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amptalk株式会社 鈴木 啓太氏ピッチ(全1記事)

月100時間の商談を1,000円で書き起こし ブラックボックス化しがちな業務を可視化・受注率向上へ

新しい未来の実装に挑むエンジニアのためのピッチコンテストStartup CTO of the year 2024。スタートアップCTOによるピッチコンテストを実施し、事業成長に連動した技術戦略を実現する経営インパクトや組織開発力などを評価指標に、2024年最も輝いたCTOの挑戦を讃えました。本記事では、amptalk株式会社取締役CTO 鈴木啓太氏の6分間のプレゼンテーションの模様をお届けします。

業務のブラックボックス化、間接業務で忙殺…営業の現場の問題点

鈴木啓太氏(以下、鈴木):「グローバルチームが牽引する日本の受注率向上」と題して、amptalk CTOの鈴木が発表いたします。

「プロダクトには自信があるけれど、セールスがうまくいかない」。そんな組織課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。多くの営業の現場では、リソース不足や属人化によって、営業生産性に課題を抱えています。



また、日本の労働人口は減少の一途を辿っており、営業組織も規模拡大から生産性向上へ、目が向けられるようになってきています。こうした課題に対してamptalkは、テクノロジーの力で営業の現場の課題を解決し組織を強くする、「セールスイネーブルメント」を実現することをミッションとしています。

その一環として、「amptalk analysis」というプロダクトをリリースしています。これは、これまでブラックボックスだった電話や商談の内容を解析して、可視化するサービスです。数多くの企業さまにご導入いただき、現在では月間100万件もの電話や商談を解析するサービスに成長しています。



こうしたプロダクトを構築し、セールスイネーブルメントを実現するという会社のミッションに対して、私がCTOとして、開発組織としてどのような貢献を行ってきたのか、3つの観点からお話ししたいと思います。

レッドオーシャン化するエンジニア採用の突破策

鈴木:まずは、組織開発です。エンジニア採用市場がレッドオーシャン化する中で、私たちは採用競合となる他社のまねをするのではなく、自社独自の強みを築くことこそが必要であると考えます。

そこで私は、創業初期から、「エンジニアの採用を国内に限定しない」という意思決定を行いました。私自ら、国内外問わず、100名を超える外国籍のエンジニアと面談してきました。私は決して英語が得意ではないのですが、組織作りをするという覚悟を決めて、毎日英語の勉強を欠かさず、今でも続けています。

その結果として、現在8ヶ国から優秀なエンジニアを採用することに成功しています。



社内では、ビザサポートや語学学習補助といった、グローバルなエンジニアが活躍しやすい環境作りを進めています。現在、1ヶ月で200件を超える自己応募をいただくほどの、独自の強みを築き上げることに成功しています。


月100時間の商談を1,000円で書き起こすことが可能に

鈴木:続いて、プロダクト開発です。商談解析において大きな課題となるのが、書き起こしコストです。多い場合ですと、営業は月に100時間商談を行うこともあります。これを他社サービス、例えばAmazon Transcribeで書き起こすと、9,720円のコストがかかります。非常に優れたサービスではありますが、私たちのコスト構造には合わないという課題がありました。



この問題を、私たちは書き起こしを完全内製開発することで解決しました。機械学習のプロフェッショナルを招き入れ、今では月100時間の商談を1,000円で書き起こすことが可能になっています。これは非常に強力な競合優位性にもつながっています。

また、私たちは商談という非常にコンフィデンシャルな情報を扱いますので、ユーザーからは高い信頼性を求められます。これを担保する仕組みの1つが、徹底したテスト戦略です。



テスト駆動開発を標準とし、現在では約1万件の自動テストが、プルリクエストを作成するたびに実行されます。これは高い品質を保証するだけでなく、すぐにデグレを検知することができ、開発者の心理的安全性にもつながっています。

また、品質を重視するだけでなく、開発生産性の向上にも力を入れています。先日行われた「Findy Team+ Award 2024」では、開発生産性が優れた企業として表彰いただいています。このように、高品質かつ高速なプロダクト開発を牽引してきました。

