2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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長谷川聡氏(以下、長谷川):私もちょっとしゃべっちゃったので、Q&Aも含めてあと18分しかなくなってしまいました。ちょっとここから巻いてください。私もさっさと終わらせます。
私は、今、ユビキタスAIという会社の代表取締役をさせていただいております。
バリバリの文系で最初に金融に入り、それこそ若宮さんの部下でした。さっきお堅い審査部門の話がありましたけど、2年間は毎日決算書を読んで与信審査をして、経営を学ぶことができたかなと思っています。
それから決済に行って、ちょうど1995年に、日本でもいろいろな事業者がやり始めましたが、インターネットの新規事業の会社に転職しました。それからはずっとテクノロジー側の会社で働いているので、金融で働いていた時より、テクノロジーのほうがずっと長い感じです。
今、お話ししたように、ターニングポイントはWindows95が発売されたこと。特に特別なソフトがなくてもOSベースでインターネットにつながるようになりました。その時「お金が、リアルマネーじゃなくなっちゃうんじゃないかな」と。それこそ、現金取引から電子決済、スマートカードに変わるんじゃないかなというのがあって。
「ちょっとこのまま金融にいてもまずいんじゃないかな」という時に、お隣の若宮さんが上司だったんですけど、止めることなく背中を押してくれて。あとで(若宮さんは)社長に怒られたらしいんですけれど。そんなきっかけがあって、テクノロジー業界で仕事をさせていただくようになりました。
私の社会人の基礎は金融です。最初に金融で仕事ができてとっても良かったなと思っています。経営者になるための基本は、ここで叩き込まれたなと考えています。
その次は、ベンチャー企業への転職でした。ここからもうずっと、新規事業ばっかりさせていただいていて。当時、海のものとも山のものとも、どうなるかわからないインターネット事業の立ち上げに関わらせていただいた後、スタートアップに移りました。当時はスタートアップなんて言わないですね、ベンチャー企業です。
それこそ社長と私以外、全員エンジニアみたいなところでした。9カ月後には資金がなくなって、「長谷川くん、お金がないんだけどどうしよう」と言われ、そこからなんとか復活させる経験をしました。金融をやっていたこともあって、資金調達や新規事業の立ち上げもさせていただいています。
今はテクノロジー。組み込みソフトウェアと書いてあるんですけど、ちょっとITではないんですよね。電子電気機器を作るために必要なソフトウェアの開発をしている会社で、社長をさせていただいています。
まさに今日、こういうステージでモデレーターさせていただいているのは、いろいろな出会いがあったから。かつ事業のマイルストーンでは、個人的なメンターをはじめ、ここにいる方々が、社内外から事業の支援をしてくださり、作ってできた物をそのまま商品にさせていただく商品開発を一緒にさせていただいたり。
そういう出会いがあって、会社自身も自分自身も成長してきたかなと思っております。簡単ですが、私の自己紹介でございます。
じゃあ、ここからどうしましょうか。あと15分を切っていて。本来は自己紹介は3分ぐらいで、さっきのテーマを話してもらうことになっていたんですけど。まあ、みなさんのお話の中にテーマの内容は入っていたのかな。
何がテーマだったかを、ババババッと振り返ります。
新規事業の苦労の話はしてもらいましたよね。みなさん、新規事業と関わる中で本当に苦労されています。そしてスタートアップへの投資も含めて、標準化、外部とのコラボレーションをされてきている方々です。
あれ、竹林さんは今まだ社外取締役をされている?
竹林一氏(以下、竹林):他社さんの社外取締役もやっています。
長谷川:そうですよね。園田さんは、まだバリバリ現役なのでやっちゃいけないとか?
園田剛男氏(以下、園田):いやいや。
長谷川:そんなことはないんですか?
