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経営者力診断スペシャルトークライブ KX カイシャ・トランスフォーメーション~今、求められる“社員を主語にする経営”とは?~(全5記事)

社内有志によるゲリラ戦はNG、盛り上がり始めると抵抗勢力… 日本企業8社での変革実験プロジェクトで気づいたこと

経営者やリーダー向けに、「経営」「マネジメント」をテーマとした各種セミナーを開催する経営者JPのイベントに、「人生の主人公として『100年ライフ』を楽しめる社会へ」をビジョンに掲げるライフシフト・ジャパン株式会社の大野誠一氏、豊田義博氏、そして野田稔氏が登壇。「KX=カイシャ・トランスフォーメーション」をキーワードに、「KX部」の活動事例や、実験プロジェクトで気づいた「KXあるある」などが語られました。

会社を変えるための、5つの段階を通じた実験

豊田義博氏(以下、豊田):現場の個人の方も、(主体的に動きたいという)思いは持っているんだけどどうしていいかわからないまま、立ちすくんでいる方も多いんだろうなという感触は持っていて。例えば7割のマイナスの人がみんな諦めてしまっているのかというと、ぜんぜんそうではないし。

逆にマイナスの層の中にも、「もっと良くしたい」という期待値が大きいからマイナスの方もたくさんいらっしゃる。そういう実態は絶対あると思います。

コンセプトだけで言ってもしょうがないので、KX運動を実験的にやってみようと、いくつかの会社の中にいる「やってみたい」という方に集まっていただいて、ちょっとした実験をやってみたんです。その実験の話をシェアした上で、企業から参加されているみなさんにもコメントいただければと思います。

最初に大野さんから、KX部というキーワードがありましたが、いろんな会社がつながって、いろんな思いを持つ、KXしたい人たちが集うKX部という企業横断の部署を作って、そこで実験プロジェクトを行いました。

この(スライドの)5つの段階(①火を灯す②心の中を映し出す③ありたい姿を描く④旅に出る⑤振り返る)での実験を試みたんです。

この5つのステージを少し具体的にお話します。

「ありたい姿を描く」や「心の中を映し出す」の中で、KXメガネという聞き慣れない言葉が出てきますが、この説明を先にしておきます。

先ほど、インデックスをご紹介しました。マイナス100から100に分布をする。日本の平均値でいうとマイナス15.9でしたが、一人ひとりが自分はどこにいるかを確認できるようなセルフチェックツールを作りました。

自分の心の中では、スコアがどれくらいなのか。わがままセントリックの状態はどうか。旅の仲間バラエティの状態はどうか。自分自身を見られるようなツールですね。Webで簡単にアクセスできて、結果が飛んでくる、シンプルなものです。

これを材料にして、最初にKXの世界観を理解してもらった上で、KXメガネを一人ひとりにかけてもらう。例えばチームでやってもいいですし、部署横断で、会社の中のいろんな有志の人たちが、いろんなかたちでやってもいい。

例えばこの人のスコアはマイナス27です。

ここ(診断結果のスライド)に5つほどカードが出ています。自分自身はどういうことをゴールにしたいのかも抽出するような構造になっています。

この人はたぶん、わがままセントリックに関する想い入れがわりと強いんでしょうね。いくつかのものを実現していきたいと思っているのが見えてきた。この結果をもとに、ワークショップをして、それぞれがどんなゴールを目指したいのかを議論しました。

中堅パーツメーカーにおけるKX部の活動事例

豊田:KXの活動の中では道具という言葉を使います。具体的に旅に出ようと言った時に、どういう道具を使うと、この思いが実現できるのか。具体的なアクションツールを作っています。そういう道具を使って何かをやってみた結果、自分自身の中にある心の会社はどうスコアが変わったのか。

この実験プロジェクトに手を挙げていただいた方が8人いらっしゃいました。具体的にどんな活動になったかを2つほどご紹介します。

S社は中堅のパーツメーカーで、未来を語ろうという部門横断のコミュニティを形成して活動されていました。

アクションプランを模索される中で、KX部の活動に興味を持っていただいた。積極的に参加いただき、いろいろ話をする中で「実験、どうですか?」とお誘いしたら、「やってみたいです」と手を挙げてくださった。

