正直聞いたことがないのが実感ですかね。ちょっと質問とは違うんですけれども、林さんのお話を聞いて、触れたいなと思う話があって。先ほどのプレゼンテーションの中で、北海道でしたっけ。誰かのところにトークンが集まってきますよ、という(実証実験をされていました)。
あれって要は、その人の信頼度やニーズが高いのかなと思うんです。トークンの話がおもしろそうだなと思ったのは、世間一般に通用している評価基準に照らし合わせると、途上国の人はなかなか信用できないとか、お金を貸せないというふうに判断されがちかもしれないんだけれども。
ああいう(トークンのような)感じで、独特の価値観のようなもので評価していくと、実はものすごくニッチなニーズかもしれないけれども、この村で一番信頼されている人はこの人とか、この知識・この分野に関しては、実はこの国のこのおじさんが超詳しい、とか。そういうものすごく多様化した価値観の中に、光る人材はいるんじゃないかなという気がするんです。
もしそれがわかってくると、今まで銀行や起業家に見向きもされなかった人たちのところに、「こんなビジネスをやりませんか」「お金を貸しますよ」という新しい可能性が出てくるというのもアリかな、なんてちょっと思いました。
林篤志氏(以下、林):ある種の与信管理みたいなところは出てくると思います。今は銀行だと、預金がいくらあって、社会的ステータスがどうで、年収がどうだという話なんだけれど、そうじゃなくて、ソーシャルバランスの中で、どれだけ信用を確保しているかという話だと思うんです。ただ一方で、質問の中でも「それってなんか人気取りみたいで怖い」という話もいくつかあったんですけれども。
どちらかと言うと、価値基準が多様にある、経済圏が多様にあることが重要です。むしろ今、事例としてあるのは、やっぱり中国の「Alipay」などが信用を全部スコア化していますよね。
佐々木:社会信用をすべてスコアにして。
竹内:芝麻信用(セサミ・クレジット)?
佐々木・林:そうそう。
林:それでスコアが低いと、空港で出国もできないという。
(会場笑)
佐々木:出会い系のアプリで、優先的にかわいい子を紹介してくれるらしいとか。
(会場笑)
林:そうそう(笑)。あれはけっこうディストピア感が半端ないな、と思っているんです。
(会場笑)
林:要は、我々個人はそんなに単純ではないと思っているんですよ。だから、10年前に最悪なやつだったけれども、久々に会ったらけっこういいやつになっているな、とか。
(会場笑)
林:ぜんぜんイケてないけど、1ヶ月後にある子に出会って、めちゃくちゃマインドセットが変わったというような。あと、今こうやって話している僕と、家庭に帰って子どもをあやしている僕と、地元に帰って地元のダチと話している僕は、たぶん全然違うんだけれども、すべて僕じゃないですか。それを一元管理してスコア化する世界は、なかなか気持ち悪いなと思っていて。
もし日本がブロックチェーン的な分野でアドバンテージを取っていくとしたら、その部分は、あまり一神教的・多神教的な感じでは片付けたくないんです。そういう多元的なスコアリングというか……スコアリングしたとしてですよ。
もう1つは、ベーシックインカムの話が出てくると思います。国の社会保障などを全部ひっくるめて、ベーシックインカムにしましょうという話もあって。もし可能性があるとすれば、トランザクションの例えで、1パーセントを分割してリアルタイムで再配分ができる気がするんです。
だから例えば、ここでみなさんが同じ新しい通貨を使っているとして、僕が(佐々木)俊尚さんに5,000円相当のコインを配ったら、その1パーセントの50円相当を今のユーザー数で分割して、みなさんにリアルタイムで再配分できちゃうわけですよ。
そうすると、事実上はベーシックインカムになってくる。トランザクションが増えれば増えるほど、みなさんのところに再配分されるので。だから、別に人気取りじゃなくて、例えば、超重度の障害者の方や、経済活動に反映できない幼少の子どもにも、ベーシックインカムというかたちでお金を再配分できる。そういったこともできるんじゃないかなとは考えています。
佐々木:可視化みたいなことは、けっこう大事じゃないですか?
