2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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司会:本日は、鳥越俊太郎さんの新刊『君は人生を戦い抜く覚悟ができているか?』の刊行記念ということで、お相手に山路徹さんをお招きして、対談形式でお話ししていただきたいと思います。
なぜ鳥越さんと山路徹さんなのか。少しだけ説明させていただきますと、お二人は「ザ・スクープ」というテレビ朝日の調査報道番組で、鳥越さんがキャスター、山路さんがスタッフとして長年一緒に仕事をされていた間柄ということで、その時の仕事のお話などがうかがえれば、ということでお越しいただきました。
それでは、よろしくお願いします。
山路徹氏(以下、山路):どうぞよろしくお願いします。
鳥越俊太郎氏(以下、鳥越):みなさん、なんで山路君かと、不思議に思われるでしょうね。最近はいろいろあって、バラエティ番組へ呼ばれたりしてるから(笑)。
まあいろいろわけあって、そういうふうになっちゃっているけど、もとはというと山路君は、戦場から報道するような真面目な、というといまは真面目じゃないみたいだけど(笑)、報道番組のディレクターをやってました。
彼とはいろんなエピソードがあるんですけど、僕が一番覚えているのは、桶川のストーカー殺人事件での仕事です。
事件は1999年の10月に発生したんですが、そのとき、週刊誌などが殺された女性のことをいろいろ書きたてたわけです。派手なブランド物を持っているとか風俗に勤めたことがあるとか。全部ウソなんですけどね。女性誌も含めて盛り上がっちゃって、被害者の印象が、なんか殺されてもしょうがない、というふうになってたんです。
そのときに、僕はそれを見ていて、最初はまあそうかなと考えていたんですけど、途中からおかしいな、警察はちゃんと捜査していないんじゃないかと思いはじめて、取材することにした。で、私の番組で企画書を出しました。
「ザ・スクープ」にはプロデューサー、ディレクターが20人くらいいるんですけど、一回目に出したときは、だれも見向きもしない。二回目もだめ。それでもあきらめずに三回目に「今度はいうこと聞いてくれ」と言って出したら、プロデューサーが「まあ鳥越さんがそこまでいうならやるだけやってみようかと」と、半信半疑ながらも了解して、ようやく取材することになったんです。
でも、番組の中にいるディレクターが誰も手を挙げなかった。そんな企画やってもしょうがないということで。それでプロデューサーが困って、じゃあ、今回は警察に詳しいこいつを付けますよといって指名したのが、番組のレギュラーのディレクターではなくて、外部のプロダクションの代表である山路君だったんです。前から知り合いではあったんですが、そんなきっかけで一緒に仕事をすることになった。
それで、その取材の結果が、翌年、2000年の5月にストーカー規制法が国会で成立することにつながって、2001年に僕は、その番組をやったおかげで、日本記者クラブ賞という大変名誉ある賞をいただくことになった。彼と深いつながりができたのはその時から、という関係です。
鳥越:ほかになんか言うことある?
山路:いや、言うことというか……(笑)。
当時は警察がですね、被害者のご家族が、ストーカー被害を再三訴えていたのにもかかわらず潰していたんです、すべて。で、殺されたあとに、「大変なことになった」と。
つまり警察は、被害者の訴えをさんざん聞いていたのにそれを放置して、事件が起きてしまった。それを警察は隠蔽したいわけですね。それで記者会見なんかを開いたときに、ちらっちらっと、事件とは全然関係のない、被害者のイメージを悪くしていくような情報を、半ばねつ造してリークしてたということもあるんですよ。
鳥越:ああ、エルメスのバッグ持ってたとか。
山路:あと風俗で働いてたとかね。いろんなこと。
それで鳥越さんが疑問を抱いて取材を始めることになって、それらのウラ取りをやっていくと、みんな根拠がないんですね。
で、なんでこんな報道がされたのかというと、結局、警察がリークした情報を、新聞社の埼玉県警の担当者がパーって書いているだけなんですよ。
いちばんひどかったのが、事件が起こったあとに、被害者のお父さんが菓子折りを持って埼玉県警を訪れて、深々とお礼をしていったという……。
鳥越:某新聞ね。◯◯新聞。
山路:そう(笑)。でも、それをお父さんに取材したらそういう事実は一切ない、ということがわかって。でも当時は娘さんを殺され、マスコミからもガンガンやられて、お父さんもお母さんも本当に口を閉ざしていて、一切マスコミと会おうとしなかったんです。だからご家族の取材をするというのは、あの時大変なことだったんです。
鳥越:大変だった。僕らもどこから手を付けていいのかわからないしね。電話番号も住所もわからない。
山路:でも調べて、鳥越さんに報告したら、電話なんかで話そうとすること自体が間違いだと。埼玉なんだし、これから行こうって言って。それから一緒に毎日、桶川通いですよ。毎日お父さんが帰る時間帯にね、我々の業界用語でいう夜討ちみたいなね……。
鳥越:違うよそれ、順序が。最初に手紙を書いたんだよ。
山路:いやそれ、鳥越さんが忘れてるんです(笑)。最初に行って、それで結局、やっぱり相手してもらえなくて、それで、よしっ、てんで手紙書いたんですよ。
