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新刊『組織をダメにするのは誰か?職場の問題解決入門』出版記念セミナー(全4記事)

組織をダメにする“害虫”の正体は間違った思い込み AIやDXなど手段のみにこだわるダメ上司の見極め方

組織内で発生するさまざまな問題を「会社の害虫」として捉えた話題のビジネス書『組織をダメにするのは誰か?職場の問題解決入門』。 著者である岸良裕司氏が登壇したセミナーにて、“害虫”の生正体や生態についてコミカルに解説します。

組織をダメにする“害虫”たちの特徴とは

司会者:今回は「『組織をダメにするのは誰か? 職場の問題解決入門』出版記念セミナー」と題してセミナーを行います。それでは岸良さん、どうぞよろしくお願いいたします。

岸良裕司氏(以下、岸良):ありがとうございます。私は「会社の害虫」というテーマを長年研究していまして、10年前に中経出版で(『最短で達成する 全体最適のプロジェクトマネジメント』を)出版した時にも、一番最初に害虫の話を載せたぐらいなんです。(職場に)変なもの、訳がわからない人がいるな、ということがありますよね。それで(キャラクターとしての)害虫を作ってきたんです。

それを集大成として書いたのが今回の本になっています。「見るのもイヤ! 想像するだけで気分が悪くなる上司」はいませんか?うん、「そんなのいないよ」と言っておかないとまずいですよね(笑)。「うんうん」と言っちゃいけないです。

「がんばってもがんばっても、認められない閉塞感」とか、「増え続けるプロジェクトでバタバタな毎日」とか、「威勢のいいスローガン虚しく、残念な業績の会社」とか、「月曜日かぁ。会社に行きたくないな」みたいなものがあると。すると「組織をダメにするのは誰か?」って知りたくありませんか?

本当は「組織を悪くしよう」と思っている人は絶対いないと思うんです。思い当たる上司がいる人もいそうな感じもするんですけど(笑)、それでも会社を悪くしようとはしていないと思うんですよね。

ここには実は「会社の害虫たち」がこんなにいっぱいいるということで、どうですかこれ?最初は「会社の害虫図鑑を作ってくれ」と言われたんですよ。

会社の害虫たちには特徴があるんです。長年未解決の問題がある職場に害虫は発生します。ただ実際にはみなさん、見たことがないはずなんですよ。なのに害虫たちの特徴に「あるある」と共感してしまう。

彼らは人や組織に取り憑きます。そして誤った対症療法をやりますと、加速的に増殖することがあります。さらに、会社のスローガンとか、実は方針のポスターなどに忍び込みます。お気をつけいただきたいと思います。

さらに、フィジカル空間のみならず、サイバー空間を経由して職場に侵入する。いわゆるコロナ(ウイルス)なんかはサイバー空間は無理なのに、(会社の害虫は)ここまで来ちゃう。

思い込みを疑うことで進化できる

「会社の害虫たちが好んで取り憑くところはどこか?」というと、「ダメ上司」「ダメプロジェクト」「ダメな時のあなた」「ダメ組織」という4種類に取り憑くんです。

その正体は何かというと「Assumption」です。『ザ・ゴール』著者のエリヤフ・ゴールドラット博士は物理学者だったんですけど、「Always check the assumption」と言って、「思い込みに気をつけろ」と言っているんです。日本語訳は「(証拠もなく)事実だと考えること;仮定、想定、仮説」と書いてありますけども、これをちょっと、みなさんと考えていきたいんです。


最近、漫画で『チ。-地球の運動について-』(※地動説を証明するために命を懸けた者の物語)が流行っていますけども、どうですか? 地球は止まっているんでしょうか? 地球は回っているんでしょうか? もし「地球が止まっている」と考えていたら、月に行くことはできなかった。天体観測も非常に難しかったかもしれない。

「地球は止まっているんじゃなくて、回っているんだ」と理解した瞬間に、いろいろな物理法則がクリアに説明できるようになった。実はこの時に、現象は何も変わってないんです。地球はずっと回っていたんですけど、我々の理解だけが変わっているんですよ。要するにこれ、思い込みだったということです。

このAssumptionを変えることによって、科学技術は進化してきたんです。ですから、世の中のAssumptionが、「本当なのか?」ということを疑うのが科学者であって、それが新しい常識に塗り替えられた時に、実は科学技術は進化する。

じゃあ、組織もAssumption、思い込みを変えることで進化できると。それどころじゃないんですよ。人間も思い込みを変えることで、実は劇的に成長するということを、今回示したかったということなんです。

これは仮説とかそういうものじゃなくて、劇的な効果があるんです。我々は信念を持ってさまざまな現場に行って、成果を出してきています。今回はもう実証されているものをわかりやすく説明したんですけども、この「Assumption」について、ちょっと考えていきたいと思います。

間違った思い込みから生まれる害虫たち


「早く始めれば早く終わる」。どうでしょう? 「『なぜ?』を5回問うと、真因にたどり着き、問題解決できる」「進捗管理をすれば、プロジェクトはうまく管理できる」「危機感の欠如が会社を停滞させる」。これってなんか、まことしやかに言われていません?

ところが「早く始めれば早く終わる」と言うと、すべてが最優先になって、「マルチタスク虫」(という害虫。図内の一番左のイラスト)が出てきたりする。「なぜ?」を5回問うとどうですか? 「なぜなんだ?」「なぜなんだ?」「なぜなんだ?」と5回言われたらどうですか? 泣きそうになりません?

