2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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冨山和彦氏(以下、冨山):それからもう1つね、日本人の一部に誤解があって。「ネットベースのビジネスというのは、収奪的で、まさに狩猟的で。すべてを奪い去った後になにも残さない」的な捉え方をするんですよ。
尾原和啓氏(以下、尾原):確かに。
冨山:ある段階、もちろん独占的になると、その危険性はあるんだけれども。実は今、このデジタル化のプロセスの中で起きていることというのは、むしろいろんなものが、循環構造的になってスパイラル構造的になっているんですよ。いろんなことがね。
実はリニアに、なんかどっかにいって、エンドゲームがやってくるというものではなくて。すべてのことがある意味、スパイラル的になっているし、循環的になっていくし。レイヤー化すればするほど、そうなっていくのね。
尾原:水平だから、つながりますからね。あらゆるものは。
冨山:「レイヤーの一番高いところを抑えた人がすべてを収奪する」にはならないから、現実には。レイヤーごとの役割分担ってことになるので。だから、このことがわからないと「GAFAがいるからもうゲームオーバー、諦める」という話になる。それは違うんだよね。明らかに。
尾原:確かに。冨山さんが「GがLを加速する」って言っていることが、本当はミルフィーユになれば、レイヤーごとにそれぞれの生きるプレイヤーが現れるから。広い視点に立てるわけですね。
冨山:そう、そう。僕がずっと「L型、G型論」で言ってた話、この概念も双発パートナーである西山圭太さんに感謝で。これも1つのレイヤーの話なんですよ。
尾原:確かに。
冨山:逆に堀田さんに1つ聞きたいことがあってね。テクノロジーレイヤーってあるじゃない。今度、また違う面のレイヤー論なんだけど、テクノロジーのレイヤーの世界ってありますよね。典型的には、エンジニアリングで、このアーキテクチャーを議論するって、ソフトウェアの。
それと、そのビジネスとか社会のレイヤーってあるじゃない? 「社会的になにをどう考えるか?」というレイヤーがあってさ。それで、今回の西山本(『DXの思考法』)に対する反応って2種類あって、特にエンジニア系の人は。
すげぇ絶賛する人とさ、「こんなこと、俺たちわかってるぜ」っていうネガティブな反応があるわけ。
堀田創氏(以下、堀田):うん。うん。
冨山:「なに当たり前のこと言ってんだよ」みたいな世界でさ(笑)。という人がいるってことは、たぶん彼等の空間では重複していないんだよね、この二つのレイヤーが。この本はまったくもって“社会的レイヤーの本”なんだけど“テクノロジーレイヤー本”として読んで変な反発するのが、自称「デジタル専門家」に少なくない。日本の大学の研究者なんかも、ほとんどこれが重なっていないわけ。
堀田:そうですね。
冨山:だからテクノロジーは語れるんだけど、ビジネス的インプリケーションは語れない。あるいはこっち側にいる人はテクノロジーはブラックボックスになっちゃって、技術は技術専門家がやっていますみたいになっちゃって。さっきの堀田さんの反応って、これ完全に重複したふうな呼び方をしているわけでしょう?
堀田:そうですね。
冨山:堀田さんはもともとエンジニアだからさ。これがこうなっちゃう人とこうならない人(重複する人としない人)が、どこで変わっちゃうのか。逆にどうしたらみんながこうなる(重複する)んだろう? っていう。
堀田:それはおもしろい話なんですけど、僕から見るとけっこう連続系でして。例えば技術のアーキテクチャーって、なんでアーキテクチャーがあるかというと、エンジニアたちが好き勝手やるのを制御するためにあるんですよね。
冨山:なるほど。
堀田:なのでアーキテクチャーって、実は人をマネジメントしてるんですよ。
冨山:あー、そっか。
堀田:例えばGoogleのアドのオークションメカニズムって、あれもアーキテクチャーじゃないですか。あれってソフトウェアで制御してるんだけれど、制御されているのは……制御というか場で放りこまれているのは、実は人であって。Didi(中国のタクシーアプリ)なども同じですよね。
どういうふうにクレジットスコアリングが動いてとか、あれは全部アーキテクチャーじゃないですか。それってすべて数式というか、ソフトウェアとして表現されているので。本来であれば実は連続系であって、ビジネスとテクノロジーで(分離されている)はないんですよね。
このことに対して、むしろその「分離する思考というのが当然」になっていることのほうが問題で。僕自身は、そこが分離されてないというか、濃度はいろいろあるけど全部連続系で虹みたいになってたんですよ。
なんか虹を「無色だ」って割り切るのは、ちょっと違和感があるという話に近い。
冨山:あぁ、スペクトラムなんだよね。まさにレイヤーだ。
堀田:そうなんです。
冨山:逆にその堀田さん自身は、そういう思考法って自然にそうなったんですか? ベンチャーとかやってて。それとも……。
堀田:そうですね。僕自身は、広告ビジネスというのを最初にやったのが大きいなと思ってて。広告ってまさにいろんな人のビッディングというところと、アルゴリズムレイヤーと、その下のさらにインフラとかサーバーのレイヤーが全部、けっこう高度なので。そこそこスペクトラムに見えるというのはありました。
だから逆に言うと、それをソフトウェアだけやっている人というのは、なかなか難しいかもしれない。現実的な話で。
冨山:また、もう1個突っ込むんだけど。これが例えばデジタル系の人間はもちろん、すべての技術、デジタルだけじゃなくてハードウェアなんかもそうなんだけど、そういう人間を作って……。アメリカはそういうやつばっかりじゃん? さっきいったバイオ系でもそんなやつばっかりなんだよ(笑)。
なんと言うか、頭の中が全部一体なのね。頭の中でレイヤー的に一体化、一つのアーキテクチャ化して、どこかで世の中を変えてやろうと思って研究してる。それがノーベル賞とっちゃったりもするんだけど。そういう人間をこの国でもっと作っていこうと思ったら、何が大事になるんでしょうか?
