2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
Why Aren't Commercial Jets Getting Faster (全1記事)
リンクをコピー
記事をブックマーク
ハンク・グリーン氏:旅客機はたいへん便利で高速な移動手段ですが、その歴史を鑑みると、ちょっと不思議なことに気がつきます。
1952年、最初の旅客機として就航した「デ・ハビランド DH.106 コメット」は、時速950キロメートルでした。
次に登場したソ連のツポレフ104の最高速度は時速950キロメートルでした。
1958年に登場したボーイング707の最高速度は時速965キロメートルでした。
これらの記録は全て、現在の旅客機とほぼ変わないものです。では、なぜ旅客機は、60年以上も最高速度が更新されないままなのでしょうか。より高速な飛行はできないものなのでしょうか。
その犯人探しをしたいのであれば、責めを負うべきなのは、エンジニアではなく大気中の分子です。速度の上限の謎を知りたいのであれば、まずは旅客機の翼の仕組みをひも解いていきましょう。
翼の端を切り取って断面を見ると、ひしゃげたティアドロップ型であることがわかります。この形状を「翼型」といいます。この形状が、機体に揚力を与えます。
機体が前進すると、空気の流れが翼の上部と下部に生じます。このティアドロップ型の形状により、空気の流れには2つの異なる領域が生じます。翼の下部には気圧の高い領域が、翼の上部には気圧の低い領域が発生します。
端的に言えば、気圧の高い領域の空気が、下から上に向かって翼を押し上げることにより、みなさんは機体の中でくつろぎながら、無料のプレッツェルのパックを堪能できるのです。
さて、今回の主題について重要なのは、揚力ではありません。揚力を発生させつつも、機体は時速何百キロメートルもの速度で、前に進んでいます。つまり、空気は気圧の高低差を生じるだけではなく、超高速で翼を前に運んでいるのです。
ここで重要なポイントです。低い気圧下では、気流の流れる速度は上がります。つまり、旅客機は、音速の4分の3の速度で進んでいますが、翼の上部を前方へ流れる大気の分子は速度を上げ、音速の壁をも超えるのです。こうして、旅客機は前進します。
さて、先行の大気の分子は音速の壁を越えますが、後続の分子はそうではありません。分子は均一の状態に戻ろうとする性質があるため、音速に達した先行の大気分子は、すぐに周囲の分子に合わせて速度を落とします。この音速と音速以下の速度の境目では気圧差が生じ、局所的に「衝撃波」が発生します。有害な現象のように聞こえますが、そのとおりなのです。
衝撃波の後方には空気が広がって行きます。この拡散により、機体が本来得られるはずであった揚力と推力が、エネルギーとして消耗されてしまうのです。これは「造波抵抗」という働きで、機体のスピードを落とすため、同じスピードを維持するには大量のエネルギーと燃料を消耗します。普通、空気中を前進する物には何らかの抗力が発生しますが、造波抵抗はまったく異なる問題なのです。高度10キロメートルにおける造波抵抗は、時速850キロメートルから1300キロメートルにおいてひときわ大きくなり、ちょうど音速で最大に達します。
旅客機は造波抵抗を生じない範囲の最速で航行するよう求められます。そのため、旅客機の最高限度の速度は、50年代と同様、時速800キロメートルから950キロメートルということになるのです。
とはいえ、この法則にも抜け道はあります。時速1300キロメートル以上であれば、機体周辺の気流は安定するため、造波抵抗を懸念する必要はありません。
1960年代後半、流線型の未来的なデザインで颯爽と空に現れた旅客機コンコルドは、これをうまく利用しています。コンコルドは音速の2倍で飛行が可能であり、ロンドンを午前9時に発ち、同日午前7時半にニューヨークに着きます。
当然のことながら、これには時差の影響も含まれますが、やはり相当なスピードであることは確かです。とはいえ、克服が困難な問題を多々伴っていました。
コンコルドが速すぎて、進路上の空気が素早く避けられないのです。空気は、機体周辺で圧縮され、熱を帯びます。これは大きな抗力を発生し、相殺には膨大な燃料が要されたのです。
コンコルドが大西洋を越えるのに必要とされた燃料は、乗客一人当たり1トンにも及びました。そのため、往復航空券は、現在の価格に換算すると、実に5千アメリカドルに相当したのです。
航空機の開発には膨大な資金と燃料の消費を要するため、5千ドルの航空券であっても採算が採れず、コンコルドは2003年に最後のフライトを終えました。
造波抵抗を克服する技術的なブレイクスルーを開発しない限り、近い将来においても時速950キロメートルが上限となることでしょう。
とはいえ、これで終わりではありません。今日においては、スピードではなく効率の向上を目的とした新型エンジンが開発されており、よりお手軽な価格で地球にも優しいフライトの実現が試みられています。ロンドン―ニューヨーク間を4時間で飛ぶことはできませんが、少なくともお財布にも地球にも優しいということは、長い目で見れば、とても良いことですよね。
関連タグ:
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには