2024.11.25
「能動的サイバー防御」時代の幕開け 重要インフラ企業が知るべき法的課題と脅威インテリジェンス活用戦略
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坪谷邦生氏(以下、坪谷):私はいろんな会社に関わらせていただく中で、創業社長がいらっしゃる中小企業だと、何か対立が起きた時に「とはいえ社長の会社である」と決めて動いたほうが、物事がポジティブなほうに動いていくという経験を何度もしています。そこは理屈じゃないんですよね。
理屈では従業員が言っていることのほうが合っていたり、ほかの役員が言っていることのほうが市場環境的に良さそうでも、社長が「いや、なんか違うと思うんだよ」と言ってちゃぶ台をひっくり返したことに従ったほうがうまくいくことが多くて。「なんでだろうな」とずっと思っていました。
やはり社長という人格で担保しているほうがうまくいくんだと思って、私は「人格的担保」という言い方をしていたんですが、ソース原理で説明したほうがずっと早いし、伝わりやすいなと思いました。
継承の話もすごくわかります。「置き去りになって誰も拾ってないソース」がある時は、どんな工夫をしてもだいたいうまくいかないんですよ。このへんも私の経験則にピタッとハマる感じがします。
嘉村賢州氏(以下、嘉村):ソースだった創業者の時の番頭役が2代目になることが多いんですよね。ソースは特定のものとつながってビジョンが降りてくるものの、(番頭役は)「理解者」であって、つながる力が高いわけじゃない。だから、引き継いでも創業者におうかがいを立てることが抜けない。
番頭役は、ソースの発言の理解者や、ソースが描いているビジョンの実現能力が高い人であることが多い。その番頭役が2代目になってもソースとしては機能しないんですよね。だから、ソーシングがちゃんとできる人が2代目にならないとうまくいかないことが多い。
でも、日本の場合は隔世遺伝的に、会長にかわいがられてたから、次の次の代の人にソーシング能力が備わることも、実態としてはけっこうある気がします。でも、2代目がうまくいかないというのは、ソーシング能力でバトンタッチできてないからというのは(事象として)けっこう観察できそうな感じはします。
坪谷:ソースとして「つながる」という言い方もされましたけど、「ソーシング」というのは、どんなとらえ方をしたらいいんでしょうか?
嘉村:人によって言い方が違うんですが、提唱者のピーター・カーニックは、チャンネルをつなぐ電話機を持ってるというような言い方もしますね。
山田裕嗣氏(以下、山田):ピーター・カーニックは、ソースが「何に」つながっているのかは明言していないんです。人によっては神かもしれないし、地球かもしれない。
何かとつながっていて「受け取る存在としてソースという役目がいるよね」というのが、一番適切な表現なのかなという感じがします。そこはあまりクリアにしようとしていないというのが、ソース原理における捉え方とも言えますね。
坪谷:ありがとうございます。私はオーナーやリーダーとして一番大事なことは「センサーを磨くこと」「嗅覚を信じること」だという言い方をしてきたのですけど、ソーシングという言葉でほぼ説明できる感じがしてきました。
嘉村:ソーシングとかリスニングですね。ソース役の場合は、トップダウンとボトムアップの融合(が必要になります)。
トップダウンというのは、いわゆる一般的なトップダウンとは違って、自分の内側にちゃんと耳を澄まして、1人の時間でリスニングする行為から始まります。ボトムアップは、日々センサーとして活躍している現場の人たちのいろんな声を聞き続けること、対話を重ねるということです。
その2種類のリスニングがちゃんとできていると、集合的なプロセスに近い感じにもなるんですよ。みんなもちゃんと話を聞いてもらうことで「私たちが作ってる活動です」という思いを持ててるし、ソース役もちゃんといる。
坪谷:コンパスの縦軸ですよね。ソース自身にも答えがわかっていないけど、旅の中でわかってくる。ちゃぶ台返しをする社長の言うことに従ったほうが、結果的にうまくいくという私の実感から、この横軸の意味はとてもよくわかります(笑)。
山田:改めて坪谷さんの図(MBOの統合的アプローチ)を見ながら、やはり組織を考える起点が変わってきているということだなと思いました。
昔ながらの企業でも、やはり組織の主観というか創業の思いはあって。ただ、「業績」の話がメインだったので、いかに事業が作られるかということを起点にして、そのためにどんな人が必要かという「強み」があり、その人たちが生き生きと働けるように「夢」にいっていた感じがして、なるほどと思いました。
(坪谷邦生氏『図解 目標管理入門 マネジメントの原理原則を使いこなしたい人のための「理論と実践」100のツボ』より)
坪谷:確かに、確かに。
山田:使命はあったんですけど、業績が強まった結果、薄れていってだんだんわからなくなってるんじゃないかという感じがしています。
山田:ソース原理というレンズを使う時は、可能な限り「組織」という言葉は使わないんですよ。「組織」と言ってしまうと、架空の何かに従属してしまうイメージになるので、あくまで「組織化」。
