
2025.02.12
職員一人あたり52時間の残業削減に成功 kintone導入がもたらした富士吉田市の自治体DX“変革”ハウツー
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井上和幸氏(以下、井上):長村さんはいわゆる「仕組み」の話をよくされていますので、そのへんの話に移りたいと思います。会社を動かすための戦略、組織のための推進システムがあるという話が本でも書かれています。
長村禎庸氏(以下、長村):そうですね。これは「会社の動力」みたいなものです。縦軸に情報共有・報告・議論・意思決定と、そして横軸に上司・他部署・自部署と書いたマトリクスを作っていただき、各マトリクスが十分にできているかを問うてほしいんですね。
よくあるパターンとしては「自部署に対しての情報共有はできていますが、他部署に対してはまったくできていません」とか、「チームとの議論はまったくしようとも思っていませんでした」とか、「この進捗の可視化という行為自体をしていません」とか。これがいわゆる調整能力ですよね。自分の部署がちゃんと機能するように他の部署、エコシステムの中でどう生きていくかという話で。
マネージャーで一番勘違いしやすいのが、ここは自分の城だから口出ししてくるなという状態ですね。部署は自分の城でも何でもないんです。会社を人間に例えれば、部署は臓器ですよね。臓器の中で心臓が独立して、「いや、心臓のことは口出ししてくるな!」となったら、人間としての機能が終わっちゃいますよね。
マネージャーは会社という生態系のごく一部でしかないので、他部署とか上司とかとの関わりを抜きにはやっていけません。そのことを認識して、この5つのカテゴリーと3つのステークホルダーで整理して、他部署・上司に対して推進システムという動力があるかを確認していただく。自分は本当に大丈夫かをチェックしていただくのは特に重要です。
井上:なるほど。長村さんのお考えとしては、この3つのステークホルダーすべてに対してちゃんとこの5つのカテゴリーのことができていないとだめだよねという理解でよろしいですかね。
長村:そうですね。もちろん濃淡はあると思いますけど。やっぱり自分の部署が一番手厚いのは当然だと思います。ひょっとしたら関係性上は、他部署に対しては最低限でOKかもしれません。上司に対しては、「すごく知りたい人かもしれないので手厚く」というのもあるかもしれません。
その上司・他部署とどういう関係性なのかによるので。手厚いところと手薄いところがあってもぜんぜん大丈夫なんですけれども、まったくないのがよくないと思いますね。
井上:今お話しくださった例えのようなことは、全体に対してではなくても、ある側面ではみなさんもあるかもしれないですよね。
長村:はい。そこがブラックボックスになると、他部署も上司もその部署の様子が見えなくなる。そうすると、上司の意思決定のクオリティや他部署の業務のクオリティの低下につながることに、本人が気付いてないということですね。僕もこれでマネージャーを外されたことがあるんです。この推進システムのうち他部署と上司がごっそり抜けていたからなんですよね。
井上:いつの話ですか。
長村:DeNAの時です。iemoという会社とペロリという会社を買収した時に、この2社を統合する広告事業部という大きい事業部がありまして、そこの事業部長をやっていました。
本社の社長と子会社の社長がいたり、連携すべき編集チームもたくさんあったりとステークホルダーが多かったので、推進システムが三重ぐらいになっていまして、さらには先方が求めるかたちで各ステークホルダーに情報を伝達しなければいけない。僕はそれを本当に煩わしいと思いまして。
井上:確かに(笑)。それはそうですね。
長村:僕の上司が3人もいるじゃないかとか、僕にとっての他部署は何個あるんだろうと思うと、推進システムを放棄したくなったりして。本当はその時に一番注力しないといけなかったのは推進システムなんですけどね。
成果・活用・育成・調整のうち、成果ももちろん求められたんですけど、全体の成果を考えると「調整」の比重がけっこう高かったはずなんです。でも僕はどっちかと言うと「もう成果フォーカスでいいじゃん」という感じで、成果8割ぐらいのマインドでやっていて。結果、「長村の部署がボトルネックだ」「長村の部署から報告上がってこないから」みたいな感じになって、「もう外れてくれ」と言われて外されたという感じですね。
