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地方都市の期待と課題~バリューサイクルマネジメント~(全2記事)

地方都市が“過去に”抱えていた、人・知識が集まりにくいハンデ 「立地」という絶対的な不公平を越え、可能性を生かす術とは?

イノベーションを創造するプラットフォームであり、「人の繋がりこそが価値を育む」と信じる「action based worker」たちの集まりである、金沢イノベーションハブ研究会。同研究会が主催するイベント「金沢イノベーションハブ研究会 Special Edition」から、今回は『バリューサイクル・マネジメント』の著者・沢渡あまね氏が登壇されたセッション「地方都市の期待と課題~バリューサイクルマネジメント~」の模様を公開します。

「地方都市の期待と課題~バリューサイクルマネジメント~」

沢渡あまね氏:みなさん、こんにちは。「沢が渡る」と書いて、沢渡あまねと申します。本日、太平洋側の浜松から東海北陸道をテケテケ(金沢まで)まいりました。よろしくお願いいたします。

ハッシュタグ「#金沢イノベーションハブ研究会」と設定しております。Twitterをなさっている方、ぜひハッシュタグをつけて発信をお願いしたいと思います。

私は本日「スマート&デジタルで未来のファンをいかに増やしていくか」、こんなキーフレーズをお持ちしました。このテーマでみなさんと一緒に、これからの金沢のあり方、あるいはみなさんの地域のあり方を考えていきたいと思います。地域の“未来”です。“過去”ではないですよ。ワクワクしませんか? このテーマでみなさんと時間をともにしたいと思います。

(あらためまして)自己紹介いたします。沢が渡ると書いて沢渡あまねと申します。ワークスタイルと組織開発専門の作家をしております。

私自身、以前は勤め人をしておりました。日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社に16年間おりまして、携わっていた業務は主に2つの柱に分けられます。1つ目は情報システム。社内、グループ会社、お客さま、グループグローバルの情報システムです。2つ目は、広報。グローバル広報です。

この2つの柱を軸に、コミュニケーションの景色や仕掛けを変えることによって、どう働き方を変えていくか、マネジメントを変えていくか、新しい勝ちパターンを作っていくか。これまで全国350以上の企業、自治体、官公庁でもそのようなお話をしてきました。

私自身、今はいわゆるパラレルキャリア、複数の顔を持っています。自社「あまねキャリア」代表取締役CEO。金沢に本社がある「なないろのはな」取締役で「浜松ワークスタイルLab」の所長。同じく浜松に本社がある、育休者向けオンラインスクール「育休スクラ」を運営する「NOKIOO」のアドバイザーなどを務めております。また、浜松・東京の二重生活をしています。現在は浜松で事業活動をしております。

新刊『バリューサイクル・マネジメント』から、その世界観をひもときながら、今日は私たちの新たな勝ちパターンにとことん向き合っていきたいと思います。

今日の話を聞いて共感された方、あるいは私と直接ディスカッションしたい方、ご質問されたい方は、個人向けのメールマガジンサービス「沢渡あまねマネジメントクラブ」を展開しております。

最近は「DXを社内からどう進めていくか」「組織の景色をどう変えていくか」、こんなテーマで、毎日わちゃわちゃやっておりますので、ぜひこちらもご登録いただけたらなと思います。

そして、私の趣味・ライフワークは「ダム際ワーキング」です。ダム巡りが大好きでして。北陸地区や金沢に出張する時は、手取川ダムに寄ったり。明日は内川ダムでワーキングしてこようと思います。

最近はワーケーションブームですね。政府も、新しい旅のスタイルとしてワーケーションを推しています。私はダム際で働く、こんな日々を過ごしております。「ダム際ワーキングサイト」や(ダム)漫画もありますので、よろしければご覧いただきたいと思います。

ワーケーションというと「どうも遊んでいるのではないか?」と、うさんくさく思われがちです。そう思われるのが悔しいので、私は必死に(スライドを指して)ご覧のとおりの成果を出しています。左下、おかしいでしょ?(笑)。ダム際で複数の企業が名刺交換したりですね、こんな活動をしています。