林:そうですね。
佐々木:ブロックチェーンじゃなくて、AIの話になっちゃうんですが。日立製作所の矢野和男さんという、『データの見えざる手』という本を書いた、非常に有名なAIの研究者の方がいます。日立の中で首からぶら下げる身分証は、Bluetoothが内蔵されたIoTデバイスになっていて。彼はこれを何千人かの社員にぶら下げてもらって、何年も実験しています。
会社の中でうろうろ歩く。誰かと会う。そうすると、Bluetooth同士で通信して、なおかつ移動経路がわかる。誰がどこをどう移動して、誰と会って、何分しゃべったかを、全部可視化しているんです。
(会場笑)
佐々木:これで何がわかったかというのが、すごくおもしろいんです。例えばある部署があって、この部署はここ半年売上が立っていて、業績が上がっている。けれども、理由はよくわからない。営業マンががんばったのか、新製品を出したからなのか。実はそうじゃなくて、その部署にいる非正規雇用の人のおかげかもしれない。
大した仕事をしていないように見える人が、実は人間関係のハブになっていて、その人がいろいろな人を結びつけているから、部署の業績が上がったんだよ、ということを可視化してしまったという。
今のAIの技術は、そうした見えざる成果や貢献を可視化するメリットも、どこかにあるわけです。そういうところで、ブロックチェーンやAIもすべてそうなんだけれども、見える化していくことはけっこう大事なんじゃないかなという感じはするんです。
それこそ、このような質問で「寄付や募金、税金のトレーサビリティに使うことは、どこまで可能ですか?」と。寄付金が、この学校のこの面に使われましたとか。そういうものが見えるようになってくると、もっと社会貢献しやすくなるという。これは技術的にはどうですか、深山さん?
深山周作氏(以下、深山):そうですね。できるんじゃないかなと思うものの、さっきの野菜のトレーサビリティと一緒で難しい。どうやってこの現物とシステムを結びつけるのかが、やっぱりけっこうハードルが高いなと思いつつも、たぶん今後絶対にチャレンジしていく人がいる分野だなとは思っています。
寄付は、僕も最近かなり注目している分野です。今、日本の寄付金の市場は、個人寄付だけで確か7,700億円くらいあって、大震災のときはもっとバッと上がったらしいんですけれども、常に右肩上がりというところがあるので、これはたぶんすごくいいものかなと思います。
林:電力でやっているものもありますね。ブロックチェーンでやって、この電力が自然エネルギー(で作られているもの)なのかとか。
佐々木:グリーンエネルギーなのかとか。
林:そういうものを可視化するようなことはあります。サービスとしてもできているかなと思いますけれども。
竹内:私も、この質問にあることはできるんじゃないかなと思ったことがあります。私自身はあまり技術に詳しくないですけれども、詳しそうな人に聞いた範囲では、またスマートコントラクトという別の用語が出てきちゃうんですけれども、ブロックチェーンの中の機能の一つであるスマートコントラクトと。
佐々木:契約書の台帳管理ということですね。
竹内:はい。そうすると、要はプログラムされた用途にしか使えないようなことが可能になります。例えば、私も途上国の誰かに10万円を寄付した。エチオピアならエチオピアの高校生の学費として、10万円を寄付しましたと。
その人が卒業して働いて10万円を返してくれたら、それはまた同じ高校の同じ学年の出席番号何番の子に、もう1回寄付するという。そういうふうに自分のお金を回せないかと考えたことがあるんです。
佐々木:あしながおじさんみたいな感じですね。
竹内:はい(笑)。それは一応、スマートコントラクトという機能をうまく使えば、技術的にはもしかしたらできるかもしれないなと。ただ、今時点だとどうできるのかは、私もうまく説明できないんですけれども。きっとそういう話だとか。
あとIoTデバイスなどがもっと身近になってきて。先ほどの電気メーターに直接(料金を)払うようなことができるようになってくると、可能性としては「今、俺の寄付って、あの国のあの人のこれに使われている」というのがわかったりするのかな、という希望はありますよね。
佐々木:可視化することによって、共感軸はより堅固になるんですかね。
竹内:僕はそう思いますね。たとえば税金などもそうで、我々は所得税や消費税を払っているんだけれども、それが上のほうに上がって、どう使われているのかよくわからない。でも、例えば自分たちの独自の通貨で回していて、トランザクション総量がこれぐらいで、その一部をコミュニティファンドのようなものにプールして、さらにそれを自分たちがどうコミニティに再配分するかをブロックチェーンに投票して決めましょう、と。
もう、半分直接民主制的なことはできるようになっていて、自分たちがやっていることがこういうふうに広がっていくんだよ、こういうふうに成長していくんだよ、ということをビジュアライズできることで、消費者意識みたいなものが生まれてくるんじゃないかなと思っているんですね。
だから、経済圏のようなものがどんどん民主化されていくことによって、我々がこれからいろいろな振る舞いをしていくときに、自分たちで作っていけるんだというところで、今まで見えなかったもの、誰かが管理していたものが、どんどん明るみに出て広がっていくんじゃないかなと思っています。
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