2024.10.01
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ハーバード大学 卒業式 2018 ドリュー・ギルピン・ファウスト(全1記事)
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ドリュー・ギルピン・ファウスト氏:温かなお言葉ありがとうございます。卒業生、同窓生、そして友人たち。温かく迎え入れてくれて、どうもありがとうございます。卒業生の皆さん、そしてこの日を迎えるために尽力された御両親の皆様に、心からお祝い申し上げます。
(会場拍手)
特に、激励の言葉と存在をわかち合わせて下さったジョン・ルイス氏に感謝致します。
他に例を見ない、雄々しく、無欲で、道徳的に明晰な彼の生き方は、この国の全ての人々に自由と正義を約束し、それが半世紀以上実現し続けられているのです。この舞台で彼の側に立てるのは、言葉では言い表せないくらい、光栄なことです。
私がこの舞台に立ち、28代目のハーバード大学の学長としての就任演説をしたのは、今から11年ほど前のことです。今日これからお話しすることは、人生の最終章にある言葉、文字通り、お別れの言葉です。
私が2007年にお話をした時、就任演説は、何を話しているかを自分でもわかっていない人がするものだな、と思って見ていたものでした。
(会場笑)
今ではとてもそんなことは言えないですけどね。ハーバード大学長として私がどうすべきか、ようやくわかってきたのですから。私は就任演説で言うべきではないことを言い続けたのです。名付けて「鞭では抑えられない希望」です。鞭とは何なのか知らなければいけませんね。
私の心の中では、私が若かった頃のジミ・ヘンドリックスが聞いているんです。体験したか、って。
(会場笑)
私は体験したと断言できます。40年に渡ってハーバード大学の学長を勤めたチャールズ・W・エリオットのようにではありませんが。しかし、11年は結構な年月です。
考えても見て下さい。iPhoneと私、両方が世に出されたのは、2007年の夏。たった48時間で、でした。今やその機器は私たちの生活に欠かせないものとなっていますよね。スマートフォンは私たちの交流方法や関わり方や生き方を一新しました。
今の私たちは、デジタルトランスフォーメーションにおける社会や政治、そして頭脳の崩壊の影響を分かり始めているだけに過ぎません。
2008年に起った金融危機により、私たちの寄付金のほぼ3分の1がその最終損失額となりました。そのことは私たちに迅速に1650年から続く財政管理方式の見直しをさせ、変更を行わさせ、最終的に出資方法と方針が変えられるに至りました。
5年前、私たちはマラソン最中の爆破事件により、新たな恐怖の渦中に居ました。「ボストンよ、強くあれ」の精神で絆を強めました。
ハリケーンに寒波、爆弾低気圧、そしてそれらの同時発生は気候変動に対抗する責任を私たちに課しました。
さまざまな危機的状況に立ち向かい、それを回避して来ました。電子メール危機、霊長類危機、性的暴行にセクハラ危機。そして、その度に有意義な、より良い状態を保って来たのです。インフルエンザやエボラ、ジカ熱、そしておたふく風邪すら抑えこんできたのですから。
私たちは挑戦し続けているのです。生徒たち自らの力強い積極的な行動、「ブラック・ライヴズ・マター」「ディベスト・ハーバード」、「アイ、トゥー、アム、ハーバード」「アンドキュメント・アット・ハーバード」そして、「ミー・トゥー」のハッシュタグなどに感銘を受け、啓発されることも多々あります。
今私たちは、政界と政策環境が高等教育に対してますます門戸を狭め、疑問を呈しているのを目の当たりにしています。昨年の12月に成立した税制改革法により、前代未聞の寄付金税が成立しました。生徒1人当たり$2,000の矯正割当が課せられる見込みです。
本当に、良い試練です。
しかし、今日私が取り上げたいのは、そういった鞭の話ではありません。就任演説で言いたかったこと。即ち、希望の表現式です。
私の心にはいつもハーバードの現在と未来を思う気持ちがあります。過去11年は、高等教育とその可能性における私の信念を強くしてくれました。
希望。それは何も知らないところから引き出されるものではありません。日々の現実、1日1日、この大学を導き、愛するところから引き出されるのです。
機関に対する不信感を募らせ、各大学への攻撃が繰り返されている時に、私の信念を述べさせていただきますと、希望は「かがり火」です。私たちの将来への1番の望みは、私たちが熱望することなのですから。
要となる大学には、未来と希望があります。それは今日私たちが声を大にして言えることです。
希望は学びの礎です。
