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第3部 ビジネスチャンスとしての宇宙(全2記事)

宇宙産業のキラーコンテンツは何か? 空の向こうに眠るビジネスチャンスについて考える

近年、注目を集めている宇宙ビジネス。民間でも宇宙に挑戦する企業が増え、盛り上がりを見せるなかで、今年立ち上がった宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017」が主催する「SHIBUYA SPACE NIGHT!」が開催されました。宇宙ビジネスを取り巻く潮流や、ビジネスの可能性について、宇宙に携わる識者たちが語り合いました。第3部は、「ビジネスチャンスとしての宇宙」というテーマのパネルディスカッションです。

さまざまな立場から宇宙ビジネスを考える

司会者:第3部にうつらせていただきます。第3部では「ビジネスチャンスとしての宇宙」と題しまして、実際に宇宙ビジネスに関心を持たれ、取り組みを始めている方々をお招きし、それぞれのお立場で宇宙のどういうところにビジネスチャンスを感じていらっしゃるか語っていただきたいと思います。

それではお1人ずつご紹介いたしますので、どうぞみなさん拍手でお迎えください。

2015年の『フォーブス・日本を救う起業家BEST10』『AERA・日本を突破する100人』などに選ばれるなどご活躍中の株式会社メタップス代表取締役社長の佐藤航陽さんです。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:さまざまな企業の事業戦略、ブランディング、マーケティング活動に参画されていらっしゃいます。株式会社電通デジタル、電通デジタルマーケティング未来ラボ部長、イノベーションディレクターの谷澤正文さんです。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:宇宙飛行士を目指すタレントとして活躍されていらっしゃいます、昨年11月には宇宙の魅力を幅広く伝えるコンテンツ企画会社アンタレスを設立されました、黒田有彩さんです。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:そして第3部のモデレーターも務めていただきます、メーカーの宇宙エンジニア出身で、現在は宇宙エバンジェリストとして、多くの人に宇宙ビジネスを広げる活動をしていらっしゃいます。青木英剛さんです。よろしくお願いいたします。

(会場拍手)

司会者:それではここからは青木さんにお渡しいたします。みなさまどうぞよろしくお願いいたします。

金融や広告に、衛星データを生かす

青木英剛氏(以下、青木):最後のセッションで、みなさんそろそろお酒もまわりはじめてきたころかなと。外も雨がようやく降り出しまして、この中は熱気がすごいですね。こんなに満員御礼の宇宙イベントなかなかないなと。私も毎週どこかで宇宙ビジネスのお話をさせていただいているんですけれども、こんなに来ていただいて盛り上がっているのは、なかなかないなと思っております。

最後のセッションなんですけど、「ビジネスチャンスとしての宇宙」ということで。宇宙に関係ある方も、関係ない方も、みなさん来ていただいてまして、宇宙ビジネスをどう捉えているのかというところを自由にお話しいただきたいなと思っております。

最初に、御三方それぞれに自己紹介をしていただいて、どういったことをやられているのかをまず紹介していただこうと思っております。佐藤さんからよろしくお願いします。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):はい。始めまして、メタップスという会社を経営しています。当社はデータの解析を通して、金融や広告に生かしていくという事業をやっています。データとして衛星データってすごく魅力的な領域でして、今後いろんなところに活用していくと、産業が変わっていくだろうなと、個人的にはすごく注目しています。

私個人でいうと、スペースデータというもう1つの会社をやっていまして、これはまさに宇宙産業に投資をしていくことを専門に企業をつくろうということで、また本業とは別に動いています。ですので、今回ビジネスアイデアコンテスト、もし落ちたものがあれば私のほうでも投資を検討したいなと思っていますので、今日はよろしくお願いします。

青木:佐藤さん『日本を救う起業家BEST10』って、すごい肩書ですけど、ぜひ宇宙ビジネスも救ってもらえると助かるなぁと思っていますので、よろしくお願いします。

佐藤:(笑)。わかりました。

青木:落ちた方はぜひ、佐藤さんに出資をお願いしてみてください。

佐藤:よろしくお願いします。

マーケティングから宇宙に関わる

青木:次、谷澤さんお願いします。

谷澤正文氏(以下、谷澤):はい、電通デジタルの谷澤と申します。私はもともとテレビCMとかキャンペーンの企画、プランナーとかだったんですけども、今は電通デジタルというところで、AIとかIoTとかビッグデータを使ったデジタルマーケティングという仕事をさせていただいています。