鳥越:ああ、そうか。
山路:もうそろそろね、75才なんで。
鳥越:後期高齢者ですから。
山路:(笑)。この間役所からね、でかい保険証が届いたんですよね。
鳥越:そうそう(笑)。
山路:(笑)。まあ、そんなことがあって。それで、鳥越さんが筆で手紙書いたんですよ。それを届けてね……。
鳥越:大宮の駅前の、担当弁護士の事務所に送って、届けてもらった。最終的にはお父さんが、じゃあ、会ってもいいですよ、ということになって、弁護士事務所で会うことになった。ただしカメラはダメ、話を聞くだけということで会ったんですけど、その時お父さんが言ったのは、取材申し込みの手紙はもう、たくさん来てると。でもみんなワープロで書いてるかボールペンで書いてるか。その中で筆ペンで書いてあって、こんな大きな字で、まあ僕の字はすごく大きいから……。
山路:大きいからね、手紙なんてすぐ20枚ぐらいになっちゃうんですよ(笑)。
鳥越:ちょっとした短い文章でもいっぱいになっちゃう。だからそれで存在感が……。
山路:いやこれね、余計な話かもしれませんけどね、あとでお父さんに話聞いたら、なんて書いてあるかわからなかったという(笑)。
鳥越:そうかもしれない(笑)。まあそれで、弁護士事務所でいっぱい手紙がある中からいちばん目立つものを選んで、話だけ聞きましょう、ということになったんです。
鳥越:それで2人で行って、いまでも覚えているのは、その時僕は足を骨折していて松葉杖をついてた。それでも取材前に腹が減ったので、大宮の駅前でラーメンを食いました。
山路:ちゃんぽんじゃないですか?
鳥越:ラーメンだよ。
山路:あのねえ、鳥越さんね、ちゃんぽんが大好きなの。一緒に取材に行ったときに長崎ちゃんぽんがあると、その日の取材がすべてうまくいく。
鳥越:いやそれはね、あの、桶川にいくまでの途中にリンガーハットがあるんだよ。そこによく寄ってたって話。
山路:鳥越さんはウナギとちゃんぽんと、あとトンカツね。これがあると取材中に非常に機嫌がいい。
鳥越:ありがとうございます、そのとおりです。いまもウナギ食ってきました、すいません(笑)。
鳥越:で、それでお父さんが話を聞いてくれて、その時からだんだん、取材してもいいよ、というふうになっていったんです。それで僕らが番組をつくることができた。その時彼が、被害者の友達とか周囲の人なんかにたくさん取材をして、それで初めて、ちゃんと取材できる人だな、とわかりました。それまではよくわからなかった(笑)。
山路:でも大変でしたよやっぱり。何が大変かっていうと、世間をみんな敵にまわしたような取材なんですよ。つまり、被害者に関するいいかげんな報道が世間を覆ってるというか、とにかくひどい女の子だっていうイメージ一色なんですよ。
ここが報道の難しいところなんだけど、そういうムードに逆らえないところがあるんです、正直言って。いまこういうムードのなかで、そんな報道ができるのかみたいな部分がね。この事件の時は相当世間がね、連日ワイドショーもやってましたし新聞も書いてたし。「ザ・スクープ」のディレクターが誰も手を挙げなかったっていうのはそういうことなんですよ。これ取材して、どうやって報道するの? というね。
鳥越:それはね、私は、小さい時からへそ曲り、あまのじゃくで、人と同じことはしたくない、というのがあって、田中真紀子がもてはやされてブームになってた時に、「まてよ、田中真紀子、なんかおかしいんじゃないの?」って、批判的な番組をつくりました。その時も、世の中全部を敵ににまわしているような状態です。
そんな風に、ずっと一貫して、世間を敵にまわす番組をつくってきて、それはそれで自分の仕事として意味のあることだと思ってます。
鳥越:で、こういう性格は昨日や今日つくられたわけじゃない。小さいときから私には嫌いなものが3つありまして、小学校の頃から。
1にジャイアンツ。まわりがみんな巨人ファンだったから。2に自民党。まわりがみんな自民党だから。3に東京。みんな東京に行きたがるから。まあ、いまになってみるとね、東京は自分が住んでますからいまさら嫌いと言えない。自民党は取材対象だから好き嫌いの対象じゃない。
ジャイアンツだけは嫌いですね。アンチ・ジャイアンツです。きのうはジャイアンツ勝ったかな、残念です。そういうもともとあまのじゃくな性格がずっとあって、警察、検察の裏金問題とか、そういうのばっかりやってました。
まあそれで、この本で一番書きたかったのは、人間というのは論理的にモノを考えるという頭を持っていますよね。同時にもう一つ、論理性とは全く関係のない、なんのつながりもない、突然のひらめきっていうのがあります。直感と呼んでいますけど、僕は自分の人生では、この直感を大事にしなきゃいけないと思ってきた。
じつはみなさんが思っている以上に、直感の力で世の中が成り立っていることが多いんですよ。だからこの直感というものにもっと光をあてて、努力してコツコツ勉強するんじゃなくて、勉強してなくてもある日突然ひらめく、このひらめきをもっと大事にしようということを本に書いたんですけど、このことが実証されたと思っているのが、みなさんもご記憶にあると思いますが、和歌山で起きた、毒物カレー事件です。
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