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言える・伝わる・あのひとが動く「伝え方の原則」(全2記事)

相手に動いてもらえないのは、一言目で“地雷”を踏んでいるから 仕事でも私生活でも役に立つ、人を動かす「伝え方」の極意

本の学びを深めるオンライン講座「flier book camp」を運営する株式会社フライヤーが主催したイベントに、ゲストとして登場したのは、『無敗営業』シリーズ著者の高橋浩一氏。今回はファシリテーターにフライヤーアドバイザー荒木博行氏を招き、「言える・伝わる・あのひとが動く『伝え方の原則』」をテーマに対談します。高橋氏は、相手にうまく動いてもらえない時は“地雷”を踏んでいる場合が多いのだと語り、気持ちよく人を動かすための「伝え方」のポイントを解説しました。

相手にうまく動いてもらえない時は“地雷”を踏んでいる

荒木博行氏(以下、荒木):浩一さんはものすごく大量にいろんな人の営業トークやコミュニケーションの現場に立ち会われていて、ロールプレイもかなりやってらっしゃると思うし、そこでのフィードバックもけっこうされているわけですよね。

「やっぱりここでコミュニケーションが躓いちゃうのか」というものが、ある意味汎用的なかたちで凝縮されたように思うんですが、そんな感じですか?

高橋浩一氏(以下、高橋):そうですね。一番思うのは、無意識のうちに相手の脳みそに逆らってしまうことがすごく多いなと思って。言葉を選ばずに言うと、うまく動いてもらえない時って自分で“地雷”を踏んでいる場合が多いと思うんですよ。

大手の出版社さんで秋に出させていただく本を書いているんですが、伝わらないモヤモヤやストレスって、人生のどこかのタイミングですっきりと、ある程度の自信をつけることが大事じゃないかなと思うんです。

だけど、自信がつくまでがけっこうつらいというか。僕の場合は10代の時はずっと話すこと自体が苦手で、「どうしよう、どうしよう」って感じだったんです。

一番の転換点だったのは、起業して毎日人に動いてもらわなくちゃいけないとなった時に、熱意だけ伝えてもなかなか動いてもらえない。そんな中で相手に動いてもらうために、最初はコンサルティングの会社にいたので、「こういうメリットがあるから導入してください」とか、ストレートにロジックをぶつけていて。

そう言っていても動いてもらえない中で、だんだん心が擦り減っていく感じがあって。それがある程度の感触を持てると、見える世界が変わる。これをみなさんと共有したいな、というのが思いですね。

うまくいっていないマネージャーの口癖には特徴がある

荒木:なるほどね。自ら地雷を踏んでいってしまうというのがとても印象的な表現なんですが、なぜ踏んじゃうんですかね? 自分が伝えたいことだけを理解するのが精一杯で、そこで脳みそのCPUが食われてしまうというか、相手を見る余裕がないということなんでしょうか。

高橋:それもありますし、だいたい多くの人の自然な感覚で言うと、相手と自分とを同じような前提で考えることってあると思うんですよ。

荒木:なるほど。

高橋:「相手にプレゼンする時はメリットや損得をちゃんと伝えましょう」と言われますが、世の中にはメリットで動くタイプじゃない人たちもいるわけです。「自分だったらこう言われるとうれしいかな」というのを、無意識のうちにそのまま相手に当てはめちゃう。

だから、マネージャーの人の悩み相談に乗ったりすると、だいたいメンバーについてうまくいっていないマネージャーの口癖には特徴があるんですね。それは何かというと、「常識で考えたら」「普通は」と、メンバーに対していつも言うんですよ。

荒木:なるほどね。

高橋:よく言うのは営業マネージャーの人なんですが、営業マネージャーの人が「うちのメンバーは本当に目標達成意欲が弱いんですよ」と言うので「どういうことなんですか?」と聞くと、「え? だって、普通は月末が近づいてぜんぜん目標達成できてなかったら必死にやりますよね」「上司に相談を1つ言いますよね」と言うんです。

まずその時点で、マネージャーの人は相手に対する「普通」を持っていて、「普通は数字が足りなかったら相談するでしょ」「数字が足りなかったら、このとおりにやらないと受注の目標達成できないでしょ」と考えて、「普通は」というのを相手に当てはめて、いかにわかってもらうかを考える傾向にあるんです。

だいたいそういうのって、わかってもらえないことが多いじゃないですか。そうすると、マネージャーの人はストレスを抱えるんです。

荒木:そうですね。

高橋:これ、世の中ですごく多いなと思うんですよね。

人間の脳には「新しい部分」と「古い部分」がある

荒木:その場合って、営業のマネージャーに対しては何を考えてもらう必要があるんですか?

