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第3部 ビジネスチャンスとしての宇宙(全2記事)

アイデアは掛け算から生まれる 「宇宙×○○」で新たなビジネスを創り出す企業たち

近年、注目を集めている宇宙ビジネス。民間でも宇宙に挑戦する企業が増え、盛り上がりを見せるなかで、今年立ち上がった宇宙を活用したビジネスアイデアコンテスト「S-Booster 2017」が主催する「SHIBUYA SPACE NIGHT!」が開催されました。宇宙ビジネスを取り巻く潮流や、ビジネスの可能性について、宇宙に携わる識者たちが語り合いました。第3部は、「ビジネスチャンスとしての宇宙」というテーマのパネルディスカッションです。

自分のキャラクターや特技を宇宙ビジネスに生かす

青木英剛氏(以下、青木):(佐藤氏に)金融をやられていますと。(黒田氏に)そしてエンタメ、待たせてすいません。黒田さんは、エンタメや音楽などいろいろ宇宙とからめて活動をされていると思うんですけども、その辺の取り組みをご紹介いただいてもよろしいですか。

黒田有彩氏(以下、黒田):はい。私が昨年の末にやったことが、宇宙を感じてもらえるようなCDを作りたいということで、クラウドファンディングで応援していただいた取り組みがあります。はじめに宇宙と音楽を組み合わせようと思ったのが、私たちは地球上で当たり前のように音を聴くことができるんですけれども。

音っていうのは大気の振動で、それが伝わって鼓膜が振動して私たちの脳が聞こえるという状態で、今、私の声をみなさんが聞いてくださっている。それが宇宙では起こらないんですよね。大気がある星、そういう限られた場所でしか音って聞けないんだっていうこと。

そういう当たり前のことが、実はキラキラしているものだっていうことをメッセージとして伝えたかったんです。私は宇宙といろんな物を掛け算していきたいなと思っていて、自分自身もそうなんですよね。私はタレントをしているんですけれども、宇宙が好きで、最近、宇宙に関わるお仕事にたくさん呼んでいただいているんです。この場もそうなんですけれども。

もともと物理学科の大学生だったんですけれども、大学生の時から芸能活動を始めて、オーディションに行くたびに「大学でなにを勉強しているの?」って聞かれて「物理学です」って言うと「えっ? なんで君はここにいるの?」って驚かれてしまうんです。

それは宇宙について人が思うイメージ、ベクトルみたいなものと、芸能人、タレントっていうベクトルがあまりにもかけ離れていて、それが接することのない、平行でもない、ねじれのような関係だと思われていたんじゃないかなと思うんですよね。それが10年くらいした今、少しずつ自分としての生き方みたいなものが見つかってきたという段階なんです。

それこそ宇宙っていろんな切り口があると思うんです。宇宙好きってことでいらっしゃっている方も多いと思うんですけど、ロケットや、航空の分野が好きな方だったり。あとは天文学、星空とか星座とかロマンチックでいいよねっていう方もいらっしゃると思います。あとは物理学や、有人宇宙飛行に夢を感じている方もいらっしゃると思います。

だから本当に宇宙っていう世界はいろんなものの融合であって、すべてだと思うんですよね。私が自分の特性としてタレントという職業を選んで、それと宇宙を絡めているように、みなさんのそれぞれのキャラクターや特技と、宇宙を絡めた時にすごく爆発的な化学反応が起こるんじゃないかと私は思っているんです。

「掛け算」からアイデアが生まれる

黒田:レギュラーでラジオをやってるんですけれども、この前、そのスタッフさんとDJの方とS-Boosterの話をした時にめちゃめちゃ食いついてきたんですよ。「俺たちも出そうかな」みたいな感じで。ぜんぜん宇宙に詳しくないんですけど、その人たちがぽろっと言っていたのが「ISSに豚を送って、豚をISSで育ててそのトンカツを売ろう」みたいな(笑)。いや、意味がわからないんですよ、正直。