英語だと「organization」じゃなくて「organize」という動詞として扱うことを、『すべては1人から始まる――ビッグアイデアに向かって人と組織が動き出す「ソース原理」の力』の著者のトム・ニクソンは提唱しています。
僕は、自然経営研究会で「自然経営」と言っていた時も、「組織は現象である」ということはずっと言ってたんですね。あくまで組織は現象として扱おうという時に、ソース原理が使命というのは本当に良い位置づけだなと思います。
その上で何が起こるかというと、使命から夢にいくんですよね。賢州さんにさっき説明していただいたとおり、サブソースは(ソースに)つながっていく個の話になる。使命から始めて右側(業績や強み)にいくのは、個人的な実感としても難しいところだなと思っています。
さっきの目標管理の2軸の話にも通じますが、企業の組織づくりであれば、何らかの業績指向性はやはり持っています。それを前提に組織を作ろうと思った時に、使命から始まって夢にいくという世界観を大事にしつつ、その上で業績を作れることが今、ものすごく大事だと思っていて。順番が逆回転している感じがあるんですね。
逆にそこまで考えてみると、右上の「強み」がもはやわからなくなってきた感じがしてきて(笑)。正しくはないんですけど、ビジネスモデルみたいなところから考えると、例えばジョブディスクリプションで描けるようなものが「個の強み」である印象が強かったんですね。
ただ使命や夢から始まった時に、改めて「個の強みは何か?」という問いは、けっこう大事だなと思いました。組織の主観、個の主観という話は、ソースのソーシングした使命と、個としてのサブソースがつながっていくという世界だと捉えられます。
そこから、右側の客観の世界(業績・強み)をちゃんと扱いにいくというのが、この図で大変よく描かれていて、より一層難しいなと思いました。
坪谷:おっしゃるとおり、強みから業績という流れは、けっこう描きやすいと思うんですよね。ビジネスモデルもそうですし、ドラッカーの「強みの上に築け」という言葉も有名です。ここでドラッカーの言う強みは「成果」なんですよね。
ドラッカーは、実際に目標を立てて達成できたものが強みであり、「人間は強みをほとんど誤解している」と言っているんです。会社の目標管理じゃなくてもいいのですが、何かを成し遂げようと思った時は「紙に書け」と。
そして半年とか1年後に書いた物を見てみたら、思った以上に何かができていて、思った以上に何かができてないことに気づく。彼は50年間それを続けてきた中で、毎年発見があると言っているんですね。そうやって書いていたことに照らして、できていたことを「強み」とドラッカーは呼んでるんですよ。
山田:なるほど。
坪谷:強みと業績がつながるのはわかるとして、やはり夢と強みのつながり、個の主観と客観をどう統合していくのかと考えた時に、これまではやはり強みのあとに夢だった感じがするんですよね。
「やりたいことをいずれやるために、まず強みを積み上げよう」というのも間違いではないと思うのですが、やはり主観をベースとした上に強みを積む必要があるのではないかと思っているんですよ。
『すべては1人から始まる』にも「すべての人は人生のソースである」と書いてありましたが、私もまさしくそうだと思っていて、その人の主観(夢・意志・価値観・想い)から始めなければならないのではないか、と。
嘉村:ソース役がいて、それを分かち合うのはヘルパーと呼ばれる人なんですが、1つはサブソースで、もう1つは業務協力者(エンプロイー)と言って、ほぼ2種類あるんです。
業務協力者の活動動機は、人間関係が良いからとか報酬が良いからとか、いろんな理由があり得るんですけど、パーパスで結びついているというよりも「この仕事をお願いします」というように、しっかりとお願いして返してもらうという関係です。もしかしたら、旧来の強みでもいいような感じもします。
坪谷:そうですね。
嘉村:夢とつながっているほうはサブソース役ですね。サブソースの場合は、まさに自分から動いちゃうような領域において、成果が出てきたら周りにも認められる。「あいつはここで輝くよね」というふうに、履歴から強みを積み上げていく感じなので、(業務極力者とは)ぜんぜん違う強みなんだろうなと思います。
坪谷:ありがとうございます。日本では多くの人が業務協力者として関わっていると思うんですね。「言われたことをきっちりやるので、ちゃんとお給料ください」というパラダイムの中で、目標を低く設定するようなことが起きている。これ自体は悪いことではありません。
しかし、そういう方も、いつか強みと夢を統合して、ソースやサブソースとなっていく可能性があるのではないかと思っています。『すべては1人から始まる』の中でも「業務協力者がずっと業務協力者でいるとは限らない」と書かれていました。
その可能性は頭の片隅に入れた上で、業務協力者としてがんばる。要は「やってるうちに楽しくなってきて、強みが夢につながっていく」という流れはあり得ると思うのです。
「好きこそものの上手なれ」の逆で、「上手だから好きになる」。そのベクトルを、周囲も本人も期待してもいいんじゃないかなと思います。新入社員に「まずやってみよう」と接することが必要なのと一緒ですね。
嘉村:そこがソース原理の、もしかしたらすごく大事なメッセージなんですよ(笑)。
坪谷:そうなんですね!