グローバル組織の強みを伸ばす採用・体制強化

鈴木:最後に、事業開発です。営業の現場は非常に多種多様で、その課題も複合的で多岐にわたります。これらの課題を解決するためには、冒頭で紹介した商談解析だけでは、まだまだ不十分です。

これに対してamptalkでは、複数のプロダクトを展開し、多角的に営業課題を解決するコンパウンド戦略に舵を切っています。



私たちはすでに2つ目のプロダクトとして、商談記録をAI秘書がサポートする「amptalk assist」というプロダクトをリリースしています。こうしたマルチプルプロダクトを開発していくために、チームの分割や権限移譲を行ってきました。

一方で、マネジメントの複雑化、あるいは採用のさらなる強化といった部分が課題になってきました。そこで私は、グローバル組織という独自の強みをさらに伸ばす攻めの戦略で、外国籍のVPoEを採用することを意思決定しました。



そして実際に、私よりもピープルマネジメントや採用といった面で長けた方を採用することに成功し、今も権限移譲を進めながら、さらに強い開発組織へと成長を続けています。

また、複合的な営業課題を解決するためには、プロダクト間の連携やシナジーが非常に重要となります。各プロダクトをつなぐ共通認証基盤を私自身がリードするかたちで開発を進め、プロダクト間のシームレスな相互連携が可能なアーキテクチャを構築してきました。また、デザインシステムやプロジェクトテンプレートといった、新規プロダクトを高速に立ち上げる仕組みを整えてきました。



こうした取り組みによって、次の新規プロダクトも近日中にリリースできる段階まで来ております。今後も新規プロダクトを高速に開発していきます。そして、あらゆる企業のさまざまな営業課題を多角的に解決し、成長へと導く、そんなセールスイネーブルメントプラットフォームを実現していきます。そのための準備はもうできています。



私たちグローバルチームが牽引し、日本の受注率を向上させていきます。発表は以上になります。ありがとうございました。

(会場拍手)

グローバル組織のマネジメントで重要なこと

司会者:ありがとうございます。さあ、それでは質問タイムにまいりましょう。では澤山さん、お願いいたします。

澤山陽平氏(以下、澤山):ありがとうございました。今、実際どのスタートアップも、みんなとにかく「採用が大変だ」というところで、外国籍の方の採用に取り組んでいると思いますが、その中でもたぶん御社は、すごくうまくいっていると思います。確認ですけれど、事前の情報で言うと、今14名の開発組織のうち8名が外国籍ですか?

鈴木:そうですね。正確に言うと、今採用が決まっている方も含めると、14名のうち10名程度は外国籍になります。

澤山:なるほど。すばらしい実績だと思うんですけど、その組織をまとめたりマネジメントするところで、何かしら他社とは違う独自の取り組みをされているんでしょうか?

鈴木:そうですね。外国籍だからといって、何か特別なことをしているわけではないですけれど、やはりきちんとドキュメンテーションをしていくことは大切にしています。と言うのは、やはり日本人同士ですと、なあなあで伝わってしまうというか、「よしなにやってくれ」ということがあるんですけど。文化も国もぜんぜん違うので、そういった部分は甘えなんですよね。

なので、きちんと言語化して、例えば「この機能はなぜ作られなければいけないのか」みたいなところを、きちんと英語でドキュメンテーションしていくところは工夫しています。

日本の営業スタイルを知らないメンバーへのサポート

澤山:追加の質問で申し訳ないですけど、お客さんは今は、日本の企業が中心なんですか?

鈴木:そうですね。

澤山:外国籍の方からすると、日本の営業のスタイルもあんまり伝わらない、馴染みがなかったりすると思いますが、ドメイン知識とかもうまくインプットするやり方を工夫しているんですか?