谷澤正文氏(以下、谷澤):まさに「宇宙トンカツ」ですね。

青木:それ売れると思いますよ。

黒田:(笑)。どんだけコスパが悪いんだって思いますし、「そんなの不可能じゃん」って終わってしまうけど、ばかげていて、おもしろくて。なんかそういうところもあると思うので、ぜひみなさんの持っているものを引き出してもらって、宇宙と掛け合わせていただいたら、すごくおもしろいアイデアが生まれるんじゃないかなと思います。

谷澤:その掛け算ってすごく大事で。今日のS-Boosterってビジネスアイデアの話なので。よく広告代理店の者が企画とかアイデア考える時、アイデアの出し方って1個しか無くて、それはあるものとあるものの掛け合わせなんですね。例えば、手紙とデジタルを掛け合わせたEメール。

あるものを掛け合わせて作っていくっていうのが基本なんですね。先ほどの豚と宇宙で「宇宙トンカツ」っていう話もありますし、例えばこういったオフィス空間と宇宙って掛け合わせるだけでも、「会議で盛り上がっている時には火星の絵を空間で映そう」とか、ちょっとしんみりする時には月の空間にしよう」とかそういう話もあります。

なんでもいいんですよ。スポーツ×宇宙で「月面オリンピック」とか。これ本気で考えている人もいます。自分の身の回りにある得意なもの×宇宙ってやるだけで、いろんなアイデアが出てくる。ぜひS-Boosterのみなさん、そういった掛け算でちょっと応募していただいたら、いろんなアイデアが出てくると思うんです。掛け算は大事なことだと思ってます。

青木:まさに、ぶっ飛んだアイデア大歓迎なんで。それぐらいしないとアイデアは出ないと思ってます。先ほどエンタメにすごくチャンスがあるとおっしゃっていたんですけども、日本にはエンタメで宇宙ベンチャーを立ち上げた方もいらっしゃってですね。1つご紹介させていただきますと、みなさんご存じの方もいらっしゃると思いますけど、ALEという会社があります。

彼らは人工流れ星を作って、それをビジネスにする会社なんですね。人工衛星を作ってそこに流れ星の玉を詰めて、例えば東京の上空を人工衛星が通るちょっと前に玉を放出すると、それが大気圏に突入して、いろんな色に光って花火のようにうつりますと。それをエンターテインメントや、観光などでビジネスにしようとしているんです。

これ1人の人が見るわけじゃなくて、数百万・数千万人の人が一気に見れる。それを場として提供することでどういった波及産業、波及ビジネスが生まれるかというところで、彼らはビジネスをやっているんです。エンタメ、発想の部分って、日本はコンテンツや、ゲーム、アニメもそうですけども、いろんな発想の力があるんですよね。

そこに従来あった強みであるモノ作りの力を掛け合わせることで、欧米や、中国、インドにも負けないようなビジネス、宇宙産業を作っていけるんじゃないかと思っています。

衛星データを使ったビジネス

青木:はい。時間もあれですので、会場から質問があればぜひお受けしたいなと思うんですけど。どなたに対してでもいいですので。ご質問ある方は挙手いただければと思います。はい、どうぞ。

質問者1:衛星データを使ったビジネスを何かできないかとお話を伺いながら考えていたのですが、例えば経済予測の観点でビッグデータ活用が進んでいる分野や注目されている業界など、ビジネスアイデアを検討する上でもしヒントみたいなのがあれば教えてください。

佐藤航陽氏(以下、佐藤):金融だとすでにヘッジファンドがよく使っていると言われていまして、いわゆる穀物の予測から、じゃあ先物をどうしたらいいか、買っておくか売っておくべきか。

あとは最近ですとナウキャストさんがやっていたのが、都市の明かりですよね。明かりによってGDPの成長だったり、国の成長度合や発達度合がわかると。

じゃあその国の国債をどうするべきなのかって予測をして、売り買いをする。金融では一番先にそこに風がくるんじゃないかと思っています。

青木:そうですね、今とりあえず熱いと言われているのが、ウォールストリートの人たちです。各国の統計データが出る前にその統計データを自ら作って、投資をしてしまおうって方々が、今、一部動きはじめたという1つの例ですけど、そういう話があります。

佐藤:情報を価値にするという意味で言えば、金融が一番手っ取り早いと言えば手っ取り早いんですよね。人よりちょっと先の未来が見えるだけで、すぐにマネタイズができるので、ここはアイデアがいろいろあるんじゃないかと思っています。

宇宙ビジネスに挑戦する「ハードル」を下げるには?

