2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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大澤陽樹氏(以下、大澤):最後のテーマ、3つ目は「退職者が出にくいオンボーディング」。これもおもしろいデータを持ってきました。オンボーディングと言うと研修をどうするとか、入社初日に飲み会をしてとかいろいろあると思うんですけど、今日はそれにノーを突き付けたいなと思います。「違う」と。
藤澤さしみ氏(以下、藤澤):(笑)。
大澤:オンボーディングの研修とかそういうものではないですよ。しゃらくせぇと思うんです。
藤澤:(笑)。
大澤:働きがいのある企業・ない企業について、どんな言葉が飛びかっているかを調べました。
これは日経新聞の1面に載りました。私たちとしてもけっこうおもしろい分析をしたんですけど、まさか1面に載ると思ってなかったです。
私たちは上場企業の95パーセントをクチコミでカバーできているんですけど、その中のトップ5パーセントと下位5パーセントの会社に、どんなクチコミがよく出ているかを調べました。上場企業は6万社なので、3,000社くらいです。
上位5パーセントはおもしろくないのでカットします。
「フラット」「オープン」「自由闊達」ありそうな感じですけど、下位5パーセントはどんな会社か。やばいですよ。
(スライドの「下位5パーセント企業で出現頻度の高い単語」を見て)「イエスマン」とか。
「親族」。親族は別に悪いわけではないんですよ。一族経営のほうが伸びるという論文を読んだことがあるので、別に一族経営が悪いわけではないです。
一族経営にアンドで付く言葉。「ワンマン」になり過ぎていたり、「昭和」とか「アナログ」とか「会長」とか。なんか怖いですね。
(スライドの「頻出単語」の)「精神論、昭和、書類、電話、アナログ、マニュアル資料、古い体質、古臭い、昔ながら、旧態依然」みたいな。
安定しているからこそ、古い体制がそのまま続くような企業は、優秀な人材が離職するというコメントも見られました。
意外にも、さっきのゆるい職場の「のんびり、まったり」とかは、評価の低い会社からたくさん出てくる言葉だったりします。
「イエスマン、顔色、機嫌」は、上層部の顔色をうかがって、何をやるにも異常なほど時間がかかる。これもみんなのモチベーションを下げる。
「一族経営、同族、会長、オーナー、ワンマン、権力」が悪いわけではないですけど、「上層部が身内で固められており、同質性が高く」……ここまではいいんですけど、「風通しが悪い」は良くない。要はオーナーの言うことがすべてで、何を言っても通じないのが、下位5パーセントの会社になっていると。
「ノルマ、売る、叱責」。
目標は大事ですけど、これをやり過ぎると「疲弊していく」とのコメントが多いです。
大澤:オンボーディングは研修やウェルカムも大事ですけど、私たちは滲み出てしまうものだと思っています。だいたい入社して1週間もしたら、その会社の組織風土で良いか悪いか、けっこうわかると思うんですよ。
この前ある企業に聞いておもしろかったんですけど……そんなに大きい会社ではないんですよ。経営会議に通すための打ち合わせをやるための、打ち合わせをやるための打ち合わせがあるらしくて。
藤澤:まだあった。
大澤:何なのそれって。4つプロセスあるの? みたいな。「経営会議いつあるの?」「1か月後」「ええ!?」。しかもChatGPT系の案件で、「それ、稟議通すまでに1ヶ月掛かるの?」みたいな。「大澤さん、違う。1ヶ月ではなくてたぶん1年くらいはありますね」と。
経営会議に1回持っていったあと、どうせ否定されて、それをまた通すのに、同じことの繰り返しを3回やるんです。それをオンボーディングとかで入ったばかりの人が見たら、たぶん3ヶ月で辞めよう、と思うんです。その前に「OpenWork」のクチコミを見てくれよと私は思うんですよ。
退職者が出ないオンボーディングは、つぎはぎでその場しのぎの打ち手や対策をするのではなく、「滲み出ている『運動神経の悪い文化』をどうにかしなはれ」が、私からの提言ですね。
もう滲み出てしまっているので、オンボーディングでいかにいい研修をしたり、いかに高い弁当を食わせてもみんな辞めます。
先に自分の会社にはびこる運動神経の悪い項目、もしくはクチコミがあったら、ぜひ先にこれを変えていただく。いい会社だったら逆にそれが滲み出るので、オンボーディングをそんなにしっかりしなくても、「いい会社だ」「おもしろい会社だ」となって、みんな定着していくので大丈夫です。
まずは(スライドの)こういうコメントの中で思い浮かぶものがあったら……別に、「一族経営」「オーナー」とかは悪くないと思いますよ。プラスして「顔色うかがい」とか、「風通しが悪い」とか、「昭和」「アナログ」とかがあるようであれば、ぜひ変えていただくことをお勧めしたいと思います。
大澤:さしみさん、どうですか?
