「楽しい職場です」というアプローチは、優秀な営業の採用には逆効果になることも

梅田翔五氏(以下、梅田):(優秀な営業を採るための6要素の)続いて3点目。「組織/仲間」と書きましたが、これは非常にシンプルです。優秀な営業の方々は、誠実なカルチャーで優秀な方と働きたいと考えています。なので、もし御社に例えば有名な企業からすごく優秀な方が営業のマネージャーで来ている場合、そういった方々の社員紹介を採用ページに置いておくとか、その方にブログを書かせてみるとか、そんなアプローチも有効です。

実際僕が支援している会社さんの例で言うと、とある有名なコンサルの会社から営業の責任者でジョインした方がいらっしゃいまして、その方が来た途端採用がいきなりうまくいくようになった。

やはり「その人の下で働いてみたい」というのを、優秀な営業の方は思っていることが多いんですよね。なので、優秀な仲間がいるのであれば仲間をアピールしてほしいですし、会社として誠実なカルチャーがあるのであれば、それをしっかりアピールしてほしい。

一方で普通の営業の方々は、ちょっと書き方は悪いかもしれないんですけど、仲良しこよしの楽しそうな、ゆるふわな雰囲気を求めちゃうんですよね。なので、「ノルマはそんなにきつくないですよ」とか「我々はすごく仲が良くて、休日も飲みに行ったりします」みたいなアピールって、人は集まるんですけど、あまり優秀じゃない営業の人を採用するアプローチにもなっちゃったりするんです。

結局、誰を採りたいかで、書く文言、アピール内容は変わるかなと思います。僕は今日、みなさんに「優秀な営業が採りたいですよね」という話をしたくて来ています。そうすると、仲がいいことをアピールするとか「楽しい職場です」みたいなアピールって、実を言うとネガティブアプローチになっているんじゃないかなというのが僕の考えている3点目です。

経営陣の熱意を本気で見ている人は、優秀な人が多い

4点目。「ミッション・ビジョン・バリュー」と書きました。実を言うと、ここをかなり僕は重要視しています。優秀な方ってやはり自分の仕事の意義を真剣に考えている方が、特に今の時代は増えているんじゃないかなと思います。

やはり若い方は、「なんで働くんだっけ?」とか「なんでがんばるんだっけ?」という、「Why」の部分を大事にしている方が増えていますね。なので、ミッション・ビジョン・バリューの浸透度だったり、良い言葉を掲げているのは当然として、「それって経営陣が本気でやろうしているんですか?」みたいな、熱意を見ている人はめちゃめちゃ多いです。ここの熱意を本気で見ている人って優秀な人が多いんですよ。

もし今これをご覧いただいている企業の方々で、「ミッション・ビジョン・バリュー、けっこうおざなりだよね」という会社さんがあれば、これは営業に限らずだと思うんですけど、優秀な方の採用を逃している可能性があると思うので、ミッション・ビジョン・バリューの再定義だったり、その浸透みたいなところからちゃんと考えるのは重要じゃないかなと思っています。

一方で普通の営業の方々。やっぱり、普通の営業の方々は、申し訳ないんですけど、ミッション・ビジョン・バリューとかってあまり気にしていないかな。もしくは、「なんかいい言葉が書いてあって共感しました」みたいな、表面的な理解で終わっちゃうケースが多い。

ここの仕事に対する意義の捉え方は、優秀な方と普通の方で非常に差が出るポイントかなと思うので、ここはちょっと、語気強めにお話ししてしまいました。

優秀な営業は「年収を最優先にする」ことが少ない

5点目は「報酬」です。これは、どちらもまず大前提、重要視しているんですけれども、重要視の置き方が違うなと思っています。優秀な営業の方々は年収をもちろん考慮に入れていますし、決して低くていいなんて思ってないんですけど、年収を最優先にする方が比較的少ないなと考えています。