青木:他にご質問は? はい、どうぞ真ん中の男性。

質問者2:いろいろとみなさんのお話を聞いてまして、実は私もそういったいろんなことをするために、宇宙村のいろんな人と会話をしてきました。それこそ宇宙通信さんですとか、NECさん、三菱重工さん、IHIさん、それからアクセルスペースさん。

いろんなところと対話をさせていただいたんですけど、だいたいご挨拶で終わってるんですね。宇宙のデータを使ってビジネス活性化しましょうとか、アプリを使って活性化しましょうとか。そういうなかで、私が個人的に思っているのが、先ほど言った掛け算でいうところの数式、公式のところを担えないかなということです。

今の宇宙村の方々では多分コストダウンしてないので、ここをどうにか打破できないかなと思っていたのですけども、実際にお話をしに行くと、けっこうハードルがまだ高いんですよね。ここを突破するアイデアみたいなのがあれば、教えてください。

谷澤:私はマーケティングをやっていて、たまたま宇宙のビッグデータと出会った。でも掛け算するとそこにチャンスがあると思っていて。たぶんヒントとしては宇宙村以外の方がどんどん参加することが、まず1つハードルを下げるやり方なのかなと思っています。

こうしたビジネスコンテストで、例えば宇宙ビッグデータを使ってなにかすると言った時に、今、いろんなところでデータサイエンティストが活躍しているので。宇宙産業以外のところでいろんな人が活躍してるので、そういう人たちを巻き込んで参加してもらうと、たぶんハードルは変わっていくと思います。

あと宇宙はこれからです。先ほどのアクセルスペースさんも、2020年以降に50機バーッと出てきたりする。そこでたぶん映像やデータのコストも変わってきたりするので。そういった新しい人が入ってくるとか。たぶん2020年、より宇宙が身近になっていくので、そういったところでチャンスなり、掛け算なり、コストも変わってきたりする。そこで先手先手でやっていくっていうことが大事です。

やっぱりイノベーションって失敗することが多いんですけれども、失敗のコストも含めて考えて、先行投資でやった人が勝っていけるんじゃないのかなと思っています。

青木:まさにその通りで、今日の場がまさにそれを言ってるのかなと思います。参加者のプロフィールを見せていただいたんですけれども、9割くらいが宇宙とぜんぜん関係ない方々でですね。ぱっと見ても業界の関係者が一部しか見当たらないっていうくらい、すごいレアなのかなと。

実は霞が関で、今、宇宙村の集いを経団連の会館でやっているので、そっちに行かれている部分もあるんと思うんですけど。こういうぜんぜん関係ない方が集まっているっていうのはいいきっかけなのかなと思います。

谷澤:1つ追加しますと、大企業さんの開発コストや、イノベーションコストは本当に何億、何十億とある。その1パーセントだけでも、新しいことに挑戦していただきたい。今、プロトタイピングとか試してやってみようとすればできたりするので。そういったところでチャンスというか、いろんなことをトライしていただけたらなと思っています。

「ワクワクするビジネスかどうか」が投資のポイント

青木:もう1つ手が挙がっていたと思うんですけど……。はい。

質問者3:ありがとうございます。青木さんに質問です。これまでいろんな宇宙ベンチャーの企業を見てきたと思うんですけど、どういうふうに「このベンチャーはいける」って判断するのか気になっていて。例えば、宇宙ベンチャーっていろいろあると思うんですけど、短いスパンで利益がでるものってなかなかなくて、開発にもコストがかかるってことが大きいかなと思うんですけど。

そのスパンが長すぎると成功しないし、でも短すぎると「実際にそれ収益がでるの?」って思うと思うんですけど、どうやって判断していらっしゃるか教えていただけますか。

青木:これも投資家からよく聞かれる質問で、「どういったベンチャーに出資しますか」ってところと似ているんですけれども。あまり参考にならないかもしれないですけど、私が投資する時は自分がその会社の社員になりたいか、なりたくないかという判断だけで決めます。宇宙に関しても同じです。

なので、投資をして社内取締役に入って、その会社の社長と一緒に会社を大きくしていきたいかどうかだけですので、そのポイントとしては「ワクワクするビジネスかどうか」なんですね。そのなかで極力大きなビジョンであったり、成し遂げたいことを持っている人たちに限って、応援したいと思う人たちがついてくるな、というのはけっこう感じています。

イーロン・マスクもそうですけど、普通の人から考えたらぶっ飛んだこと言ってるわけですよね。ただ、ついてきている人や応援してきている人はすごくいっぱいいます。夢が大きければ大きいほど、実は社長って楽というか、応援したくなる人が増えてくるので、小さいビジネスモデルよりは大きなことを描いてやっている人を応援したくなる。

ただそれには技術がしっかりしているとか、チームがしっかりしてるだとか、ビジネスモデルがしっかりしているだとか、最低限のところは前提ではありますが。ワクワクするビジネスモデルをお願いします。

ネット産業でうまくいった人が宇宙産業に恩返しを

青木:ありがとうございます。時間もきていますので、みなさんそれぞれ一言ずつ、会場のみなさんへのメッセージや、S-Boosterへの期待など、お話いただければと思います。佐藤さんから。

佐藤:インターネット産業ってもともと航空防衛から始まったと言われています。コンピューターが生まれてインターネットが発達したので、アメリカだとコンピューター、インターネットの産業でうまくいった人たち、拡大した人たちが宇宙産業に恩返しをして、拡大していったっていう背景がある。

日本でもそういう流れを作っていきたいなと思っているので、微力ながらお力添えできればなと思っています。

青木:ありがとうございます。谷澤さん。

谷澤:今日、掛け算という話があったので、ぜひみなさん身の回りのこととか、自分の得意としていること×宇宙っていうことで。なにか新しいことをビジネスアイデアとかヒントを、S-Boosterに応募していただけたらなと思っています。

青木:ありがとうございます。では最後、黒田さん。トリをすてきなメッセージでしめていただきましょう。

黒田:なんで私がトリ(笑)。はい。このS-Boosterのすごいところは、書類に通ってからメンターの人と一緒にアイデアを育てていけるってところだと思うんですね。

すごく斬新で新しくて「これできたらすごいね」っていうアイデアももちろんだと思うんですけれども。そうじゃなくても、きっとなにかひっかかるところがあれば、人を見てメンターの方と一緒に……アイデアもそうだし、一緒に参加することで成長できる部分があると思うんですね。そういうコンテストだと思うので、私もファイナリストになることを目指しているんですけれども、ぜひみなさんも難しく考えすぎず。私もすごく難しく考えていることは考えているんですけど(笑)。

ぜひ楽しく。5年後10年後こんな未来が待っていたら、こんなふうに宇宙が使われていたらおもしろいんじゃないかなって、ある意味子供心みたいなものを、ぜひ応募したらいいんじゃないかなと(笑)。なんで私だけ笑ってるんですか? この会場で。

(会場笑)

黒田:びっくりした、今(笑)。私もがんばりますし、みなさんも。どんな宇宙ビジネスがこれから出てくるのかほんと楽しみです。ということでがんばりましょう。ありがとうございました。

青木:すてきなメッセージ、ありがとうございます。みなさん、ぜひ応募のほうをよろしくお願いいたします。これをもちまして第3部のトークセッションを終わりとさせていただきます。みなさんどうもありがとうございました。

(会場拍手)

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