6989人の卒業生たち、私たちは今日ここに、教育の可能性を、ここで過ごした時間がこの先の人生をどう切り開いていってくれるのかを胸に、誉れを持ってやって来ました。
ラケシュ・クラーナ学部長は常々学内で、変遷、知的な、社会的な、私的な変遷について言及してきました。在校生は経験から自分の進みたい道をはっきりさせ、それを実現するにはどの方向へ向かえば良いのかを早急に見極めなければならない、と。
私たちには望みを実現させる為に、そこに意味と目的に生命を見出だす、生命を息づかせる情熱を見つけ出す、教育を以て世界を良くするという真理に向かって努力をする、という高い志があります。
これまで世界が、卒業生たちをこんなにも必要としたことはいままでありませんでした。卒業生たちもそのことは良くわかっているでしょう。
ここを卒業した何十人もの元生徒たちと1ヶ月ほど前に昼食を一緒にしたのですが、その時にハーバード大学での4年間を表すならどう表現するか聞いてみたことがあります。
彼らは自分自身の変化や成長について話してくれたのですが、それよりも、彼らを取り巻く世界があからさまに変わったということについて話してくれました。
彼らは世の中の健全性と持続可能性を気に病んでいるのです。民主主義と市民社会の健全性について。それから、状況の変化によって彼らの姿勢や計画といったものがどのように変わっていったのかを話してくれました。
今ある世界はもはや当然のものではないのです。私たちの社会の未来、国の未来、私たちの惑星には何の保証もなく、すべて彼らの手にかかっているのだと。
彼らの将来設計と最終目標は、彼らに課せられた大いなる責任を受け入れ、公益に対する義務を果たす為のものに移行していったのです。彼らの力が必要だと気付いたのです。
そのような生徒たちは、暗い現実に立ち向かい、自分自身の人生のみならず、私たちすべてに希望をもたらす黄金の道を鍛造する「錬金術師」と良く似ていると私は思うのです。
私たちが思い描くように、非凡な卒業生たちは傷ついた世界を引き継ぎ、希望と変えてくれるでしょう。しかし、ハーバード時代に彼らが紡ぎ出す未来へ対する希望が溢れていなかったとしたら、生徒たちは違う考えを持っていたでしょう。
教育大学のキャンペーン・スローガンを言い換えると、「世界を変えるために学びに来ている」のです。
開けた世界を構築するのは大学の根本的な仕事でもありますし、研究大学としてのハーバードの本質でもあります。
教授を任命するときに私たちが抱く基本的な疑問は、その人が私たちの世界に対する理解を改め、そして高めるために何をしてきたか、ということです。
彼らはマイクロバイオームの働きや国際的な貿易協定が経済的な繁栄に及ぼす影響や、もしくは必要書類が無い生徒が教育的な挑戦に立ち向かう方法について知らせてくれました。
統合失調症の原因となる遺伝子を特定する道を開いてきましたし、エクソスーツで仕事が出来るようにする方法も発見して来ました。
ハーバード大学の学者は歴史を切り開き、私たちに根本的な正義とは何かを明確にし、独裁政治についての理解を深めさせてくれます。法律と科学技術でもって、謎に包まれている部分に立てた仮説を紐解こうと挑戦しているのです。
今とは違う未来の創造というものに目を向けてみると、すべては物事をはっきりと見て、他者の見解、時には行動すら変えることも出来るかもしれないという望みの上で成り立っているのがわかります。
私たちは、今現在を超えること、物事が変わる時のことをあれこれ想像する、理想主義者の集まりと言えますが、そうではないのでしょう。
過去11年で、私はハーバードの類希な生徒たちや教授陣、それに献身的に支えてくれる職員たちとお互いを影響し合えるという特権によって、日々自分自身を高められて来ました。未来をつくりあげるという決意がなければとても無理なことです。
また、ハーバードが私を希望で溢れさせてくれた別の面は、同じ場所で1つの共同体として、気候変動や、社会や国家を毒する軋轢、真実と理性ある論説のねじまげ、言論の自由の凍結など、世界を分断させ、恐怖に陥れようとする力に立ち向かい、解決しようと共に取り組んだことでしょう。
私たちは、いくつかの点において、自分たちの行いは持続した幅広い努力の象徴だと見ています。私たち自らを生きた研究機関と考える時に来ているのです。
環境問題における調査と責任の手は、私たちの所にももちろん届いています。教授陣は気候対策国際合意をつくりあげる際の、決定的な役割を担っています。再生可能エネルギーを造り出し、蓄える革新的な方法で、 ワシントンから北京までの枠組みの調整に影響を及ぼしたり、気候変動による健康への激しい影響を実地踏査したりして。