園田:そんなことはなくて、いくつか掛け持ち。お金はもらっていませんけど。
長谷川:児堂さんはどちらかというと、子会社の経営に関わっていたのかなと思うので、(テーマのポイントの)最初の2つもだいたいお話いただいたかな。これから話していただくのは、ここかな。
製造業にこだわっていただく必要はないかなと思うんですけど、みなさんから見て「これからどういうスタートアップの方たちと一緒に仕事してみたいか」を、ちょっとお話しいただくのはいかがでしょうか。よろしくお願いします。
園田:JVCケンウッドという会社にこだわらずですけど、「誰かと一緒になにかおもしろいことやろうぜ」と言った時、個々、企業、どういう単位でもいいんですけど、「やりたいと思っていることに夢中になれるだけの絶対的な強みがある」ことは、たぶん絶対条件だろうなと思います。
ここにいらっしゃる方々は、なにがしかにめっちゃ秀でた力を持っているのは、間違いない事実。これをどう融合させていくのか。いろいろな経験値や力量みたいなものが融合するんだろうなと思います。
その時たいてい失敗することもあるし、(失敗は)多いですよね。僕もいっぱい失敗してきました。ただ、失敗を失敗と実は思っていないところがあって。結果としてうまくいかなかったんだけど、自分の中で失敗だとは定義していません。
1つの事例でいうと、僕は技術屋でいろいろな技術開発をやってきて、世の中に花が咲かなかったもの、自分の商品に組み込まれなかった技術はたくさんあるんです。実はそういう技術を箱に入れて、机の引き出しに隠しておくことはしてないんですね。
技術とは、テクノロジー、テクニック、ノウハウ、何でもいいです。これは組み込みだけじゃなく、サービスやいろいろなところに通用する言葉だと思います。きっと誰かの役には立つんだと思うんですよ。だから、もう思い切って知的財産として、外に、人にあげちゃっています。
長谷川:ありがとうございました。いっぱいいただきました。
園田:本当にいっぱいあげましたけど。だから、使ってもらわないと意味がないねという。いろいろな立ち上げをやっていく時、波長が合う組み合わせがあると思っています。それを大事にしながらやっていくと、おそらく確率は高くなる、少し上がるんじゃないかな、と実は思っています。
僕自身も、今、M&Aでデューデリ(適正評価の手続き)をいっぱいやっていますけど、まあ所詮人間なんで「馬が合わないとうまくいかないよね」という本音があって。じゃあ、その「馬が合うとはどういうことよ」というのは、何事にも出口戦略をちゃんと持って、しっかりどこかにアウトプットを出している。この継続が大事なんだろうなと。
僕はまだ経営の一端を担いでいますけど、そういう目線でいろいろな方々と会話させていただいています。この中にも、もしかしたら将来、なにかでハンドシェイクする人がいるかもしれません。そういう機会を期待したいなと思います。
長谷川:(園田さんは)15年、20年、ぜんぜん変わらないですよね。前職の時もお金を出していただいて。商品にならなかったけど、お金を返さなかったり。別でちょっと儲けさせていただき、今の会社も上場するきっかけを作っていただきました。
園田:そうですね。
長谷川:お金をもらって、いろいろとさせてもらいました。
園田:はい。貢献させていただいております。
長谷川:ありがとうございます。みなさん、順番に回しませんので、どんどんマイクを取って話してください。
竹林:じゃあ、このお題に対して、起承転結で考えたらどういうことかという話です。僕もエンジニアなんです。ホンダ創業者の本田(宗一郎)さんやソニー創業者の井深(大)さんは、「起承」側なんですよね。
「転結」側できっちり経営を担ってくれる、番頭さんとして(ソニーの)盛田(昭夫)さんや(松下電器産業)の高橋(荒太郎)さんがおられるんですが、みなさんが今、どちらに困ってるのかなという話なんですよね。
精緻化された経営に困っているのやったら、「転結」型のメンターや役員が確実にやってくれますわ。まだ「起承」のところを練っていくねん、世界観を作ってほかの方々を巻き込んでいくねん、であれば、そっち側のメンターが必要になってくるんですよね。僕はそこだと思うんです。
今、僕は京大で、エフェクチュエーション(優れた起業家に共通する思考プロセスや行動様式)を教えています。「世界中の連続起業家がどうやって成功しているか」という成功のパターンを研究しております。
自分が何者で、損失の範囲はどの範囲で、誰と知り合ったか。誰と知り合ったかによって、使える資源や目指すべき目標が変わってくるんです。これを回すことによって、例えば連続起業家(が生まれる)。さっきのAppleを立ち上げた人たちが精緻化されたマーケティングをやったかって、やっていませんから。だって市場がないんで。
もう1つのパターンが、大企業がよくやるコーゼーション(目的からの逆算で意思決定する手法)。きっちりマーケティングして、セグメンテーション(市場細分化)を分析し、事業計画を立て資源を投入する。目指すべき市場の状況によって、ちょっとやり方が変わってくる。一律にきっちりマーケティングをやるのか。
例えばおいしいラーメン屋を作る時に、大企業が何をやるかというと、おいしいかどうかわからへんのに、チェーン展開の話ばっかりしますからね。