井上:えぇー……。
長村:後任は他の部署から連れてこられた、調整事が一番うまいマネージャーさんになりました。その時求められたのは成果をぐいぐい引っ張るのではなく、きちんと周りの部署と連携しながら調整できるマネージャーだったので、見事にその比率をはき違えたというやつですよね。
井上:なるほどですね。大変な思いをされたと思いますけれど、非常にわかりやすい例えです。
長村:そうですね。なので、推進システムはその時の学びから得たものですね。
井上:スタートのところの情報共有が欠けているケースは、自分もそうなんですが、いろんな会社さんを見させていただいてけっこうあるなという気がします。外から見るとより見えるのかもしれないんですけど、もうちょっとお膳立てやちゃんと共有をしておいたほうが早いんじゃないですかみたいなことがすごくありますね。
長村:その時に立ち返って、もし僕の上司が「長村、いいか。マネージャーの役割は4つあるんだけれども、今のフェーズは調整が40パーセントな」とか言われてたらたぶんこんなことは起こらなかったですよね。
井上:理解しますよね。
長村:それが「型」の有用性ですよね。その型が1つあるだけでどれだけの人が救われるかって話ですね。
井上:本当にそうですね。こういうの型を日本だけじゃなくて世界に……。
長村:ぜひ広げたいですね。
井上:日本企業のデファクトスタンダードにしていただけるといいですね。
長村:OKR(目標管理ツール)ってGoogleが作ったものを日本が輸入しているじゃないですか。だから推進システムを逆に輸出したいとかありますよね。
井上:ぜひ、しましょう! 僕は幹部の採用と転職の事業をやっていますけど、この推進システムの側面がうまくやれている方と、そうじゃない方というのは、転職とか採用の局面でも多かれ少なかれ影響することはありますね。
長村:そうですね。
井上:僕らは採用いただけた方の定着率は非常に高いんですけれども、ただ僕ら事でもたまに起きますし、世の中的には幹部の方の短期離職が今すごく多いんですけど。そこで起きているのが、大きく言うと今日お話しくださっている型のずれの問題だと思いますね。
大手からベンチャーへということでの認識違いもあるし、ステークホルダーに対するある側面のコミュニケーションができていないことで、「彼・彼女まずいんじゃないか」って話になってしまったりとか。
長村:そうですよね。やっぱりいきなり管理職として会社に入るならば、この点に気をつけたほうがいいよみたいなのは、オンボーディングの教育として必要なんじゃないかと僕はすごく思うんですよね。
井上:そうなんですね。だからもちろんスキルの問題や専門性のずれみたいなのもあると思うんですけど、僕から見てもたぶん8割ぐらいは全部この型のずれだと思いますね。ありがとうございます。
井上:今日教えていただいたような型をしっかり認識し、情報共有をして運用するということだと思うんですが、結局ベンチャーのマネージャーにはどういうことが求められて、何に気をつけてやったらいいのかというお話を進めていければと思うんですけれども。
長村:そうですね。もちろん型をちゃんと身につけてくださいというのはあるといえばあるんですけれども、これはベンチャーのマネージャーに限った話でもないかなと思っています。マネジメントというのは、例えば自分が20人のチームのマネージャーになったとして、自分1人で20人分稼げるわけがないので、基本的には自分で稼ぎきるというのは早々に諦めていただいて。
「20人がいかに稼ぐか」に頭を向けると。それを最大化させたほうが当然20倍になるわけで。そっちのほうがいいかなと思います。「稼ぐ」という言い方をしましたが、別にコーポレートでも開発のチームでも会社の利益につながる仕事をしているので、基本的には稼ぐという言い方で正しいと思います。
直接的な販売業務をする部門以外も「稼ぐ」と定義をさせていただいて、稼いでもらうためには当たり前ですけれども、メンバーにやっぱり成功してもらわなきゃいけないですよね。メンバーが大成功したらそれでいいんですよ。メンバーが大成功するために、やっぱり成長してもらわなきゃいけないので。
メンバーの成功や成長を心から願えるかがすごく大事だと思っています。でも、これは言うは易く行うは難しと言いますか、人の成功や成長に人生の時間を使いたくないと思う人もいるんですよね。それって生き方の違いなので、僕は別にそのことが悪いとはぜんぜん思っていないんです。ただ、マネージャーには向いていないと思いますね。