先ほどもアクセルスペース社についてお話ありましたけれども、電通のメンバーが「超小型衛星を作る有名なベンチャー企業さんで衛星データというのがあるんだけれども、それってなにかマーケティングに生かせないか」って。その話がきっかけで宇宙と関わるようになりました。

どちらかと言うと宇宙がすごく好きとか興味があるというよりは、マーケティングでビッグデータやAIをやっていて、その延長で宇宙のデータに出会って、今関わらせていただいています。

青木:ありがとうございます。まったく宇宙と接点がなかったところから、宇宙を使ってなにかやろうと、関わり始めたんですね。

谷澤:そうです、去年出会って、いろいろ勉強させていただいて、今に至ります。

青木:そういった意味では今日来られている方の会社だったり、個人でやろうとされている方々で参考になる部分もあるのかなと思っております。では最後、紅一点、黒田さん自己紹介お願いします。

宇宙飛行士を目指すタレント

黒田有彩氏(以下、黒田):はい、黒田有彩と申します。私はタレントをしていますが、宇宙にすごく行きたくて、憧れて宇宙飛行士を目指しております。

宇宙飛行士に必要なものがいろいろあるんですけれども、1つとして実務経験、働いた経験ですね。今までの宇宙飛行士だったら、例えば先ほどの山崎さんだったら、エンジニアの出身でいらっしゃる。あとは、今までだとパイロットとかお医者さんが宇宙飛行士になられてるんですけれども。

私は宇宙の魅力をいろんな人に伝えていくということを積み重ねて、宇宙飛行士になりたいと思っているんです。このS-Boosterが発表になった日に、これはもう応募しなきゃと思って。今も応募する気満々なんですね。

もともとこの7月4日のイベントをホームページで観た時に、(会場を指して)こちら側で参加しようと思っていたんですよ。「イベントを観にいくぞ! なにが話されるんだろ、ワクワク」みたいな感じで聞きに行こうと思っていたんですけれども、なぜかこちら側の立場になってしまったのですが。

気持ちはみなさんと同じですので、ぜひみなさんの意見を糧や参考にしながら勉強する気で参りましたので、よろしくお願いします。

青木:ありがとうございます。私も宇宙飛行士を目指していました。

黒田:もうあきらめたんですか?

青木:前回の募集の時に落ちちゃったので。今はみなさんが宇宙にいけるような、そういう場を作ろうということでやっております。

最後に私、簡単に自己紹介させていただきます。宇宙エバンジェリストというと、みなさん「聞いたことのない仕事をやっている者だな」と思われると思いますが、世界で1人しかおりませんので、もちろんみなさんご存じないのは「そうです」と。

本業は、投資家をやっておりまして、世界中の宇宙ベンチャーと日々会っております。宇宙ベンチャーに投資をして、宇宙ベンチャーが成功するのを支援する。そういったベンチャーキャピタリストという仕事をしております。

今回のS-Boosterでもメンターのほうを務めさせていただきます。ですので、いい案をもっている方がいらっしゃればメンターもさせていただきますし、もしかしたら投資もさせていただくかもしれませんのでよろしくお願いします。

先ほどH-IIBロケットが映っていたと思うんですけど、ちょうどあのロケットの打ち上げを私は射場でやっておりました。『こうのとり』の開発を長年やっておりましたので、本当に宇宙をずっとやっていた人間でございます。

日本は宇宙ベンチャーの数が少ないことが課題

青木:さっそく今日の本題ですね。「ビジネスチャンスとしての宇宙」をみなさんそれぞれどう見てらっしゃるのか、そんなところをざっくばらんに話していただきたいなと思っています。最初に、佐藤さんからバサッと宇宙産業を切っていただきつつ、どんなチャンスがあるのかというところもお話しいただければなと思ってます。