しかし、それと同時期に、私たちは自分たちの共同体を、未来を思い描いた時に私たちが持てる希望というものの見本とする努力もしてきました。私たちは温室効果ガス排出を30パーセントに削減し、ゴミを44パーセントに削減しました。太陽光発電では300世帯を賄えるメガワットをつくり出しました。
私たちは身体に良い建材や、計画環境に配慮した清掃方法、残飯処理方を取り入れ取り入れて家を設計する試みで、「ハウス・ゼロ 」を造り上げました。将来的に誰もが建てられるように、コンピューターが根本的な操作性や設計様式など、要所要所に関する情報を作成したもので、中立的なエネルギー構造となっているものです。
私たちは別の方法でも生活実験となる方法を模索しています。
私たちは住居的な教育舞台である、ここケンブリッジに集い、向かい合っていますが、それは教育機器としての共同体だとして考えているからです。
ハーバードはほとんどの生徒の皆さんにとって、これまでなかった環境ではないかと私は見ています。
私たちは経歴や経験、興味の幅の広さ、地理的起源の幅広い多様性、社会経済状況、民族性、人種、宗教、性同一性、性的思考、政治的な展望から、才能あふれるひとりひとりを魅了する努力をおこなっています。
私たちは生徒たちに、違いから学び、お互い教え合い、また彼らがどのような人物でどんな考えを持っているのかを、私たちに教えてくれるようにお願いしてきました。簡単なことではありません。
個人個人が心を開き、思想と論拠が馴染みのないものではなくなるように、長期に渡って持ち続けた憶測に疑問を投げかけるのは、依然不安と混乱が残るからです。
こういった試みは、許されてはいないものの、奨励されているかのような、強い嫌悪や頑な偏見、格差により、社会と政治的環境を分極化させる傾向が強まっている中では困難を極めています。
しかし、そのような環境が取り巻く中でも、ハーバードでは、違いによって価値を高める努力はしても、分裂するために力は尽くしません。
教育共同体という考え方を持続させる為には、私たち自身もまた、違う意味での生きた実験材料とならなければいけないのです。
真実が在り、熟考され、敬意が表された論説や議論が、真実の決定者として供される場所であらなければならないのです。
(会場拍手)
異なる視点に対する受け入れが十分ではなかったため、大学における批判がここのところ高まっています。言論の自由を保護し、育むのは、私たちの基本的な公約であり、特に、政治的に敏感な格差社会においては、注意と警戒を怠らないようにする必要があります。
制御されない、制御できない不協和音。それは大学を表します。時として、当然ながら私たちは、この共同体に居る全ての者に対して寛大に耳を傾けられるわけではないのです。
しかし、そのことがより一層の努力の引き金となるのです。
秘密や、快適で知的な正統派的信念に浸った考えは、真実と証拠からかけ離れた考え方です。そして、そういった考えは、私たちが出す、新しく、より良い考えを遮断します。
(会場拍手)
私たちは、真実というものは単に主張したり要求したりするものではなく、証拠と議論に基づく試行錯誤を経て確立されなければならないのだ、という信念に身を投じなければならないのです。
真実は、私たちが行うことすべてにおいて、ひらめきと熱意を与えてくれます。そして、未来へと導いてくれます。それが、先を見通す力と、より完全に理解する力、そして自分自身と世界を向上させてくれる力となるのです。
希望が真実を追究する力を与えてくれるのです。
真実を伴った希望は大学の神髄です。私は望みます。私たちが行なってきた、人類に違った生き方や共に成し遂げる思考力に隠された希望、私たちが取引する通貨の案や発見にある希望、今日の卒業生たちの中にある光り輝く未来への希望を。
ハーバード大学学長という立場からは慣れたところから言いますと、私は希望と言うものの根本的な資質に目覚めています。
希望が、まだ仕事は終わっていないとほのめかしているのです。働きが、目標には達していないと。未だ見ぬ、実現出来ていない可能性があると。
希望とは挑戦です。
私は最愛の師、元ボートコーチの故・ハリー・パーカーが漕手に言った言葉で、わたしが良くキャンペーンで引用していた言葉があります。「今の姿があなたのすべてだ。このままでいいのか?」
私がハーバードに残したい言葉があります。やるべきことは終わっていません。解決しなければならないことは、今まで以上に難しくなっているでしょう。
私たちが出来るという希望と、成し遂げるという揺るぎない決断力で、挑戦し続けられますように。
ハーバードが聡明であるほど賢明で、誇りに思うほど活動的で、思いやりがあるほど大胆で、古いほど新しいもので、偉大なほど良いもの、でありますように。
ありがとうございました。
(会場拍手)
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