また、本日ご一緒する箕浦(龍一)さんもワーケーションのプロということで、ぜひこのあたり一緒にディスカッションできたらなと思います。

7月には静岡新聞SBSさんの主催で、大田川ダムで「ダム際ワーキング」のイベントをやりました。アーカイブ動画も出しておりますので、よろしければ後でご覧ください。

言われたことをこなしていれば、個人も組織も「勝てた」時代

ダムの話をしているとそれだけで1~2時間使ってしまいますので、そろそろ本題にいきたいと思います。「これからの時代のマネジメントの潮流を語ろうではないか」。こんなテーマからひもといていきたいと思います。

日本は(これまで)ものづくりで勝ってきましたから、従来の「製造業型・統制型」のカルチャーやマネジメントが色濃いわけですが、ズバリ申し上げます。製造業型・統制型一辺倒の制度やカルチャーは、残念ながら「組織と個人の成長のリスク」になりつつあります。

不確実性、VUCAの時代と言われております。技術革新が進んで、人口構造が変化しております。COVID-19のようなものが世の中をこれだけ脅かすとは、2年前に誰が想像し得たでしょうか。

このような不確実な時代、技術革新が進んでいく時代、環境の変化が進んでいく時代。私たちの当たり前を正しく疑い、正しく変えていく。この所作が必要だという話をしたいと思います。

書籍『バリューサイクル・マネジメント』では、こんな話を書いています。ぜひみなさんも組織でご覧になって、ディスカッションしてくださればと思います。(スライドを指して)向かって左型の絵。「旧来製造業モデル」と書いてあるものが、私たち日本が過去50~60年、勝ちパターンとして最適化したやり方です。

法制度も、マネジメントも(それに合わせて)最適化してきた。過去はそれで良かったんです。例えば、社長の「この車を作れば売れるね」という指示の下、製造現場も、管理部門も、営業担当者も、ティア1・ティア2と呼ばれるサプライヤーさんも「上向け上!」でプロセスを作り、言われたことをきちんとこなしていれば勝てた。あるいは、きちんとやらせていれば勝てたんですね。

「勝てた」の意味は2つあります。1つは「組織が勝てた」。利益を上げられたんです。もう1つは「個人が勝てた」。そこで働く私たちは、言われたことを守っていれば良かった。60歳になれば「おめでとうございます。定年です。これからは家族ともども、潤沢な年金と退職金で幸せな老後をおくることができます。ごきげんよう」。しかし、今そういう時代ですか? という話ですね。

右は「オープン型」「コラボレーション型」。この絵が示すとおり「個と個がつながる」「組織と組織がつながる」「企業と行政と大学がつながる」あるいは「他者とつながる」。つながることによって新たな答えを生み出していく。

素早く問いを立て、素早く知識のありかを中ないし外に見つけ、素早くつながって、素早く価値を出す。このやり方に、部分的にでも変えていかないとうまくいかないと、私は思います。

通常の業務をこなしてる“だけ”では、うまくいかない

よく誤解されるんですが、従来のものを否定しているわけではないんですね。統制型も正しい。オープン型も正しい。しかしながらこれからの時代、統制型一辺倒ではうまくいかない。このモヤモヤ、ぎくしゃくが生まれているのが今。私はこう捉えています。

もう1つ別の見方をします。左側、私たちが50~60年勝ちパターンとしてきてきた統制型・ピラミッド型。これは、いわば同質性の高い人たち、要は昭和のおじさんたちが長時間・長期間「1日8時間以上×5日以上」「新入社員で入った時から定年まで」顔を合わせて決められたことをこなすモデルでした。それで勝てていた時代は良かったんです。

一方で、これからは右側、異質な人たち。時短勤務の人もいるでしょう。テレワークの人もいるでしょう。オフィスワーカーもいるでしょう。副業で所属会社が違う人もいるでしょう。そのような人たちが、それぞれに最適な時間と場所で「過去に答えのないテーマに向き合って成果を出すやり方」に変えていく。ここが大事なんです。そのための筋肉トレーニングしていく必要があると、こう申し上げたいと思います。