高橋:例えば、マネージャー・メンバーに動いてもらいたいとするじゃないですか。メンバーとコミュニケーションする時に、だいたい多くのマネージャーの一言目は“地雷”であることが多いと思うんですよね(笑)。

荒木:ほうほう。

高橋:メンバーに対してちゃんと伝えようと思って、「ちょっと言いたいこと言っていい?」みたいに来た瞬間に、普通メンバーの人はすごくガードしますよね。

荒木:(笑)。

高橋:マネージャーとしては、「今日こそは、ちゃんと率直に彼に指摘してあげなければいけない」みたいな。でも、地雷を踏んじゃう。これは、部下から上司に対しても地雷は多かったりするなと思っていて。

上司に対して提案したい時に、「うちの上司、本当にわかってくれないんですよ」「ぜんぜん動いてくれないんですよ」と言うんですが、部下から「うちの部署のこれを改善したいんですけど」と提案されたら、マネージャーの立場からすると「俺のやっていることに文句付けてんのか?」とか、瞬間的に防御反応すると思うんです。

実は地雷はけっこう多いんですが、講座の中でご紹介しようと思っているのが、「人間の古い脳みそと新しい脳みその話」というものがあって。

脳みその専門家ではないので、ここではすごく簡略化した図を書きますが、「古い部分」は爬虫類や両生類と同じような三大欲求の部分で、「新しい部分」は人間特有の部分です。

脳の「古い部分」が、言葉を攻撃的に受け取ってしまう

高橋:多くの人は、言葉に秘められた相手を攻撃するニュアンスに気付いていないんです。例えば、お母さんが子どもに「あなた、宿題やったの?」と言っている時って、たぶんお母さんは心の中で「どうせやってないんでしょ」と思っているじゃないですか(笑)。

脳の新しい部分では「宿題やったの?」という確認の言語を言っているんですが、脳みその古い部分に対するメッセージは「あなた宿題やってないでしょ」という攻撃的なニュアンスがあって、だいたい古い部分のほうを敏感に受け止めてしまうんです。

これは家庭だけじゃなくて、仕事の現場でもあると思うんですよね。マネージャーが部下に「あの仕事ちゃんとやってる?」「たぶんやっていないよね」ということを思って確認するとか。

荒木:なるほど。まさにジョナサン・ハイトが「象と象使い」という表現をしていましたけど、我々は象に乗っかった象使いで、理性が本能を支配しているかのごとく思うんだけど、象をコントロールできないという話があって。まさに体の「防御反応」というか、脳の古い部分が動いちゃうんですよね。

象をちゃんと理解しないと、いくら理性的な言葉遣いをしても届かないということでもあるのかもしれないですね。

高橋:まさしく荒木さん、脳みその新しい部分ですごくきっちりとまとめてくださいました(笑)。

荒木:(笑)。

人を動かす時のポイントは「相談モード」で伝えること

高橋:ポイントは本当にそこだと思うんですよね。仕事上のコミュニケーションで、「人に動いてもらえない」とか、不満や悩みがあった時に、実はすぐ解決できることがけっこうあるんじゃないかなと思っていて。これは、講座の中でも取り扱う「相談モード」というものです。

例えば、「お願い」や「提案」って、相手からするとちょっと負担が大きいというか。だけど「相談」というふうにしたほうが、相手も抵抗なくちゃんと検討してくれる。一瞬、くだらない話をしていいですか?

荒木:どうぞ。

高橋:鰹のたたきが大好きなので、鰹のたたきがよく食卓に出てくるんですが、身の厚さがけっこう厚かったんですね。でも、奥さんはなにかを考えて切ってくれているんだろうなと思って、ずっと言えなくて(笑)。

この本の内容を書いている時に、「相談なんだけど」というふうに言ったら、相手を傷付けずに言えるなと思って。その結果、我が家の鰹のたたきはすごく食べやすいサイズになったんですが、そういうふうに「相談なんだけど」という言葉遣いから入るだけで、相手が話を聞いてくれやすいというのがあります。

