オープンワークの代表・大澤陽樹氏が登壇

藤澤さしみ氏(以下、藤澤):本日は、オープンワーク株式会社代表取締役の大澤陽樹さんに来ていただいております。大澤さん、よろしくお願いします。

大澤陽樹氏(以下、大澤):よろしくお願いします。

藤澤:お願いします。今大人気のPIVOTやいろんなメディアにご登壇いただいているかと思います。今日していただけるお話について、最初にご紹介いただいてもよろしいでしょうか。

大澤:みなさん、お昼の貴重な時間にありがとうございます。ぜひランチのお供にお付き合いいただければと思います。今日のテーマは2つあって、1つはZ世代にフォーカスすること。

「OpenWork」はすでにユーザーが550万人います。大手リクルーティングサービスと比較して3倍くらいユーザーがいると言うとわかりやすいかなと思います。その大半が20代、30代前半くらいで、Z世代と言われる方もいらっしゃいますので、その方たちに絞ったデータを今日は公開できたらと思っているのが1つ。

もう1つは、今日は経営者の方もご参加いただいているので、「そもそもクチコミとか働きがいって、何の意味があるの?」みたいなところ。私は今年論文を1本出す予定ですけど、学会の査読付きの論文のデータなどを紹介できればと思っています。よろしくお願いいたします。

藤澤:ありがとうございます。私からも情報をオープンにしていくビジョンなど、いろいろ聞いていきたいと思います。ではここから講演のパートへ移っていただければと思います。よろしくお願いします。

大澤:テーマに入る前に、基礎的なところを15分くらいでお話しできたらと思います。みなさんあらためてよろしくお願いします。私は今年の1月に初めて書籍を出させていただいて、先ほど読んだことがないという方も多くいらっしゃいましたが、今日はその内容も少しご紹介できたらと思います。

オープンワーク株式会社と申しまして、2007年に設立しました。もう17期目に入りますが、社員クチコミをベースとした転職・就職のためのプラットフォームを運営している会社です。

非常に優秀な方が見ていることもあって、当社の採用も、今は半分以上がこのオープンワークから採用できています。なかなかマーケットに出てこない人にアプローチできる採用サービスになっていますので、ぜひキャリア採用、新卒採用でお困りの方は、ご連絡いただけるとうれしく思います。

ありがたいことに昨年末に東証市場に上場をさせていただいていますが、非常に小さな会社です。85人の少数精鋭でやらせていただいています。

海外では当たり前の「クチコミ × 採用」

大澤:私自身の紹介もさせていただきます。ずっと組織人事周りをやってきた人間で、おそらく日本で一番社員クチコミを読み続けている男と捉えていただければと思います。

当社は働く人の声に支えていただいています。いろんなメディアに出させていただくことが多いんですが、常に労働者の代表として、そんな叫び、思いを、今日もみなさんにお伝えしていければと思います。

「OpenWork」の簡単なサービス紹介をさせてください。「OpenWork」は日本最大の社員クチコミ情報サービスで、ユーザー数が多くいます。その中から「スカウトや求人を受け取っていいよ」「転職就職したいよ」という方が82万人いて、履歴書、職務経歴書を登録しています。

その方々に向けて、導入費やイニシャルコストゼロ、採用できたら80万円しかかからない、非常にわかりやすい成果報酬型の、たぶん日本でも有数の安価なダイレクトリクルーティングサービスが、「OpenWorkリクルーティング」です。残念ながら「OpenWork」上でスコアが高い会社でないと、たくさんのスカウト送付数をもらえない厳しい採点になっています。

簡単に言うと、私たちはユーザーの方に悪い体験をしてほしくない。いい会社にはいろんな定義があるんですが、やはり魅力的な会社からスカウトが飛ぶようなサイトを目指して、マッチングをしています。クチコミは、5月末で1,500万件に突入しました。

これが、先ほどお伝えしたダイレクトリクルーティングの「OpenWorkリクルーティング」で、他社だと使うのに150万円掛かるとか、スカウト1通数千円を払わないといけないとかも全部無料です。

とにかく採用できた時だけ80万円払えばいいので、逆に言うと、いい会社であれば「OpenWorkリクルーティング」を使わない手はない。まだこのサービスを作って4、5年ですけど、今、契約社数が2,500社くらいと、爆増しているサービスになります。

よく「クチコミなんて便所の落書きでしょ」と言われることが多いんですけど、ぜんぜん違います。海外だと「クチコミ × 採用」は当たり前になっています。例えばオーストラリアのSEEKさんは、時価総額が1兆円近くありますし、Indeedさんが買収したアメリカのGlassdoorも、クチコミ×採用で、5年くらい前の買収時の推定価格がおそらく2千億円くらい。

そして、「OpenWork」もクチコミ×採用で伸びています。このクチコミが2、3年後の業績や株価と相関があるという論文が、学会誌で賞を取ったり、日本証券アナリスト協会の論文の賞で最優秀賞をいただいたりしているので、「怪しくないですよ」とここでお伝えできたらと思います。