このコミュニティは毎月開催されていたので、ある月にお邪魔して、「KXはこんなビジョンです。やってみませんか」とお話しし、参加者の皆さんにKXメガネをご案内して、翌月ワークショップをしました。それぞれがどんなことをしたいのかをその場で宣言いただいて、3ヶ月後にまた集まって、KXメガネをかけてもらって、どんなことがあったかを議論しました。

この会社の中で最低スコアの方が出ました。マイナス73点。「私の職場、本当にダメダメだ」と思っている方がいて、でもこの方がとてもすばらしいアクションをされました。

この方は製造部門の方だったんですが、この会社は営業と製造の部門間の壁がどうやら大きかったようなんです。ですが、対話の機会が生まれて、相互理解が進みました。部門のKXスコアの平均にも影響があるぐらいのインパクトです。そんな活動が生まれたり、いろんなKXのアクションが、このS社の中で生まれています。

最低スコアの社員が「何かをしたい」と行動した理由

井上和幸氏(以下、井上):1つ質問していいですか。

豊田:どうぞどうぞ。

井上:その、マイナス73点の方が変わったのは、何がトリガーだったんですか。

豊田:ワークショップの中で、数名のブレークアウトセッションをやったんですね。他の人たちのスコアも共有してもらったんですが、「あ、自分はこんなに低いんだ」と実感された。その方、転職されてきた方だったんですが、スコアが低いのはたぶんご自身の中で会社に対する期待値が高かったからだと思うんですよ。

自分でももっといろんなことができるのではないかと思われて、コミュニティの事務局に「スコアが非常に残念で、何かをしたい」という相談をされたんですよね。事務局はその行動をすごく意気に感じて、どんなことができるそうかと対話をした。

ですので、トリガーは、自分の中で会社を見える化したということでしょうし、それをコミュニティのメンバーと共有して、対話をする中で、自分自身のコンディションをなんとかしないといけない、あるいはなんとかできるんじゃないか、という思いが生まれたのではないかと思います。

井上:なるほど。ありがとうございます。

豊田:もう1つは、キリンのケースです。キリンユニバーシティという非公式だけど、とても活性化している学びのプラットフォームがあって、その中でKXをテーマにしたセミナーを連続的に発信しました。

最終的に、(スライドの一番右の)振り返りにはいけなかったんですけど、具体的にいろんな道具を使ってみたいという話が生まれました。いろんな行動をした中で、多くの活動が生まれ、さまざまな立場の方が参加されました。

営業部門のマネージャーの方やメンバーの方、人事の方もいらっしゃいました。人事の方は、このツールを使って、いろんなことが仕掛けられるのではないかという話もしていました。

他にも、いろんな方がいろんなアクションを始めた。でも最終的に、先ほどのS社のようなクリアな結果は出ていません。いろんなアクションが起きましたが、一方で、(社内で)アクションがぜんぜん起きなかった。想いを持ってこの実験をやりたい方たちにコミットしていただきましたが、社内で「こういうことをやろうと思います」と言ったら、「そんなことやらなくていい」と潰されてしまう話もあった。

実験プロジェクトで気づいた「KXあるある」

豊田:野田さん、大野さん、そのへんのことについて少しコメントをお願いします。

大野誠一氏(以下、大野):この実験プロジェクトには、8社の方々が手を挙げていただいて、半年ぐらいの期間で、会社でKXを起こすアクションにチャレンジしてもらった。僕たちの中では、「KXあるある」と呼んでいますが、僕たちは最初、「ゲリラ戦をやるんだ」と言っていました。

つまり、オフィシャルに仕事としてやるというより、会社を変えていきたいという思いを持つ人たちを集めて、ゲリラ戦を始めるイメージを持って話をしていたんですね。

ところが、ある会社では、ゲリラ戦をやろうと思ったらゲリラ戦そのものを「やってはいけない」と制止がかかった。

アンオフィシャルな活動としてこれを広めていきたいと思ったんだけど、日本の会社では、オフィシャルにしないと動き出せないということが起きるとわかった。これも、実験で学ぶ意味合いの1つであったわけですけど。