井上:そうですよね。
長村:なので、そういう人はマネージャーじゃなくて違う仕事をするべきだと思います。逆に人の成功・成長を願えますという人は、その時点でマネージャーになる権利もポテンシャルもあると思います。まずはそう思えるかどうかから始めていただいて、そこに型を載せていただくと。逆に言うと、メンバーの成長や成功を願えないのに、「型は完璧です」と言われても、たぶん嫌になると思うんですよね。
井上:そうですよね。
長村:「なんで自分がこの推進システムを揃えないといけないんだ」とか「なんで自分がみんなが活きるような構造型組織にしないといけないんだ」と感じると思うんですよね。メンバーの成功・成長を願うことを気持ち悪いと感じないかどうか。いつどこのマネージャーだったとしても、この感覚がベースであり、すごく大事だと思います。
井上:統計データに出てくるような就労人口の動態調査で見ると、管理的職務に割り当てられる人は1割よりもちょっと低い。一部の人たちが担っているわけで、全員がマネジャーになる必要はないですからね。
長村:そうですね。
井上:ただ、長村さんがおっしゃったようなメンバーの成長や成功を願うところがないのにマネジメントをやるのはちょっと危ないし、マネジメントするほうもされるほうもお互いによくないんじゃないのということですよね。
長村:僕も井上さんもそうだと思うんですが、自分で起業された方だとタイプがありますよね。
井上:あります、あります。
長村:人の成功云々かんぬんよりも、「これが作りたいからやっているんだ」というところにぎゅっとフォーカスしちゃう人は、組織作りは自分でやらず、ちゃんと組織を作る右腕を早々に採用したほうがいいと思います。
「これを作る」ことだけに興味があって、人の成長や成功を願って、人のために時間を使うことに興味が持てないことは何も悪いことじゃないです。それはただの人のタイプの話なので。
井上:そうですよね。
長村:本当に自分がそこに興味を持てないんだったら、それに時間を使わないほうがいいと思います。それをしたいとかそれができる右腕。それこそ共同代表にする時とかはそのパターンかなと思いますし。COOに強力な権限を与える時もそういうパターンだと思いますね。
井上:おっしゃるとおりですね。いろんな動機で経営や経営陣に入る方がもちろんいてもいいと思うし、役割分担でいいと思うんですが。それなりにちゃんとやり続けていかれている方々が共通して言う笑い話として「こんなこと別にやらないほうがいいよ」って。
社員の人たちにがんばってもらったり幸せになってもらうということを続けることはやっぱり大変なわけです。そのぶん自分たちで動かないといけないこともあるし、多くの社長さんたちはやってらんねーぜみたいに思ったことがあると思うんですけど。
長村:大きい会社の役職者の方ならいざ知らず、ますます個とか小さい組織が乱立してくる時代の中で、自分の会社のマネージャーですと名刺を渡しても、それで相手を動かせるとか相手に畏敬の念をもたれるとか、そういうメリットって別にないと思うんですよね。
あとは役職手当がある会社もあると思うんですけれども、特にベンチャーで考えるとほとんどの会社はもうないですし。なので、マネージャーになることが得なのかという話で。少なくともマネージャーの仕事は嫌だけど、そのぶん金銭的なメリットがあったり、地位とか見え方とか名誉とか名声とか、そういう魅力があるという時代ではもうなくなってきてるなという感覚がすごくあるんです。
井上:確かにその感覚は昭和ですね。
長村:僕が社会人になったのは2006年で、その頃は名刺にマネージャーとすごく書いてほしかったんですよ。今はそういうふうに書いてほしいと思う人って実は少ないんじゃないかなって思いますね。
井上:いい椅子に座れるとか。
長村:はい、はい(笑)。
井上:角に座れるとか(笑)。
長村:はい、そう思うんですよね。
井上:最近ある会社さんの件で「あぁ、そういうのあるんですね」って話をしたのを思い出したんですけどね。大手さんとかだとまだあると思うし。そういうのがモチベーションになる人はこれから減っていくと思うんですよね。
長村:そうですよね。
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