嘉村:ソース原理を見た方によく驚かれることがあるんです。1つは全体ソースのAさんがいた時に、サブソースと分かち合うじゃないですか。例えばBさんに「サブソースになってください」と言った時に、全体ソースのAさんがBさんのサブイニシアチブのヘルパーになってもいいわけです。
僕たちは固定観念で「上に立つ人は全部の上に立つ」と思ってしまいますけど、「Bさんに託した領域のこの部分は、俺がすごくやりたいわけじゃないけど、できるから、そこはBさんの思い描いてる中で俺を好きに使ってよ」というふうに、(経営者が)ヘルパーになることもできるという。
同じイニシアチブの中でも、サブソース役もやれば、別のところでヘルパー役もやるということは、みんなができる。一人ひとりの人生のソースは自分なので、今の職場では業務協力者だけど、いずれ違うところでソースが見つかるかもしれないし、いずれサブソースに発展するかもしれないとか。
固定的に「俺の人生は業務協力者だ」と思う必要はなくて、「今は業務協力者でお金を稼ぐ」とか「成長する」というふうに、自分の人生の舵は常に持っているよねと。それは、人生でいろんなものを選択して生きていくことの大前提なので。
ソース原理の業務協力者は、あまりクリエイティビティが高くない旧来型の雇い方ではなくて、(誰もがなることがあるという)まさに坪谷さんがおっしゃったところなんです。
坪谷:たしかに「1人の中にどちらも存在する」も「行き来する」もどちらもあると思いますね。私が関わっているクライアントの中でも、特にクリエイティブ系の会社では夢や主観から入る人たちも多いんですよね。でも圧倒的に力が足りず、戦っても勝てないということもあります。
そういう時は、まず業務協力者として、ちゃんと客観的に成果を出せる力を積み上げてから夢と接続したほうがいいと思います。なので、業務協力者として筋トレもしなきゃいけない。その行き来も必要だな、と理解しました。
……あっという間にお時間となってしまいました。最後に、一言ずついただけますか?
山田:あと2時間はお話できるぐらい、めちゃくちゃ楽しかったです。本当にさすがだなという感じでした。最後に素直な感想として、実務家である自分から見た時に、これはすごく難しいなと思いました。
「この時期は強みを磨いた方がいいでしょ」という目標を立てることも大事じゃないですか。それは、別に夢をないがしろにしてるわけじゃなくて、個を活かすために今はこれをやったほうがいいということなんですけど、お互いに腹落ちしていないとすごく混乱しそうですし、それができるかどうかが組織の成熟だなとも思いました。
(今度出る『図解 目標管理入門』では)そこの難しさを表していただけるんだろうなと思って、とてもいい時間でした(笑)。ありがとうございました。
坪谷:ありがとうございます。嘉村さん、いただいていいですか。
嘉村:フレームで見せていただくことで、話がどんどん盛り上がる楽しさを感じました。後半でやはり使命が肝だねという話がありましたが、たぶん世界的にもその気づきがあって、パーパス経営ブームみたいになってると思うんですけど(笑)。
パーパス経営ブームはちょっと表層的というか、もったいないところがあって。大きな方向性はそうだけど、集合の罠みたいなものにハマってしまうところがあるので、うまく機能していない。パーパス経営ブームにソース原理を組み込んでもらえると、新しい魂を作れるんじゃないかなとも思いながら聞いていました。ありがとうございました。
坪谷:ありがとうございました。私もとてもおもしろかったです。ティール組織も、インテグラル理論も、そして今回のソース原理も、概念を知ることで自分が大きく前進できたように感じています。山田さんと嘉村さんの、意義あるお仕事に本当に感謝しております。
今日はここまでとさせていただきます、ありがとうございました。
嘉村・山田:ありがとうございました。
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