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「北欧、暮らしの道具店」広告ビジネス戦略の裏側(全6記事)

メディアの世界観を壊さず記事広告を作り続けるには? 「北欧、暮らしの道具店」が探りあてた軸足

アクセスの約半数が「過去に20回以上訪問した履歴のある人たち」で構成されているというECメディア「北欧、暮らしの道具店」。そのなかで行われている広告事業とはなんでしょうか? クラシコムが不定期で開催するリアルイベント「クラシコムサロン」の第3回「『北欧、暮らしの道具店』広告ビジネス戦略の裏側」が行われ、代表の青木耕平氏と事業開発グループマネージャーの高山達哉氏が登壇しました。習慣性の高いECメディアだからこそ実現できた広告ビジネスとはなにか。また、クラシコムが新規事業を立ち上げる際に意識しているポリシーとはなにか。

自分たちが好きなもの=おすすめしたいクライアント

筒井あい子氏(以下、筒井):クライアントさんにも「本当はこういうことを伝えたいんだけど」みたいな思いはあるんですかね?

高山達哉氏(以下、高山):そうですね。それがおそらく青木が言っていた「クライアントインサイト」みたいなところにすごく紐づいてくると思っています。

筒井:最初の3か月間営業の話ですか?

高山:そうです。クライアントにももちろんブランドがあり、そのなかには人がいます。人としてブランドに携わってきたからこそ、実はすごく伝えたいメッセージや声を大にして言いたいことがある。それをどう伝えていいのかわからなかったり、自分たちから言うことが難しかったりしている。それをすごく実感を持って発見しました。

筒井:もう1つ質問です。「世界観を崩さないで、(広告事業を)持続的に成長させるための具体的な方法などをおうかがいできればと思います」といただいています。

これはサイトの世界観についての質問です。最初はtoCのECだったんだけど、(to)Bの広告をはじめるにあたって、世界観などについて意識したことはありますか? 気を付けていることだとか。

青木耕平氏(以下、青木):創業時、僕たちは北欧のビンテージの食器専門店としてはじまっているんですね。ですから、中古品だけ扱っていたお店なんです。そこから、ビンテージの商品といっしょに北欧の新しいものを売っていく。さらに北欧と関係がないけれど「僕らが好きなもの」を売るようになった。

そしてオリジナル商品をつくったり、アパレルをやったり、お菓子をつくったり、食べ物を売ったりなど、1年半に1回くらいは業態を変えているんじゃないかという感じでした。なので、商売の中身がどんどん変わっているところがまずあります。

「なにを売るか」に一貫性を求めなければいけないとしたら、やはり市場の変化、あるいは成長の機会に対応することが非常に難しいなと思っています。

ではなにに一貫性を求めているかというと「誰が見ているのか」「誰が好きなものなのか」「誰が選んでいるのか」に一貫性の軸足を置くしかない。それが我々の基本的な考え方かなと思うんですね。

そうすると「我々が好きなものと、おすすめしたいクライアントさまは変わらないんじゃないか」と思ったわけです。

「いつつくられたものか」ではなく「今欲しいもの」を

青木:とはいえ、ビンテージ商品から新しい商品をやるのは、実は想像するのが難しいかもしれません。「古き良きものを求めているお客さまに、今つくられているものを見せるのは世界観を壊すことになるんじゃないか」とは、当然ながら周りからも言われていました。

そのときに我々は、「今欲しいもの」というコピーをつくったんですね。

つまり、「『いつつくられたものか』じゃなくて『今欲しいもの』だったら、そのなかには古いものもあれば新しいものもあるじゃん」「だから僕らは、今欲しいものをこれからやります」というようなことをお話ししていますね。

1つの世界観を守っていくという意味では、先ほどの「誰が」に軸足を置くことと、その変遷を非常に丁寧に説明してご理解をいただけるように最善を尽くすこと、つまり雑にやらないことは、もうめちゃくちゃコストかけてやったなあと思います。もちろん、どのタイミングもそうですね。

そこまでやったけどあまりうまくいかないこともありますね。ここに関しても最初に思っていたのは、「受け入れられなかったら、シュッてなにもなかったようにやめよう」でした。

高山:ははは(笑)。

筒井:けっこうクラシコムでは、それがありますよね(笑)。

(一同笑)

青木:クラシコムあるあるですよね。小さくトライして、あまりうまくいかないとなったらシュッてやめる。そこの素直さにも定評がある。

筒井:ははは(笑)。

筒井:そうでした(笑)。

青木:素直さに定評があるんで、お客さまがノーと言えばそれはノーだろう、と。ただ、高山が入って2か月ぐらいで受注してきて。

高山:そうですね、はい。

青木:クライアントからのニーズもなんとなくわかり、実際に広告の出稿をしていただきました。そして、そのアンケート結果です。

僕らのやり方として、記事化したときに必ず最後にアンケートをつけるスタイルがあるんです。たぶん我々がはじめてやったんじゃないかな、と思うんですけれども。

記事化したものの末尾に必ずアンケートをつける。そこに何百件も返信があったんです。フリーコメント欄も3分の1ぐらいの人がびっしり書いているものもあり、そのほとんどにネガティブな意見は書かれていなかった。

