大学も会社も、同じ道・同じチームで活動した先輩・後輩

成瀬拓也氏(以下、成瀬):みなさま、お待たせいたしました。まだ続々と入ってきてくださっている最中ではございますが、お集まりいただいてる方々もいらっしゃいますし、お時間になりましたので始めさせていただきます。みなさま、あらためましてこんばんは。

河合克仁氏(以下、河合):こんばんは。

成瀬:今日は「すべての仕事に『営業力』を!」ということで、河合くんの新著の出版を記念して、河合くんにいろいろ聞いちゃおうという会でございます。河合くんとは……付き合いは何年ですか?

河合:僕が18歳の時だから、もう20年以上、21年ですね。

成瀬:20年以上の付き合いですよね。たぶん僕の人生の中で、一番の腐れ縁というか。しかも、出会ってから単に21年ではなく、僕も河合くんも筑波大学の体育学部で、陸上部でも運動生理学研究室でも先輩と後輩でした。僕は訳あって大学を途中で脱走したんですけれども(笑)。新卒で入ったアチーブメントというコンサルティング会社でも先輩と後輩の関係でした。

大学、会社とずーっと同じ道で、しかも同じチームで一緒に営業活動していた関係です。今でも、お互い経営者同士、仕事をサポートし合ったり、一緒にいろいろなことを行ったりしています。

そんな僕が、今日はあえて河合くんの売れない時代を証言できる1人の人間として、あらためていろいろと聞いてみようかなと思っているわけでございます。SNSではみんなに「なるなる」と呼ばれていますが、本名は成瀬拓也と申します。あらためて、今日はよろしくお願いいたします。

河合:成瀬先輩、お願いします。

成瀬:はい。あまりかしこまらずに、いつもどおりフランクな感じでいこうと思っているので、「なんだこの馴れ馴れしいやつは」って思っても、「そういうやつなんだ」と諦めていただくのがいいかなって思うんですけど(笑)。

今日は、この河合くんの2冊目の本を取り上げます。これ(『Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術』)ですね。

河合:それじゃないですね、先輩(笑)。

成瀬:これじゃない!? 最近売れてるこっち(『現場のプロが教える!BtoBマーケティングの基礎知識』)か。

河合:それまた違う、すばる舎さんから出ている、僕の3冊目のほうかもしれません(笑)。

成瀬:この一番かわいい表紙の本ですね。

河合:そうです。『今日からできる ゼロストレス営業』という、ジャンプしておるゆるキャラがいる本ですね。

『今日からできる ゼロストレス営業』の背景を知る成瀬氏

成瀬:みなさまの中に、「営業」という言葉を聞くだけでストレスを感じて「ゼロストレス」という言葉にすがって、この本を手にされた方もきっと多いんじゃないかなと思います。もしかすると「まだ読んでないよ」という人がいるのかもしれないですが、ここに書かれている内容は「本買って読めばいいじゃん」という話なので説明を割愛します。

すでに本が手垢にまみれるほど読んでらっしゃる方が大半かと思いますので、できれば、本の内容の復習より、その背景にある「ちょっと本には書けなかったよね」みたいなディープなエピソードを聞いたり、逆に、僕が証人として「その当時はこうだったよ」みたいな話ができたらいいのかなと思っています。

2人でいろいろと掘り下げながら1時間くらい話して、そのあとは、みなさまからの質問にもお答えしていきたいなと思ってます。「聞きたいな」と思うことなどがあれば、チャット欄にどんどん書いていただけたらいいなと思います。

質問ってわけじゃないけど、「めっちゃ共感した」「響いた」とか感想もお待ちしてます。あと、僕らの話の中で「あのサイトがあって」とか出てきたら、誰か優しい人がきっと調べたURLを貼ってくれるのかなって。チャット欄は賑やかになればなと思っています。

お聞きいただいているみなさまも、画面はオンにしていただいても、オフにしていただいてもぜんぜんかまいません。オンにしていただくと、僕らにみなさまの顔が見えるので、僕らのギャグがウケたかどうか確認しながら、どんどん気持ちよくなって、いい話ができるかなと思います。お食事時だから、耳だけ傾けている方もいらっしゃると思いますので、画面はオフでも大丈夫です。

ただ、音声が入っちゃうと混線しちゃうので、マイクはミュートにしていただければなと思います。後半はもしかすると、直接話を振ることもあるかもしれないので、その際はマイクのミュートを外していただければなと思っています。

若手時代の2人の「ティーアップ」

成瀬:ということで、さっそくいろいろと話したいなと思います。ちなみに、そのとおりに進めるかわかんないですけど、「今日はこんな話をしたいな」って思ったことがあります。逆に河合さんはありました?