それから、仲間内で盛り上がって動き始めようとすると、一種の抵抗勢力というか反対勢力みたいな人たちが動き出すということが起きたり。「あ、そういうことも起きるんだな」と、この実験プロジェクトを通じて、僕たちも学びました。

作戦の立て方や話の持っていき方は、こういう「あるあるな状況」が起きることを前提に考えないといけないと知ったことが、実験プロジェクトのある種の成果でもあったんですけどね。

一方で、先日の部会で、「自分は残念ながらアクションを起こせなかった」という方々に、そのプロセスの報告をしてもらったんです。それはそれで、予想以上に感動的な話がいっぱいありました。

自分自身の会社に対する思い、意識がこんなに変わったんだということ。半年前は、もしかすると単なる愚痴や個人的な不満だったのかもしれないものが、この活動を知ることで、ある明確なイメージになってきた。「これから本当にできるかもしれない」という、個人の気づきに結びついた。これ自体がこの実験プロジェクトの意味として大きかったなと、僕たちも学んだところがありました。

ゲリラ戦の失敗が参加者の意識にもたらした変化

井上:野田さんはいかがでしたか。

野田稔氏(以下、野田):僕はちょっと過激な人間なので、ちょっと過激なことを言うとね。なんでゲリラ戦をやるのに許可取りにいったんだと、怒ったことがあったんですよ。

井上:確かに、確かに。許可を取りにいってしまうとゲリラ戦ではない。

野田:「お前は飲みに行く時に、上司に申請書を出すのかよ。出さないだろ。飲みに行ったつもりになってやればいいじゃないか」と。勝手なことをやって叱られるかもしれないと不安なんでしょうね。正直に言うと、そんなことを考えているうちは、ゲリラなんてできないですよ。

彼ら彼女らは、「勘違いをしていた」と少しずつ吹っ切れてきたわけですよ。悪いことをやっていないんだから、許してもらえるなんて考えは甘かった、と。

もう、志のある人たちを1by1で口説いていくしかないんだ。だから、会社の外にサロン作っちゃえなんて話になってくるわけですよ。会社の外でやってるんだもん、別に何も言われることじゃないだろうと。要するに、それぐらい意識が変わるということですよね。

逆に言うと、言葉が悪いけど、そのぐらい奴隷根性が染みついているんですね。そこに気づいてもらえたことも、実験の価値だったと僕は思っていますね。

企業内でのKX活動を制約する要因

井上:そうなんですね。参加いただいてる方もそうだし、これを読んでいただいたり聞いていただいたり、見ていただく方も今後いっぱい出るので。その方向けの質問をさせていただいていいですか。

大事なのは「自分主体で動こうよ」だと思うんですけど、このKXの動きを、例えば活動に参加されている方が自社の中でやった時に、具体的に何がひっかかるんですかね。いまいち僕にはピンとこなくて。

豊田:制約条件が「忙しさ」だった方がいました。その方は、人事の1メンバーです。何かをチームでやろうと思って、共感する人もいたんだけど、その人が仕事が忙しくなったり、自分も忙しかったり。

先ほどの野田さんの言葉を借りると、いわゆる日常業務に優先順位がある。その他のことは仕事外のような感覚を、その方も持っていたんでしょうね。だから、なかなか推進できない。でも、問題意識はどんどん高まる。

仕事という言葉はあまり好きではないですけど、日常業務と同じだと思えないことは心理的にすごく大きな、自分自身で課している制約条件だったと思います。

井上:実際活動をやろうと思うと、いわゆる会社として担当している既存の業務以外に、わりと時間を使う必要がある、ということですか。

豊田:そうですね。ただ、やり方によるんですけれども、例えば、月に何十時間もかかることではない。タイムリーに集まって対話をするのを週数回やっていくので、たぶん十分にまわる活動だよなぁと思います。何かを具体的に生産するというより、対話をしながらいろんなことをやっていくので。

でも制約条件があったり、あるいは「そんなことをやってる暇があったら仕事をやれ」と言われた方も現実にいましたね。野田さんがずっと言っている仕事問題ですね。

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