仕事漬けなのに生産性が低い日本

ヴィランティ牧野祝子氏:海外の方を見ていると、みんながみんなじゃないですが、平均的に仕事に必要以上に時間を使っていない。でも、生産性が高く幸せ。ここで言っているのは、個人の生産性というよりも、チーム、会社、国、全体を見た時の生産性になります。

日本(のビジネスパーソン)は仕事漬けで、生産性が国として全体的に低く、不幸せだと。「これは何が違うのかな?」と見た時に、違いは「仕事の速さ」にあるのではないかなと思いました。この「神速時短サイクル」を、今回(書籍で)言語化させていただいたんですけれども。20年ぐらい前から、いろんな人と仕事をしている中で、少しずつ身に付けてきたものなんですね。

そしたら何が起きたかと言いますと、30代後半から40代ぐらいの時に、「祝子にこれを渡しておけば、なんとかなるよね」みたいな感じで(笑)。不可能に思えるプロジェクトが降ってくる状態になりました。

それをスピーディーにさばくことができたので、「不可能なものも、祝子に渡しておけば可能だよね」とおっしゃっていただきました。その後に起業して、まずコーチングをやってみようと思って、今ではそういったプログラムを持っています。あと法人研修をさせていただいたり、養成講座を作ったり、本を2冊出させていただいてTEDに出たり。いろんなことをさせていただきました。

時間に関する悩みやムダをなくす

何よりも、受講生の方々に「こうやったらいいんじゃない?」とお伝えさせていただいた中でまとまったのが、この本なんですけれども。「思いがけずにスピーディーに昇進できたよ」とか、「ゼロから起業できた」「短期間で転職ができた」とか。「悩む時間が減りました」ということを、すごくおっしゃっていただいたんですね。

最初は「あ、そうなんだ」と思って聞いていたんですけれども、「悩む時間を減らす」というところに、先ほどの楽しそうにうまく回している外国人と、「うーん」って悩んでいる日本人の差があるのではないかなと。ここがヒントになるのですが、悩む時間が減って、気が楽になる仕事の仕方をお伝えしたいなと思います。

この「悩む時間」ですが、私の場合、以前はすごく悩んでいたんですね。例えば、「私のこの仕事のやり方でいいんだろうか?」とか、「上司がフィードバックをくれない」とか。だんだん不安になって悩んでしまって、それだけで脳のメモリーを取られちゃうというか、他のことがぜんぜんできなくなってしまいました。

後から、「結局何でもなかった」とわかるんですけれども。そんなムダな悩みを持つのは非常にもったいないので、そういった時間を減らすことができたらいいのではと思います。

ということで、私が海外で出会った方(から学んだ)、楽をしているように見えるのに、成果が出て、プライベートが充実する方法をお伝えさせていただきたいなと思います。これでみなさまの人生、お仕事がより楽しく、豊かになったらうれしいです。

(スライドに)「個人でがんばる日本の時短」と書いてありますね。時短の本っていっぱいあると思うんですけれども、多くは、一人ひとりの生産性にフォーカスしていると思います。私の方法は、チームでサクッといくようなグローバル時短になります。それによって、時間に関する悩みやムダを減らすものです。

世界の一流がやっている時間の使い方

では、こちらの「神速時短サイクル」についてご紹介させていただきたいと思います。先ほど申し上げましたように、グローバルリーダーの方々の時間の使い方をまとめたものです。

彼らは何が違うかと言うと、1人で悩んでないんですね。1人で抱え込んで悩む時間を減らし、たくさん休みながら、周りを巻き込んで行動する。このあたりがポイントかなと思います。なので、「1人で悩まない」。そして、「休み時間を取る」。それから、「周りを巻き込む」。

それをすばる舎の方ともご相談をさせていただきながらまとめたのが、こちらの「神速時短サイクル」となります。

これは右上からスタートしていて、「開示」「選択」「決断」「行動」をぐるぐる回していくと、スピーディーに仕事が回ります。そうすると、余った時間でお休みが取れるカラクリになっております。こちらのサイクルについて、お話しさせていただきます。

右上の「アウトプット」からスタートするんですけれども、みなさまは、お仕事をしている中で、ご自身の思いや考えを伝えていらっしゃいますか? 私が日本でミーティングに出た時、終わった後に、「あれについてどう思う?」と言ったら、「いや、私は実はこう思います」って開示をされる方がいるんですね。

「それだったら、ミーティング中に言えばよかったのに。今の1時間は何だったんだ?」と思うんですけれども。こんな感じで、思いや考えを伝えながら、お仕事をされていらっしゃいますでしょうか?