荒木:なるほど。一方で、言葉と態度みたいな話もあるじゃないですか。

高橋:ありますね。

荒木:「相談なんだけど?」って、めちゃくちゃ高圧的に来るみたいな。

高橋:(笑)。

荒木:「言葉さえ変えればいいんでしょ」みたいに、言葉と態度が伴っていない。言葉をテクニックとして理解しちゃうと、それはそれで変わらない部分というか、むしろ被害が拡大する部分もあるんじゃないかという仮説もありますが、これはどうでしょうか。

一番やってはいけないのは「小手先の言葉で動かす」こと

高橋:まず、古い脳と新しい脳の話をきっちり深めていきたいなと思います。さっき荒木さんがおっしゃった、言葉として言っていることの裏側に矛盾する態度があったら、それは古い脳みそのほうから察知されてしまう。

これはもういろんな学者の方が研究されているんですが、古い脳みそのほうが強いということなんですよね。これは生き物である以上、絶対に避けられない。

荒木:なるほどね。

高橋:言葉ではきれいに言うんだけど、「なんか態度が変だ」というのは、古い脳みそに察知されてしまうわけなので、その原理原則からすると、小手先の言葉だけで相手に動いてもらおうと思う邪なことは、むしろ一番やってはいけないことです。

荒木:なるほど。そうすると、このセッションでやる「言葉を理解する」「言葉を変えてみる」という話は、言葉を通じて態度を変えるということなんですかね。

高橋:あとは、踏んでいる地雷に気付くというのが大きいですね。例えば「若い世代に指摘ができない」というマネージャーの悩みをよく聞くんですが、おそらく若手にうまく動いてもらえないマネージャーって、「普通は」「常識的には」「一般的には」という言葉を、けっこうどこかで使っていると思うんですよ。

荒木:なるほどね。それはあるかもしれないですね。

高橋:わからせようとするんです。でも、わからせようとする時点で、動物的にはそれを「攻撃」と受け取っちゃうんです。相手の考えが間違っていて、改めなければいけない。相手の行動が間違っていて、変えさせなければいけない。それは攻撃なので。

伝え方を考えるうえで「世代論」はどこまで考慮する?

荒木:なるほど、そういうことか。チャットの中では世代論もけっこうあって、今も「若い世代みたいに」という話や、Z世代というキーワードもありましたし、年齢層が上の人たちという話もあったんですが、世代論はどこまで考慮すべき話なんでしょうか。

高橋:ありましたね。世代論はよく聞く話ですが、抽象化すると「自分と前提が異なる人にどう動いてもらうか」ということだと思うんです。世代論を意識すればするほど、それはテクニックのほうに寄っちゃっていると思うんですよ。

荒木:そうですね。

高橋:だから逆説的なんですが、むしろ「相手がどんな人であろうとも変わらない」というほうに近づいていったほうが、年下の方や年上の方に動いてもらいやすいと思っているんですね。

荒木さんもそうだと思うんですが、いろんな年代や職業の方と付き合っていくと、例えば自分のほうが相手より年少だからといって、ラフな言葉使いとかって絶対にしないじゃないですか(笑)。

『1分で話せ』の伊藤羊一さんも、よく「フラット」ということをおっしゃっていますが、そもそもフラットな立場に立てば、そんなに年齢の違いに苦しまずともコミュニケーションはできると思うんですよね。だけど「上の人・下の人の言うことを聞く」という構図で考えちゃうから、コミュニケーションが難しくなってしまうんではないかなと思います。

言葉を変えることで、社内の風土がフラットになる

荒木:そうですね。「フラットである」ということをバグらせるキーワードはいっぱいあって、「上司・部下」「下請け」とか、いろいろな意味で上下の意味を含んだ言葉はいっぱいあると思うので、それがある種、フラットなコミュニケーションを阻害している部分もあるのかもしれないですね。

高橋:あと、言葉を変えるから世界観が変わることってあるなと思っていて。例を言うと、僕のやっている会社ではお客さまは必ず敬称呼びなんですね。これはけっこう厳密にやっていて。例えば新しく来た人が、お客さまを「○○社だったら呼び捨て」という感じで、メッセージを書いてきたりするんですよ。

必ず、毎回それを直してもらうんですね。うちの価値観の問題もあるかもしれませんが、営業の人たちを相手にしているのであれば、ふだんから「あの客がさぁ」という会話が流れていると、やっぱりそういうのは(悪いカルチャーが)出ちゃうと思うんですよ。そういうことが起こらないようにするために、まずは言葉を大切にしているんですよね。

荒木:なるほどね。

高橋:これもいろんな価値観や考え方があるんですが、上司・部下の会話もそうだと思うんです。基本的には年下だろうと、ナチュラルにさん付けで会話をするとか。そういうふうに、言葉からフラットな世界観が生まれることもあるんじゃないかなと思いますね。

相手のタイプに合わせたコミュニケーションがカギ

荒木:なるほど。わかりました。講座は全4回なんですが、どんなふうに進めていくのか、簡単にご説明していただいてもいいですか?