言い方を変えると、ハイブリッドが進む時代です。ハイブリッドを乗りこなしていく。「働く場所もハイブリッド」です。オフィスも正しい。自宅も正しい。私のようにダム際で成果を出す人間もいるわけです。

「顔のハイブリッド」。社員、フリーランス、顧問、多拠点生活者、副業人材。「業種・職種のハイブリッド」。「フィンテック」という言葉がありますが、金融×ITで新たな勝ちパターンを生み出す。業種や職種を越えて勝ちパターンを作っていく。ハイブリッドを乗りこなしていく組織・個人になっていきましょう。

クリエイティブワーカー、ナレッジーワーカーの勝ちパターンの話もしたいと思います。今、デジタルトランスフォーメーションと言われています。デジタルを使って新たな勝ちパターンを生み出していく。

新たなビジネスモデルを生んでいく仕事をするためには、通常の業務・決められたことを当たり前にこなしてるだけでは、うまくいかないんです。それも価値のあることなんですがそれだけではいけない。この絵に示すような、固定的な環境では生み出しにくい勝ちパターンをどう実現していくか。ここが求められているわけですね。

クリエイティブな価値を創出するためには、普段の仕事をこなすのとは違う運動神経が必要である。統制型のやり方だけに最適化されたルールではなくて、いかに固定的な環境を正しく壊していくか。私たちは今、このようなプロセス、カルチャーを生み出していく必要があるということです。

地方都市が過去に抱えていた「人も知識も集まりにくい」ハンデ

私はふだん浜松で事業活動・仕事をしています。そんな中から生まれたのがこのページ、「地方都市の問題地図」。ざっとご覧になってください。いかがでしょう? 耳の痛いキーワードがたくさんあると思います。私も浜松で事業をしているので、この話をするのは非常に勇気がいるのですが、地域の経営者や働く人たちから「その通り!」「もっと言ってくれ!」「代弁して欲しい!」など共感と応援のメッセージもいただきますので、こうして公開しています。

さあ、皆さんの地域はいかがでしょうか? どこから変えて行きましょうか? “脱東京”の流れが起きています。地方都市にとっては関係人口を増やす大きなチャンス。一方で、これらの問題を放置していたら、長い目で見て関係人口は増えません。せっかく地域のファンになってくれた人を、アンチにして返してしまう。もったいないですね。そして、この地図で示した問題は、誰か一人におしつけて解決するものではありません。

このように、問題・課題を俯瞰して、どこから変わっていくか。どことどこをつなげて改善していくか。解決していくか。これをぜひ、オープンにディスカッションしようじゃありませんか。私はこういうワークショップを全国でやっていますが、ぜひみなさんと一緒にオープンに、越境しながら解決したいと思って、今日も金沢にまいりました。

こう見ていくと、やはりどうしても地方都市は「人も知識も集まりにくい」ハンデを過去には抱えていたわけですね。そうなんです。まだ東京、大阪のほうが良い人材も集まる。知識も集まる。お金も集まるかもしれない。立地は不公平なんです。

立地は不公平だが、デジタル・ITはみんなに公平

一方で、デジタル・ITはみんなに公平なツールなんですね。ですから、IT・デジタルを使って「地方のハンデ、中小企業のハンデを超えていけ!」こんな話をみなさんと一緒にしていきたいと思うんです。

私は浜松で事業活動をしていますので、まずは浜松を事例に「地方都市の期待と課題」の話をします。期待いっぱい。ポテンシャルたくさん。一方で、先ほど「地方都市の問題地図」で示したような課題もあります。そことどう向き合っていくか。

みなさんは「金沢の期待と課題」ってなんだろうと、頭を回転させながら自分自身で言語化していただきたいと思います。

私は日々、こう実感しています。(スライドを指して)向かって左側、浜松の期待。「人口基盤と産業基盤」。浜松市は80万人都市です。人口は豊富、産業基盤がある。これは何よりの強みですね。80万人いて、仮に5%がイノベーティブに変わったら、何人がイノベーティブなことを起こせるか? 人口の母数の大きさはやはり魅力です。