鈴木:そうですね。何か機能を作る時は、ビジネスサイドとエンジニアサイドが顔を合わせてきちんとインプットしながら、「なぜこういったものを作らなければいけないのか」「セールスがこういう課題に直面しているから、こういう機能が必要なんだ」というところのインプットをしっかりするようにしています。

あとは1つ、やはり私たちのプロダクトでおもしろいのは、究極のドッグフーディング(自社製品・サービスを社内で日常的に使用することで、使い勝手や問題点を把握する施策)ができるところでして、実際にセールスの方がお客さまと話している商談を、エンジニアも見に行けるんですね。

実際のお客さまの1次情報を私たち自身が見に行くことができるので、セールスの理解につながっているかなと思います。

澤山:なるほど。ありがとうございます。

外国籍のメンバーは情報のキャッチアップが恐ろしく早い

司会者:ありがとうございました。小野さん、お願いいたします。

小野和俊氏(以下、小野):プレゼン、ありがとうございました。グローバルなチームでやっているということで、例えば採用が難しい中でグローバル採用というユニークなことをやることで採用できたというのは1つの成果だと思うんですけど。それ以外に、やはり日本人ばかりじゃなかったことで得られた気づきや、それがプロダクトの改善につながったとか。

例えば僕らのチームだと、今内製チームに150人ぐらいいるんですけども、聴覚障害をお持ちのプログラマーの人がいるんですね。そうすると耳で聞こえない分、すごく文字で書かれた文章に対しては非常に感度が高く気づいてくれて、「このドキュメントの文章、わかりにくいと思いますよ」とか、すごく重要な指摘をしてくれたりするんです。

そういう、「グローバルなチームだからこそ、こういうことが達成できた」みたいな、採用できたこと以外の良さについて、もしエピソードがあれば教えてください。

鈴木:私自身、逆に悔しいくらいなんですけれども。やはり外国籍の方たちって、情報のキャッチアップが恐ろしく早いんですね。と言うのは、やはりテクニカルな情報って英語で生まれることが多いので、それが日本語として日本に入ってくるのって、やはりどうしても1年とか遅れてしまう。

そういった中で、やはり外国籍のエンジニアの方たちは、いち早く情報をキャッチアップしていくので、私自身はっとさせられるようなことが多くあります。なので、そこは1つの強みかなと思っております。

小野:ありがとうございます。実は私も昔スタートアップをやっていた時に、最初はけっこういろんな国籍の人を採用しようとしていたんですけど、私の場合には、全部日本語のEnglish followsみたいな感じで、あとは英語で話すコストのほうが大きくて、途中でやめちゃったんですけど。

今の話を聞くと、すごくそのやり方でワークしていると思うので、ぜひ進められたらいいんじゃないかと思いました。ありがとうございました。

鈴木:ありがとうございます。

競合優位性を築いていくための策

司会者:ありがとうございました。さあ、その他、質問はいかがでしょうか?

藤本真樹氏(以下、藤本):個人的に一番興味深いところが、Amazon Transcribeのところかなと思っていまして。塚田(朗弘)さんは聞きづらいだろうから、聞いておこうかなという。

冗談はさておき、でもこれ、けっこうすごくおもしろい。これから大事になってくるし、すごくよく出てくるトピックになると思うんですよね。最初はChatGPTのAPIで何か作るけど、量が増えるとやはりペイしないよね。

同じものが安くできるんだったら誰も困らないけど、やはりそういうモデルを作るところ、チューンするところのコストもかかれば、ある程度精度面で勝てる・勝てないみたいなところもあるし、そこにかかる人件費うんぬんとかで、そのジャッジはけっこう難しいなと思うので、どうお考えなのか。

単純に「安くできそうだから。以上」みたいなのもあるかもしれないし、それ以外にどんなことがあったのか。そのへんの判断とか、あるいは今後を見据えてどう考えていくかを教えていただけるとうれしいです。

鈴木:そうですね。まずそもそも、書き起こしとかLLMといった技術は、すでにコモディティ化すると思っておりまして、誰でも簡単に利用できるものになっていきます。そうなってきた時に、私たちのサービスも、機能面としては遅かれ早かれ、誰でも追いつけるものではあるんですね。

それに対して、やはり私たちは競合優位性を築いていかないといけないとなった時に、一番私たちが攻めていけるところとしてはコストメリットかなと考えておりまして、その上で書き起こしを自前で開発することが必要になってきております。

司会者:よろしいでしょうか? 以上で質疑応答は終了でございます。鈴木さん、どうもありがとうございました。

鈴木:ありがとうございました。

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