「ある程度自分の価値に見合った金額はもらいたいけれども、それだけで会社を決めるつもりはない」。そう語る方々が、僕は優秀な営業の方に多いと思っています。ただ、めちゃくちゃ優秀な方でもお金を最優先にしている方も、一部いらっしゃったりはするので、これは割合の話ですね。

一方で普通の営業の方々。こっちは逆に、年収に一番重きを置いているとか、年収のみで会社を選んでいる方とかも割合として多いなと感じます。やはりこれは、さっきのミッション・ビジョン・バリューのところにもつながるんですけど、「仕事はお金を稼ぐ手段だよね」という捉え方をしている方が多いので、年収を最重要視している方は普通の方が多いんじゃないかなと思っています。

それは、決して悪いことではなくて、僕は価値観として否定するつもりはないんですけれども、やはり仕事に対する熱意みたいなものは、ミッション・ビジョン・バリューで判断している方々に比べると落ちるので、結果として実力も差が出るかな。

明日からでも変えられる「選考体験」

最後に6点目です。「選考体験」と書きましたが、これは実を言うと(優秀な営業と普通の営業の)どちらも共通していると考えています。これはどういうことかと言うと、選考を受けている中でどう感じるか。例えば連絡の速度がめちゃくちゃ早い企業とめちゃくちゃ遅い企業では、やはり求職者の体験は変わってきます。

あとは面接官の態度とか丁寧なフィードバックとかですね。一昔前だったら、圧迫面接とかをやっている会社って、けっこう聞いた方も多いんじゃないかなと思うんですけど。あんなのを今やっていたら、その会社は選ばれないですよね。

圧迫面接なんていうものが通用していたのは、企業が人を選べる時代。今はどちらかと言うと、企業は人に選んでもらう時代かなと思いますので、下手に出る必要はないんですけれども、やはり対等に真摯に接するということが非常に重要かなと考えています。

なので、この「選考体験」は優秀な方であろうが普通の方であろうが非常に重要なポイントだと考えています。そして、明日からでも変えられる一番簡単なポイントでもあるので、これを徹底するところからが、まず僕は優秀な営業の採用に近づく方法なんじゃないかなとも思っています。

あと、これは僕が言うとポジショントークに聞こえちゃうかもしれないんですけど、選考体験のいい会社ってエージェントからも好かれるんですよね。それは、結局良い方の紹介を優先的にしてもらえることにもつながりますので、「エージェントをどう使うか」という観点で言っても、選考体験をより良いものにしていくのは重要なポイントかなと考えています。

6つの要素の「どこを尖らせるのか」

ということで、今ばーっと6要素についてお話ししていったんですけど、これが全部揃っていたらパーフェクトで、そうしたらもう優秀な営業は絶対採用できると思います。でも今日ご覧いただいている方は中小ベンチャーの方が多いと思うんですが、この6要素すべてを満たすというのはぶっちゃけきついですよね。

「この6要素を全部そろえてください」というのは机上の空論になっちゃうので、僕が今日言いたいのは「どこを尖らせるのか」、もしくは「自社はどこが尖っていると認識するのか」というところ。これが重要だと思っています。

例えば僕が今ご支援している企業さんを、ちょっと頭に思い浮かべながらこの図を作ってみました。資金調達のラウンドで言うとシリーズAとかシリーズBのアーリーフェーズのスタートアップで、「採用が強いよな」と思う会社さんです。

まだ成長している、めちゃくちゃ伸びている会社とまでは言い難いですし、人事の人数も少ないので選考体験がめちゃめちゃ良いとも言い難い。報酬も決して悪くないですけど、他の企業と差がつくほど出しているかと言うとそうじゃないんです。

けれども、まず、成長機会というところの打ち出し方がとてもうまいです。その会社に勤めたら、いったい何が成長して、どういうキャリアを歩んでいけるかみたいなもののフィードバックがものすごく上手というのが1つ目ですね。

あとは、揃っている仲間が優秀であり、そしてみんな誠実ないい人たち。また、その人たちと会わせる接点をちゃんと設けるんですよね。面接も3回やったり、その後のオファー面談もちゃんと社員を出したり、人の魅力を存分に伝えるようにしています。