河合:それは僕自身に対しての質問ですか?

成瀬:河合さん自身ですね。あっ、河合さんの紹介ぜんぜんしていないですけど、したほうがいいですかね?(笑)。

河合:大丈夫です。ちなみに、成瀬先輩を『今日からできる ゼロストレス営業』の168ページで紹介しています。

成瀬:アルファベット1文字で書かれてますね。

河合:そうです。「N先輩を紹介させていただきます」っていうのがまさに成瀬さんのことでございます。N先輩のティーアップ(注:商談の同行者や自社商品などの理解を促す目的で、相手方に向けて説明を行う営業術)もだいぶ濃く書かせていただいたんですけども、紙面の都合上、コンパクトにまとまっています。

成瀬:そういうことですね。N先輩のティーアップだけで1冊の本になっちゃいそうな。

河合:まさにですね。たぶん、このへんは書けない話の1つなんですけども、僕が新卒の頃に、N先輩である成瀬先輩に営業同行していただいていて、僕が初めに受注をお預かりできたお客さまとの営業同行も、成瀬先輩とだったんです。

成瀬先輩と営業に行くと、どういうことか僕のほうが年上に見られてですね。名刺ケースの上に僕の名刺が置かれていて、名刺ケースの横に成瀬先輩の名刺が置かれている。でも、話しているうちに「あれ、これたぶん上司と部下が逆だな」って気づかれて、いつの間にか名刺が入れ替わっていることがあったり。

「先輩をお連れします」って言いながら、新卒1年目の僕が、新卒2年目の成瀬先輩に同行していただく。今思えば、経営者の方やお客さまたちからは、たぶん我々のどちらも「若いやつらが来たな」と見られていました。

勝手に「ティーアッパーズ」と名付けて、僕が成瀬先輩をティーアップし、成瀬さんにまた僕をティーアップしてもらうかたちで、数々のアポイントメントをしのいできたことを思い出しながら、今話していました。

相手の話を否定せず、肯定から入る

成瀬:これね、みなさんわかります? 伝えたいことが2つ出てきたんですけど。

1つ目は、ここまでの話の中で、僕がわざとらしくボケたじゃないですか。(他の著者の本を出して)「これですよね、新しい本。『Sales is 科学的に成果をコントロールする営業術』」「違いますよ」みたいな話ですけど、河合くんって反射的に「違いますよ」とか、否定する言葉を言えないんです。たぶん「言わない」って習慣づけてるから、言えないんだと思うんですよ。

2つ目に僕が「N先輩のティーアップだけで本1冊書けるぐらいの話がありますもんね」って言った後になんて言ったか、みなさまは聞いてました? 「まさにですね」って言ったんですよ。普通ね、「そんなわけないやん」みたいな話なんですけど。

これね、河合くんって「マジで話聞いてないのかな」ぐらい、相手の話を否定しないんですよ。肯定から入るんですね。これは河合くんの本にも書かれてるんですけど。そういう相手の話を否定しないという話は他の営業関連の本にもたくさん載ってるじゃないですか。こういうのが染み付いているので、「それは売れるな」って思うかもしれないんですけど。

この冒頭の河合くんの話を聞いて、めちゃくちゃ話上手とか、言葉の滑舌がいいとかは決してなく、どっちかというと僕のほうが滑舌がいいし、話もなめらかだけど、彼は僕と同じ会社にいた時に、ある伝説の記録を打ち出すんです。

歴代営業記録の6倍以上を更新した「伝説の記録」

成瀬:研修プログラムの契約の営業で、週5件契約をもらうと、営業マンとして非常にすばらしい成果をあげて「スター賞」をもらって、全社員の前で表彰されるんですね。週5件契約をもらうだけですごいんですけど、それをなんと50週連続で達成した。営業の猛者が集まるような会社だったんですが、その歴代の記録の何倍でしたっけ?