どう? 「なぜだ?」「なぜなんだ?」「失敗しようと思って、失敗したわけじゃ…… 」とつい言い訳しちゃうと、結局「言い訳するな!」とか言われてしまうと。これも明らかに間違いだと。

「進捗管理すれば、プロジェクトはうまくいく」って。これも「なんで今になって」と言ってしまうけど「結果」を管理しているんですよ。今になって(と言われても、部下は)管理しているあなたが悪いんだと思いません?

「危機感の欠如が会社を停滞させる」と言って「危機感を持て!」とか言ったらどうですか? 10回ぐらい言われたら危機感を持てる?

他にもあるんです。「プレッシャーをかけると動きが早くなる」。なんかプレッシャーをかけたくなりません? 「手段と目的を履き違えるな!」って何度聞きました? それで、目的を意識するようになる? 本当?

さらに、「納期を守らせるにはキッチリと管理する必要がある」。今いっぱいやっていますよね。PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)とか作ったりしているけど、納期を守れたという話を聞いたことある?

AIなど手段にこだわり目的を忘れる害虫も

イノベーションを失敗させないためには、各段階でデザインレビューとか、ゲート管理をしている。これでうまくいくって本当? 「改革に抵抗する人は『抵抗勢力』である」とかね。遅れそうになるとプレッシャーをかけて「何が何でも納期に間に合わせないと」って「シワヨセ虫」(図内の一番左のイラスト)が出てきたり。

さらに「手段と目的を履き違えるな」と言って、データサイエンス、AIとか手段が大好きな人(=図内の左から2番目のイラストの「モクテキワスレ虫」)が出てきたり。さらに、こういうふうにキッチリ管理すると、念のために(〆切を)守らなくちゃいけないから、サバを読まなくちゃいけなくなる。

イノベーションを失敗させないために各段階で確認されちゃうと、「コストは?」「市場規模は?」「競合は?」と言って、雲の上から「カクニン虫」(図内の右から2番目のイラスト)が来る。「Yes, But……」とか言って出てくるわけです。

どうですかこれ? かわいらしいでしょう? 特に僕が好きなのは「モクテキワスレ虫」なんですけど、「シュダンスキ」という甘い匂いがするので、手段が大好きなんです。もうたまらないんですね。これだけでやった気持ちになって。

「AI大賞」ってあるじゃないですか。何人がAIを使っていると言うので、「それで、儲かったの?」「どういう効果があったの?」と言ったら、「え?」って(笑)。問いに答えられない。


以下のAssumptionは正しいでしょうか?「失敗はつらいもの」「正解は探すもの」。インターネットでみんな探しますよね。さらに「知識を学べば、成果を出せるようになる」。うーん、MBAとか勉強したらいいのか。

さらに「仕事とプライベートのバランスを取ることが大事」。よーく言いますよね、「ワークライフバランス」とか。「ワークライフバランスを(良く)しよう」。なれる? 10回ぐらい言おうか? 

こういうかたちで言うと、「失敗したら減点される」ってなっちゃっているし、「正解は探すもの」というと、「正解はどこ?」って「セイカイサガシ虫」(上図内の左から2番目のイラスト)になる。さらに「知識を学ぶと、成果を出せるようになる」となると、海外の事例を参考にするべきって、「ベキ虫」(上図内の左から3番目のイラスト)がいろんな本を読めと言ったり。

「べき虫」はちょっと頭でっかちな人ですね。若干(セイカイサガシ虫とは)デザインが違うんです。さらに、「プライベートと仕事のどっちが大事?」ということで、「イタバサミ虫」が出てくる。

組織の壁、コストダウン、DX……間違った思い込みの数々


さらに、こういうのはありませんか? 「組織の壁がある」。よく聞きますよね。(その壁を)誰も見たことがない。ツチノコっているじゃないですか。あれを見たことある? みんな信じているんですよ。誰もが知っているんだけど、誰も見たことがないって謎ですよね。

「DXに取り組めば効率が上がる」とか、「予算を増やすと、国民の生活が良くなる」。今何かやっていますよね。予算を増やしたら国民の生活が良くなるって。未曾有のとか異次元の対策で良くなってます? 

「需要予測が当たれば、在庫管理は改善する」も同じ。「AIで予想を当てましょう」とかね。「原価を下げると利益が上がる」。だったら、日本中の企業が儲かっているようになりません? さらに「コストダウンすると会社は儲かる」。あともう1つ、「評価をきちんとすれば人は育つ」。

こんなことをやっていると「ソシキノカベ虫」(上図内の一番左のイラスト)が出てきたり、「DXをやれば仕事の効率が上がる」と思っていると、「デジタル、デジタル」っていうキラキラした羽の「DXアオリ虫」(上図内の左から2番目のイラスト)ですね。これ、キラキラしていたんですけど、なぜか「D」が書いてあるのは腹が黒いからなんですね。これは腹黒い虫なので、ちょっと気をつけてください。

あと、「予算を増やすと、国民の生活が良くなる」と思うと、「もっと! もっと!」と予算を食うような「カネクイ虫」(上図内の左から3番目のイラスト)が出てくる。さらに「ヨソウはウソヨ!」とかいうことになってくる。「この商品は原価割れだ!」ってコストダウンのような「ゲンカ虫」(上図内の右から3番目のイラスト)とかが出てくる。

さらに「もっと安いところで」とコストダウンをすることで、どんどんどんどんリードタイムが延びて儲からなくなる。さらに「評価をすればきちんと人は育つ」ということで、「結果がすべてだ!」とかってやるわけですよ。

どうですか、これ。我々がずっと繰り返してきたことや、信じてきたことって、本当に結果が出たのか疑わしいと思いませんか? でも、みんな結果を出すためにやっているんだよね。手段をやるためじゃないですよね。

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