堀田:CTOとかチーフデジタルオフィサーとかの方々が、使われる側じゃなくて「アーキテクチャーというのはビジネスそのものですよ」ぐらいのポジショニングで、きちっと意見を言う文化を作るのが大事かなと思っていて。
やっぱりシリコンバレーのCTOの方々って、どっちかというと「GitHubがどうのこうの」とか言ってなくて、もっとビジネスモデルの正解の話をしているんですよ。
冨山:まるでビジネスパーソンだよ。あの人たちは。
堀田:そうなんですよ。Ph.D.がそういうことをやるっていうことが奨励されている中だから、けっこううまくいくことなんですけど。日本だと、例えばCTOといった時に「技術者をマネージする」。それはビジネスのためにというか、従属関係を作っているのが一番問題で。
これを、その逆にしていく。「アーキテクチャーをデザインするCTO」と「CEO」が、少なくとも対等であるということにみせないといけない。
冨山:そこ、グッドポイントですね。これ、実は最近、私の大元の出身であるリーガルについてもそれを感じていて。要はソフトウェア化して知財化するということは、リーガル自身がビジネスをデザインしちゃうところなんですよね。
ところがやっぱり日本の場合には、リーガルの人というのは、リーガルの閉じた専門家で。ちょっと似た感じなんですよ。
そのリーガル的バックグラウンドの人が「リーガル的にこのビジネスだったら、こういうふうにモデルを変えたほうがいい」なんていうやつは見たことがない(笑)。
アメリカのボードって、それこそ当たり前にJDはいるわ、Ph.D.はいるわ。MBAなんてほぼ最低学歴に近いから、そういうやつがそのボードのまさにCTO、CxO、CFOの中にいて、その場でみんなで議論して決めちゃうじゃん。
だからそのモードに切り替えなきゃいけないということなのかな。
堀田:そうですね。もうちょっと根深い問題で、やっぱりエンジニアってちょっと下請け意識があるというのがあって。たぶんその法律家の話もそうで。
冨山:法律家もそうね。下請け意識があるから。
堀田:そういう意味で言うと「期待されること」に慣れすぎているんですよ。自分たちしか解像度がないことというのを「こんなの期待されていない」というふうに諦めるのが、一番大きい心理的なハードルかなと思います。
冨山:なるほど。じゃあ、もっと“大それろ”と。
堀田:そうです。CEOよりもオーナーシップを持つみたいな。
冨山:なるほどね。大それたことをやるような人間になれということですね。
堀田:そうです。「CEOが望んでないことを言うのがマネジメントの責任だ」というぐらいの気概がないと、だめなんだと思います。
冨山:ある意味、いい意味で全能感を持ったほうがいいですね。
堀田:まさに、まさに。まぁアーキテクチャーデザインって全能感ですから。
冨山:よし、全能感、持とうと。すべての日本人、日本の企業も。
堀田:ですね。
冨山:いいですね。謙虚さは敵だ!
西山圭太氏(以下、西山):そう、そう。だからまさに冨山さんの言われたとおりで。ちょっと戻りますけど、さっきの「世界に発信してみよう」も、結局は同じことで。「特に若いうちは」って表現がいいかはわからないけど「自分で全部できる」と。「世界制覇するんじゃ!」って、まずは思わないことには、これ、話が始まらないので(笑)。
そうなったうえで「やっぱりできない」って順番なんで(笑)。最初から「しません」って始めると、「私はここら辺の範囲でやりますから、ここからは入らないでください」ってやっちゃうと、今後の世界ではいったいなんのことなんだか、ぜんぜんわからなくなるんで。
今、みなさんおっしゃいましたけど。そういうことはやっぱり日本ではなかなか起こらない……今の冨山さんのいろんなこの本に対する評価と関係しているのか、どうかちょっとわからないけど。
やっぱり部門だけではない、ある種の縦割りなんですよね。だから、自分はそっちに手を出さないかわりに、まさか俺たちの領域を……。
冨山:そう。まさに、お互い相互不可侵で(笑)。
西山:俺たちの領域を素人が説明しちゃったりして「お前なんだぁ!?」みたいな。そんなこと言ったら、私が本を書く度にカレー屋さんが激昂しなきゃいけないって話になります。
冨山:(笑)。
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