現状は本業として宇宙ビジネスをやられているわけではないと思うんですけど、いろいろご検討はされているとうかがっていますので。

佐藤:そうですね、ハードウエアから情報を扱うものまで一通り見ていまして、やはり課題が多いなとは思いましたね。一番課題だなと思うのが、アントレプレナーとか起業家がすごく少ないんですよね。プラス、お金を出す投資家も少ないので、どっちかというと技術的な問題というよりは、リスクを取って、人を集めて組織を作るっていう人間が圧倒的に少ないなというのを感じました。

青木:みなさん、今、世界に宇宙ベンチャーは何社あると思われます? 世の中に1,000社、宇宙ベンチャーがあるんですよ。そのうち日本はまだ数10社程度です。どこに集まっているかと言うとほとんどがアメリカで、数100社がアメリカにある状況です。

10年後に宇宙ベンチャーが何社に増えるかというリサーチデータが出てるんですけども、1万社なんですね。ということは1万のビジネスアイデア、まあいくつか似ているのはあると思うんですけど、数千種類の宇宙のビジネスアイデアが出て、いろんな方がビジネスをしていると。

そうすると巨大なエコシステムができあがってきます。ネット系の企業が何社あるかちょっとわからないですが、もう数万社、数十万社あるかもしれない。

佐藤:そうですね。数十万社でしょうね。

青木:数十万社。今この1,000社が、1万社になって、さらに10倍になるということは相当な可能性が開けるということです。

ちょうど私、先週、ニュースペースカンファレンスという宇宙ベンチャーの集いをやるカンファレンスがサンフランシスコでやっていて行ってきたんですけど、「衛星をつくる」「ロケットを打ち上げる」ではなくて、まさに「データを使って何をするか」。利用のフェーズに本格的にもう入り始めている。おもしろかったのは、宇宙ベンチャー経験者が辞めて新たな宇宙ベンチャーを立ち上げるっていうフェーズにもうアメリカは移り始めています。

日本は1周2周遅れていますので、宇宙をやってなかった人たちが、ようやく宇宙を立ち上げる。このなかのみなさんも候補生だと思っているんですけど。

アメリカではもう、「スペースX出身者が新しく立ち上げました」という人たちがどんどん成長していってるという次のフェーズにいっています。

ただ、日本でもまだまだいけるなと思うのは、今の日本の宇宙ベンチャーは実は、半分くらいの社員が外国人というケースが多いことです。

世界中から優秀な社員が、日本の宇宙ベンチャーに転職をしに来ているという実情もありまして、「まだまだチャンスはあるな」と思ってますので、そういったところをみなさんにお伝えできればと思っていました。(佐藤氏に)他になにか期待されているところは?

「宇宙データの活用法」を考える

佐藤:そうですね、私はハードウェアはちょっとわからないんですけども、衛星データで言うと、一番課題に思うのがやっぱりデータの活用の方法。一切ノウハウとして広まってないんですよ。なのでディープラーニングとか機械学習を含めて、技術の部分って相当発達してはいるんですけれども、「じゃあそのデータを使ってどんな産業、どんなビジネスに生かせるんだ」っていう、データを経済的価値に変えるところですよね。

そこのノウハウがないのがすごく課題になるだろうなと思っていて。「データを集めればなにかおもしろいのが出てくるんじゃないだろうか」という絵は描きやすいんですけども。本当に相当難しいんですよね。そこはITの企業と、宇宙産業がちょうど回せる部分なのかなと思っていて。個人的には自分の役目もあるんじゃないかなと思っています。

青木:よく「宇宙のデータがどこにあって、どう使っていいかがわかりません」っていう質問を聞きます。ですので、みなさんぜひアイデアを出していただきたい。

今回、政府やJAXAもメンターで入りますし、宇宙の関連企業もいろいろと支援していただけますので、まず最初にみなさんが「どうやって使えるんだろう」って考えていく、というのがファーストステップなのかなと思っています。

青木:ちょっと話題を変えます。谷澤さんは、「宇宙×ビッグデータ」だったり、「宇宙×人工知能」といった切り口で事業を始められたと思うんですけど、もう少し具体的に取り組みをご紹介いただけますか?