まず「おいしいラーメン作ろう」やったら、友だちの店舗で「昼間だけ貸してくれ」と言って、おいしいかどうかを試す。必要やったら、そこのメンターや社外取を入れたほうがいいし。自分たちがどこに置かれているかで(考える)。
あと経営スタイルも、かつてのMBAのマーケティングだけじゃない。理論だけじゃないんで。これをわかった上でどっち側をサポートしてあげるかは、お話しさせていただくことができるかなと思いますね。
長谷川:ありがとうございます。あと6分。ちょっと予定調和的になっちゃいましたけど、順番でお願いします。
児堂義一氏(以下、児堂):実際にアピールできるものが、非常に尖った技術であることが、もう根本ですね。さっきの大企業とのコラボは、大企業もやりたいことがあっても、もう純粋に、みなさんがやっていることを支援したいと思うかどうか。尖った技術を持っているかどうかです。
最近、AIがすごくポピュラーになっています。例えば「起業して3年間、ひたすら化学合成だけをやってきました」となると、最初は尖ってないんだけど、3年もやると尖ってくるわけですよね。
そうすると、その後のマネタイズや企画は支援できるポイントです。それはまた、得意な人にやってもらえればいいことなので、最初の本当に尖った技術を作るところが、私が一番重要視するところですね。
若宮正子氏(以下、若宮):私がメンターになるんじゃなくて、メンターの方をお願いするとすれば、どういう方かというと。新しい物も古い物もちゃんと自分なりに消化して、発酵させて、英知というか知恵みたいなものをお持ちの方であれば、どんな方でもいいからお願いしたい。
そして、たまたま私の条件に合った方が、若い方か、高齢の方か、女性か、男性か、あるいは外国の方か、体が不自由な方か、そんなことは関係なくて。そういう方がいたら、ぜひメンターなり社外重役になっていただければと思います。以上です。
長谷川:ありがとうございます。あと3分あります。どなたか1人だけ、もしご質問など聞きたいことがあったら、いかがでしょうか。どうぞ。
質問者:すみません。ありがとうございました。我々スタートアップ側からすると、大企業側の方と連携したい一方で、コネクションがない方が多いと思っています。
どうしたら大企業と連携できるのか。また大企業は、どういうところを求めているのかを教えていただけるとうれしいなと思います。
長谷川:みなさん、簡潔に一言ずつよろしくお願いします。
園田:そういう意味では、(コネクションの)場はなかなか難しいですよね。今流行りのソーシャルネットワークを上手に使ったほうが得だなと思っています。
企業側も今一生懸命がんばっています。非財務指標と言われている人的資本や知的資本、「こんなことをやって失敗しました」というものを、積極的に統合レポートで出すようにしています。最近上場企業のホームページもカラフルで読みやすくなっていますので、ちょっと渡っていただくと、いろいろ貼っていけるところが出てくるんじゃないかな、と思ったりもします。参考までに。
竹林:うちの場合だと、CVC(事業会社から社外のベンチャーに対して行う投資活動)を持っているんですよね。CVCが起承転結の「起」の役割をしてくれているんです。僕がゼロイチでものを考えていることはないんですよね。世界中から次に何が生まれてくるんや。その時に、みなさんがどれだけ発信されているか。発信されていなかったら会わないんで。
偶然こういうところで出会っていくのもあるんですけど。僕らがやりたい領域で何が起こっているのか。僕自身は社内のアセットを分かっていますから、(みなさんが)発信していただければ、「承」として「転結」とキーマンと結びつけることができるかなと。そういう仕組みも企業内で作っていければなと思っています。
児堂:村田製作所の場合、ハッカソンやクラウドファンディング。またホームページを見に行くと「オープンイノベーションをやりたいんです」と、実際にその担当の方がインタビューに答えて話していたりします。どんどんきっかけを捕まえて、もう当たって砕けろですね。がんばってください。
若宮:私は、みなさんと同意見です。
長谷川:時短にご協力いただいてありがとうございます。ご質問もありがとうございました。
やはり人のつながりだと思うんですよね。みなさんから見ると(ご登壇者の方々は)年齢が高く見えるかもしれませんが、実は見た目だけなんですよね。我々がなんで今回このセッションを決めたかというと、SNSのメッセンジャーで「こんなのをやるんですけど、ちょっと協力してもらえませんか」と。それだけです。1つの人のつながりが、わらしべ長者みたいに、たぶんつながっていくんだと思います。
今日、私の知り合いの方が何人かいらっしゃるんですけど、私のFacebookからたどれるので、この後すぐに(Facebookで)申請していただき、僕の知り合いということでつながってみてください。絶対OKだと思います。
最後まで聴講していただき、どうもありがとうございました。今日は名刺交換し放題なので、この後知り合いになりたい方がいらっしゃれば、10分、15分はあるそうなので、個別に質問していただければなと思います。
今日は最後までお聞きいただいて、本当にどうもありがとうございました。IVS2023 KYOTO、みなさん楽しんでください。始まったばかりです。どうもありがとうございます。
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