河合:6倍とちょっとでしたね。

成瀬:レコード記録を6倍更新するという金字塔を打ち立てるんですよね。正直な話、さっき河合くんが話した新人営業時代にアポイントを取って一緒に行った時とか、当然、今よりも滑舌は良くないし、話もなめらかじゃないし、何言ってるかよくわかんないこともよくあったんですよ。

こういうのって、いろいろな営業の本に「私は昔売れなかった」って書いてあって、「そんなわけないやん」ってみんな思うんですけど、河合くんの場合は本当なんですよ。僕の1個下で会社に入社するんですけど、彼は決して営業が得意そうで「売れそうだね」ってキャラじゃなかったんですよ。

実際、どの新人が欲しいかを話し合うドラフト会議みたいなものがあって、各部署から希望が出るんですけど、河合くんを指名したチームがないっていうね(笑)。

河合:そうだったんですか。そんなショッキングなことを10数年の時を経て。

成瀬:え、知らなかったの?

河合:知らないです。そんなのがあったんですか。

成瀬:最終的に、「大学の後輩なんだからあんたが面倒見なさい」って。

河合:そんな中で拾っていただいて。それがなかったら営業職じゃなかったかもしれないですね。

成瀬:じゃあいきなり入って売れたのかっていったら、決してそんなこともなくてですね。僕のチームに後輩が2人配属されて、1人はめちゃくちゃ売ったんですよ。

もう1人の河合くんは、周りのみんながアポイント取りしてる時に、パソコン開いてひたすらカチャカチャカチャカチャやってるんですよ。「何やってんのかな」と思ったら、ずーっとパワーポイントで資料を作ってるんですよ。アポイント取ってないのに「お前なんのパワーポイント作ってるんだよ」みたいな感じなんだけど、パワーポイント作って、それで1日が終わっていく。そりゃあ売れないじゃないですか。

でもね、ちょっと表現が違って、厳密には「売れない人」というよりは「売りたくない人」だったんですよね。要は、良い商品だと思ってたらお客さまに伝えたい、お客さまっていうか友だちや家族に伝えたいって自然に起こる感情だと思うんです。

自社の商品を売りたくなかったワケ

成瀬:そういった意味では、最初は、自社の商品にぜんぜん自信を持ってなくて。夜な夜な僕も会社に残ってたので、夜遅くまでよく付き合ってくれていたんですけど、相変わらず資料を作ってるんですよ。夜遅くまで会社にいて、2人っきりでオフィスにいて、いろいろと話をしてたんですけど、僕に愚痴るわけですよ。

教育、研修プログラムを提案していたんですけど、「研修や教育というのは、すべての人にすべからく提供すべきものであって、高額なお金を払える人にしか提供しないのはどうなんだ」「僕のやりたい教育はそんなんじゃない」みたいなことを、10数万円する研修プログラムを提供している会社のフロアで、河合くんはとうとうと毎日愚痴るわけですよ。

でも、「そりゃアポ取らないから売れないよね」みたいなところから、先ほど言った伝説の記録になるということは、もしかすると多くの人が途中で、売れない時代の河合くんの状態で「お前は営業向いてないね」「私は営業向いてないね」ってやめちゃったり、もしくは、その状態で無理やり営業させられて嫌になっちゃって「もう営業しねえぞ」みたいになったりして、結果的に、営業力が身につかないのかもしれません。

今日のタイトルでもある「すべての仕事に『営業力』を!」という意味では、営業職の人だけのものじゃなくて、家族や友人との間にも、もっと言うと、営業マンとはぜんぜん関係のない、例えば、エンジニアや介護職といった人にこそ必要というメッセージかなって僕は受け取ってるんですけど。そういった人たちは、営業の能力が開花することなく、もったいない人生を歩んじゃってるのかもしれない。

今日、一番僕が聞けたらなと思うのは、なぜ「売れない河合」は「売れる河合」になり、このような本を書いたり、企業に呼ばれて研修をして、「河合先生」と呼ばれて、まさに引っ張りだこのようになったのか。

その転換は何なのかは、この本にはさらっとしか書かれていないので。僕の知る河合くんの人生を深掘って、みなさんに「だったら俺も」「だったら私も」「うちの仲間にも」「社員にも」とか、そんなふうになれたらたらいいんじゃないかなと思っているわけですよ。