金沢も人口の多い都市ですし、金沢だけで考えるのではなくて北陸全体で考える。あるいは、県内、近隣の市。今の時代はいがみ合っている場合ではないですね。その地域・広域で見た時に、どれだけポテンシャルが高いのか。

「他都市とのアクセスの良さ」。浜松の場合、新幹線で東京や名古屋などとのアクセスが良いです。東名高速、第2東名も走っています。富士山静岡空港もあります。他都市との交流人口を生みやすい。

私も今日来てみて思いましたが、金沢は高速道路も近く、新幹線も空港もあります。高速道路とのアクセシビリティは最高ですね。浜松は市街地から高速道路から遠くてイライラするんですが、その点で金沢はものすごく良いですね。

「オープンなマインド」。静岡県の、浜松を中心とする西部地域は「やらまいかマインド」というものがありまして、非常にオープンですね。行政も「デジタル・スマートシティ浜松」として、DXを後押ししています。

「都市と自然の近接・融合」。車で30分も走れば、大好きなダムとか遠州灘があるわけですね。ワーケーションと言いますが、すぐそこにワーケーション(に適した場所)がある。これは大きなポテンシャルです。

地方都市にある「悪気ない同調圧力的な組織文化」

一方で課題もあります。(スライドを指して)右側。浜松はものづくりの都市で成長してきました。「一律製造業ベースの固定的な働き方」。みんなで仲良く大渋滞を作る。本当にそれで良いんですか? と。

「固定的な生活インフラ基盤」。後で少し説明しますが、14時で飲食店が一斉に閉店する地域も少なくない。そうすると、変化のある働き方をしている人や、他都市の方が出張に来られた時に食事難民になってしまう。せっかく地域にお金を落とす機会を、悪気なく奪ってしまう。「悪気ない同調圧力的な組織文化」。あるいはまだまだ、変化におよび腰な方もいらっしゃいます。

そして「職種の定義が古いまま」。これも後でお時間があればお話ししたいんですが、仕事といえば、会社といえば「現場と営業と事務のみ」、以上。そうすると例えば、東京の大学に行って、(いったん)東京の会社に就職された方が(転職しようと浜松に)戻ってきたとします。デジタルマーケティングのスキルを身につけた方が就職しようにも、そんな職種がない。

現場と営業と事務のみでは自分が活かせない。あるいは、その能力を活かせれば、企業組織も高利益体質に変わっていくのに、そのチャンスを組織を奪ってしまう。もったいないですね。こういう課題があると考えています。

金沢市さんもそうだと思いますが、どの行政も「『関係人口』を増やす」ことに取り組んでいると思います。私は「関係人口」には2種類あると思います。「過去関係人口」と「関心人口」。

「過去関係人口」とは、私の作った言葉です。「かつて住んでいた、通っていた」、浜松はそういう人が多いです。「住んでいたことがある」「お父さんお母さんの出身地」「奥さま旦那さんが住んでいた」など。金沢もそういう方、非常に多いと思うんです。全国に「金沢出身です」「おばあちゃんが金沢」という方がいらっしゃいますよね。

一方で「関心人口」。「最近、浜松におもしろい人がいるね」「おもしろいことをやってるね」と興味を持って来たがってくれる、立ち寄りたがってくれる(人たち)。

いつもは、いわゆる浜松飛ばし・静岡飛ばしをしていたけども、たまには新幹線ひかりに乗って、大阪出張のついでにちょっと寄ってディスカッションする。東名高速を、浜松インターや浜松西インターで途中下車して、そこで地域の企業とお話をする。こういう関心人口は非常に多いと思っています。

プラス、立ち寄ってもらいやすい立地も強み。こんな強みを活かさない手はないわけですよね。今までは当たり前のように、悪意なく閉鎖的なやり方をしていた。それを続けて、こういう人たちを遠ざけますか? あるいはファンにしますか? それは私たち次第なんです。

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