藤澤:いやぁ、もうめちゃくちゃおもしろいです。ズバリ陽樹さんがオープン化していくその先のビジョン、なんでそれをやっているのかがすごく気になっています。どういう未来を作りたいのかなというミッションを聞きたいなとずっと思っています。
大澤:あと5分では話せないくらいですけど、ざっくり言うと私はマーケットデザインというか……レモン市場と言うんですけど。レモンって皮がめちゃくちゃ分厚いじゃないですか。おいしいかおいしくないかがわからないなら、売り手はまずいレモンばかり流すじゃないですか。
藤澤:なるほど。
大澤:そうすると買い手は何を買ってもまずいレモンなので、「まずいから」と値切り始めるんですよ。最初は皮が厚いから騙して流しても高値で売れていたのが、売れなくなってくるので、今度は売り手はもっとまずいレモンを流し始めるんですね。
藤澤:(笑)。
大澤:そうすると買い手はもっと買い叩き始めるんですよ。そして市場が崩壊していく。これがレモン市場です。経済学でよく言われることですけど、マーケットの透明化は、健全なマーケットを運営していくうえで至上命題です。
日本は働く前にその会社がどういう会社か、本当にわからないですし、ジョブ型が進んでいれば、ジョブディスクリプション(職務の内容を詳しく記した書類)で見えるところがあります。文化はけっこう大事だと思っているので、もっと見えるようにしたほうがいいと思います。
もっと私がやっていきたいのがユーザー側です。個人がどういう人間なのかとか、どういう学習履歴やどういう努力をしているか。これもオープンにしないと、レモン市場になってしまうので。
私が目指しているのは、個人情報はちゃんと守らないといけないですけど、企業だけではなく、個人もオープンになっていくことで、転職や採用、雇用がより安心安全の中で行われることです。
その中で自分の人生の選択肢が増えたり、自分のポジティブな選択肢が増えていく。企業側もポジティブな選択肢が増える状態は、ウェルビーイングが上がっていくので、日本のちょっと閉鎖的なマーケットを変えていくのが、私が今やりたいと思っていることです。
藤澤:非常に響く言葉でした。よかったら質疑応答も受け付けていきます。チャットで質問があれば拾っていければと思います。
やはりそういう意味では、もう嘘はつけない時代ですかね。
大澤:難しいですよね。話すと長くなるのでやめますけど、そもそも嘘ってなんやねんみたいな話。
藤澤:(笑)。
大澤:そもそも事実って何なのみたいな。
藤澤:なるほど。
大澤:複数の主観の重なり合いというか、共通了解が事実だと思うんです。例えば、「さしみさんはおもしろい」という事実もあれば、「さしみさんはつまらない」という事実もある。それって主観だったりするんです。
藤澤:マジで半々ですね。確かに(笑)。
大澤:いやいや。100人中99人が「さしみさんはおもしろい」と言うから、「さしみさんはおもしろい。魅力的な人だよね」が事実になっていく。嘘も事実もそもそも定義をどう置くかは大事だと思います。
藤澤:本当にテーマに合っていると思います。質問いただきました。「今、腫れ物に触れるように対応している企業は、まず何から変えていけばいいですか」。いい質問ですね。
大澤:難しいですね。でも私が一番わかりやすいと思うのは、やはり「文化は行動の積み重ね」です。これは、エドガー・シャインさんの『企業文化』という本に書かれています。企業文化は一朝一夕で作られるものではなくて、その企業の中で行動が積み重なって、それが当たり前になって言語化されたら、文化に昇華するんです。
大事なのは一人ひとりの行動が変わること。腫れ物に触るのではなくて、お節介をするとか向き合っていくみたいな行動が生まれるような、仕組みや評価制度を作っていく。すると、自然に行動が文化として増えていき、「腫れ物に触るよりも踏み込んだほうがいいよね。それがうちらしいよね。うちの当たり前だよね」となっていく。
そういう意味だと、例えば1on1とか最近はSaaSのサーチが流行っていますけど、1on1を入れるだけではまったく意味がないと思いました。それを評価にどう反映させていくか。一定以上の部長層とかには、従業員のエンゲージメントを評価項目に入れるとか。評価にちゃんと組み込んでいくと、行動が定着化しやすいのは1つあるかもしれないですね。
藤澤:ありがとうございます。そうですね。「まずはやり始める。続ける。信じる。ありがとうございます」という意見もいただいております。ずっと話していたいテーマですけれども、ミッションや想いもお伝えできたかと思うので、講義とトークディスカッションはこちらで終了とさせていただきます。
大澤さん、今日はありがとうございました。
大澤:ありがとうございました。
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