高橋:まず、DAY1では今日この場でお話したことをさらに体系的に整理します。気が付かずに地雷を踏んでいたり、本当に気付いていないことが多いんですが、実はその上で「断られない切り出し方」というものがあります。

私がいろんな営業の人たちを支援する中で、多くの営業の人たちはお客さまに断られる地雷を自ら踏んでいることがあって。長いことずっと研究していると、逆に「断られないコミュニケーション」の法則がありましたので、これをDAY1でお話しする予定ですね。

DAY2では、「相手のタイプ」というのがあって、タイプについて僕は必ず「相手を当てはめて『これで動く』というふうに考えるんじゃなくて、相手に対してそぐわないコミュニケーションをしてしまった時に、すぐ気付くことが大事です」ということを言っています。

さっき「荒木さんは論理タイプじゃないか」と言いましたけど、僕が荒木さんに対して「論理タイプだから」というので、必ずコミュニケーションをする時に論理的だったらいいかと言うと、それは荒木さんに変な感じに伝わっちゃうと思いますし、人として気持ちよくないと思うんです。

確かに「ツボ」というものはあるんですが、真に伝えたいことは、自分が相手にそぐわないコミュニケーションをしている時に、ちゃんと自浄作用を働かせるということですね。これは練習しないとなかなか瞬間的には動かないので、相手に合わせたコミュニケーションが大事です。

さっき言ったように「タイプ」というのもありますし、上司・部下とか、年が上・下、社内・社外というのもありますし、こういった時に動いてもらうためのポイントがどういうことなのかをDAY2でお話しします。

仕事はバリバリできるのに、家庭のコミュニケーションが苦手な人

高橋:DAY3は「気持ちよくYesをもらう」ということなんですが、説得されて言いくるめられるのって、あまり気持ちよくないと思うんです。これは『気持ちよく人を動かす』にも書いているんですが、気持ちよくYesをいただくのは、相手がすっきりと「動こう」という状態になることなんです。

ただ、さっき「脳みそに逆らわない」ということを言ったんですが、脳みそが自然と前向きに動くような表現や伝え方をDAY3でやっていきます。

あと、冒頭で「仕事でもプライベートでも」という話をしましたが、本当に笑い話じゃなく、仕事ではめちゃくちゃバリバリやってるのに家庭のコミュニケーションがうまくいかないことって、本当に珍しい話じゃなくてよくお聞きします。どんな場面・どんな相手でも応用が効くように、最後にDAY4でまとめていくという構成です。

荒木:なるほど。むちゃくちゃカバレッジが広いですね。

高橋:そうなんですよ。

荒木:そうすると、どんな人が対象になる感じですか? たぶん、対象になるのは全人類的なコンテンツかなと思うんですが、特にこういう悩みを持っているとか、こういう立ち位置の人に来てほしいというメッセージを最後にいただきましょうか。

高橋:まず、世の中には自分を丸出しで受け入れてもらえる、「直球勝負」と「キャラ」で行ける人たちがある程度いらっしゃると思うんですよ。そういう天性のものがある方は、こういう講座がなくてもいいと思うんです。

(受講対象になるのは)やっぱり、相手に動いてもらう時に心の奥底では不安があると思う人。会社の中でも、人に動いてもらわないと仕事が進まないからそういうことを考えますし、家族のコミュニケーションもそうです。

「自分の好き勝手に振る舞っても、人間関係はうまくいくものでもないな」と薄々感じている方々に対して、ナチュラルに動いてもらえるようになることで自信がつく。これが講座のゴールなので、ピンときた方はご参加いただけるとうれしいなと思います。

荒木:いいですね、ありがとうございます。「自分のメッセージを出す」というのは前提なので、やっぱり奥底では誰しもが不安を抱えているような気がしますね。

高橋:僕も本当に、めちゃくちゃ怖がりですから(笑)。だから、怖い人の気持ちはすごく共感できます。

荒木:わかりました。ということで、私たちはここまでになります。ありがとうございました。

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