あと、海外で仕事をしていると、「やること」だけではなく、「やらないことを決めよう」とすごく言われました。例えば上司と一緒にチームでブレストをして、「これもやろう」「あれもやろう」「それもいいね」となっていると、「それは本当にmustなのか?」「nice to doじゃないのか?」「やめることはないのか?」と何度も聞かれたのを覚えております。

生産性やエンゲージメントが上がる仕事の進め方

あと、「決断」ですね。日本の会社はいろいろ根回しをしたり、いろんな人に話をしたり、はんこをもらったりして、なかなか決断しないというのは、海外では良くない事例として有名なんですけれども。その裏には「ちゃんと決めたい」とか「リスクを回避したい」とか「すべての情報を集めたい」という、いい面もあると思うんですね。

ただ、それをしていると、今のスピーディーなグローバルビジネスの世界では、ちょっと難しいかなと思います。なので今ある材料に基づいて、とりあえず決めちゃうことも大切かなと思います。これが「決断」です。

「行動」なんですけれども、1人で行動するのではなく、周りを巻き込む。よく海外の会社って、特にアメリカでは、一人ひとり勝手に仕事をしていて、日本のほうがチームプレイで和を大切にしているイメージがあると思います。

(海外で)実際に仕事をしていますと、例えば夜の飲み会とかはなくて、勝手に帰っていくんですが。チームワークという意味では、けっこう他のチームと話したり、根回ししたり、一緒にやっています。

例えばプロジェクトがスタートする時には、必ずいろんな部署から人を呼んできて、キックオフミーティングをやります。そんな中で孤立しないで周りを巻き込む仕事の仕方を、私は海外で学ばせていただきました。

行動を起こしたからこそわかることってあるので、「それでどうだった?」って開示して、「次はこうやっていこうね」って話し合いながら、ぐるぐる回していく。そうするとスピーディーに仕事ができます。開示して思いを伝えて、「こういうのをやろう」「ああいうのをやろう」っていっぱいになったら、「本当にやらなくちゃいけないことはどれ?」と、チームでやらないことも決めて、(やることを)狭めていく。

みんなで「どうしていく?」というのをどんどん決めて、「一緒にやっていきましょう」と、巻き込みながら仕事をしていく。実際にやった後で「あそこはああだったよね」「私はこう思ったよ」と開示して、次はまた改善して、さらにいいやり方で仕事をしていく。

これをぐるぐる回していくと、楽しくみんなを巻き込んでいって、生産性やエンゲージメントが上がっていくんじゃないかなと思います。

上司が休むことで、チームにもいい影響がある

海外の方々は、ある意味無理に休みを取っているような人もいます。もちろん、仕事をする人はすごく(たくさん)仕事をするわけですね。イタリアでは、北側の人はすごく仕事をしていて、南イタリアになるとみんな休んでるみたいな、冗談のような冗談じゃないような話があるんですけれども。

私の主人や家族は、けっこう仕事をする人たちなんですが、それでも夏休みは1ヶ月とるんです。休みを取ることは本当に時短につながるんじゃないかなと考えております。例えば、私がお世話になったユダヤ系のアメリカ人の上司がいたんですけれども。彼とオープニングのプロジェクトを、どんどん(経済が)伸びている中国でやってて、すごく忙しかったんです。

ある時その上司と話していると、「僕、再来週から休みだから」と言われて、「え!? 今のタイミングで休んじゃうの!?」みたいなことがあったんですね。

だけど、「今休まないともうだめだから。必要だから」って感じで、2~3週間だったり、1ヶ月、時には数日のミニバケーションだったりするんですけれども、休みに行かれていました。「それをやらないと僕は潰れちゃうから」「これをやることによってリフレッシュするから行ってくるよ」と言うんですね。

そういった時には、「だから君たちよろしくね」と、そのぶん私たちに任せてくれるんです。「メールは見ないから、なんかあったら携帯にチャットでメッセージをくれたら返すよ」みたいなことを言われて。そうすると、(その上司は)マークさんって言うんですけど、マークさんに迷惑をかけるといけないから、こっちも考えるわけですよ。

チーム同士で「マークがいないからどうしようか」と言って、結局解決したり。それで任せてくれたことで、こっちが責任を持ってステップアップして、成長できたりとか。

上司が休むことで、チームにとっては時短になったり、良くなったりするんです。そしてそのマークさんも、リフレッシュしてめちゃくちゃ脳が冴えて帰ってくるので。そんなふうに時短をして仕事してきました。こちらが神速時短サイクルですが、いかがでしたでしょうか。