2年ぐらい経っていますけど、今に至るまでその状況がずっと続いています。それを見たときに「あ、これは大丈夫だなあ」と思いました。だから最初から確信があったわけじゃなくて、「丁寧にやるけどだめかもしれない」っていう思いも持ちながらやっていました。

筒井:(だめだったら)何事もなかったかのように。

青木:「広告ってやってたっけ?」みたいな感じに(笑)。だめだったらすぐやめる。でも、思っていた以上にお客さまからも、クライアントさまからも支持をいただけたんです。「じゃあこれはしっかりやっていこう」っていう感じでしたね。

役立つ内容、取材対象者との親和性、テイスト感

筒井:広告記事に限らず、読み物やバイイングも含めたお店の世界観など、コンテンツをつくるうえでの肝みたいなところはぜひ……今日は(「北欧、暮らしの道具店」の)店長・佐藤(友子)も来ているので、ちょっと聞いてみたいなと思うんですけど。いいですか?(笑)。

今、広告も含めた読み物も佐藤さんが監修されているじゃないですか。その世界観を保つために「こういうところに気を付けている」「読み物をつくるときにスタッフに意識してほしいこと」みたいなものとぜひ。すみません、急に(笑)。

佐藤友子氏(以下、佐藤):カウンターのなかからすみません(笑)。佐藤と申します。今話している代表の青木の実妹で、一緒に会社をやっております。BRAND NOTEの世界観を守るために気を付けていること……。カウンターのなかで今必死です。

(一同笑)

佐藤:動揺しています(笑)。はい。私は、「北欧、暮らしの道具店」で提供している読み物全体を見ている立場になります。なので「これは広告だから」「これは広告じゃないから」って線を引いてディレクションすることをできるだけ避けようと思っています。

サイト全体、メディア全体として目指していることは、自分らしくよりよく生きたいなと思っている人が読んでくださったときに「なんだ、この読んだ時間を返してくれよ!」ではなくて「あ、いい時間をありがとう」といった、どこかで「ありがとう」と言ってもらえるような読み物を目指したいと思っています。ですので、本当に役立つ内容をとにかく掘り起こし、研究することをBRAND NOTEでもすごく意識しています。

もう1つは、読んだときの気持ちよさ、空気感。これは先ほど筒井が言っていた世界観に関係することかなと思います。読んで、「あ、なんか気分いいな」っていうような読み物に、広告も含めてできればいいなと思っています。

そのためにすごく意識しているのは取材対象者さんですね。タイアップで出ていただく取材対象者さんには、料理家さんやエッセイストの方など、いろんな方がいらっしゃいます。「北欧、暮らしの道具店」らしい人選だなと対象者さんをオファーさせていただくことは、すごく意識していることの1つかなと思います。「なんでこの人が出てきたの?」みたいなことがないということですね。

あとは、日ごろいつもほかのコンテンツでご一緒させていただいているカメラマンさんにもオファーすることが多いです。写真がつくり出す空気感や世界観はすごくあると思っています。写真のテイストがほかの読み物とまったく絡まないものであることは、すごく意識していると思います。

本当に役立つ内容であるということ。それから、出てくる人に親和性を感じていただけるということ。それを、どこかお化粧するようなテイスト感がやはりうちらしいな、とご納得いただけるものに編集すること。この3つかなと今思いました。

記事広告そのものがメディアの世界観を推進する状況

青木:具体的なテクニック論で言うと、編集部をまず分けないことがすごくあると思うんですね。

よくあるのは、「広告チームと編集チームを分けましょう」というものです。うちの場合は完全に一緒のチームが同じノリでやってます、という感じが、まずテクニック的な特徴としてあります。

もう1つは、会社のコンテンツに対する姿勢として「BRAND NOTEの記事が一番おもしろくなるようにしよう」と言っていますね。つまり、むしろ広告系のほうがおもしろくあることを目指してやろうよっていう話をしている。

BRAND NOTEを担当する人間が「とりあえずお金を稼ぐために記事つくろうよ」よりは、「これが一番コストもかけられるやつだからおもしろくなるはずだよね」というマインドセットで仕事をする。そのため、下手すると通常のコンテンツの倍ぐらい時間を与えてますし、コストも多く使えるような状況をつくっています。

そういう意味では、むしろBRAND NOTEの記事そのものが世界観を推進する状況をどうつくれるか。「これがあるけどしょうがないよね」よりは、むしろ「これがあるから世界観がもっとよくなったじゃん」にする意識づけは、けっこう気を付けたかもしれないですね。

高山:それで言うと、僕はすごく思っているのはBRAND NOTE自体がコンテンツのカテゴリーになっているんですよね。

ほかのメディアだと、基本的に広告はスポンサードやPR表記があり、それ以上でも以下でもないんですよ。BRAND NOTEができたときに思ったのは「BRAND NOTEというコンテンツカテゴリー」として見立てている。BRAND NOTEはBRAND NOTEです、みたいな感じです。

筒井:お片付けやお買い物っていうカテゴリーと同じように、BRAND NOTEのカテゴリーが並んでいる。

高山:そうそう。お客さまから「次のBRAND NOTEを楽しみにしています」というコメントもすごく多いんです。「次の広告記事を楽しみにしています」なんて、なかなか難しいと思うんですけれど。それはお客さんも1コンテンツとして捉えてくださっているということだと思うんです。そういった見立ての作り方はおもしろいなあと思いますね。

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