上場企業10年分の業績と社員のクチコミ分析でわかったこと

大澤:トークテーマに入っていく前に、ベースの知識をみなさんと共有できればと思います。1,470万件のクチコミを使って、業績がいい会社にどんな特徴があるかを調べてみました。おもしろそうじゃないですか。業績がいい会社にはどんなクチコミが多いか。

一定の傾向がありました。書籍にも書いていないんですが、今日はその内容をお伝えして、みなさんの経営や人事の方の業務の参考材料としていただけたらと思います。

その前に、私も組織人事コンサルでよく言われたのが、にわとりたまご論争。「因果性ジレンマ」というやつですね。「売上がすべてを癒すでしょう」というタイプの経営者の方と、「いや、違う。事業は人なりだ。人、組織を良くしていかないと、売上なんて上がっていかない」「違う違う。売上さえ上がっていれば、どんなに苦しい組織でも、みんなハッピーになる」という喧嘩。

もともとは、(イゴール・)アンゾフとか(アルフレッド・)チャンドラーの話に近いと思うんですけど、私がコンサル時代にかなりよく聞いた話で、どちらのタイプの経営者も成功されている人もいれば、失敗されている人もいたなという印象でした。

今回私たちがやったことは、これにデータを使って学術的にアプローチすることです。研究内容としては、上場企業10年分の業績データと社員クチコミを、人工知能、センチメント分析を使って、文章をベクトル化します。

簡単に言うと、投稿されたクチコミを「働きがい」に置き換えると何点なのか。「働きやすさ」に置き換えると何点なのか。これを機械に学習させて自動で算出させました。簡単に言っているんですけれども、実はかなり教師データを作るのが大変なものだったりします。

1つおもしろかったのが、経営者の方は感覚があると思うんですけど、この10年、日本は働き方改革のおかげで「働きやすさ」がすごく上がっているんですよ。クチコミからスコアを出すと、非常に働きやすくなっている。

(スライドのグラフを)見てください。

「働きがい」は、この10年でめちゃくちゃ失われました。良いか悪いかはこのあとでお伝えしますけど、これがまず日本全体で起きていること。

ギャラップ社の調査だと、日本の働きがいは141ヶ国中139位。最下位タイ。日本は全世界で最下位の働きがいになっていると、海外の研究でも出ていますが、私たちが出したデータでも「なるほど」と。確かに10年間でとんでもない下落率だとわかりました。

従業員の「働きがい」が自社の3年後の「売上」に影響する

大澤:それに「何か意味があるの?」という話が、研究結果の2つ目です。働きがいが企業の売上の3年後に影響してくる。志向性を持って相関があると、私たちの研究でわかりました。逆もしかりで、売上が上がっている会社、企業財務がいい会社は、1、2年後には働きがいが良くなりやすい。

さっきのにわとりとたまご理論の話でいくと、「両方あるね」が研究で出た結果でした。売上が上がっていると内部留保率が高まり、社員への報酬の還元ができたり、新規事業に投資していくことができる。そうすると会社が前に進んでいる感じがするので、働きがいが上がっていくんですね。

「働きがい」は3年後の売上や売上高変化率に強い相関があり、「働きやすさ」は人が辞めにくいとかにつながるので、利益率の向上につながってくる。強い相関があることが研究結果でわかりました。

また、働きがいと働きやすさの両方が高い会社は、1年後の株式パフォーマンスにも強い相関があることが、研究結果からわかってきた。

ここから言えるのは、もちろん内部留保が高まって、働きがいが上がるのもある。けれど、そもそも働きやすさだけでなく、働きがいも上げていかないと、売上の成長はないし利益率も上がっていかないし、結局内部留保に回すお金がないと。

にわとりたまご理論の両方に通じているんですけど、私はやはり出発点はこっち(働きがいと働きやすさ)かなと思います。

日本で大きく失われ、世界最低水準になった「働きがい」にも、経営者、人事の方はフォーカスしていかないと、企業の業績につながらない。人的資本経営の本質はこのあたりにあると思うんですけど、ただ「いい会社を作る」とかではなく、「儲かるためにどうやったら強い組織を作れるか」は、投資をしてリターンをしっかり得るという意味では、一番大事だと思います。

「働きがいとか、そんなのいらないでしょ」と言うのではなく、長期的にちゃんと成長していきたいのであれば、企業の活力を取り戻すべきと考えて経営することは、とても肝要です。これが感覚ではなく、今回の研究結果でわかりました。

まとめるとこんな感じですね。「働きやすさ」は改善したけど、「働きがい」は非常に悪化したよ。その「働きがい」は3年後の好調な業績につながるよ。企業成長分を社内に投資して、内部留保に上げていくと、「働きがい」は向上していくと研究結果でわかりました。