谷澤:宇宙のデータは、本当にビッグデータなので。先ほど佐藤さんおっしゃったようにAIとかって、今まさに、一連の流れのなかで利用の分析をしてどう活用するかというところにあって、そこにまだ課題やチャンスがあると思っています。今やっているのは農業や林業、漁業、流通などの、どちらかといえばビジネスの効率化みたいなところで、衛星データとかビッグデータとかAIを使っているんですけど。

これから日本のベンチャーやいろんな人がそこにチャンスを持ってやるというと、効率化ももちろん大事なんですけど、もう少し品質向上も。例えば農業で、今、「肥料が足りないからやったほうがいいよ」とか、「今収穫のいいタイミングだから収穫したほうがいいよ」というのが衛星データでわかるんですけど。

お米、ビール、ワイン、あるいは枝豆とかなんでもいいんですけれど、品質を向上させるところって、まだ海外も含めてできていなかったりする。日本人は、9を最後10にする、最後の追い込みの品質向上のすばらしさや、スキル、技術があるので、そういうところに日本のこれからのベンチャーや、みなさんの入っていくチャンスがあるんじゃないかなって思っています。

青木:宇宙のデータを使って、栽培されたお米は「宇宙米」になるんですよね。

谷澤:そうです、そうです。

青木:お茶はありますよね。

谷澤:そうです。お茶はすでにあるので。今は「ここで肥料が足りない」とか、効率化のところなんですけど、もっと品質向上のところで、ブランドにできないかなと思っていますね。

宇宙産業のキラーコンテンツとは?

青木:宇宙って、ドローンの産業の勃興と似ていたりだとか、今はインターネットの黎明期だとかよく言われたりするんですけれども。安く誰でも手に入るようになったと。手のひらの人工衛星が誰でもつくれるようになって、簡単に宇宙に打ち上げられる。これってドローンとまったく同じで、軍事用として使われたドローンが、手のひらでホビーとして使えるようになった。

アキバに行けばホビーショップでドローンが買えるような時代で、誰でも飛ばせるようになった。その時になにができるかっていろんな人が考えだして、ドローン産業が一気に花開いたわけなんです。

宇宙もまさに衛星のデータが手軽に手に入り、これからいろんなデータが無償で解放されていく時代も目の前に来ています。そういった時になにができるのかっていろんな人が考え出す。まさに爆発、ビッグバンの手前に来ているのかなと思っています。

佐藤さんは、今の谷澤さんのコメントも聞きつつ、具体的に注目していることや、コメントなどありますか。

佐藤:そうですね、私個人的には次のフェーズに、爆発的な産業というかビジネスの立ち上がりがあるんじゃないのかなと思っていて。2012、3年くらいに、インターネットでオンライン上のデータをかき集めてなにか使えるんじゃないか、という議論があったんです。

でも実は、あまり価値が生まれなかったんです。なぜかというと、お金の出し手がいなかったんですね。データを活用する企業側のリテラシーも足りなかったので、「データ加工して、販売しましょう」「買ってください」って言って、買ってくれる企業がいたかっていうとめったにいないんですよね。

そのあとオンライン上ではフィンテックとか、あとはソーシャルゲームみたいなどちらかというと金融とエンタメがネットと相性がよくて、爆発的に成長する企業が増えた。なので私は、宇宙産業に関しても、もしネットと融合するのであれば、エンターテインメント旅行やVRなどと、あとは金融。そこがキラーコンテンツになるんじゃないかな、と読んでます。

青木:エンタメと金融だそうですよ。もしビジネスアイデアを考えている方がいらっしゃれば、その分野はすごいチャンスになると。まさにおっしゃるとおりで最初すごく注目されるんですよね。それで、やっぱり使えないなって、1回トーンダウンするフェーズがどの新しい産業が生まれる時もある。そこでビジネスとしてどう使えるのか改めて考えて、キラーアプリや、キラーコンテンツの用途としてこの分野のここにだったらドンピシャではまるっていうことがすごくあるんですよね。

ぜんぜん違う業界ですけども、爆発的に産業ロボットを押し上げた用途っていうのは溶接と塗装なんですよ。ロボットアームは最初ぜんぜん使えないなって言ってたんですけども、自動車産業の人たちが溶接と塗装ではすごい使えるっていうことで、年間何万台、何十万台のロボットができてひろがったんです。

このキラーコンテンツ、キラーアプリをいかに宇宙のところで、みなさんが見つけていってビジネスにするかというところが非常に大きなポイントかなと思っています。

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