2024.12.24
「経営陣が見たい数字」が見えない状況からの脱却法 経営課題を解決に導く、オファリングサービスの特長
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尾原和啓氏(以下、尾原):それ、みんなモヤモヤしているところがあると思っていて。個人的に思うのが、それこそ『両利きの経営』のお話じゃないですけど、入山(章栄)先生が『世界標準の経営理論』っていう分厚い本を書いて。あれが2019年のベストビジネスブックに選ばれたりするわけですけど。でも、あの中で一番人気だったのが、センスメイキング理論なんですね。
僕、センスメイキング理論が流行ったことってすごく大事で、要は「センスで、見た方向性で、イノベーションいこうよ」という直感が大事ということを、みんながつかんだことは大事なんですけど。
「センスメイク」って、英語で言われるとみんなわかるんですけど、要は日本語だと「腹落ち理論」じゃないですか。
西山圭太氏(以下、西山):あー、そうですね。
尾原:要は「腹落ちするよね」とか。でも「センスメイク」って言っちゃうと、なんかかっこよく聞こえすぎて……。
冨山和彦氏(以下、冨山):いわゆる日本語のカタカナ「センス」になっちゃうからでしょ(笑)。
尾原:そう、そう。
冨山:あれ「make sense」だからね(笑)。
西山:「俺、センスないな」のほうのセンスになっちゃう(笑)。
尾原:だからみんな腹落ちするところとか、ガッツフィーリングって言い方もしますけど「なんかいい匂いがする方向性にいこうぜ」みたいな。そのぐらいの言葉を……。
冨山:だから西山さんの例で言うと、会社の中にいると、醤油を味噌に換えた時に、社内に醤油味を作ってるやつがけっこうたくさんいたりするから。
そこでうかつに「もう、味噌でいいんじゃね?」って言った時に、社内から当然、醤油味作ってるやつに撃たれるし。「今のところ醤油で飯食ってるんだから、味噌とか言うなよな」っていう気分が支配的だろうし、ベテランからは「味噌味の方がうまいし売れそうだけど、うちは昔から醤油だから醤油道を突き詰めるのが王道だ」なんて言われるんじゃないかな?
あるいはそういう空気に対してセンシティビティが高いということが「日本のサラリーマンとして優秀である」ということに、まぁなっているんで。ここにまさに経路依存性があるんですよ。
尾原:そうですね。
冨山:だから思考上の経路依存性という問題と、社内におけるいろんな意味での既得権なり、あるいはそれぞれが持ってる取り柄みたいなものから生まれる「反対向きのガッツフィーリング」と対峙することになる。
だから僕の本『コーポレート・トランスフォーメーション』で言うと、それまで日本でプロ野球やってきた人がいっぱいいて「これからはサッカーじゃないとお客さん入んねぇぞ、どう考えても」あるいは「これからも野球で食うならメジャーリーグ行かないとダメだぞ」ってなるような話は、まさにセンスメイキングだよね。
だって「どう考えたって、日本の野球よりもみんなメジャーリーグ見てるじゃん」みたいな話になるわけよ。「大谷(翔平氏)見てるじゃん」ってことになっちゃうと、それはそういうセンスが変わっちゃうわけでしょ。
冨山:メイクセンスも変わっていく中で、それを要するにバカッといっちゃって。バカッとやろうとすると、さっきの堀田さんの話で言うと「えーっ」っていう話になっちゃうから。そうすると「しょうがないから、はじっこのほうでショボショボと、なんかちょっとサッカーぽい野球やろうぜ」っていう話になって。
先日のNewspicks Weekly Ochiaiでの落合陽一さんの話で言うと、ウォーターフォール型の、現場でアジャイルにちょろちょろっと「サッカー風に野球をやる」みたいなことで。“DXごっこ”が繰り返される状態に陥るんですよ。
だから結局、それがガチの経営マターにならないのは、そこがチャレンジで。そうなると今度はその個人レベルのトランスフォーメーションが問われることになる。組織の中のあらゆるレイヤー、できるだけ多くのレイヤーの……それは醤油作っている人も含めて「どこまで、今起きていることを同じように共通知を持てるか?」という問題。その共通知があったほうが抵抗は小さくなるからね。
さはさりながら「今、醤油味で儲けている」という現実があった時に、それを乗り越えようと思うと、やっぱりそれは経営サイドのしつこいコミットメントがないと。しつこさが大事で、わりと日本の偉い人って「やるぞー!」って投げて、あとしばらく放置しちゃうわけ。
でもそこから実は、ミドルレイヤーで、ある種の壮絶な権力闘争みたいなことが始まっちゃうから。だからこれはしつこくフォローしないとだめなんですよ。これが意外と、みんな雑だったりするわけ。
尾原:そうですね。だからこそ、逆に冨山さんの前の『コーポレート・トランスフォーメーション』と、この『DXの思考法』の価値って、要は僕たちの経路依存性の良さ、今までの良さもちゃんと認識したうえで、次に作らなきゃいけないものも両方がわかるから、使いどころがわかるというか。ここにこだわる時は「前の醤油味のこだわりは持ちながら、味噌は味噌でやりましょう」って使い分けできることですよね?
冨山:そう、そう。そのとおり。だから西山さんのミルフィーユ部分、あるいは表紙になっているウエディングケーキでもいいんだけど、やっぱりまず大事なことは、そのミルフィーユ構造の中で醤油の部分もあるわけ。
あるいは大量生産対応の、集団オペレーション改善改良が物を言うレイヤーもあるわけですよ。ミルフィーユの中には、三角形のイチゴもあるわけ、伝統的な大量生産モデルでピラミッド型の。イチゴの部分は、それは今、尾原さんが言ったように従来型の改善改良、集団オペレーションで勝負すればいいんですよ。
問題はだから、じゃあこのイチゴが「今の構造の中でおいしいイチゴ」なのか「あまりおいしくなくなっちゃうイチゴ」なのか。あるいはイチゴがおいしくなくなっちゃった時に、違うレイヤーの「パイ生地」にいくのか「クリーム」にいくのかという、そのまさにレイヤー構造の中で取捨選択をちゃんとやっておかないとだめで。それは従来型の製品ポートフォリオの組み換えとは違う、立体的な経営感覚が求められる。
一律イチゴがなければ、一律ミルフィーユもないので。そうすると、まずそれは経営レベルで、要するに「この醤油はうちのコアコンピタンスなんだから、もう醤油はやり続けるんだ。安心せいや」と。だけど味噌もやらないと、これから食ってけないんだから。
そして「味噌は味噌で違うレイヤーのビジネスで、醬油がいるレイヤーとは二律背反じゃないから」そうすると「醤油はもうだめなんだ、もう三角形じゃなくてこれからレイヤーになると消滅するんだ」という恐怖感はなくなる。
だったらむしろそのレイヤー型でやりましょうというのを、ちゃんと経営レベルで判断して。「AもBもある」ということを、ちゃんと組織内で浸透させないと「Bができたら、AはBに殲滅される」と思うから、めちゃめちゃ免疫的に排除反応するんですよ。
尾原:そうですよね。まさに免疫的に、どうしても今までのDXって自分たちを否定されるような気持ちがあるから、免疫として嫌がっちゃうけど。ちゃんとこの『DXの思考法』にしても「今までの経路として『ここは強み』のうえで『次はなに』」っていう話をされるから、免疫が起きにくいので、両方を並列できるって話ですよね。
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