結局、人の魅力を存分に伝えると、ミッション・ビジョン・バリューの浸透も伝わって、「この会社に勤めたら成長できそうですし、あの人たちと働きたいと思いました!」となる。だから内定が出ると、8割ぐらいの承諾率を誇っているんじゃないかなと思います。そこが1つすごく強い会社だなということで、例として挙げてみました。

スタートアップのフェーズごとの「採用の強さ」

続いて2つ目の例なんですけど、これはミドルフェーズ以降の会社です。恐らく上場直前ぐらいのスタートアップなんですけれども、ここも採用が強いです。

どういう強さがあるかと言うと、まず、はたから見ていてすごく伸びていそうなんです。導入企業がたくさんあったり、「導入社数何社」とか「導入ID数何件」という、伸びを定量的にちゃんと対外的に発信していて、会社としての勢いみたいなものを打ち出すのがうまい。なので、採用広報もうまいという観点が1点目かなと思います。

一方で、このレベルまで大きくなってくると、ぶっちゃけ成長機会はちょっと減るんですよね。やはり会社としては仕組み化が整ってきているので、良くも悪くもベンチャーらしさは消えていて成長機会は減るんですけど、会社としての勢いで、そこはあんまり気にならなくなるような状態に持っていけているかなと思います。

また、ここの従業員数も増えてきているフェーズだと、採用人事、いわゆるリクルーターの人数も増えてきていて、圧倒的に他の企業に比べて選考速度が早いです。面接を受けると3時間以内ぐらいに合格の連絡が来たり、フィードバックとかも細かくいただいたりする。

内定が出ると、本当に5分以内ぐらいに僕に電話してきているんじゃないかというぐらい、あり得ない速度でエージェントとのやりとりもしていたりして、ここぐらいのフェーズだと選考体験の作り方がすごくうまいなと思います。

あとはやはり、魅力的なスタートアップは、これは共通しているかなと思うんですけど、やはりいい人が揃っていたり、組織自体のカルチャーは健全で、ここもアトラクト、魅力付けにはつながっているかなとは思います。ただ、はたから見ていると、ミッション・ビジョン・バリューの浸透度は、やはり人数が増えて落ちてきているなとは感じますね。でも、ここがなくても採用できるみたいなフェーズに入っているかなと思います。

なので、結局、さっき言ったんですけど、6要素全部そろう必要はなく、「我々はどこを尖らせるんだっけ?」「優秀な営業に何を訴求するんだっけ?」というのをちゃんと見いだしてほしいというところですね。

優秀な営業の生態に合わせた訴求を

僕は実際にいろんな企業さんの採用支援をしてきているんですけど、打ち合わせの中で「御社に入るメリットって簡単に言うと何ですか?」とよく聞くようにしています。これが、やはりちょっとずれた訴求になっているなと感じる企業さんが多いのが実態です。「あ、なんかその文言だと優秀な人には、ちょっと申し訳ないんですけど刺さらないと思いますよ」みたいな、そういったケースがけっこう発生しています。

恐らく自社に入るメリットは各社さん、まとめているとか掲げているとは思うんですけど、「それって万遍ない営業に刺さる文言になっちゃっていないかな? 優秀な人に刺さる文言になっているか?」というのをあらためて問うてほしいなと考えています。

ということで、今日お伝えしたいことをあらためてまとめると、「採用に勝っている中小ベンチャー企業は『優秀な営業』の生態に合わせた訴求がしっかりできているんだ」ということです。途中、拙い部分もあったかと思いますが、私からは以上になります。ご清聴いただきましてありがとうございました。

石川:梅田さん、ありがとうございます。めちゃめちゃ勉強になりました。このままオープントークに入りたいなというくらいの感じですね。

梅田:すみません、ありがとうございます。

石川:このまま入りたいですけど、順番通りに一応話しますね(笑)。

梅田:(笑)。よろしくお願いします。ありがとうございました。

石川:ありがとうございます。